《狂的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執著〜》それぞれの覚悟③

桜がひとり喜びに打ち震えていると、傍で控えてくれていた樹里から醫師に向けての質問がなされたことで、桜は現実に引き戻される。

「先生。やはり安定期にるまでは、仕事も控えた方がいいんでしょうか?」

「仕事にもよるでしょうが。私の経験上、激務と言われている醫師業務も、周囲のサポートもあり、なんとかこなせていましたし。そんなに神経質になる必要はないと思いますよ。気になるようでしたら、どうぞ遠慮なく、産婦人科醫にご相談されてくださいね」

「そうですか。ありがとうございます」

「いいえ。準備の方が整い次第、産婦人科醫の方に引き継ぎますので、今しばらくお待ちください。それでは私はこれで」

桜が歓喜したのも束の間。仕事のことを思い出した桜の心に、たちまち暗雲が立ちこめる。

尊にも、子供をもうけるのは一年は待ってしいと言われていたのに。

ーーどうしよう。尊さんに迷がかかってしまう。

そんな桜の懸念を察しめてくれた樹里の言葉で桜の心は軽くなるのだが……。

桜ちゃん。心配しなくても大丈夫よ。仕事のことなら私にドンと任せなさい。ね?」

「……でも」

「もう、心配しないの。こういうときのために私がいるんだから、大丈夫よ」

「はい。ありがとうございます」

心底ホッとし謝する桜に、「ううん、いいのよ」と、いつものように優しい聲をかけてくれた樹里の、尊に対して思わず零してしまったのだろう言葉のせいで、桜の心に再び暗い影が差す。

「それにしても尊ったら、私には妹同然の桜ちゃんのこと助けるための政略結婚だ……なんて言ってたクセに。ホントに男ってばどうしようもないわねぇ」

「……え?」

樹里が尊と桜との『政略結婚』のことを知っていたことで、新たな衝撃をけることとなった。

ーーどうして樹里さんがそんなことを知ってるの? やっぱり尊さんと樹里さんと、なんでも言い合えるような、そういう仲ってこと?

「でも、わかってあげてね? 尊にとって、今が一番大事なときだから」

する桜の元に、樹里からのフォローと思しき言葉がかけられるも、どんよりとした翳りは晴れることはなかった。

それどころか、尊に肝心なことを一切話してもらえていないことで、桜の不安は一層増していく。

「あの、それって……どういう」

「あら、先生かしら」

樹里に詳しい話を聞こうにも、桜の放った聲は、間の悪いことにり口の扉をノックする音に掻き消され、総合科醫から引き継ぎされた産婦人科醫の登場により、それは葉わなかった。

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