《狂的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執著〜》ヤクザと政略結婚!?⑧

そんな桜の眼前に、不意に顔を寄せてきた尊が橫から顔を覗き込んでくる。

ーーこ、今度はなに?

未だ恥に塗れていた桜は、再びの至近距離に、思わず息を呑む。

「貸してみろ」

「ーーへッ!?」

尊のことを過剰に意識したせいで、言われた言葉が頭にってこず、素っ頓狂な聲をあげてしまう。

そのことで、尊に揶揄われる羽目になってしまうのだが……。

「シートベルトのことだ。お前はいっつもボーッとしてんな」

「そ、そんなことないですよ。今のはたまたまです」

「ふっ、たまたまねぇ」

「あっ、信じてない。本當ですから」

「ああ、わかったわかった」

屈託なく笑う尊とのやり取りの中で、桜は、既視のようなものを覚えた。

おそらくそれは、こんな風に時折尊が垣間見せる、子供のように笑う無邪気な笑顔が見慣れないせいか、い頃に機嫌をとってくれた兄の友人のことを思い出させたのだろう。

今まで、近な男と言えば、家族しかいなかったため、そうじてしまうのかもしれないが、それだけじゃないような気もする。

ーーそう思ってしまうのも、尊さんのことを好きになってしまったからなんだろうなぁ。

これまでのように、これからもずっと家の駒としてしか生きられないと思っていたのに。

政略結婚ではあっても、こうして好きな人と結婚できるなんて、夢のようだ。

尊にシートベルトを裝著してもらった桜のは、ほんわりとあたたかなものに満たされていた。

それからは、もうさっきのように、尊が桜の覚悟を試すようなこともなく。

「今から、極心會について説明しておく」

代わりに、尊が若頭としてを置く極心會のことを語りはじめた。

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