《狂的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執著〜》極道の妻として⑰

それでも尊は桜の突飛な行に驚きつつも、しっかりと抱き留めてくれる。

「おっと。だから急に飛びつくなって」

その焦った聲が抱きついた尊のからじんわり伝わってくる。

だって駆け足狀態だ。

ーーちょっと飛びついただけで焦ってこんなに揺してるクセに、どうしてそんなに頑ななの?

腹立たしく思う反面。それだけ桜のことを大事にしてくれようとしてくれているのだと思うと、嬉しくもある。

であんなにムキになっていた気持ちが噓だったかのようにスーッと穏やかに凪いでいく。

素直な気持ちで尊に向き直った桜は、今の気持ちを真っ直ぐに紡ぎ出す。

「尊さん」

「ん?」

「私のことを助けてくださり本當にありがとうございます。私、極道の妻に相応しくなれるよう頑張りますから」

「いや、お前はそんなこと気にしなくていい。お前はそのままでいてくれればそれでいい」

桜の想いが尊に通じたのか、これまではぐらかしていた尊の口調が真剣なものにがらりと変化した。

それは以前、桜と一線を畫そうとしていたときのものと似ている気がして。

「……それって、いつか私の元からいなくなっちゃうからですか?」

なにかを考えるよりも先に言葉が口をついて出てしまっていた。

「……あっ、いや」

尊は、まさか桜にそんなことを言われるとは思いもしなかったのだろう。

虛を突かれたように瞠目し、柄にもなく言葉を詰まらせる。

必死だった桜は、なりふり構わず、畳みかけるようにして尊に矢継ぎ早に言い放つ。

「違うって言うなら、今すぐ約束してください。なにがあっても絶対傍にいてくれるって。そしたら好きだって言ってくれなくても許してあげますから。仕事だって今以上に勵みますから。だから今すぐ約束してくださいッ」

すると尊は観念したというように渋々了承してくれた。

「わかった。約束する」

だがそう簡単に安心などできるはずもなく、尊をキッと強い眼差しで捉えて念を押す。

「本當ですか?」

「ああ。お前に泣かれるのは免だからな」

正面から見據える桜のことを尊も真っ直ぐに見つめ返ししっかりと応えてくれた。

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