《噓つきは人のはじまり。》人と偽人1

ゴールデン・ウィーク初日。玲は予定通り羽田空港の搭乗口にいた。これから関西國際空港に飛び、同じ時刻に到著する人のロバートと落ち合う。

【楽しんで】

この日を待ち侘びていた筈なのに、どこか後ろめたいような気まずいような罪悪があるのは、ついさっき屆いた九條からのメッセージを読んだからだろうか。九條とはあの日からよく食事をしている。

人になったつもりはないけれど、九條は特にそれを押し付けてくることなく、ただ時間を共にすることをんだ。食事をして、帰っていく。

當初自宅にいれることも躊躇われたけど、彼はただ玲が作る料理を褒め、味しそうに食べ、満足そうに帰っていく。時々仕事の話をしたり、どうでもいいことを話したり、男友達とまではいかなくとも、玲にとってし気の許せる頼れる人というポジションになっていた。

それは九條が玲の過去を知っている上でこうしてそばにいてくれるからだろう。あの日、休日に突然やってきた日以降、好きだの付き合おうだのという玲をわすような言葉は出てこない。それは玲は警戒しているせいかもしれないが、九條とはただフラットな関係が心地よかった。

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「レイ」

関西國際空港の到著ロビーで二人は落ち合った。定刻通り到著したらしい人が玲を見つけるなりに手を挙げる。長百九十センチ近くあるにさらに手を挙げたせいで彼はとても大きくみえた。

薄いグレーの瞳を細めて目に皺を作ると嬉しそうに笑う人に玲はどこか安心しながらも張もしていた。

四ヶ月ぶりに會う人は特段何も変わらないように見えた。

お互い「変わらないね」と話して「たった四ヶ月じゃ変わらないよ」と笑いあった。日本が初めてだというロバートはまるで落ち著きのない子どものようにあたりを見渡して挙不審にきょときょとしている。格が大きくペラペラと英語で話すせいでとても目立った。

「ハンバーガー食べよう!コーヒーも!」

空港で世界中にあるハンバーガーショップやコーヒーチェーン店を見つけて目を輝かせるロバートに玲は「あ、こういう人だったな」と思い出した。興味の赴くままにフラフラして、あれが食べたいこれはなんだと訊ねてくる。それを玲は通訳しながら人の希通りにハンバーガーとポテトを買い、コーヒーをテイクアウトして京都行きのバスに乗り込んだ。

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今回の來日の目的はただの観だなさそうでなく日本食を堪能するという三泊四日じゃ全然足りないだろうという無謀な計畫があった。

ロバートに神社仏閣や日本文化の興味はない。日本食に興味はあってもそれは上品な和食や割烹料理ではなく、牛丼、たこ焼き、回転壽司のよ被らないように満遍なくいろんなものを楽しめるように計畫していた。

なぜならどれだけ頑張っても一日五食。滯在中は二十食前後が限界だ。

初日の夕食はまずは焼き鳥居酒屋に行く予定にしていた。二軒目も行けるようにそれにふさわしいお店もチェック済みだ。だが、ホテルへチェックインする前に立ち寄ったコンビニでロバートはスイーツコーナーや菓子類を全て買う勢いでカゴにれていき、玲は慌てて止めた。

「今買わないと!」

「帰りでいいじゃない!」

「今食べたいんだ」

「さっき食べたばかりでしょう!」

それでもロバートは譲らない。ただ全て買うのはやめてしずつ買うことを提案した。毎日の楽しみにすればいいじゃない、と言えばそれもそうだとあっさり引き下がる。

「ごめんごめん。もう嬉しくてさ」

マヨネーズがある!ケチャップも!

これは何?あれは?

ロバートの興味は盡きない。「日本のスーパーも行きたい」と言うのでそれももちろん予定に組んでいる。今からこれじゃ先が思いやられるな、と思いながらも玲は子どものようにはしゃぐ人を諌めることはしなかった。

「すごい、景だね」

旅館にチェックインし荷を置くと修學旅行生や観客で賑わう京都の街を案した。バスに乗り移する。まずは清水寺に向かった。

「ここから落ちたら死ぬかな」

「運が良かったら生きるかもね」

「本當?!どれだけ幸運なだろうね」

ロバートは下を眺めながらしみじみとつぶやいた。木や土がクッションとなっているので運が良ければ助かるかもしれない、と昔誰かが言ってた気がする。それを人に伝えれば大袈裟に驚きながらも「可能としてはゼロじゃないね」と納得していた。

二年坂・三年坂で近江牛饅頭やソフトクリームなど食べ歩いた。八つ橋や漬の試食を嬉々としてけ取る人は本當に楽しそうだ。玲は苦笑しながらも早速購しようとする人に「まだ來たところだから」と宥めてその場を離れた。今買っても旅館の冷蔵庫に保管しないといけないし八つ橋に至っては賞味期限もあるだろう。全て一人で食べ切るのは難しい(ロバートなら食べるかもしれないが)のであちらに戻ってゆっくり食べればいい。

