《気になるあの子はヤンキー(♂)だが、裝するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!》
「古賀……大事ないか?」
「なにが?」
そりゃそうだ、初見が俺の荒んだ環境、家庭を見れば誰もが今までドン引きしていた。
『いやないわ~ お前ん家』
『新宮ん家って変態の家だろ? 嫌だよ』
『きみの家って腐ってるんでしょ? デヘヘヘ』
最後のは母さんの友達だが……。
「だってお前……あんな母親と妹だぞ?」
「え? ふつーに優しいかーちゃんとカワイイ妹じゃね?」
「マジか……」
「うん☆ それより早くタクトの部屋見せてよ☆」
「ふむ、そうだな」
俺は店の奧へとミハイルを通す。
ちょうど2階へとあがると、『かね折れ』階段がある。
階段の前には靴箱とマットがある。
そうこの階段が俺たち新宮家の本玄関なのだ。
靴をぐと、ミハイルにスリッパを用意する。
「よいしょっと」
ミハイルはバスケットシューズを履いていた。
かなりサイズが小さいため、もしかしたらレディースを買ったのかもしれない。
しかし、腳よのう。
ショーパンのせいか、膝をあげると同時にチラチラと隙間からグレーのカラーパンツが確認できた。
これは今晩のおかず不可避。
「タクト、顔あかいぞ? 熱でもあんのか?」
「む、問題ない……二階が俺の自室だ」
階段を昇るとすぐにリビングがあり、テーブルには母さんの料理の材料が並べられていた。
それから個室が3室。枝分かれしている。
ただお気づきの方もおられるだろうが、上下左右BLで埋め盡くされているのだがな!
「ん? タクトん家って店の上なの?」
「そうだ、なにか問題でも?」
「ううん……うちも店やってからさ☆ ちょっとシンパシーじちゃった☆」
チンパンジーの間違いじゃないですか?
「ほう……やはりあれか? バイクショップとかか?」
ヤンキーなだけに!
「ううん、ちがうゾ☆ 今度、しょーたいしてやるよ☆」
なにその上から目線、かっぺむかつく!
「これが俺の部屋だ」
指差した扉にはもちろん痛男がプライバシーを侵害しているが。
「ふーん、フツーの部屋だね」
え!? これのどこが?
「ま、まありたまえ」
扉を開くと二段ベッドと、小學生時代から使い続けた使い古した學習デスク……が2臺。
そうこの部屋は俺の部屋でもあるのだが、妹のかなでと共有スペースなのである。
なので、『一人の時間』なんていつもない。夜でさえも……。
お年頃の男が常に共有し続ける……という異常な兄妹である。
まあもう慣れたことなのだがな。
他の二部屋は母さんと父さんの部屋だ。
「な、なんだ、この部屋!!!」
驚愕のミハイル。思わず後ずさり。
「フッ、これか? 『世界のタケちゃん』だ」
そう部屋の真ん中を境界線にして左が俺のゾーン、右が妹のかなでのゾーン。
ちな、左は暴力描寫に定評のある映畫監督でありお笑い蕓人の『世界のタケちゃん』のポスターでびっしり。
「そ、それぐらいわかるよ……そうじゃなくて右のほう!」
ミハイルが指差したので、解説せねばならなくなった。
彼がドン引きするのも致し方あるまい。
男らしいタケちゃんとは対照的に、的な顔した男の娘がBL以上に絡んでいるというよりは、いじめられるようなされ方を攻めにけているのだ。
『らめぇ~ お兄ちゃんのおてんてんが……』
『に、妊娠しちゃう~ しちゃう~』
『すっごく大きいね、お兄ちゃんの♪』
とセリフつきのタペストリー。
俺も夜中にこれを見る度に震いする。
彼ら……じゃなかった彼ら、男の娘たちは我が妹の推しである。
齢14にしてここまで異常な育ち方をしたJCは我が妹ぐらいだろう。
「これってだれの趣味なの?」
「すまん……妹のかなでの仕業だ」
マジでごめん、ミハイルちゃん。
「なあ、かなでちゃんって……変わったの子だな……」
「それだけか?」
心広すぎませんか、ミハイルさん。
「うん……オレにはよくわかんないけど、タクトの妹だからな☆」
「すまない! 古賀!」
いろんな意味で。
「狹いがくつろいでくれ」
「うん☆ でも、タクトって『タケシ』が好きなんだな☆」
「ふむ、まあな。中學生の時にタケちゃんの映畫を見て以來、衝撃をけてな……今では『タケノブルー』も買いそろえているほどだ」
『タケノブルー』とは、タケちゃんのお弟子さんが作られているファッションブランドのことだ。
「なにその、タケノブルーって?」
「ほれ、見てみろ」
クローゼットを開ければ、ズラリと『キマネチ』のロゴ。
「うわっ、すっごいな! カッコイイ☆」
「フッ、だろ?」
我がコレクションをけれられる喜びよ。
「おにーさま!」
面倒くさいのがログインしました。
「なんだ、かなで?」
「ズルいですわ! おにーさまだけ、ミハイルさんと『おっとこのこ會』なんて!」
なにそれ?
「だったら、かなでちゃんもいっしょにあそぼ☆ いいだろタクト?」
「さすがですわ! ミハイルさん♪」
勉強はどうしたんだ!
「まあいいか……」
変態妹と年が仲良くなったぞ?
俺は知らん!
後は野となれご令嬢!〜悪役令嬢である妹が婚約破棄されたとばっちりを受けて我が家が沒落したので、わたしは森でサバイバルすることにしました。〜
「すまん、我が家は沒落することになった」 父の衝撃的ひと言から、突然始まるサバイバル。 伯爵家の長女ヴェロニカの人生は順風満帆そのもの。大好きな婚約者もいて將來の幸せも約束された完璧なご令嬢だ。ただ一つの欠點、おかしな妹がいることを除けば……。 妹は小さい頃から自分を前世でプレイしていた乙女ゲームの悪役令嬢であるとの妄想に囚われていた。まるで本気にしていなかった家族であるが、ある日妹の婚約破棄をきっかけに沒落の道を進み始める。 そのとばっちりでヴェロニカも兵士たちに追われることになり、屋敷を出て安全な場所まで逃げようとしたところで、山中で追っ手の兵士に襲われてしまった。あわや慘殺、となるところを偶然通りかかった脫走兵を名乗る男、ロスに助けられる。 追っ手から逃げる中、互いに惹かれあっていく二人だが、ロスにはヴェロニカを愛してはいけない秘密があった。 道中は敵だらけ、生き延びる道はたった一つ。 森の中でサバイバル! 食料は現地調達……! 襲いくる大自然と敵の兵士たちから逃れながらも生き延び続ける! 信じられるのは、銃と己の強い心だけ! ロスから生き抜く術を全て學びとったヴェロニカは最強のサバイバル令嬢となっていく。やがて陰謀に気がついたヴェロニカは、ゲームのシナリオをぶっ壊し運命に逆らい、計略を暴き、失われたもの全てを取り戻すことを決意した。 片手には獲物を、片手には銃を持ち、撃って撃って擊ちまくる白煙漂う物語。 ※この物語を書く前に短編を書きました。相互に若干のネタバレを含みます。またいただいた感想にもネタバレがあるので読まれる際はご注意ください。 ※続編を別作品として投稿しておりましたが、本作品に合流させました。內容としては同じものになります。
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