《気になるあの子はヤンキー(♂)だが、裝するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!》85 気分は新婚旅行
アンナは例のパンモロ事件以來、すっかり落ち込んでしまった。
「なあアンナ……そう気を落とすな」
「だって、タッくん以外の人に見られたんだもん!」
そこ? 落ち込むところ。
「ま、まあアクシデントだからして……」
「タッくんのいじわる!」
プイッと首を橫に振る。
いや、なんで俺が悪いのが前提なの?
おかしいな、何にもしてないぜ。
しばらく歩いていると、園の中央部に出る。
そこはとりどりの花々が咲き誇っている。
「うわぁ、キレイ☆」
アンナの表に笑みが戻る。
はぁ、よかった。
「確かに絶景だな」
なんてたってかじき花園だからな。
パンジー、チューリップ、ビオラ、ノースボール、アリッサム、ストック。
どれも生き生きとしている。
通稱フラワーガーデン。
だが、バルバニアファミリーとコラボしているせいか、所々に等大の人形があちらこちらに置いてある。
そしガーデン口ではメインキャラがお出迎え。
うさぎのの子、バル。リスの男の子、ニア。
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著ぐるみの二匹がい子供たちとタッチしたり、親子で寫真を撮影していた。
「あ! バルちゃんとニアくん!」
急にテンションがあがるアンナ。
あーた、もうそういう年じゃないでしょ? 控えなさい。
「タッくん、アンナたちも二人と遊ぼうよ☆」
「え?」
マジかよ、周りガキんちょばっかじゃん。
なにこのクソゲー。
俺はアンナに半ば強引に手を引かれて、キッズの群れに加わる。
わぁい、おっ友達と並んで待つぞぉ~
じゃねぇーよ。
苦行だわ。
周りの親たちがチラチラとこちらを見る。
しんど!
そうこうしているうちに、俺とアンナの番になった。
すっかりかじきかえんのマスコットキャラと化したバルちゃんとニアくんが無言のお出迎え。
なんか喋れよ、バカヤロー。
振り手振りで「ようこそ」とか「こっちおいで」とか意思疎通を取る。
だから喋れよ、寡黙癥なの?
隣りにいたスタッフのお姉さんが通訳する。
「どうやらバルちゃんとニアくんはお兄ちゃんとお姉ちゃんと一緒に寫真を撮りたいみたいだよ~」
今なんつった?
お兄ちゃんだと……おめーの方が絶対年上だろう。
ふざけろ。
「いや~ん、可い~☆」
中を知ってか知らずか、アンナはバルちゃんに抱き著く。
ちょっと軽く嫉妬。
殘った片割れのニアくんが足でドンドンと地面を蹴りつけるというパフォーマンス。
どうやら野郎同士、寂しいようだ。
すると、ニアくんは頭に手を當てて何かを考える。
しばらく沈黙した後、手のひらをポンと叩く。
そして俺に手招きしまるで「來いよ~」と言いたげだ。
「いや……俺は」
ためらっていると通訳のお姉さんが橫りする。
「お兄ちゃんもニアくんとギューッてしてね♪」
「は?」
気がつくと俺はニアくんのモフモフバディに包まれていた。
あー、癒されるぅ~
なわけない。
著ぐるみの中から荒い吐息が聞こえてきた。
「はぁはぁ……しんど」
中、おっさんで決定。
低くしゃがれた聲のじからして、中年。
そこは設定守ろうよ、ニアくん。
「も、もういいよ、ニアくん」
俺は中のおっさんが心配で離れてやった。
するとニアくんもそれを素直にけれる。
いや、きついじゃん。この仕事、転職しろよ。
アンナの方を見るとまだバルちゃんと抱擁タイム。
中がおっさんかも知らんけど。
だが、まだい子供たちがたくさん後ろに並んでいた。
それを察してか、通訳のお姉さんが止めにる。
「さあそろそろ寫真タイムにしましょう!」
ああ、そうしてくれ。
早く終わろう。
アンナはちょっとスネた顔でバルちゃんと別れを惜しむ。
「じゃあ、お二人ともバルちゃんとニアくんの間にって寫真を撮りましょう! スマホかカメラあります?」
うまい導だな、通訳さん。
すかさず、アンナがスマホをお姉さんに手渡す。
「じゃあ、お二人とも。もうちょっとくっついて~!」
バルちゃん、アンナ、俺、ニアくんの順でフラワーガーデンをバックに、はいチーズ!
