《気になるあの子はヤンキー(♂)だが、裝するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!》76 同人誌はみんなで仲良く読もう!
俺は焦っていた。
というのも、ここ最近アンナやひなたとのゴタゴタで肝心の小説を書いていなかったからだ。
擔當編集の白金から短編でいいから書き上げてこいと言われている。
それを見て編集長が今後の俺の作家としての能力を見極めるのだとか?
まあここはなんでも使っちまえ! と正直、自暴自棄でいた。
生まれてこの方、の子と縁なんてなかったのに、一ツ橋高校に學してから、たくさんの人……に出會った。
そして、貞のくせしてラブホテルまで経験してしまったのだ。
テンパるよ、そりゃあ。
だって、人間だもの……その前に貞だもの。
俺は名前だけ変えて、ひなたも小説のサブヒロインのモデルとして登場させた。
もはや、ノンフィクション作家と言ってもいいな。
映畫化でもしたら「これは実話である」なんてエンドロールの前にテロップが出るんだろう。
ああいう映畫が一番カッコイイと思うんだよな、個人的には。
タイピングする速度が上がる。いつも以上に。
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元々、書きだしたら早いほうなんだが、今回のラブコメ作品に限っては実験をそのまま書いているので、思い出して書く……これを繰り返すだけだ。
あれ? ブログじゃね?
「よし、できた」
テキストを上書き保存する。
肩をほぐして休憩にる。
するとスマホが鳴った。
著信名、ロリババア。
クソがっ!
いつも間が良すぎるんだよ。
俺の家をストーキングしてんじゃねーのか?
「もしもし」
『あっ、センセイ! 進捗はどうですか?』
「フッ、できたぞ。王道のラブコメがな」
『ほうほう、それは楽しみですね♪ では、天神でお會いしましょう! ブチッ……ツーツー』
一方的に切りやがった、あんのロリババアが。
まあ夕刊配達まで時間はある。
久々に天神で小説でもして帰るか……。
俺はリュックサックにノートPCをれると、それを背負って真島駅へと向かった。
~1時間後~
俺は天神にある博多社の編集部にいた。
「す、すごい……」
珍しく白金が驚いていた。
「これ……本當に貞のセンセイが書いたんですか!?」
「失禮なことを言うな!」
かっぺムカつく。
「だって……リアルJKとラブホにるなんてレアイベントがあって、次の日にヤンキーのヒロインとラブホでコスプレパーティーとか、どんだけリア充なんですか!?」
「う……」
いざ言葉にされるとこっ恥ずかしいものだな。
「これ取材を元に書かれたんでしょ?」
いつになく真剣な眼差しだ。
「ま、まあな……」
「センセイ、モテ期到來じゃないですか!」
いや、モテるのはの子だけでいい。男が含まれているんだよ。
「それより、ストーリーはどうだった?」
「さい……こうっ! です!」
今まで俺の作品でこんなこと言われたことない。
なんか泣けてきた……。
だって人が一生懸命書いてきたストーリーより、現実世界のことをちょっと書いただけで編集に褒められるとか、作家として終わりじゃん。
「なら……良かったな、はは」
苦笑いして己を諭す。
「あんまり嬉しそうじゃないですね……でも、これなら絶対編集長からOKもらえますよ!」
「そ、そっか……そう言えば一つ質問していいか?」
「なんです?」
「実はその……前も言ったが、取材費のことだ」
「ああ、前も言われてましたね」
「ラブコメを書くには俺は取材が必要だ。だからデート……じゃなかった取材費用を経費で落としてくれないか?」
俺がそう言うと白金は腕を組んで難しい顔をしていた。
「うーん……ちょっと、編集長と相談させてください。返答は後日連絡しますので」
かなり困っているようだ。
なんだかこの時ばかりは白金に罪悪をじてしまった。
だって、取材と言えど、俺ってばしっかりデート楽しんでいるからね。
白金はアラサーの獨で寂しいやつだから。
可哀そうなんだよ……草は生えるけど。
「じゃあ、センセイ! 経費のことは後回しにして、とことん青春してくださいね♪」
「今、なんて言った?」
「青春ですけど……」
この俺が青春だと。
「俺は今、青春しているのか?」
「してるじゃないですか♪ 私の言った通り、一ツ橋高校に學して良かったでしょ♪」
否定できなかった。
確かに白金の命令がなければ、俺は永遠にぼっちだったろう。
「ああ……そうだな」
俺はそう言い殘すと博多社をあとにした。
悪くないな……青春ってのも。
天神のメインストリート、渡辺通りを歩く。
北天神へ向かい、一際目立つ真っ赤なビルにたどり著く。
そう。ここはオタクの聖地。
『オタだらけ』
7階建ての最強ビルである。
一階はコミック、二階は男向け同人誌、三階は専用同人誌、四階はコスプレ、五階はゲーム、六階は玩、七階はヴィンテージもの。
オタクが天神に來たら真っ先にここに向かうものだ。
ああ、福岡市民でよかったぁとステータスをじちゃう。
俺はすぐさま2階に向かう。
やっぱ同人誌だよな!
お目當てのものを探す。
それは何かというと、タケちゃんのヤクザレイジの同人誌だ。
きっと新作が上映したばかりだから、どっかのサークルが出しているに違いない。
「おっ、これは……」
手に取ろうとした瞬間だった。
「きゃっ!?」
華奢な手が俺の手とペッティング……じゃなかった、れ合う。
「すまん」
「いえいえ、私の方こそ……ちゃんと見てなくて」
手の持ち主を見ると、白いブラウスに紺のプリーツスカート。
ん? JKか?
眼鏡をかけたナチュラルボブ……見たことある顔だ。
「お前……北神か?」
「え? あ、新宮くん!?」
この時、俺は彼の恐ろしさをまだ知らない。
聲をかけたことをのちのち、後悔するのであった。
「新宮くんも買い?」
気さくに聲をかける同級生、北神 ほのか。
赤いかごにはどっさりと同人誌が……。
いや、ここの階って男向けばっかだよな?
「まあな、北神は何かを買いにきたのか?」
どうせ、腐子のことだ。BLだろうな。
「んとね……今探しているのは『ギャルパン』の凌辱もの♪」
「は?」
俺は耳を疑った。
「あと、『俺ギャイル』のNTRとか、『バブライブ』のハーレムものでしょ……」
おいおい、二次創作の大渋滯じゃないか。
しかもそれ全部、人向け。
「北神、お前は一なにを言っているんだ?」
思わず突っ込んでしまった。
「え? 抜ける同人誌の話でしょ?」
「……」
か、勝てない……このには勝てない!
俺はそう確信したのだった。
黙って背を向ける俺氏。
「あれ、新宮くん? どこへ行くの? 一緒にお買いしようよ! そして互いに買ったエロ同人を見せ合おうぜ!」
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