《気になるあの子はヤンキー(♂)だが、裝するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!》63 男とは難しい

「新宮センパイ、助けて!」

赤坂 ひなたは俺の背中にしがみついている。

心底、怖がっている様子だ。

「赤坂? どういう狀況だ?」

「あ、あの……福間先輩が…」

言葉に詰まる。

まあラブホの前だしなぁ……。

皆まで言えずに頬を赤くしている。

ヤル気だったんじゃろか?

「おい! お前!」

顔面を真っ赤にさせて大柄の男が迫る。

彼の名は確か、福間ふくま 相馬そうま。

赤坂 ひなたと同じく制服組の三ツ橋高校の生徒だ。

「お前、この前の一ツ橋のやつだろがっ!」

鬼の形相で俺の襟元を力強く引っ張る。

鼻息がかなり荒い。

まあ同じ男として気持ちはわからんでもない。

寸止めだもんなぁ……。

「福間だろ? 俺の名を忘れたか?」

彼の名前を口にするとイラついた様子で、尚も拳に力がる。

「新宮とかいってたよな!? 赤坂を返せよ!」

返すって……。

「返すも何も俺は部外者だ。好きにすればいいだろ?」

THE・無責任。

「え……最低! 新宮センパイ!」

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背中をバシバシと叩く赤坂。

「だって行為を渉中だったんだろ? 俺の出る幕じゃない。増してや、付き合っているのならば、當の本人同士で話し合って決めろ」

「付き合ってなんかいません!」

え? 付き合ってんじゃないの?

「そうなのか?」

「福間センパイが『部活帰りに映畫を観ないか?』ってわれただけです!」

それってデートなのでは?

というか、こいつら……さっきチケット売り場にいたカップルじゃねーか。

「はぁ!? 赤坂! 俺と付き合ってくれるんじゃねーのかよ!?」

やっとのことで俺から手を離す福間。

今度は怒りの矛先が赤坂に向きつつある。

「付き合うなんていってません!」

「だって、學校で『俺と付き合ってくれ』って言ったら、『うん』っていたじゃねーか!?」

癡話げんかかよ。よそでやってくれ。

「付き合うって意味間違えてます! 『映畫に付き合う』って意味でしょ!」

「……」

激しい言い合いから一転して靜まり返る。

「ふざけんな! デートだろ、今日のは!?」

福間センパイ、かわいそう。

「違います! ただの映畫鑑賞でしょ!」

あるある~ 男の勘違いってやつね。

「とりあえず、新宮から離れろ!」

俺から赤坂を無理やり引きずりだす福間。

「いやっ!」

俺は一連の騒を靜観したが、一つだけ気になったことがある。

福間 相馬。こいつはルーレット覚で、俺が崇拝する世界のタケちゃんの作品を選んだこと。

それからこいつは赤坂と付き合いたいがために、『ヤクザレイジ』を観たことだ。

つまり映畫なんてどうでもよかったんじゃないか?

ただの口実に過ぎず、目的といえば、赤坂をラブホにお土産できれば、それでミッションコンプリートだったのだろう……許せん!

「おい、福間!」

「んだよ! お前には関係ないだろ!」

「いや関係あるな、赤坂は渡せん」

俺は赤坂をかばうように福間との間を遮る。

「新宮センパイ! 嬉しい!」

なぜか満面の笑顔で俺の背中にを寄せる赤坂。

「なんなんだよ!」

激昂する福間を無視して俺は話を続けた。

「福間……お前。さっき『ヤクザレイジ』観てたよな?」

拍子抜けした顔で、俺を見つめる福間。

「は? 観てたけど?」

想は?」

「なにいってんだ? そんなこと今はどうでもいいだろ? それに覚えてねーよ、あんなチンピラの映畫!」

何かが俺の頭の中で弾けた。

「お前、今なんつった?」

「あ? チンピラ映畫だろ?」

「福間……赤坂を置いて帰れ!」

「なんでお前にそんなこと言われなきゃいけねーんだよ!?」

「何故かだと? お前は赤坂と行為をしたいがために映畫館に連れていき、ルーレット覚でタケちゃんの映畫を選び、そして『ヤクザレイジ』の想も言えず、覚えていなかった……」

「「え?」」

ここだけは赤坂と福間の息ぴったり。

「許せないんだよ! タケちゃんの映畫はそんなチープなもんじゃない!」

バシッと人差し指を突き付ける。

「……じゃあ、あれか? 俺と赤坂の路を邪魔するってんだな?」

路って、私は福間センパイのことなんか、何とも思ってません!」

それ、一番言っちゃダメなやつ!

福間がプルプルしだしちゃったよ。

涙目で……。

「新宮! てめぇのせいだ!」

えぇ!? なんでそうなるの?

「何故だ? どちらにしろ、無理やり行為に及ぶのは犯罪だぞ?」

俺がそう言うと、福間はうつむいて拳をつくって震えていた。

かなり怒っているようだ。

「犯罪だって……? 新宮、お前。初めて會ったときから生意気なんだよ。やっぱり一ツ橋の奴らは俺たち、三ツ橋高校の面汚しだ!」

「言わせておけば……」

俺が言葉で反撃しようとした瞬間だった。

「うるせぇなぁ! その口を塞いでやるよ!」

一瞬だった。

顔面目掛けてストレートパンチ。

映像がブツンッと消えるように、意識を失った。

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