しばらくの間、尊は無言のまま桜のことを抱きしめたままでいた。

ただそれだけのことなのだが、尊に淡いを抱いているせいか、この行為になにかしらの特別な意味があるような気がしてしまう。

ーーこの時間が永遠に続いてくれればいいのに。

    そんなことをひっそりと願っていた。

そんな束の間の時間を経て、尊のぬくもりがゆっくりと離れていく。

おそらくソファからベッドに移するためだろう。

  その僅かな時間さえも離れたくないと思ってしまう桜のに、いいようのない寂しさが込み上げる。

けれどもそれは桜の思い違いだったと気づくことになる。

なぜなら離れていくと思っていた尊が眼前にぐっと迫ってきて、正面から顔を覗き込んできたからだ。

尊の不意打ちに目を丸くする桜に対し、尊は意地の悪い言葉で恥を煽ってくる。

「俺に早く抱いてしいからって、そんなにしそうな顔をするな」

「////ーーッ!?」

心の中を見かしたような尊からの指摘に、桜は全を真っ赤にさせ悶える。

尊は桜の初心な反応に気を良くしたのか、してやったりというような表を決め込んでいる。

その態度からも、尊と桜との想いの差は歴然だ。

恥に塗れながらも、桜は悔しさを覚えムッとしてしまう。

「俺の奧さんは大人しそうな顔をして、意外とよく怒るよな」

「そ、それは、尊さんが怒らせるからじゃないですかッ！」

尊の意地悪な追撃に思わず言い返していた。

すると尊は憤慨した桜のことを思いの外優しげな表で見つめてくる。

機嫌でもとってくるつもりに違いない。

ーーいつもいつもそんな手には乗らないんだから。

キッと鋭い視線で尊のことを見據えて構えていたというのに……。

    ここぞとばかりに放たれた尊からの予想に反する言葉に、桜の心は掻きされ大いに戸ってしまう。

「普段おっとりしているお前が、俺にだけを曝け出してると思うと、堪らなくなるんだからしょうはないだろ。だがもうそれだけじゃ足りない。まだ俺の知らないお前のことをもっともっと暴き出してやりたくなる。そんな風に思わせるお前が悪い」

尊の口吻は、相変わらず傲慢なものだ。

けれどそこかしこに、これでもかというように、思わせぶりな要素をチラつかせたものだった。

尊は、混気味の桜の頭を大きな手で優しく宥めるようにポンポンとでるとトドメの一撃のように尚も甘く囁いてくる。

「だからもう諦めて、俺になにもかも曝け出してしまえ。いいな？    桜」

    そんな風に言われてしまえば、桜にはもう抵抗など示すことなどできない。ただコクンと頷くしかなかった。

やはり尊にはどう足掻いたって敵わないらしい。

   今一度そのことを再確認させられた桜は、尊により軽々と抱き上げられいよいよベッドへと運ばれた。