ショッピングモールから數分歩き、大通りから一本裏道へとったところから、表の黃いイルミネーションはぱったりと途絶えて閑靜な住宅街へと続いていた。

ぽつぽつとした電燈が並んではいるが、小気味の悪い枯れた並木道に、雪乃はキュッと腕を持つ手に力を込める。

「怖い？」

晴久は空いている手で彼の頭をで、雪乃は彼の問いかけに首を橫に振った。

晴久がいるからにくるような恐怖はじないものの、こんな夜道になにがあるのかと彼はハラハラし始める。

晴久を信用している。だから変な場所には連れて行かれるわけはない。

それは分かっているものの、と言った晴久に目的地を尋ねたくて仕方なくなってきた。

「……暗いですね」

ついそうらし、彼に訴える。

「これ以上は暗くならないから大丈夫だよ」

「どこに行くんですか？」

「もう著いてる」

著いてるって？と首を傾げながら、雪乃は辺りを見回した。

數メートル先にコンビニや居酒屋ののれんが見えるだけで、特にデートスポットらしきものはなにもない。

本當にただの住宅地で、時折住人が歩いているだけ。

もう一度晴久の顔を見上げるが、彼は歩道の途中で立ち止まり、前後に目を向けているだけだった。なにかを待っている。

（なんだろう。……晴久さん、なにを待っているの？）

雪乃が夢中で摑んでいる晴久の腕。彼はその腕をゆっくりと持ち上げ、手首を目の前に持っていき、腕時計を見た。

「時間だ、雪乃」

「え？」

晴久は顔を上げた。雪乃もそれにならい、周囲へと視線を向ける。

するとその瞬間、鬱蒼としていた並木に次々と青いが燈り出した。

「わっ……」

海の波のように、青い粒の煌めきが手前から奧の並木へと一瞬で広がっていく。

道の両端に並ぶすべての枯れ木が青いに変わると、辺りは幻想的な空間に包まれた。

「ここは午後六時になると、こうなるんだ」

青い空間の中でぼんやりと照らされている晴久が、落ち著いた聲でそう言った。

「……綺麗……」

雪乃の瞳にも青いが揺れている。

ドキドキした今日一日のトキメキがじんわりと、穏やかに心に溶けていくようだった。

暗闇を避けていた雪乃は、いつもなら見る間もなく足早に通りすぎていく景。

イルミネーションを見てこんなにがいっぱいになることは、今までなかった。

「夜道も悪くないだろう？」

「晴久さん……」

言葉を失うほど激した雪乃は、ピッタリと晴久にを寄せた。

彼の腕に頬をくっつけ、目の前のロマンチックな景をうっとりと眺める。

「雪乃。これからは俺がそばにいるから。行きたい場所にどこだって連れて行くよ」

力強い腕に頬をり寄せ、彼の言葉を噛み締めた。

雪乃は今日のデートで実していた。晴久が隣にいればどこへでも行ける。彼のおかげで失った十年を取り戻し、やっと自由を手にれた気がした。

雪乃はしさが堪えきれず、自分から晴久のの中に抱きついた。

（晴久さんっ……大好き）

びくともしないが、ありたっけの力でギュウギュウと彼を締め付ける。

「……雪乃。かわいい」

抱きしめ返し頭をでる晴久に、雪乃はさらに甘えた視線を向けた。

「……晴久さん……」

らかそうなに晴久のがゴクリと鳴る。

「ここじゃこれ以上できないよ。外だからね」

「そうですよね……」

珍しく、たしなめずに殘念そうに目を伏せる彼に、晴久はたまらなくなる。

「帰ったら覚悟して」

彼の宣告にゾクッと甘い痺れが走った後、雪乃は顔を熱くしてうなずいた。

家に著く頃、ふたりは限界だった。

「雪乃っ……」

玄関にるまでは寄り添うだけに留めていたを、扉が閉まった途端に絡ませ、電気も點けないまま晴久は雪乃をリビングのソファに押し付けた。

「晴久さんっ……シャワーを浴びてから……」

「……ごめん、待てないっ」

お互いにここまで燃えるようなを経験したことはなく、かきすキスをして気持ちをぶつけ合う。

我慢の限界だった晴久は肩が上下するほどの息をし、彼のコートを剝ぎ取った。

「雪乃、ごめん……今夜は優しくできそうにない」

彼の腳の間に腰を割り込ませた晴久は、そこで一度止め、許可を求める視線を彼へ向ける。

それをけた雪乃は彼の首に腕をばして抱きつくと、重をかけて引き寄せた。

「大丈夫です……私、晴久さんになら、何をされても」

熱い瞳に飲み込まれた晴久は、頭を彼のへと沈め、狼のように貪った。