《狂的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執著〜》極道の妻として②

その後の撮影も順調に進み、たった今撮影を終えることができた。時刻は十七時十九分。桜はスタッフへの挨拶を終えて控え室へと向かおうとしていた。

するとそこへ、軽快な男の聲が桜の背中を追いかけてくる。

「あー、桜さん。どうですこれから夕食でも」

桜が振り返った先には、現場の責任者であるディレクターの牧村まきむらがいて、この男がどうも苦手だった桜のは途端に強張ってしまう。

仕事の都合上、桜の結婚相手が尊だということはもちろん結婚していることも伏せている。

そのせいか暇さえあれば、あの手この手で桜のことを食事にい出そうと聲をかけてくるのだ。

それだけならまだしも、桜のことを見る目に妙な熱がこもっていて、それがどうにも苦手だった。

それでも失禮があってはならないと、なんとか必死に笑顔を取り繕う。

  當然、この仕事を與えてくれた夫である尊に迷がかかるようなことがあってはならないーーという想いだってある。

だがそれだけではない。

い頃よりどんなに寂しくとも辛くとも、大好きな花々に助けられてきた。

大好きな花のために、自分の特技を活せるこの仕事に桜は誇りを持っているし、これ以上にないほどのやり甲斐と生き甲斐を見いだしていたからだ。

「……あっ、はい。ありがとうございます。ですが実はあいにく予定がありまして」

しぐらいいいじゃないですか。たまには、ね?」

「申し訳ありませんが、大事な用件ですので」

「そんな~、つれないな~。獨同士、仲良くしましょうよ~! たまには息抜きも必要だし。社會勉強だと思ってさぁ」

いつもなら傍に著いてくれているヤスやヒサがさり気なく間に割ってってくれるのだが。あいにくヤスは事務所からの連絡がったとかで席を外しており、ヒサも若いスタッフに話しかけられているようだった。

おそらくそんな狀況だからこそ、牧村はこうして話しかけてきたのだろう。

ーーいつもいつもふたりに頼ってばかりじゃダメだ。ここは毅然としなくちゃ。

そうでなければ、いくら政略結婚とは言え、極道者である尊の妻としても務まらない。

「あの、本當に今日は時間がーー」

意を決して背筋を正した桜がキッパリと斷ろうとしているところに、意外な人から助け船がった。

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