《狂的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執著〜》極道の妻として③

「ああ、これはこれは、牧村さんじゃないですか。いやー、いつもお世話になっております」

周囲のスタッフに労いの聲をかけつつそう言って近くの出口から現れたのは、尊の片腕でありT&Kシステムズの副社長を務める阿久津である。

阿久津は尊ほどではないが、長の持ち主で、容貌も整っている。

ふんわりとらかそうなブラウンの髪をさり気なく掻き上げつつ颯爽と歩み寄ってきた。その姿に周囲のの目は惹きつけられている。

一見、らかで甘い雰囲気を醸し出してはいるが、仕事に対して一切の妥協も容赦もないことから、『鬼の阿久津』などという異名がついているらしい。

それは社だけに留まらず、T&Kシステムズがスポンサーとなっている、このスタジオを所持する制作會社にも浸しているようだった。

「……あっ、ああ、阿久津さんでしたか。わざわざ現場までこられるなんて珍しいですねえ」

「ええ。たまには現場にも腳を運んでおかないと、々把握しきれないこともありますからねぇ」

「……そ、そうですか。では僕はスタッフとの打ち合わせがありますので、これで」

スポンサー企業の重役の姿を目にした途端、牧村は桜への態度を改め、挨拶もそこそこに逃げるようにして仕事へと戻っていく。

牧村のあからさまな態度に唖然としていた桜に阿久津から聲がかかった。

桜さん、嫌な思いをさせてしまって、申し訳ない」

「いえ、とんでもありません」

阿久津に頭を下げて謝罪されてしまい、桜は慌てて返答し、自分のふがいなさを詫びようと思ったのだが。

それよりも先に、阿久津から思いがけない言葉を返されてしまう。

「けどこれからはこの皆藤かいとう樹里さんが同行して、マネジメント全般を擔ってくれることになるから、安心してほしい。男だと気づかないところもあるからね」

「……そ、そうですか。それは、ありがとうございます」

寢耳に水発言ではあったが、自分のことを気遣ってくれてのことだったために、桜は頭を下げて謝の気持ちを伝え、傍に控えているショートカットのよく似合うスラリとした綺麗なへと視線を巡らせる。

「はじめまして、皆藤樹里です。どうぞよろしくお願いしますね」

「は、はじめまして。こちらこそ、よろしくお願いいたします」

「それに、実は、樹里さんは鬼頭(渡世名・本名は皆藤)櫂さんの娘さんでね。尊にとっても姉弟のような存在でもあるから、遠慮はいらないしね」

「……」

「あら、しは遠慮してほしいものだわ」

「ははッ、これでも充分遠慮してるんですけどねぇ」

「あら、それは知らなかったわ」

阿久津から紹介されたと挨拶をわした桜が、『樹里』という名前に引っかかりを覚えていたタイミングで追加された、これまた予想外な言葉にがザワザワと騒いでしょうがなかった。

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