《気になるあの子はヤンキー(♂)だが、裝するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!》79 BLの申し子
北神 ほのかのせいでカフェ・バローチェは客が全員出ていってしまった。
先ほどの優しい店員も顔が真っ青。
なんというテロリスト。
「ところで、北神」
「ん? なあに?」
「お前さ、なんでいつもJKの制服みたいな格好ばっかしてんだ?」
そうこいつは私服がOKな一ツ橋でも制服みたいな姿で登校する。
プライベートでも著ているとか、JKリフレのバイトでもしているんだろうか?
「ああ、これね。よく言われるんだ」
そう言って苦笑いする。
「よく言われる……ということは、普段からその格好なのか?」
「うん、この服は前の高校の制服」
「なるほどな……しかし、なぜ辭めたのに未だに著ているんだ?」
「だって面倒くさいじゃん。毎日、服を考えるのってさ」
笑顔で答える北神。
それってとしてどうかと思うな。
「新宮くんだっていつも似たような格好じゃん」
俺を指差して笑う。
確かに俺は年がら年中、『タケノブルー』とジーパンだな。
「まあそうだが……俺はちゃんと數種類、持っている。だが、北神は全く同じ制服じゃないか」
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洗濯できないじゃん。
「え? 同じじゃないよ?」
キョトンとした顔で俺を見つめる。
「どういうことだ?」
「この制服はあと5著持っているから毎日洗濯しているよ?」
「はぁ?」
こいつバカだろう。
同じ服を365日著るなんて、『いっちょやってみっか!』というセリフが似合う國民的戦士だけだ。
「前の高校辭める時に、ついでだからストック買っておいたの」
「へ、へぇ……」
バカじゃん。
「ところで、新宮くん!」
急にを乗り出す北神。
白いブラウスから袋がブルンと揺れた。
そうか、こいつもデカパイだったな。
キモいから近寄るな。
「ん? なんだ?」
「あのさ、ラブコメにはやっぱり取材が必須なんでしょ?」
生き生きとした顔だ。
こいつがこんな表の時はろくなことがない。
「まあ俺だけかもしらんがな。実際に験した方が書きやすいってことは事実だ」
「じゃあさ、必要だよね!」
鼻息が荒い。
なにを興してんだ、この腐り豚。
「なにが?」
俺は冷たい聲で、なおかつ汚を見るような目で聞いてやった。
「BLと百合!」
「……」
俺、もう帰っていいかな?
「なぜそうなる?」
「だってさ、ラブコメでしょ? BLと百合は必須だよ! あとエロゲ! おかずになるような小説を書くんでしょ!?」
「はぁ……」
「來月、『博多ドーム』でコミケやるんだよ!」
もうこの時點でこいつの答えはわかっている。
「だからさ……コミケ取材しようよ!」
「それってラブコメ要素に必要か?」
「普通じゃん」
おめーの中だけで普通レベルなんだよ、クソが!
「じゃあ一緒にいこうね♪」
「あ、いや……俺は」
「約束ね」
そう言って小指を差し出す北神。
笑顔が怖い。
この覚、BLか!?
ニュータイプとは恐ろしいものよ……。
「いいだろう。しばらく行ってないしな」
一応、小指で握手をわす。
「ええ!? 毎回いかないの?」
そんな當然のように言わないでくれる?
「母さんに連れていかれたぐらいだ。自分ではあまり好んで行きはしないな」
「異常だよ、新宮くんの年ならコミケでエロ同人買いまくるでしょうに!」
あの……異常なのは君だからね?
公共の場でさっきから18用語をベラベラと話してからさ。
「人それぞれだろ? 俺は映畫が好きだから……別に二次元とか抵抗はないけど、好んで見るタイプじゃないんだよ」
「ええ……ないわ~」
こいつ超ウゼェって顔で、睨まれる。
俺ってそんなに悪いこと言ったの?
「よし、決めた!」
の前で手をパシンと叩く。
「え?」
「新宮くんはこの北神 ほのかがめっちゃくちゃに腐らしてあげる!」
「……」
なにこれ? 逃げられないの?
俺の選択権、どこ。
「いや、いいです……」
「ダメだよ、新宮くん! 人の好意を無にしたら!」
それって悪意じゃないですか?
