いつもの尊なら、桜の反応を嬉々とした表で見遣ってから、行為へとゆっくり移行していくのだが。

「なら、可い奧さんのおみ通り、たっぷりと甘やかせてやるから、俺にどうされたいか言ってみろ」

「……え？」

素直な桜の反応に対して尊から返された言葉は、いつもとは々違っていた。

まさか尊からなにをされたいかなどという問いかけが返ってこようとは夢にも思わなかった桜の聲は裏返ってしまう。

「『え』じゃないだろ。どうされたいか言葉で言ってくれないとわからない」

「……そ、そうですけど」

「ほら、早く言ってみろ」

けれども尊の言葉での攻め立ては緩むどころか、強まる一方で。

尊からの要求に、途端に勢いを失い小さくを竦めた桜がギュッとにしがみついているのをやんわりと引き剝がし、正面から意地の悪い表で見據えてくる。

尊の黒く煌めく瞳には、行為の最中に見せる妖しいが宿っているように見える。

どうやら今夜はし様子が違っているようだ。

おそらく、いつになく素直なお強請りをした桜の言が尊の嗜心を刺激してしまったのだろう。

もしくは、こういうことに慣れているのだろうから、數多のともっと濃厚で刺激的な、大人の駆け引きを愉しんできたのだろう。

そんな尊にしてみれば、初心すぎる桜との行為では足りないのかもしれない。

  桜の脳裏に様々な仮説が浮上しせめぎあう。その結果。

ーーそうだとしても、妻には変わりなんだから、同じように扱われるなんて嫌だ。

  導き出された結論によって、桜は突きかされてしまう。

「他のにもそうだったんですか？　だったら言いません。同じなんて嫌です」

言ってしまった直後、はっと我に返ってしまった桜は大いに焦った。

ーーこれじゃまるで嫉妬だ。好きだと言ってるも同然だ。

これまで、せっかく尊への気持ちをひた隠しにしてきたのに、全てが水の泡になってしまう。

桜が焦りに焦っていると、虛を突かれたようにポカンとしてしまっていた尊がニヤリと意地の悪い笑みを湛えたで弧を描いた様が視界に割り込んできた。

たちまち妙な張に見舞われた桜の鼓が早鐘を打ち始める。

もちろん、恐怖心からではない。尊になにを言われなにをされるのだろうかという、期待にが高鳴っているのだ。

「可いお強請りの次は嫉妬か。俺の奧さんは隨分嫉妬深いんだなぁ」

「ち、違いますッ」

「じゃあなんだ？」

「そ、それは、だって。一応奧さんなんですから、他のと一緒は嫌だってだけです」

「ふうん、わかった。だったらこれからたっぷりとに教え込んでやる。こんな風に優しくするのも、大事にしてるのも、妻である桜にだけだってことをな」

「ーーえ？」

「當然だろう、夫婦なんだからな。妙なことを考える余裕なんて俺が今すぐなくしてやる」

「あっ、んぅ……んんッ」

混気味の桜の思考を強引に奪い去るようにして、尊に噛みつくようなキスをお見舞いされてしまった桜は、宣言通り、數秒足らずで思考もろともかされてしまう。

そうしてあれよあれよという間に、帰宅後著から著替えていたニットワンピーの裾を大膽に元までたくし上げられていた。