《狂的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執著〜》極道の妻として⑤

樹里とのことがずっと気になって仕方なかったが、以前、櫂に話していたように、尊にとって樹里は姉同然なのかもしれない。

もし仮に、尊が樹里のことをとして慕っているのなら、いくら政略結婚だとはいえ桜と夫婦になんてならないだろう。

それに、この政略結婚は、桜とビジネスパートナーになるためのものであり、桜を天澤家から救い出すためのものでもある。

優しい尊のことだから、桜に同してくれたにすぎないのだろう。

それでもこうして結婚までしてくれた。

それだけでも有り難いことなのに、を知らない桜のためだと言って、本の新妻のことをでるように、とても大事に扱ってくれている。

あんまり優しくしてくれるものだから、本當にされているのかと錯覚しそうになるぐらいだ。

ーーもしも葉うのなら、このまま一緒に同じ時間を共有しているうちに、が湧いて、からいつしかが芽生えてくれるといいなぁ。

樹里とのことで不安だったはずが、現金な桜はそんな淡い期待をに抱きつつ、尊のに寄り添いながら瞼を伏せうつらうつらし始めていた。

「おい、桜? 疲れてるのはわかるが、こんな無理な勢で転た寢なんかしてたら余計疲れるだろ」

ふわふわと綿菓子のようにらかな雲の波間にでもたゆたうような、幸福のなかに浸っていた桜は、尊の聲にはっとし飛び起きる。

だが驚きの余り、桜はソファから危うく転げ落ちそうになり、それを寸での所で尊に抱き留めてもらったことで、難を逃れた。

「おっと」

「……あ、ありがとうございますッ」

「いや。隨分と疲れてるみたいだし、もう休んだ方がいい」

床への転倒を免れ、桜が安堵するのも束の間。このまま桜を寢室まで運びそうな勢いの尊の言葉に、そうはさせまいと、慌てた桜は尊のにギュッとしがみつく。そして。

「まだ寢たくありません。このままじゃ……ダメ……ですか?」

ほとんど勢い任せに、そんなことを口走っていた。

だが途中から我に返り、言葉は弱々しく途切れてしまう。それでも全てを言い切った桜は、熱くなった顔を尊のにぎゅっと押し當てることで隠すことしかできずにいる。

行為の途中で恥を手放しているならともかく、こんな風に真正面から尊にお強請りしたのは夫婦になって初めてかもしれない。

桜のやけに素直な言に一瞬目を丸くさせた尊だったが、心底嬉しそうにふっとらかな微笑をらすと、桜のことを大事そうに両手で抱え直した。

気づけば、桜は尊の腳にがるような格好で、正面から向かい合うようにして抱き込まれてしまっている。

そうして耳元に顔を寄せてきた尊に、

「今日はまたえらく素直だな。そんなに俺に甘えたかったのか?」

低い聲音で甘やかに囁かれてしまっては、尊のことを好きでどうしようもない桜には、いつものように素直にコクンと顎を引くことしかできない。

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