そうこうしているうちに夕食の時間を迎えた。ロバートは「腹ペコだ」と言いながらもつい先ほどお団子を食べたばかり。だが基本彼は大食らいなのでそこは気にしていなかった。

玲は予定通り、予約していた焼き鳥居酒屋に人を連れて行った。

日本のビールに驚き喜び、焼き鳥だけでなくサラダやつまみも堪能する。

玲は見ているだけでもお腹いっぱいになったが、ロバートは二軒目に二軒目にラーメン屋に行きたいと言い出し、玲は若干呆れながらついて行った。

「すごいね、日本は。全部味しい」

ラーメンに餃子まで堪能したロバートの腹は見事にぽっこり膨れていた。玲は食べすぎて気持ち悪くならないか心配したが本人はケロリとしている上に、ホテルに戻ったらスイーツを食べるという。

「この旅でどれだけ日本食を堪能できるかが勝負だから」とよく分からない意気込みに呆れた目を向けるとカラカラと彼は楽しそうに笑うだけだ。

山崎に紹介してもらった宿は建こじんまりとしているものの、部屋は広くどの部屋にも室天風呂がついていた。外國人観客が多いせいか和室ベッドではあったが、浴を著たロバートはしだけいつもとは違ったように見える。

ただ、口の周りをチョコやバニラをつけていればその雰囲気も半減だが。

「レイ」

今日は疲れた、と部屋のソファーでぐてっとしていると呼びかけられて玲は振り向いた。

「お風呂る?」

「あ、先はいっていいよ」

「一緒にろうよ」

玲はすっかり忘れていたけど人同士ならそういうコトだ。だが玲は申し訳なさそうに謝る。

「部屋のシャワー浴びるわ」

「…そう」

「ごめんなさい。計算が狂っちゃって」

「仕方ないね」

には月に一度來るものがある。偶然なのか、それとも玲の気分を読んだのか、今回は予定より早くにそれが訪れた。

良かった、とどこかホッとすると同時に申し訳ない気分にもなる。

なんだかロバートに誤魔化してばかりだな、と思いながらもどうしてもセックスに対して積極的になれない。

濡れないわけじゃない。痛いわけでもない。ただ苦痛だ。いつも「早く終わらないかな」と思うしじてるフリをするのが申し訳ない。

それに加えてロバートが以前友人たちから揶揄われていたのは知っている。こんな型で満足できるのか、と笑われていた。

玲はその場にいたわけではなかったが、聞こえる場所には居た。彼らはまだ玲が言葉を理解できているは思っていなかったのかもしれないし、近くにいたことも気づいていなかったかもしれない。

だけどロバートは彼らの言葉を否定しなかった。肯定もしなかったけどただそれが玲にとって悲しかった。彼らは友人同士。お酒もっていた。酔っ払いに怒っても仕方がないこと。それはわかってはいる。だけど玲はその出來事以降、ロバートとを合わせることが怖くなってしまったとはいえ、拒み続けるわけにもいかないし、自分なりにどうすれば行為自を好きになれるかも考えてみた。

そもそもを合わせるのは嫌いじゃない。溫はとても心地いい。だけど、どうしても挿構えてしまうし、気持ちよさがわからなかった。

ただお腹の中に異ってくる覚だった。つまり、違和しかない。

あちらではセクシャルな話題もオープンで彼の友人たちは普通にその話題を振ってくる。

だが、日本人はシャイでセクシャルな話題には消極的なイメージを彼らも持っていたようだ。

その話題になれば靜かにその場を離れたり、しゃべらなかったり、とすれば彼の友人たちも自然と玲の前でその手の話題を避けるようになった。

だがそのせいで、玲はとしての自信をなくし、セックスに対する苦手意識が強くなるばかりだった。

「ロブ、ごめんなさい」

シャワーを浴びて出てくるとロバートはベッドに寢転がって攜帯を弄っていた。玲が謝ると「どうして謝るの」と苦笑される。

「レイが悪いんじゃないよ。ホルモンバランスなんだから」

「そうだけど」

「まあ本音を言うとちょっとガッカリしたけど」

ちゅう、とに熱がれる。ロバートは「よしよし」と玲の頭をでた。

「僕はレイの顔を見てこうやってれ合えるだけで嬉しいから」

「…うん」

「レイは違う?」

玲は小さく首を橫に振る。

「じゃあ寢よう。明日もたくさん食べないと」

ロバートは最後に玲を勵ますように笑わせてベッドに潛り込んだ。玲も隣にり込ませる。いつものように「おやすみ」と笑いかけられ玲も「おやすみ」と返した。

それからほどなくして寢息が聞こえた。

隣を見ればロバートは既に小さないびきをかいていた。パースから長時間フライトで疲れたうえ、子供のようにはしゃいだせいだろう。

玲はそう考えたものの、にぽっかりとが開いたようななんとも言えない寂しさに襲われる。

隣に寢ている人がとても遠くじて玲は無理矢理目をぎゅっと閉じてやり過ごした。

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