《継続は魔力なり《無能魔法が便利魔法に》》頑張る新人メイド 前編

私は、自分の親も産まれた場所も知りません。

心がついた時には、帝都の孤児院にいました。

孤児院には、何人もの私と同じように親を全く知らない子供がいました。

ただ、皆には私みたいな耳も尾もありません。

小さい頃は、私が皆と違う事を凄く気にしていました。

そして私は、皆と違う自分の耳も尾も嫌いで嫌いで仕方がなかったです。

どうして私は皆と違うんだろう?

皆と違うから、私はお父さんとお母さんに捨てられたのかな?

などなど、鏡で自分のことを見る度にそんなことを考えてしまいました。

しかし、孤児院の皆は、人と違う私をいじめることなど絶対にせず、家族として扱ってくれました。

皆からしたら、見た目が違くても小さい頃から一緒に暮らしている家族だそうです……。

私は、そんな皆が私は大好きでした。

そして、八才になった頃、私は初めて獣人というものを孤児院のおばちゃんに教わりました。

孤児院のおばちゃんは皆に優しく、私たちのお母さんみたいな存在です。

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そんなおばちゃんは、読み書き計算、魔法など外に出てからも苦労しないようにと毎日沢山のことを教えてくれました。

その授業である時

「今日の授業は、種族について教えたいと思います」

「「「「はーい」」」」

皆が返事する中、いつも元気な男の子がおばちゃんに質問しました。

「おばちゃん! 種族って何の種族? 魔?」

「今から説明するから待ちなさいって、今日は人の種族について教えたいと思います」

「え? 人にも魔みたいに種族があるの?」

「ええ、あるわ。例えば、ベルちゃん。ベルちゃんは獣人と言って、に似た耳や尾を持っているのよ」

え? 私が獣人?

「え? ベルは俺たちとは違うの?」

私は、男の子の発言にビクっとしてしまいました……。

私は、やっぱり人と違うんだ……。

「違うわけじゃないわ。他にも耳が長いエルフや背の小さなドワーフがいるけど。し見た目が違うだけで、私たちと何も変わらない同じ人よ」

「わかったーベルも同じ人ね」

「そうよ。あなた達が素直で良かったわ……なかには、獣人やエルフ、ドワーフのことを亜人と言って差別する人がいるから心配だったのよ……」

「ベルは家族だよ!」

「うん、ベルは家族」

「ベルは大切な家族よ」

おばちゃんの説明に、皆は口々にそう言った。

「みんな……」

「ふふ、心配する必要は無かったみたいね……いい? あと一、二年経ったらあなた達はここから出て、さまざまな場所で働くと思うわ。その時に、見た目だけで人を絶対に差別なんてことはしないこと!」

「「「「はーい!」」」」

「それと、ベルちゃん」

「な、なに?」

「これから外に出て、たくさんの理不盡があると思うけど……絶対に自分のことは嫌いになってはダメよ?」

「う、うん……」

「もし、これから辛い時があったらここにいる皆のことを思い出しなさい。あなたのことを必要としてくれる人は必ずいるから」

「わ、わかった」

それから二年が経ち、私は10歳になりました。

孤児院では、10歳になったら外に出て働くしかありません。

ですから、私はこれから孤児院を出るのです。

孤児院の同い年の子たちは、それぞれ冒険者になったり職人さんの弟子になったりと自分の道を進んで行きました。

私は、いろいろ悩んだ末に孤児院生活で家事は一通り出來るからとメイドになることに決めました。

そんな時、おばちゃんがある貴族のメイド募集と書かれた紙を持って來てくれました。

「ベルちゃん、メイドになるならここに行ってごらん」

「フォースター家? あの勇者の?」

「そうよ。なんでも勇者のお孫さんが男爵に敘爵されて、新しい家のメイドを募集しているそうよ? ここに応募してみたら?」

「勇者の家系か……わかった。応募してみる!」

そして、運命の面接の日

會場のフォースター家の新居に行くと私は目を疑ってしまいました……。

そこには、面接待ちの人たちで大行列が出來ていたのです。

それに、並んでいる人は私のようない人はなく、経験をしっかりと積んでいそうな人ばかりでした。

「ど、どうしよう……私、場違いな所に來てしまったわ……」

ただ、ここまで來て帰るわけにはいかないので、落ちるのは前提で並びました……。

すると……

「ねぇ、あの子。獣人じゃない?」

「あ、本當だ……あの子知らないのかな? 貴族が亜人嫌いなことを……」

「可哀そうに……きっと、面接で話も聞いてもらえないわ」

え? どういうこと?

獣人はメイドになれないの?

辺りを見回してみると……確かに、並んでいる人を探しても誰一人、私の様な獣人はいませんでした……。

これで、私が確実に落ちたことを確信しました。

はぁ、帰ろうかな……。

ここで並んでいてもどうせ無理だし……。

どうして、私は獣人に生まれてしまったんだろう……。

そんなことを考えていると、おばちゃんに言われた言葉を思い出しました。

『もし、これから辛い時があったらここにいる皆のことを思い出しなさい。あなたのことを必要としてくれる人は必ずいるから』

孤児院に帰りたいな……。

私を必要にしてくれる人は本當にいるのかな……?

でも、ここでもし逃げたら、これからずっと自分が獣人である事から逃げてしまう気がする。

なら、やっぱり落ちるのはわかっていても逃げないで面接をけようかな……。

でも、どうせ無理なら帰ってもいいよね。

いやいやいや、帰ったらきっとおばちゃんが悲しむよ……。

けど、面接が怖いし。

頭の中でずっと討論をしていると……

「次の方、面接會場にってください」

「は、はい?」

いつの間にか私の番になっていました……。

どうやら、悩んでいる間に凄い進んでしまったようです。

これで、私は逃げることが出來ません……。

「失禮します。わ、私はベルと申しましゅ」

あ、終りました……。

張のあまり、早速噛んでしまいました。

これは、きっと帰れと言われてしまうはずです....

恐る恐る試験の顔を見ると……。

意外なことに、試験は私を見て満面の笑顔でした。

「あなた獣人族よね?」

「は、はい!」

やっぱり、獣人はダメですよね……。

「良かった~~~!」

良かった?

試験のは何故か、両手をあげて喜んでいた。

「あなたみたいな若い獣人族の子を探していたのよ! もうベストマッチ過ぎて逆に怖いわ」

「えっと……どういうことですか?」

「あ、ごめんね。簡単に言うとあなた合格!」

「ご、合格……。え~~~!? ど、どういうことですか!?」

「そのまんまの意味よ。それじゃあ、後で正式に紙で発表するから楽しみにしていてね」

「は、はい……ありがとうございます」

私はわけがわからないまま、部屋から出た。

おばちゃん……どうやら必要としてくれる人を見つけることが出來たようです。

ただ、早すぎです……。

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