《狂的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執著〜》ヤクザと政略結婚!?⑫

そうこうしているうちにも、尊と櫂のやり取りは続いていて……。

「そんなことより。今日から新居が決まるまで、しばらくは一緒に暮らすことになるんだ。親睦を深めるためにも、今夜は前祝いに一杯付き合え」

「あ、いや、しばらく忙しくなりそうだし。こいつも疲れてるだろうから、部屋でゆっくり休ませてやりたいんで。すみませんが」

「ほ~。親代わりの俺のことほったらかして、若いとイチャコラするとは、いー度じゃねーか」

「……違いますって。俺も疲れてるんで、この辺で失禮させていただきます。それでは」

「まーせいぜい子作りに勵んで、可い孫の顔、早く見せろよ」

「……気が早すぎますって」

「////ーーッ!?」

櫂のあけすけな言いに不慣れな桜のことを気遣ってか、櫂からの酒のいを斷った尊に連れられて、桜は恥に悶えつつ大広間を後にしたのだった。

そうして連れてこられたのは、二階にある洋室。両親を亡くして櫂に引き取られて以來尊が使っていたという部屋だ。

この春、若頭に襲名したばかりで、IT企業の経営者と極道組織のナンバーツーとしての二足のわらじを履くことになったのだという尊。

多忙なため、ホテル住まいを余儀なくされてはいるが、時間の都合がつけば、この部屋にも戻ってきているらしい。

ないが、必要最低限の家もあるし、綺麗に掃除もなされているようだ。

部屋は二十畳ほどの洋室と十五畳ほどの和室が一室ずつ。ってすぐがリビングで、引き戸で仕切られた向こう隣は寢室になっていた。

もちろんウォークインクローゼットもある。

その隣には、それぞれ獨立した簡易キッチンに浴室、トイレまであるという充実ぶりだ。

先程の櫂の言葉通り、新居の準備が整うまで、しばらくここで寢起きすることになると、車中で尊からも聞かされていた。

ーーここで尊さんと一緒に暮らすんだ。

なんだか不思議な気持ちで、部屋をぐるりと眺めていたところ。

不意に、奧の寢室の大きなベッドの存在に気づいた途端、櫂の孫発言を思い出してしまった桜は軽く揺してしまう。

ちょうどそこに、尊が簡易キッチンの冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを手にして戻ってきた。

そうして桜の背後にあるローテーブルに、尊が二本のペットボトルを置く音がして、すぐに聲をかけてくる。

「そんなとこで突っ立って、なにぼーっとしてんだ。疲れただろ? ヤスに著替えも運ばせてあるから、著替えたらどうだ?」

揺していたせいで、桜は思わずビクッと肩を跳ね上げてしまう。

そんな桜の様子から、何かを察したのだろう尊によって、あっという間に、背後から抱きしめられてしまっていた。

そこへすかさず耳元に尊が顔を埋めてきて。

「なんなら、俺ががせてやろうか?」

昨夜、散々翻弄させられてしまった際に、嫌と言うほど耳にした、ゾクゾクとするほどの香を孕んだ重低音で囁かれてしまっては、桜にはどうすることもできない。

ただただ真っ赤になって悶えることしかできないでいる。

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