寫真を二枚ほど撮り終えると一安心。
やっとこの苦行から解放される……と思ったのも束の間。
バルちゃんとニアくんが俺たちに向かって何やらジェスチャーを始める。
二匹の著ぐるみは「見てて」と手を振ると、互いに顔を合わせる。
なんとのくせしてキッスしやがった。
そして、俺たちに「ねっ」と首を縦に振る。
どうやらキス寫真を撮れと言いたいらしい。
通訳のお姉さんもそれに乗っかる。
「うわぁ、バルちゃんとニアくんはラブラブだねぇ! じゃあお兄ちゃんとお姉ちゃんもチューしちゃおっか?」
ニヤニヤと笑うスタッフ(見た目20代後半)
そして、次を待つ親子連れ。
無言の圧力をじる。
さっさと「キスしちゃえよ」と……。
アンナが俺にを寄せて、上目遣いでこういった。
「する?」
「え?」
ナニをするんだよ。
「目をつぶってて」
ま、マジか。
俺は覚悟して瞼を閉じる。
そして、通訳のお姉さんが「じゃあ準備はいいかな? お姉ちゃん」と聲をかける。
アンナは「はい……」と力なく答えた。
チュッ。
し暖かくてらかい小さなをじた。
「はい、チーズ!」
証拠寫真は出來上がってしまった。
「もう目を開けてもいいよ」
瞼を開くと僅かに殘る彼の溫。
その箇所にれる。
口ではなく場所は頬。
なんだよ、期待させやがって。
だが、人生初のほっぺキス、ゲットだぜ!
あれ? 男もカウントしていいのかな?
「それではスマホを確認してくださーい」
お姉さんがアンナにスマホを返す。
撮ってもらった寫真を確認すると、俺の異常に気がつく。
頬にベッタリとアンナさんの口紅が。
こんなマンガみたいなキスマークあるんすね。
「……やったぁ」
アンナは小さな聲で呟いた。
「ん? 何か言ったか?」
「ううん、あとでタッくんのスマホにもL●NEするからね☆」
頬は赤いが満足そうに笑う。
まあ機嫌がよくなったので、よしとしよう。
「そうか、なんかしらんが良かったな」
「うん、かじきかえんって最高だよね☆」
それはちと肯定しかねる、個人的に。
気がつくと待機していた親さんたちが拍手していた。
「いいわねぇ、私たちもあの頃に戻りたいわ~」
「懐かしいな、思い出すよ」
「はぁはぁ……ママ、3人目作ろうか?」
いや、最後生々しいよ!
俺とアンナはその場を去った。
次に向かったのは小さな木製の家。
丸太を重ねたバルバニアのおもちゃを実大にしたような外見だ。
その名も『森の洋服屋さん』
なんじゃこれ?
「ああ、ここ一度でいいからやってみたかったんだ!」
テンション上げのアンナちゃん。
「ん? 一なにをするんだ?」
「ここはね、バルちゃんのお洋服を著れるんだよ☆」
「え……」
まさか、さっきのの著ぐるみにるの?
「せっかくだから著てみたいなぁ」
「著ればいいじゃないか」
「え? いいの?」
「別に構わんさ。俺が著るわけじゃなし、アンナはの子だろ」
という設定ね、あくまで。
「そ、そだよね☆」
今完璧裝しているの、忘れてたろ。
「じゃあろう!」
中にると子供用から大人用までたくさんのドレスがハンガーラックにかかっていた。
ピンク、ホワイト、ブルー、パープル、レッド。
おまけにティアラとブーケのオプション付き(別売)
「どうしよう、迷っちゃう☆」
目をキラキラと輝かせて、ドレスを選ぶ。
「ねえタッくんはどれを著てほしい?」
「え? 俺?」
回答に困った。
「アンナはピンクかホワイトで迷っているの」
そう言って、ドレスのハンガーを二つ手に取り、互に自のに當てて、俺に見せる。
「どっちがいい?」
これが世に聞く彼氏チェックというやつか。
判斷を間違えるとがブチギレるらしいな。
いつものアンナならピンクだな……しかし、純白も見てみたいものだ。
ここは俺の勘を頼りにしよう。
「ホワイトだな」
「そっか……アンナはピンクがいいかなって思ったけど」
やべ、地雷踏んじゃったよ。
「でもタッくんが著てほしいっていうなら、そっちが一番☆」
さいでっか。
返して、俺の選択時間。
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