《狂的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執著〜》ヤクザから突然のプロポーズ!?⑦

   すると尊が緩めた目元をいっそう優しげに緩ませた。そうして傍に控えていたスタッフになにやら目配せをする。

桜はどうしたのだろうかと微かに首を傾げるしかなかった。

 

それが何だったかを桜が知ったのは數分後のことだ。

    可らしく盛り付けられたケーキの載ったプレートとシャンパンの注がれたグラスをテーブルに運んでくれたスタッフによって渡された抱えきれないほどの淡いピンクと深紅の二味が綺麗な薔薇の花束をけ取った直後。

「酔っ払ってしまう前に、これをけ取ってほしい」

いきなり大きな薔薇の花束なんて渡されたものだから、桜は何事だろうかと目を丸くする。

    驚きのあまり言葉を失っている桜の眼前に、尊がすっと差し出してきたベルベットの小さな箱を視認した剎那、桜の視線は釘付けになる。

どこからどう見てもドラマなどでお馴染みの、プロポーズの場面に欠かせないジュエリーケースだったからだ。

それは見ればわかるのだが。ただの政略結婚だというのに、まさかこんなことまでしてもらえるとは思ってもみなかったことだった。

「……あ、あの、ほ、本當に私なんかでいいんですか?」

桜は思わずそう訊き返してしまう。

そんな桜の反応に尊は苦い笑みを浮かべ。

「私なんかでって、それはこっちの臺詞なんだがな」

    呟きを零してから、桜の瞳をまっすぐに見據えキッパリと言い放つ。

「これだけははっきり言っておく。俺は努力もせずに泣き言ばかりいう奴が嫌いだ。でも、お前は違うだろう? 俺はいくらかりそめだとしても、嫌いな奴と結婚なんてしようと思わない。だからお前にけ取ってもらわないと困る」

尊の言葉は、あたかも桜のことが好きだと言っているようにもとれるが、桜はそこまでおめでたい頭の持ち主ではいない。

これは、政略結婚の相手として、これから夫婦となって協力し合わなければならない、パートナーになるために必要な契約なのだ。

尊が桜に対して抱いているは、桜が尊に抱いているような淡い心などではない。

    あくまでも人として嫌いではないと言ってるだけだ。

そうだとわかってはいても、尊になからず嫌われていないのだと思うと、嬉しくてどうしようもなかった。

がいっぱいで一瞬でも気を抜けば泣きだしてしまいそうだ。

それらをぐっと堪えた桜は尊からのプロポーズを素直にれた。

「……ありがとうございます。よろしくお願いいたします」

楚々として慎ましく頭を下げる桜の姿を認めると尊は満足げに頷いてから、桜に聲をかけてくる。

「手を出してみろ」

「……え?    あっ、はい」

一瞬意味がわからずキョトンとしてしまったがすぐに意図を察して、素直に手を差し出した桜の陶のように白くほっそりとした左薬指に、尊がキラキラと眩いを放つ婚約指を嵌めてくれたことで、尊と桜との契約がたった今結ばれたのである。

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