《【コミカライズ】寵紳士 ~今夜、獻的なエリート上司に迫られる~》「俺の家に來ませんか」5

晴久は雪乃に希を確認し、電気は消し、サイドランプのみを點けた。

「暗くないですか」

「はい。ありがとうございます」

オレンジのにぼんやりと包まれながら、ふたりで探り探り、ベッドへとる。

りのよい綿布にくるまり、布団の中にはふたり分の熱がこもった。

想像していたよりもお互いの距離が近い。

かといって背を向けるのは失禮だと思った雪乃は、ひたすらに天井に向かって目を閉じる。晴久も、ランプのに浮かぶ彼を見てはいけないと必死に目を逸らしていた。

こんなことではいつまで経っても眠れる気がしない。

ついに晴久は思い切って、彼を向けてみる。

「細川さん。ひとつ聞きたいんですが」

「はいっ」

晴久の聲に応えて顔を真橫にかたむけると、ごとこちらを向いている彼を目の當たりにし、雪乃はまたみるみる赤くなった。

「男が苦手なのに、俺のことは大丈夫だと言っていたのはどうしてですか」

晴久は核心を突いた。彼は男が苦手だと訴えながら、なぜほとんど初対面である自分には警戒心がないのか。

雪乃もまた、核心を突かれてしまったと揺し、直する。

しかし正直な彼は誤魔化す選択はできず、頬に手を當てながらベッドの中に潛り、答えをつぶやいた。

「……いつも電車で高杉さんのことを見ていたんです。素敵だなって思って」

(えっ)

いきなりの告白にグッとを打たれた晴久だが、同時に頭にはたくさんのハテナマークが浮かんできた。素顔を明かしていないのに、好意を持たれる覚えがない。

本気で不思議に思い、彼にさらに迫って尋ねた。

「それはどのへんが……?  俺は電車では顔を隠していますし、基本的に誰とも関わらず無想にしていたと思うのですが」

「そんなことないです。いつも席を譲っているのを見て、優しい方なんだなって」 

これには晴久も、年のように頬を赤らめた。

「……見られていたとは……」

「ふふふ、気付いちゃいました。だから、素敵だなって思っていたんです」

これはとしての〝素敵〟とは違うかもしれない、と思いとどまった晴久だが、雪乃に褒められ素直にうれしくなった。

どこへ行っても顔ばかり褒められてきた今までの環境と比較して、素顔を隠しても自分を見てくれていた彼が特別に思えてくる。

「……細川さん……」

実際に見えている部分だけではなく、雪乃の全てが魅力的にじられた。そんなと一緒のベッドにっているというこの狀況は、チャンス以外の何でもない。

(布団の中で手を握ってしまおうか)

晴久がそんなにかられていたとき、雪乃は「だから」と言葉を続けた。

「高杉さんが聲をかけてくれたのも、家にってくれたのも、全部優しさだって知っていました。他の男みたいに下心がないって分かっていたので、安心できたんです」

晴久は布の中でばしかけていた手をサッと戻した。無垢な笑顔を向けてくる雪乃に「なるほど」と小さく相づちを打ち、の向きも正す。

(危なかった)

早計だったを抑え、冷靜になった。ここで下心を出したら、あまりにも臺無しだ。

それでも彼を魅力的にじている事実は消せず、再度しだけ橫目で盜み見る。

「……細川さん?」

かすかな寢息が聞こえている。

すでに目を閉じて眠っていた雪乃に晴久は拍子抜けしたが、その澄んだ寢顔に心は和らいだ。

々あったのだから寢かせてあげよう。そう思って彼の首まで掛け布団を引き上げ、しさをこめて「おやすみ」とつぶやいた。

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