《狂的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執著〜》の夫婦として③

あの後。多大な迷をかけてしまった男醫師には、樹里と櫂とが周到に用意してあった菓子折を渡し、皆して頭を下げ、なんとか穏便に済ませることができた。

やけに回しがいいと思っていたら、尊の勘違い騒は、驚くことに匡と人同士であるらしい樹里が企てたことだったらしい。

なんでも樹里は、桜の妊娠発覚と病気疑の最中、匡から尊が極道の世界から足を洗うために裏に奔走していると言う事実を知り得たのだという。

だが慎重なあまりなかなか行に移そうとしない尊に焦れた樹里は、余計なことに首を突っ込んで拗らせるなと、匡が止めるのも聞かずに、ヤスを利用して尊のことを焚きつけ、あんな事態になったようだ。

そのおで、これまで好きだと言ってくれなかった理由も、桜に相応しい男になるためにも極道の世界から足を洗ってけじめをつけるまでは伝えられないという考えがあったからだと知ることができた。

尊の桜に対する気持ちがどれほどのものであるかもわかったし。

ヤスからも、実は尊が桜の高校生だった時分から、々気にかけてくれていて、様子を見るよう命じられていたこと。その際に、撮った桜の寫真を渡していたが、それを札れに忍ばせ、離さず大事にしてくれていたことまで、こっそりと教えてもらった。

ずっとひとりじゃなかったんだ。

    遠くから見守ってくれていたんだ。

    

    い頃の記憶はとても朧気で曖昧だけれど、尊との出逢いはきっと運命だったに違いない。

そう思うと、に熱いものが込み上げてくる。

桜は話に耳を傾けつつぐっと涙を堪えて、まだ変化の見られない自分のお腹にそうっと手を重ね合わせ、言い盡くせないほどの喜びを噛みしめていた。

事態が落ち著いた後には、予定していた産婦人科での診察に夫である尊が付き添ってくれて、一緒にエコーの畫像を見ることができた。

それから數時間後。重の桜の調を神経質なほどに優しく気遣ってくれる尊に付き添われ、我が家であるマンションに帰り著いた桜は、リビングダイニングのソファに尊と隣り合って寄り添っているところだ。

尊はさっきから桜のお腹に大きな掌をそうっと重ね合わせて恐る恐るでては、桜の調のことを気遣ってくれている。

その姿は、まさしく優しい夫そのもので、晝間男醫師の襟首を摑みあげ凄んでいたとは思えないほどの変わりようだ。

普段は無表を決め込んでいるはずの端正な顔なんて、すっかり緩んでデレてしまっている。

ーー生まれる前からこんなだと、この子が生まれたら、一どうなってしまうのだろう?

桜が言い盡くせないほどの幸福のなかで、人知れずそんな心配をしていると、尊からもう何度目になるかと思うほど、幾度もかけられた臺詞が桜の意識に流れ込んできた。

「本當にここに俺の子供がいるんだな」

尊に視線を向ければ、心底幸せそうに目を下げらかな笑顔を綻ばせ、今にもけてしまいそうだ。

「はい、ちゃんといますよ。尊さんの赤ちゃん」

つられた桜も、顔がだらしなく緩んでしまいそうだ。いや、間違いなくそうなっているに違いない。

尊との再會を果たしたあの見合いの日から、ちょうど四ヶ月。

あの頃は、こんなに幸せな日が訪れるなんて夢にも思わなかった。

それが今こうして、夫婦仲良く寄り添い合って、自分達の子供のことをあれやこれや話しているなんて、本當に人生なにがあるかわからないものだ。

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