《継続は魔力なり《無能魔法が便利魔法に》》尋問
領地に來て二日目の朝、俺は城の地下牢に向かっていた。
今朝、何も知らないで城にって來たゴッツがレッドゴーレムに捕らえられたそうだ。
「おい! 早く俺を出せ! 俺はここの領地の管理だぞ! どうなってもいいのか?」
牢屋に近づくにつれて、そんな聲が聞こえてくる。
この聲は、たぶんゴッツだろ。
ゴーレムにそんなことを言っても仕方ないと思うんだけどな……。
「おい! 早く出せ! ああ、お前らじゃあ話にならん。上の奴を呼んで來い!」
近くまで來ると、ゴッツが凄く大きな聲でんでいた。
「朝からうるさい。し靜かにしてください」
俺はそう言って、ゴッツの牢屋の前に立った。
「お、お前は……誰だ? それより、早く俺をここから出すんだ。今なら、白金貨十枚やる」
俺の顔を知らないのか……。
てか、どうしてお前がそんなに金を持っているんだよ。
帝國から派遣されたただの役人だろ?
「はあ。僕の名前はレオンス・フォースターいや、レオンス・ミュルディーンだ」
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俺の名前を聞いたゴッツは、目を見開いて急に大人しくなった。
「と、當主様!? も、申し訳ございません! い、今の言葉は気が転して言ってしまった言葉なので、お気になさらないでください!」
大人しくなったと思ったら、また大きな聲で喚き始めた。
さっきの態度を見てから、そんなにペコペコされても全然信用できないんだよな……。
「そうなの? それにしても、白金貨十枚なんてどこから出て來るのかな?」
まずは、そこからだな。
「え、えっと……それは、う、噓です! 助かりたくて噓をつきました」
ゴッツは、汗をだらだらと流しながら必死に噓だと訴え始めた。
まあ、噓かどうかはどうでもいいんだけど。
「そうなんだ。それで、どうしてゴッツさんがここに連れて來られたかはわかる?」
「え、えっと……わ、わかりません」
ゴッツは、また急に大人しくなってしまった。
「そうか、し時間をあげよう。頑張って思い出してみな」
俺は優しいからね。思い出す時間くらいあげるよ。
「え、えっと……頑張っても思い出せそうにありません」
どうやら、その優しさは無用だったみたいだ。
まあ、わかっていたことだけど。
「そうか……殘念だ。正直に答えてくれたらな……」
そう言って、俺は牢屋を後にすることにした。
「ま、待ってください! 正直に答えなかったら何があるんですか?」
ゴッツは、必死になって俺が行こうとするのを止めてきた。
「え? どうしてそんな心配をするの? ゴッツさんは正直に答えてくれたんだよね?」
なら、聞く必要ないじゃん。
「は、はい。で、でも、何があるのか気になってしまうじゃないですか」
うんうん。だって、正直に言っていないもんね。
「そう? それじゃあ、教えてあげようかな。ゴッツさんをこれから特殊部隊に渡そうかなと思っている。で、ゴッツさんが帝國を脅かそうとしているから、拷問してでも報を聞き出してくれと頼む。こんなじかな? 特殊部隊の拷問って、容赦がないから下手したら死んじゃうかもね。この前も、王國の騎士を相手に……」
「わ、わかりました! 全て話します! だ、だから、拷問だけはお許しを!」
おお、そんなに簡単に喋ってくれるのか。
楽で良かったな。ダメなら、魅了魔法でも使おうと思っていたけど……こいつには必要なかったみたいだね。
「それは、余計な手間が省けてありがたいね。まあ、特殊部隊に送り込むかどうかは、ゴッツさんがどれだけ話してくれるかだけどね。僕が知りたそうな報がなかったら、すぐに帝都に送ってあげるよ」
「わ、わかりました! まず、この十數年間私は、橫領をしておりました」
やっぱりね。橫領罪で逮捕だな。
「そうなんだ。どのくらい? 正直にね? あとで調べればわかってしまうんだから」
「は、はい。だいたい、ミュルディーン領の稅収の四分の一くらいです……」
「はあ?」
こいつ、思っていたよりも凄いやつだった。
まともな良心があったら、そんなことは出來ないぞ?
