《狂的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執著〜》ヤクザと政略結婚!?⑨

説明も聞き終え、ほどなくして、都でも有數な閑靜な高級住宅街のなかでも、重厚な門構えの、あたかも要塞のような外壁により護られた豪華な日本家屋が目を引く、豪邸の広大な敷地で車は停車した。

外には、凄い數の監視カメラや、護衛と思しき厳つい顔の屈強な男らが至るころに配備されており、々しい雰囲気を醸し出している。

さすがは、日本最大の極道組織・極心會の本拠地である。

尊に促され降車した桜の眼前には、ズラリと並んだ構員らが一斉に頭を垂れて出迎えてくれている景が広がっており、終始圧倒されっぱなしだった。

皆、尊に向けて、口々に「ご苦労様でございます! 若頭!」威勢のいい野太い聲で労いの聲をかけていて。

ーーああ、この人は本當に、この人たちの上に立つ、若頭なんだなぁ。

今さらながらに桜は実したのだった。

その後、エントランスで待ちけていたヤスに案されて、極心會の本拠地であり、會長・鬼頭櫂の自宅でもある、豪華な日本家屋のこれまたご立派な大広間へと腳を進めた。

そして現在、桜は尊と隣り合って、櫂と初めてのご対面を果たしているところだ。

日本最大の極道組織のトップということで、一どんな人なのだろうかと、正直生きた心地がしなかった。

櫂の登場を待っている間、がピークに達していたせいで、両親との相対中にもそうしてくれていたように、隣の尊がさりげなく手を握り気遣ってくれてはいても、気が休まることなどなかったほどだ。

そこについ今しがた姿を現し、尊に紹介され挨拶した楚々とした桜の姿を一瞥した櫂は、至極心したように大きな聲を放った。

「ほ~。こりゃまた驚いた。にも金にも執著せず、生涯獨貴族を貫くとばかり思っていた尊が。いきなり結婚するなんて言い出すと思ったら……。こんな若くて綺麗で、清純そうなお嬢さんをお連れするとはなぁ。近々、大きな地震でも起こるんじゃねーか。いやぁ、たまげたたまげた」

その豪膽な口調とは裏腹に、見た目は、尊ほどではないにしても。

若い頃は、さぞかしにおモテになっていたんだろうなと、思わせるほどの、渋みのあるしワイルドなイケオジ。もうすぐ齢五十六になるのだという、素敵な男だった。

タイプこそ違うが、尊の父親だと言って紹介されても信じそうなほどの、優れた容姿の持ち主だ。

見目麗しい尊といい、櫂といい、極道のトップになるには、容姿にも優れていないとなれないのだろうかと、桜が心してしまうほどである。

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