《気になるあの子はヤンキー(♂)だが、裝するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!》90 書籍化決定!
アンナと3回目のデート……ではなく、取材は無事に終えた。
それから數日後、擔當編集の白金から電話がかかってきた。
『あ、DOセンセイ! おめでとうございます!』
「は? なにが?」
祝ってもらうことなんて何もないけど。
アンナとは付き合ってないし、付き合えないし。
『書籍化決定ですよ!』
「え? 俺、なんか書いたっけ?」
『忘れたんですか? この前のラブコメ短編ですよ!』
あ、マジ忘れてた。
ブログ覚で書いた小説とは呼べないもんだからな。
俺史上、一番クソみたいなストーリーだし。
「書籍化ってお前、短編だろうが。単行本にならねーぞ?」
『ああ、それなんですけどね。編集長がやけにあの作品を気にりまして……』
気にるなよ!
『以前、申し上げました通り、來月號のゲゲゲマガジンに掲載して、読者から人気があれば長編小説にしたいそうです!』
「マ、マジかよ……」
俺が以前書いた、小説『ヤクザの華』はそんなVIP待遇けてないぞ?
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3巻で打ち切りだったし。
『はい! 編集長曰くリアリティがあり、‟とてもがキュンキュンするラブコメだ☆”らしいですよ』
オエッ!
なに人の日常みてキュンしてんだよ、おっさん編集長。
「そ、そうか……」
『どうしたんです? なんかあんまり喜んでなさそうですけど……』
正直、全然喜んでなかった。
俺が本來、書きたいものはヤクザや暴力、任俠、アングラ……などのジャンルだ。
ラブコメなんて、本當は書きたくなかった。
書きたいものを書けない……これほど作家として辛いものはない。
だが、読み手は殘酷だ。
創作者本人がやる気がなくても、おもしろいかつまらないかを非に判斷する。
俺がつまらない作品だと思っても、読者がおもしろいと思えば、小説家として書き続けなければならない。
葛藤していた。
このままでいいのだろうか?
俺は自分で『クソだ』と思っている作品を世に出していいものか……作家としてすごく悩んだ。
だが、アンナとの取材はとても楽しい。
ここで白金に掲載をストップさせるのは簡単だ。
しかし、同時にアンナとの取材が出來なくなるのは辛い。
「ところで白金。今後の取材費はどうなる?」
俺の懸念の一つだ。
あくまで取材とは言え、學生の俺にはかなりの出費だからな。
『それなんですけどね、編集長から許可もらえました』
グッと拳を立てる。
ただでデートできるぜ!
『あ、その代わり條件があるそうです』
「え?」
まさかアンナを紹介しろとか?
『DOセンセイの経費の中で映畫代が含まれているじゃないですか? あれを今後全面カットとのことです』
ガーン!
ただで映畫が観れない……。
まあアンナのためだ。今後は映畫はレンタルで我慢しよう。
『じゃあ、來月のゲゲゲマガジンの反応を待ちましょう♪』
白金の聲音は軽く、上機嫌で電話を切った。
まあ商業デビューして3年、編集長が俺を褒めたのは初めてだからな。
今後、俺がバズれば、白金も出世できるかもしれん。
その時はガッポリ、ボーナスで焼きでもおごってもらおっと。
~それから數日後~
第3回目のスクーリングの日がやってきた。
いつものように赤井駅方面の車両に乗り込む。
ゴールデンウイークにり、學生や若者はなくなってきた。
きっと休みにったから、みんな博多や天神へ遊びにいくのだろう。
俺の向かう赤井駅は北九州行きの上り路線に対し、リア充共は逆の博多行きの下り路線。
だから自然と上り路線は客が減る。
あー人がなくて気楽だわ。
だがそれでも、數人ちらほらと制服を著た學生を見かける。
ゴールデンウイークも部活かよ。
元気だよな……。
二駅過ぎたところで席駅に著く。
ドアが開くと、爽やかな風と共に黃金の髪を揺らしながら、一人の年がってくる。
「あ、タクト☆」
嬉しそうに頬を緩ますミハイル。
こちらに手を振って、朝の挨拶。
もう5月もったこともあってか、裝いも替え。
いつもならTシャツにタンクトップ姿なのに、元がザックリ開いたボーダーのノースリーブ。
丈が短く、へそ出し。
ボトムスは平常運転で、ダメージ加工のショーパン。
き通った白いがより際立ったファッションへと変わっていた。
正直、裝しているより、この格好の方が攻撃力は高いな。
男裝時と言うのもおかしな表現だが、ここで「寫真撮っていいか?」なんて聞けば、毆られるんだろうな。
基本、ミハイルさんて塩対応だもん。
「ああ、久しぶりだな、ミハイル」
指示したわけでもなく、當然のように俺の隣りにベッタリと座る。
「え? この前會ったばっかじゃん☆」
おいおい、アンナモード抜けてないんじゃないのか?