「だから、俺は…」
「皆まで言わないで! 新宮くんはBL界の救世主にして、サラブレッドなのよ! 言わば、BL界のために生まれてきたと言っても過言ではないわ!」
なに言ってんだ、このバカ。
「だからこそ、新宮くんには腐ってほしい!」
拳を作り、苦い顔をする。
「ラブコメなんでしょ!? じゃあコミケは絶対に必須イベントよ!」
「は、はぁ……」
なんだか新種の詐欺にあっているようだ。
「決戦は5月のゴールデンウイークよ!」
「へぇ」
俺はもう呆れかえっていた。
「軍資金を用意しておいてね♪」
「なんで俺が買うこと前提で話しているんだよ?」
「だって買うでしょ? BL」
當たり前のように言うなよ、敷居が高すぎる。
「あのな、俺は男だぞ? アウェイだろ? その界隈」
「いいえ! そんなことはないわ! そういう風こそナンセンスよ!」
「風?」
「ええ、そうよ! それって男差別じゃない?」
「いや、そもそもBLって向けだろが」
というか、読みたくない。
「それが間違っているのよ!」
テーブルをドンッ! と叩く北神。
こいつ、こんな熱いキャラだったか?
「つまり?」
「じゃあの子がエロ本やエロゲを買ったらダメなの?」
「悪くはないさ……しかし、ネットとかで買っちまえばいいじゃないか? 作者の脳を覗き見るような行為だ。しかも同人會ならば、趣味のうちだろう。作者やサークルが可哀そうだろ」
知らんけど。
「そんなもん、ぶっ壊してまうのよ! 私の夢は國境なき同人活よ」
永遠に鎖國してしまえ。
「まあ夢を持つことは悪くないさ」
儚くも気持ちの悪い夢だが。
「そう、可ければなんでもいい! さえあれば、どんな壁だって乗り越えられるはずよ!」
良い言葉なんだけど、悸がねぇ……。
「わからんでもないが……」
わかりたくもない。
「さあ、一狩り行こうぜ! DO・助兵衛先生!」
「その名前で呼ぶのやめてくれ……」
こいつと話していると自分のHPがどんどん削られるのがよくわかる。
「じゃあこれからはなんて呼べばいい?」
「新宮でも琢人でもいいよ……」
もうどうでもよくなっていた。
「なら琢人くんね♪ 一緒に同人取材しましょ!」
「まあやってみるか……」
なんだろうな、長時間に渡ってされていたせいか、NOという返答ができなかった。
言わば、正常な判斷ができない狀態だったのだ。
「じゃあ來月ね♪ L●NE換しよ」
「あ、それだけは無理」
キッパリと斷っておいた。
だってアンナに怒られること必須……というか刺されるかもしれない。
「ええ…なんで?」
「事項だ。作者としてな。メルアドや電話番號ならばよし」
「じゃあ、それでいいよ……」
なんだか不服そうだな。
俺と北神は連絡先を換して、喫茶店を出た。
「そう言えば、新宮くんって家はどこ?」
「俺か? 真島だよ」
「真島かぁ。私、行ったことないんだよねぇ」
と言いつつ、空を見て何かを考えている。
「あのさ、真島って有名なところがあるよね?」
嫌な予。
「前の高校でさ。変態友達が教えてくれたんだ。真島にはすごいBLショップがあるって。店主はガチホモで、その子供もホモガキ。それから店のトイレではハッテン場にもなっているらしいね♪」
ああ、やっぱりこの展開か。
「それ、俺の家」
「……」
黙り込む北神。
さすがの変態バカでも俺の家の噂を聞けば、ドン引きだよな。
「……ごい」
ボソッと呟く。
「え?」
「すごすぎる! 新宮くんの家庭! やっぱり、新宮くんはBL界の救世主よ!」
あの、ちょっといいですか?
俺は誰を助ける役なの?
「今度、遊びに行っていい!?」
目が走っているよ、サイコパスじゃん。
「まあ客として來るなら……」
「約束よ!」
はぁ……俺の家はどんどん荒んでいくな。
そろそろ一人暮らしでも考えるか。
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