《狂的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執著〜》ヤクザと政略結婚!?⑯

なんとか泣くのを堪えようと、桜はぐっと奧歯を噛み締める。

すると尊が頬にすっと手を差しべてきて。そうっとめるように優しく、桜の頬をでながらボソボソと呟きを零した。

「……だろうな。子供の頃の記憶なんてそんなもんだ。いくら戻りたくても、過去には戻れないし。思い出さないほうがいい記憶だってある」

「え? それってどういう」

とても小さな聲だったために、全てを拾うことは葉わなかったが。

そのときの尊の表が、一瞬、安堵したように見え、かと思えば落膽したようなものへめまぐるしく変化して。

それがあまりに悲しそうで……。

おそらく、両親を亡くしていると言っていたから、そのときのことでも思い出してしまったのだろう。

無意識に問い返してしまったものの、そう思うと、それ以上かける言葉など見つからない。

どうしたものかと思っていると、桜の思考を邪魔するようにして、いつもの無表を決め込んだ尊から再度質問がなされた。

「いや。そんなことより、さっきの話だ。お前言ったよな? 俺には借りを作りたくないだけだって」

「は、はい。言いましたけど」

「その、兄貴の友人とかいうそいつのことが好きなのに、好きでもない俺に抱かれてもいいのか?」

尊から次々に投げかけられる問に答えているうち、尊がなにを気にしているかが判然としてくる。

ーーこの人は私の気持ちをなによりも気にかけてくれてるんだ。

やはりこの尊という人がとても優しい心の持ち主だと言うことを改めて確信した。

同時に、自分の尊への気持ちを再確認する。

ーーやっぱり、この人のことが好きだ。ずっと傍にいたい。いつかこの人の家族になりたい。

そのためにも今は、この人を好きだというこの気持ちを隠し通さなければいけないーー。

「だって、顔も名前も覚えてないんだから、しょうがないじゃないですか。そんなことより、尊さんに借りを作ったままなんて嫌です。政略結婚なんだし、お互いフェアじゃないと。違いますか?」

「わかった。お前がそこまで言うなら、心置きなくそうさせてもらう」

ようやく尊も納得してくれたようで、ほっとし一息つく間もなく。

「はい!」

キッパリと返した桜の返事を聞きれた尊から。

「なら、手始めに一緒に風呂にるってのはどうだ? どうせもうすぐ夫婦になるんだ。周りの目を欺くためにも、お前も、しはこういうことに慣れとく必要があるしな」

「ーーッ!?」

思いもよらない提案をされてしまい、桜の思考も何もかもが瞬時に吹き飛んでしまう。

それに、なんだろう。

さっきまでとは違って、尊が心なしか嬉しそうに見える気がするのは、気のせいだろうか。

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