てか、帝國にも問題があるな。気がつけよ。
「す、すみません」
お前に謝られても……。
「まあ、その罪についての話は後でいいや。ほら、どんどん話して」
「は、はい。じ、実は、フィリベール家にお金を貰っておりました」
うん、お前がフィリベール家と繋がっていたのは知ってるよ。
「どのくらい?」
「つ、月に白金貨十枚ほど……」
月に二千萬円くらいは貰っているってことか……。
てか、こいつ、そんなに大金を持って何をしていたんだ?
「それで、その対価としてお前は何をした?」
「え、えっと……フィリベール家に有利になるように規則を変えました」
「的に」
「は、はい。え、えっと……我が領にある関所で、フィリベール家の紋章を見せて金を払うと荷確認、稅金がなしになるという決まりにしました」
はあ、馬鹿過ぎて何も言えないな。
「後で、金を貰った奴、全員クビにしないといけないな……。それじゃあ、次」
「つ、次……」
まだ、あるだろ?
「ほら、もっと大事なことがあるんじゃないの? 昨日、誰かと話していたよね……。なんだったかな……奴の弱點を探って來いって言っていた気がする」
俺が昨日の二人の言葉を持ち出すと、ゴッツは目を見開いた。
「まあ、話してくれないならいいよ。今から、帝都に向けて手紙を書くから」
そう言って、俺は牢屋から離れようとした。
「ま、待ってください!」
ゴッツは、必死に止めてきた。
そんなに拷問が嫌なのか? たぶん、これ以上自分の罪を言っても言わなくてもお前は死刑だぞ?
「ん? 何か話してくれるの?」
「は、はい。話します。昨日、話していた相手は、フィリベール家の派閥の貴族で、ミュルディーン領の隣の領地を持つハイン・カーディフでございます。話していた容は、レオンス様を暗殺する計畫です」
ハイン・カーディフ……。やっぱり貴族だったのか。
そいつを捕まえるのは俺には無理そうだから、帝國に任せるか。
「なるほどね。それじゃあ、その計畫に関わっている人の名前を全て言おうか。一人でも抜けていることが後でわかったら何があるかわからないけどね」
まあ、どっちにしてもそのメンバーと共に死刑だろうけど。
「は、はい……」
それから、ゴッツは正直に名前を言い始めた。
意外なことに、エドワンさんの名前は出て來なかった。
あの人、どっちなんだろう……。とりあえず、當分はネズミに観察させておくか。
「他には?」
「も、もう、私が知る限りではこれが限界です」
「そう。それじゃあ、ゆっくり休んでて」
そう言って、俺は牢屋を後にした。
「ちょ、ちょっと! 待ってください!」
背後からそんな聲が聞こえたけど、気にしない。
「ふう。これで、これから何をすればいいかがわかったな」
「そうですね。それにしてもさっきのレオくん、凄く悪い顔をしていましたよ」
俺が牢屋から戻って來ると、リーナがからかって來た。
リーナたちは俺が牢屋に行っている間、ネズミモニターで俺の様子を見ていたのだ。
「そ、そうかな?」
「あんなデブをいじめて何が楽しいの?」
「べ、別に、楽しかったわけじゃないから」
あ、あれは演技だよ?
「レオ様、そんな趣味があったのですね。レオ様になら私、いじめられてもいいですよ?」
「俺はそんなことしないから! さっきのは演技!」
俺にそんな趣味はない。
「わかっていますよ。レオ様が絶対に私たちを傷つけないのはわかっていますから」
「レオには無理ね」
「ええ、無理です」
「う、うん……」
わかって貰えて嬉しいよ……。
「それで、これからどうするの?」
「とりあえず、城に報告しに行ってくる。その後は、この領地のルールを見直すかな。その後は、領地の様子を見ながらいろいろやっていこうと思っている」
とりあえずは、敵だらけのこの狀況をどうにかしないと。
「そうですか。私たちに手伝えることがあったら何でも言ってくださいね」
「うん。何かあったら頼むよ」
三人には、笑顔でいて貰えれば十分かな。
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