ミハイルくんとはかなり久しぶりなんだけどな。
「この前? 俺とミハイルが?」
俺が怪訝そうに彼をじっと見つめると、ミハイルはハッと何かを思い出したような顔をする。
「あ、そうだったよな……オレとタクトはこの前のスクーリング以來だもんな、ハハハ」
苦笑いでその場を誤魔化すミハイル。
なにこれ、超おもしろい。
たまにアンナとミハイルがごっちゃになるのがウケるわ。
「そうだろ? ところでアンナはどこに住んでんだ?」
おもしろいのでしばらくイジる俺。
「え? アンナの住んでいる場所?」
額に汗を吹き出し、視線をそらす。
かなり困っているようだ。
「えっとね……どこだったかなぁ。きっと北九州じゃないかな……」
きっとってなんだよ。
お前のいとこの設定だろうが。
「ふぅん、ミハイルは遊びに行ったりするのか?」
「オレ? ときどきな……」
ヤベッ、超楽しくなってきた。
だがそろそろやめてやらないと、ミハイルの人格が崩壊しそうだ。
俺は話題を変えた。
「なあ千鳥と花鶴は電車で通學してないのか?」
ふと気になった。
あいつらとは電車であまり顔を合わせないし、第一遅刻魔だからな。
「ああ、力とここあはバイクだよ。‟2ケツ”して來てるぜ☆」
ケツなんてはしたない言葉を使っちゃいけませんよ。
「すまん、2ケツってなんだ?」
おしくらまんじゅうじゃないよね。
「え、タクト。2ケツも知らないの? ダッセ!」
腹を抱えて笑うミハイル。
なんだろう、バカに馬鹿にされている気分だわ。
かっぺムカつく。
「すまんが勉強不足だな」
なんで俺が謝ってんだろう。
「2ケツってのは二人乗りってことだよ☆」
人差し指を立てて、を張るミハイル。
俺が知らない言葉を教えられるのがよっぽど嬉しいんだろうな。
今日はそのでもって許してやろうか。
「なるほど、じゃあ千鳥のバイクに花鶴がるってことだよな?」
「そだよ」
つまり、千鳥の背中にどビッチのパイパイがプニプニしてるってことだよな。
「やはりあいつらは付き合っているのか?」
以前から気になっていた。
いつも二人でいるし、というか決まって二人で登場するんだよな、あいつら。
それを聞いたミハイルは目を見開いて、驚いた。
「え!? リキとここあが? そりゃないよ!」
キッパリと否定された。
「だが、あの二人かなり親な仲だろう」
「それは昔からのダチだし、あいつらもお互いのことをそんな目で見てないと思うな」
「つまりただの馴染ってことか?」
「うん☆ オレもそのうちの一人だし、保育園のころかな☆」
友達二人か……なくて可哀そう。
「じゃあミハイル。お前はなんで電車で通學しているんだ? お前もバイクとか乗らないのか?」
「え? オレは……まだ免許取れる年じゃないし」
ヤンキーだから基本、無免許上等だと思ってた。
けっこう真面目じゃん。
「そ、それに……タクトと電車乗るの好き……だから」
頬を赤くする15歳男子。
というか、突然の鉄オタ発言。
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