《継続は魔力なり《無能魔法が便利魔法に》》兄弟

「おい、聞いたか? フェルマー本店の従業員が全員辭めてしまったらしいぞ」

「ああ、聞いた。何でも、會長が無理難題を押し付けてくるから、耐えられなくなっちゃって辭めてしまったみたいだぜ」

帝都の広場で二人の冒険者が話していた。

この、フェルマーの話は帝都中で話題になっていた。

「やっぱり、魔剣を開発するのが厳しかったのか?」

「らしいぞ。そうなると、あれを作れるのはあそこの小さな店だけか」

「だな。しかも、あそこの魔法の質はどれもいいからな。最近、俺はフェルマーじゃなくてあそこで魔法は買うようにしているんだよね」

「お前もか? ただ、あそこはすぐに売り切れちゃうからな……もうし店を大きく出來ないかな~」

「仕方がないさ。あそこは量より質で勝負しているんだから」

「確かにな。質が落ちるよりはいいか」

「ただ……フェルマー本店が営業していないとなると、帝都中の魔法が不足するからあそこの店では余計に買えなくなってしまいそうだ」

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「そうだな……というか、これから魔法が買えないじゃないか?」

「ヤバいな。俺たちはそうでもないが、貴族なんか魔法が無かったら生活できないんじゃないか?」

SIDE:エルシー

「すみません! 今日はもう売り切れです!」

私は外で待っていたお客様に頭を下げていた。

何故か、今日はお客様の數がいつもの數倍だった。

「う、噓だろ? まだ午前中だぞ!」

「すみません……商品がありませんので」

何を言われても、これしか言えなかった。

「わかった……明日、朝一で來るしかないか」

常連のお客様は、うちの店が量より質が売りなのをわかってくれているのですぐに帰ってくれる。

「もうちょっとでいいから商品數を増やせませんか? 魔法がないと困ってしまうんです」

「すみません。職人が一人でして」

「そうですか……わかりました……」

常連ではないお客様もなんとか謝って帰って貰いました。

「ホラントさん、外にいるお客様に説明は終わりました」

「ああ、ありがとうな。どうして今日はこんなに人が多いんだ?」

「さっきお客さんに聞いたのですが、フェルマー商會が今日は営業していなかったそうです」

「珍しいな。あそこが休むなんて、店の改裝でもしているのか?」

「いえ、聞いた話によると……従業員が昨夜、全員逃げ出してしまったらしいですよ」

「従業員が逃げ出した!? あいつ……何をさせていたんだ?」

「それはわかりません」

「たく……コルト……何をやっているんだ。し出かけてくる」

し考えた素振りをしたと思ったら、ホラントさんは店を出て行ってしまいました。

SIDE:コルト・フェルマー

「くそ……逃げやがったな……」

誰一人いない店を眺めながら一人呟く。

昨日、俺が言っておいた新発明の期限日だった。

だけど、あいつらは何も持って來なかった。

それにキレた俺は怒るため、久しぶりに工房に出向いてやった。

勢いよくドアを開けて

バッタン!

「お前ら! 新商品はどうし……た?」

怒鳴り散らそうとしたが……

そこには誰もいなかった。

「あいつらはどこに行ったんだ?」

どこに行ったか聞くために接客擔當の奴を捕まえて問いただした。

「わ、わかりません。さ、最近、來ていないんです」

それを聞いた俺は、怒りの余り、目の前の奴に怒鳴りまくった。

何を怒鳴ったかは忘れた。

その後、酒を飲みまくったからな。

そして今日、店には誰もいなかった。

「どうしてだ……どうしてこうなった……俺はフェルマーをここまでデカくしたスゲー奴なんだぞ?」

あの小さな店からしずつしずつ大きくして、今では帝國一の大富豪になったんだぞ……。

「なのに……今になってどうしてこうなった?」

ちょっと前までは順調だったはずのに……。

「理由はなんだ? 兄貴の店か? 嫌、あそこは小さな店だから俺の店にあまり影響はないはずだ」

そう、魔剣が凄いと言われてはいるが、あの店の広さならそこまでの量は売れない。

だから、うちの店の脅威にはならないのだ。

「確かに売り上げは落ちたが……赤字ってわけでもない……どうして従業員はいなくなったんだ?」

「お前が悪いんじゃないか?」

「あ、兄貴!?」

聲がする方向には何十年ぶりかに見る兄貴がいた。

「よう、久しぶりだな。見ない間に凄く太ったな」

「あ、ああ」

俺は自分の腹を眺める。

確かに太っていた。

毎日、食って飲んでの繰り返しだったからな。

それに比べて、兄貴は相変わらずドワーフみたいな筋からだを保っているな……。

「お前、従業員に逃げられたんだって?」

「う、うん……」

この、誰もいない店の中で否定することは出來なかった。

「そうか……俺に、これまでの流れを説明してみろ」

「わかった……」

それから、兄貴の剣が有名になってから昨日までのことを話した。

「お前……自分で説明していて自分の愚かさに気がつかないのか?」

「え?」

俺が愚か?

そんなことはない!

俺は帝都一の金持ちだぞ!

「今のお前は愚かだ。いいか? お前の部下はゴーレムじゃないんだぞ?」

「ゴーレム? あ……」

ゴーレム……主人の命令通りにいてくれる高級魔法だ。

言われてみれば……部下たちのことを何でも命令通りにいてくれる駒だと思っていた……。

「お前……本當に、らしくないな……昔のお前ならこんなことはしなかった」

「そ、そんなことは……」

昔の俺は……

「いや、絶対にしない。第一、最近のお前は商売に関わってないじゃないか」

「え? お、俺は……関わっている……」

「んなことはないな。全部、部下任せだ。まず、俺の魔剣を見ていれば、半年を無駄にしなかった。それに、新魔法の発明を一カ月でやれなんて無理に等しいのはお前でもわかっているだろ?」

「う……」

何も言い返せない。

全部、兄貴の言う通りだ。

全て部下に任せて、俺は遊んでいた。

兄貴の冷めた目が突き刺さる。

「お前は変わってしまったな。昔はあんなにも真面目だったのに……俺は、商売が上手いお前にこの店を継いでほしくて家を出たんだぞ」

そ、そうだったのか?

てっきり、親父と喧嘩して出て行ったのかと思っていた……。

そうだったのか……言われてみれば、兄貴がいたら俺はこの店を持つことは出來なかっただろう……。

そうか……俺の為に……。

「兄貴……ごめん……」

「俺に謝れても困る。反省しな。これから酒」

「き、酒……わかった……」

「それと、今のお前だと心配だからうちに來い」

「兄貴の店?」

「ああ、接客でもしていろ。一カ月も続けていれば、昔のお前に戻れるんじゃないか?」

「わ、わかった……」

接客か……俺は何年客の相手をしていなかっただろうか……。

今の俺は商人じゃない。

これじゃあ、店が潰れるのも當たり前……か。

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