《異世界に召喚された殺し屋は自由に生きる》139話 元太の修行語12〜人族の意地〜

「あんな事を言ってしまったが、本當は止められる自信など無いのだがな.......」

と言って、ソードは苦笑いした。

"あんな事"とは、元太と照子に黒い太を止めると言った事だろう。

しかし、あの黒い太を止めなければ、シュナイツ王國だけでなく、この大陸にある國々は全て消滅してしまうだろう。

だから、止めるしかないのだ。

「.......使うしかないか」

そしてソードは、ひとつの決斷を下した。

「ふぅ.......」

一呼吸置いた後、ソードは大聲でんだ。

「最終奧義 阿修羅!」

最終奧義の名を言った瞬間、ソードのが突如、巨大化した。

そして、右の頬には怒りの表をしたソード、左の頬には悲しい表をしたソードが出てきて、両肩から、それぞれ二本ずつ巨大な腕が生えてきた。

「ア、アレは何だ?」

「さ、さぁ?でもなんかキモい.......」

元太と照子は、ソードの巨大化を顔を引き攣らせながら見ていた。

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黒い太を止めようとしているソードに失禮だが、確かに照子の言う通りキモイ。

いや、だって、顔が2つと、腕が4本、生えてきたらキモイだろ?

「.......取り敢えず俺たちは回復に集中しようぜ?」

「う、うん.......そうだね」

そして、元太と照子は、ソードの巨大化を見なかったことにして、と魔力の回復に集中した。

「この技を使うのも久しぶりだな.......初めて使った時は冒険者だった頃であるな。その時は仲間にキモイと言われて泣いたものだ.......今ではいい思い出だな」

と言って、ソードは遠い目をしていた。

死ぬ前に思い出す記憶が、それで良いのだろうか?

ソードは冒険者時代に、一度だけ『最終奧義 阿修羅』を使っていたのである。

使った理由は、仲間に新必殺技を編み出したと自慢し、見せびらかしたのだ。

「すげぇぇ!」と仲間に褒められると思ったら、「キモっ!」とドン引きされ、1週間ぶっ通しで泣き続けた後、心の中で「この技は封印しよう.......」と強く誓ったのである。

初めから、この技を使わなかった理由は、キモがられたくないからだ。

くだらない理由である。

ちなみに、冒険者を辭めた理由は、國王にスカウトされたというのもあるが、仲間にドン引きされたのも大きいだろう。

寧ろ、9割元冒険仲間のせいである。

意外にもソードは、お豆腐メンタルなのだ。

「嫌な事を思い出してしまった.......今は目の前のことに集中しなければ」

そしてソードは、6つの巨大な手を黒い太を止めるために構えた。

「.......!!」

黒い太と接した瞬間、ソードは激痛で聲にならない悲鳴を上げた。

しかし、ソードは、しっかりと黒い太け止め、踏ん張った。

「ぐぅぅ!」

黒い太け止めることに功したが、それでも止まる気配が無く、地面が砕けてソードの足はしずつ地面に埋まっていった。

しかし、ソードは更に『修羅悪鬼』の出力を上昇させ、「うぉぉぉぉぉぉぉ!」と雄びを上げた。

その様子をシュナイツ王國中の人々が見ていた.......。

この世の終わりだと絶する者、人類最後の砦と言われているソードを応援する者、神に祈る者など、様々な人がいた。

「私が死んだら沢山の人々が死んでしまう.......友や人、家族を失う者がいる.......だからっ.......!だから!負けるわけにはいかない!私は"人類最後の砦"だ!」

この瞬間、ソードのから溢れ出していた紫の魔力が全て、ソードのの中に帰っていった。

これはソードの覚醒の瞬間だ。

今までは、僅かに魔力がから溢れ出し、『修羅悪鬼』という奧義に無駄があった。

しかし、ソードのから溢れていた魔力は、ひとつ殘らずソードのの中に帰っていき、しも魔力をらすこと無く完全に力を制することに功した。

主人公とはソードのような人のことを言うのだろう。

「「止まれぇぇぇぇぇぇ!!」」

ソードとシュナイツ王國.......いや、世界中の聲がひとつとなった。

この瞬間、歴史上初めて人類の心がひとつとなった時である。

 — グォォォォォォォォ!!

邪神は、それに呼応するように雄びを上げた。

ソードは黒い太を邪神に跳ね返す為に力一杯押し返し、邪神は魔力を更に上昇させて抵抗した。

長い時間、両者の力は拮抗した。

だが、遂に拮抗は崩れた。

ソードは邪神が放った黒い太に負けてしまったのだ。

邪神との押し合いに負けたソードは黒い太に飲まれ姿が見えなくなった。

黒い太に飲まれた後、両肩にある腕と、両頬に浮き出ている顔が消滅し、しずつんでいった。

そして人間サイズに戻った後、ソードは薄く微笑んで言った。

「ふっ.......やはり人間の私には邪神の足元にも及ばんか」

死を覚悟したソードは目を瞑り、の崩壊にを任せた。

しかし.......

「師匠、まだ俺たちがいるぜ!」

「うん!ソードさんは死なせないよ!」

死を覚悟したその時、ソードの耳に、元太と照子の聲が聞こえてきた。

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