《狂的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執著〜》ヤクザと激甘新婚生活!?②

  たったそれだけのことで泣きたいくらいに嬉しいだなんて、悔しくてどうしようもない。

の扱いなど慣れているのだろう尊にとって、二十歳になったばかりのオコチャマを手懐けることなど朝飯前なのだろう。

そう思うと、の中でますます悔しさが膨張していく。

尊に甘酸っぱいを抱いている桜には、尊には何一つ敵わないだろう。

だからせめてもの報いのつもりだった。

「言っときますけど、そんなもので誤魔化されませんから。それに、ただの政略結婚なんですから、そこまでする必要なんてありませんよね? 今まで通りでお願いします」

背後の尊に振り向きざまに、キッと鋭い視線で抜くように見據えて強い口調で言い放つ。

これからずっと呼び捨てになんかされたら、ますます好きになってしまうだろう。

    ーーそんなの耐えられない。辛くなるだけだ。

そんな想いでいた桜の願いも虛しく、尊からの言葉は実にあっけらかんとしたものだった。

Advertisement

「政略結婚とは言え夫婦になったんだ。名前の呼び捨てくらい普通だろ」

    あまりにも當然のことのように言うので、一瞬納得しかけたが、『いやいや』と思い直す。

    けれど桜が口を開きかけたところに、尊からの追撃が寄越されてしまう。

「心配するな。そのうち慣れる。それに恥じらってるような余裕なんてすぐになくしてやるから安心しろ。桜は俺に任せていればいい。いいな?」

そうしていつものように、小さな子供に言い聞かせるようにして優しい聲音でやんわりと畳みかけられた桜は、尊の暗示にでもかけられてしまったかのように、コクンと顎を引いてしまっていた。

やはり好きだと自覚してしまった相手からの呼び捨てには、凄まじい魔力が宿っているらしく、抗うことなどできないようだ。

というものはどうにも難儀なものらしい。

をもって思い知らされた瞬間だった。

しおらしくなった桜のことを満足そうに見遣った尊が背後から桜の顎先を捉えると、無防備なにそうっと優しく口づけてくる。

つい先ほど機嫌を損ねてしまった桜の心を優しく解きほぐすようにして、を幾度も幾度も甘く優しく啄み続ける。

しばらく続いた優しい甘やかなキスによりも心もふわりと解れた頃、キスを中斷した尊がゆっくり離れ今一度確認をとってきた。

「この一ヶ月、ずいぶんとお預けを食らったんだ。わかってると思うが、一度や二度じゃすまないからな。泣こうが喚こうが、やめてやるつもりはない。いいな?」

その割には、暴な口吻だ。

だがその言葉にも、尊の熱を帯びた強い眼差しにも、『桜のことを一刻も早くしい』という雄としてのがありありと見て取れる。

好きな相手である尊に、そんな風にストレートに求められて嬉しくないはずがない。

桜は尊への気持ちが溢れてしまわないように、細心の注意を払い挑むようにキッパリと言い切った。

むところです。極道者の尊さんの妻になったんですから、それくらいの覚悟はとっくにできています」

一瞬、尊が驚いたように瞠目する。

けれどすぐに口元にふっと怪しい微笑を湛えたかと思うと、今度は心したようにふうと息をついてから重低音を響かせた。

「よく言った。それでこそ極道の妻だ。だったら俺は、お前が俺のことを必要とする限り傍に置いて、命に代えても守り抜いてやる。その代わり、俺以外の男に指一本たりともれさせるな。破ったらそのときは容赦しない。いいな?」

さすがは極道組織・極心會の若頭。

    そう思わせる、威圧満載な気迫に満ちた低い聲音である。

仰々しい言葉の端々には、狂気めいたものが見え隠れする。

    それだけ危険な世界だということなのだろう。

獨占ともとれる口ぶりだが、それだって、『政略結婚ではあっても夫婦であるのだから、不貞などあってはならない』そう言っているに過ぎない。

そんなことなど百も承知だ。

それなのに……。こんなにも嬉しく思えてしまうのだからどうしようもない。

そんな想いをの奧底に閉じ込めた桜は決意をわにする。

「はい」

「いい返事だ。褒に今からたっぷりと可がってやる」

尊はそう宣言するなり、桜の華奢なを広くてあたたかなへぎゅうっと掻き抱いた。

    人が読んでいる<狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執著愛〜>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください