《異世界に召喚された殺し屋は自由に生きる》173話 ミーシャ達の戦い4

星が煌めく夜空の中で、彩は忍者のような裝束をしている男と対峙していた。

男は左腕以外を漆黒ので覆い、出されている左腕には禍々しい模様がビッシリと刻まれている。

「私達が襲われる覚えはないんだけど?目的は何かな?」

敵に目的を問うが、返事は帰ってこなかった。

肩を激しく上下させ、息を切らしているから返事が出來ないだけかもしれない。

「私にも勝てないようなら諦めて拘束された方が良いと思うけどなぁ.......」

そんなことを呟いていたら、黒裝束の男は初めて口を開いた。

「.......來たか」

「.......來たって何が?」

初めて言葉を話したと思ったら、訳の分からない事を言い出した。

彩は何が來たのか質問したが、やはり返事は帰ってこない。

「くっくっく.......相変わらず貴様は目立ちたがり屋なのだな.......天師アルベルトよ!」

今まで全くの機微をじ取れなかった男が、両手を広げて歓喜したような聲を上げた。

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「私の魔が派手なだけです。目立ちたがり屋では無いので勘違いしないでください」

月から地球に空間を繋げてやって來たのか、アルベルトの背後には巨大な月の姿があった。

「それにしても手酷くやられましたね。それでも"始まりの忍び"ですか?」

「ふっ.......好きなだけ言うがいい」

アルベルトは現れてすぐ"始まりの忍び"と呼ばれた黒裝束を煽ったが、涼しい顔をして罵倒を聞き流している。

「まさか忍者が奇襲を仕掛けられるとは.......」

彩は黒裝束の男が油斷している時に攻撃したのだ。

彩にとっては奇襲という程のものではないが、一撃で倒すために自分から意識が外れているところを狙ったのは事実である。

「さすがの私でも笑いが止まりませんよ.......ぷっ.......すみません。思い出したらまた.......ぶふぅっ!」

先程までクールな雰囲気を纏っていたが、今では腹を抱えながら笑いを堪えて相手を小馬鹿にした態度を取っていた。

それを見た黒裝束の男は、拳に力をれてプルプルと震えている。

「.......死ね」

「ふぅ.......それは此方のセリフですよ」

黒裝束の男は懐からクナイを取り出し、高度の魔力を纏わせて投げた。

そして、アルベルトは指を鳴らした後、人の頭一個分の小型太を作り出して防いだ。

「ふっ」

大したことないな.......口に出さずとも、瞳で相手に意志を伝え、アルベルトは鼻で笑った。

そこから始まったのは、常人では視認することすら不可能な超高速戦闘。

「確かに、貴様の方が攻撃と防の出力が圧倒的に高い。しかし、拙者の方が速度で上回っている!」

黒裝束の男は超高速で縦橫無盡に空中を駆け回った。

敵から攻撃をけず、同時に相手を錯狀態にする為だろう。

「ゴキブリのようなしぶとさと素早さは相変わらずですね」

アルベルトは自に攻撃が屆かないように、周囲への無差別攻撃を放ち続けた。

「そう言う貴様の火力頼みの戦闘スタイルは昔と変わっていないようだな!」

黒裝束の男は禍々しい模様が刻まれている腕を後ろに引き、アルベルトの懐にった瞬間に拳を放つ。

これから放つ攻撃に余程の自信があるのか、黒川の男はマスク越しでも分かるほど愉悅に浸った表を浮かべており、勝利を確信していた。

「変わっていない.......ですか。私が貴方と最後に戦ってから、どれだけの月日が流れたと思っているのですか?」

アルベルトは懇親の一撃を片手でけ止め、なんのも篭っていない冷たい瞳で黒裝束の男に視線を向ける。

「貴方は封印されながらも他者の力を借りて長い年月をかけ、その禍々しい力を手にれたのでしょう」

冷たい瞳を向けながらも、穏やかで心地よい聲で話しかけていた。

しかし、黒裝束の男は絶に叩き落とされた表をしている。

長い年月をかけて手にれた力を今の一撃に全て駆け、確実に敵を倒したと思ったが、子供のパンチをけ止めるかのように対応されてしまったからだ。

「あの真っ暗な封印空間で鍛錬を行っていたのは素直に賞賛しますが、それでも私には屆きませんよ」

「あ、有り得ぬ.......主神様の力を借りているのだぞそれを片手でけ止められるなどあってはならんのだ!」

黒裝束の男は現実をけ止められず、全に禍々しい魔力を纏わせて拳の連撃を加える。

しかし、アルベルトは涼しい顔をしながら片手で全て弾き返した。

「私は一年とあれば新しい魔を作れます。それに比べて貴方は自分に不釣り合いな力を一つ手にれただけ。その程度の存在なのに、よく私に勝てるなどと思ったものです」

「.......その他者を見下す目も変わっていないようだな.......」

「?.......聞こえませんよ。思ったことはハッキリと言ったらどうですか?」

アルベルトは黒裝束の男を見下しながら、耳を傾けた。

「分かっていた.......拙者の力では貴様には勝てないと.......ならば.......道連れにしてでも貴様を殺してやる!」

「はぁ。まだ諦めないのですか.......!?」

アルベルトには絶対に敵わないと理解した瞬間、黒裝束の男は戦いに勝つことを諦め、目をばらせて両腕を広げながら飛びかかった。

殺気が無かったから避けることが出來なかったのか、アルベルトは黒裝束の男に捕まってしまう。

「は、離しなさい!」

「くっくっく.......勝てないなら拙者諸共、貴様を滅ぼしす!」

私を殺すためだけに自する気か!?振りほどこうにも思っていた以上に力が強いせいで振りほどく事が出來ない。

アルベルトは全に魔力を纏って自に耐える準備をした。

しかし、その準備は無意味だった。

「危なそうなので私が殺っちゃいますよ」

彩はアルベルトさえ視認できないほどの速度で黒裝束の男に接近し、翡翠の魔力を周囲に漂わせながら、右手に持つ槍で首を切り落とした。

「なっ!?」

"始まりの忍び"を圧倒していたから自分よりも強いと分かっていたが、その力を直で見ると改めて次元が違うと瞬時に理解するのだった。

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