《狂的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執著〜》の夫婦として⑤

***

桜の妊娠が発覚してから月日は流れ、季節も夏から秋、秋から冬へと移ろいゆく季節、十一月を迎えていた。

現在、妊娠五ヶ月。経過は母子ともに順調だ。

仕事の方は、妊娠を機に相手は伏せてはいるが結婚していたことも公表したところ、男層だけでなく、若い主婦層にも注目され始めたという偶然の産にも恵まれた。

近頃はお腹も目立ってきてきにくくなったことから、イベントごとなどへの參加は控えざるを得なくなって、このまま休業するしかないのかと思われた。

そのことで、周囲に迷をかけてしまうことに桜は心を痛めていたし、なによりこの仕事に生き甲斐を見いだしていた桜にとって、このまま仕事から遠ざかってしまうのが気がかりだったのだが……。

尊を始め樹里やプロジェクトに攜わっているスタッフのサポートにより、リモートを活用しているため、にも負擔はなく無理のない範囲で、自宅にいながら監修の仕事を続けることができている。

そんななか、桜の周辺でちょっとした変化があった。

夏には、以前から桜に粘著質な視線を向けていたプロデューサーの牧村が部下へのセクハラが明るみになり解雇されたこと。

それから秋口には、継母の薫の元代議士だった父親が現役だった頃の贈収賄や暴力団との癒著など、ありとあらゆる悪事が呈し、世間を騒がせた。

ちょうど同じ時期、大手弁護士事務所から容証明郵便で書類が家元の元に屆けられ、愼の子アナとの件が、実は薫の獨斷で処理されていたことが記されていたらしい。

中絶にも薫が関わっていたらしく、ご丁寧にも証拠の寫真まで同封されていたそうだ。

つまりその件で、子アナの父親が薫を訴えると言ってきたのである。

実際には、愼は子アナと真剣に際し結婚も視野にれていたというから驚きだ。

そのことで愼を筆頭に弦と弦一郎も激怒し、すぐさま離婚を言い渡したことで、薫と天澤家の縁は完全に斷たれたらしい。

電話で弦一郎からその話を聞かされたとき、初夜でのことが桜の脳裏を過ぎった。

それは、い頃から桜のことを疎んじてきた薫に対して、自分のことのように激怒し、怒りに打ち震えていた尊の姿だ。

桜の憶測でしかないが、極道の世界から自ら退こうとしていた尊がすぐに行に移さなかった裏には、これらの件があったからではないだろうか。

尊に訊いたところではぐらかされるだけだろう。

事実だからと言って、尊のことを責めるつもりなど頭ない。

悪事を働いた人はいずれはその報いをけるべきだと思う。

極道者だった尊にも、人には言えない後ろ暗いことだってあるに違いない。

もしかすると、尊の刺青は、そういうものを背負っていくという覚悟の表れなのかもしれない。おそらく堅気となったこれからも、背負っていかなければならないのだろう。

ーーだったらしでも背負わせてしい。

弦一郎との電話の後、桜はそんなことをひっそりと決意していたのだった。

    人が読んでいる<狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執著愛〜>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください