《狂的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執著〜》ヤクザと政略結婚!?⑭

ーーもうここまできたら怖いことなんてない。恥なんてくそ食らえだ。

心、気の欠片もない心境で構えていた桜の元に、尊からは、またもや意外すぎるものが返ってきた。

「……何度も言うが、俺は極道者だぞ。それに、あんたは今まで、狹い世界に閉じ込められてきたんだ。そこから出るきっかけを作った俺に対して、恩義をじているのを好意だと錯覚してるだけだ。簡単に言えば、雛鳥の刷り込みみたいなもんだ」

面食らって、一瞬、なにを言われたかの理解が追いつかなかったほどだ。

ーー雛鳥の刷り込みって。ううん。そんなんじゃない。

こんなこと初めてで、どうしてかはわからないし、明確な言葉では言い表すこともできない。

でもこれだけははっきりわかる。

この人のことが気になって仕方がない。しでも近づきたい。傍にいさせてしい。この人だけのものにしてしい。

そう思うのは、この人のことが好きだからに他ならない。

ーーでも待って。私、尊さんのこと好きだなんて、一言も言ってない。

昨日、『俺に惚れてるってことなのか?』と問われたときには、まだ自分の気持ちさえわからなかった。

そのときのことを尊が誤解して、極道者である自分に惚れさせてしまったことに罪悪を抱いているのだとしたら。

世間知らずの桜のことを騙してるようで後味が悪いと言ってたくらいだ。きっとそうに違いない。

ーーだったら好きじゃないってことをハッキリ伝えれば、きっと応えてくれるはずだ。

「私、尊さんのことなんて好きじゃありません。子供の頃、泣いてたら幸せになれないぞ。だからもう泣くなって、言ってくれた人がいて。その人のおで泣かなくなったんです。それからずっとその人のことが好きなんです。尊さんには、これ以上借りを作りたくないだけです。勘違いしないでください」

桜は尊に向けてキッパリと言い放った。

別に噓をついているわけではない。尊への想い以外、全部、本心だ。だからきっと納得してくれるに違いない。そう信じて。

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