《勇者になれなかった俺は異世界で》奴隷とソラ
「ここです。」
メイドに案され、
169番と書かれている高そうな木製のドアの前に來た。
メイドは案を済ませるとさっさと戻って行ってしまった。
俺は初めての寮生活で知らない人と同じ部屋という事でし張している。
張をとるためにドアの前で大きく深呼吸をした。
「ふぅ~」
あまり張はとれなかったが、
俺は何時までもこうしてはいられないと思い思い切ってドアをノックした。
すると中から『ちょっとお待ちよ~』と聞こえてきて
數十秒後ドアが開いた。
中から出てきたのは、
茶髪でしツンツンとしたお調子者の様な見た目の男だった。
長は俺よりし小さいから175㎝位だろう。
うわ、クラスに一人ぐらいいるお調子者だ……
「おっ、もう來たのか!早いな、
俺の名前はジンだ。
ほら、ってって。」
ジンがそういって腕を引っ張り、
俺が自己紹介をする前に部屋の中にれられた。
部屋の中はごく普通で二段ベッドがあり、
中央には丸いテーブルが置いてあり端の方に機が二つ並んでいた。
「今日からここがお前の部屋だ。
よろしくな、ソラ!ちなみに敬語とか使わなくてもいいからな!」
「ああ、よろしく。
ところでジンは何で俺の名前を?」
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俺の名前を知っているのは理事長リディアや先生方やシルロ達しか知らないはずだ。
「理事長さんが直々に教えてくれたんだよ。」
「そうか。納得した。」
それからジンが『ベッドは上と下どっち派だ?』
と聞かれたので俺は上だと昇り降りがあって面倒だと思い、
下が良いと答えた。
俺はベッドに腰かけながら特に話す事も無かったため、
今日の授業の事を思い出し、
ジンに奴隷の事を聞いてみた。
「ん?奴隷かー。俺の家にも數人いるけど確かにの様に扱われいたなあ。
おっと、誤解するなよ?俺はとして扱ったりしてなかったからな?
それに、もし俺が奴隷を買ったらすげー大事にすると思う。」
「そうか。じゃあ、俺がもし奴隷を買ってここに連れて來たらどうする?」
俺は奴隷何て買う気は無かったが一応聞いてみることにした。
「別に、普通にルームメイトとして接するだけかな。
ソラは奴隷を買うつもりなのか?」
「いや、買う予定は無いけど明日し見に行ってくる。」
「ほお~。でも奴隷は高いぞ?
確か安くても30金貨位はした様な気がする。」
「高いな……。」
でも、たったの30金貨で命が救えると考えれば安いもんだ。
それから俺とジンはくだらない話などをして盛り上がったりして、
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あっという間に夜になった。
夕食の時、俺が『學食に行くのが面倒だな……』
と言うとジンが手料理を作ってくれた。
手際よく料理をし、あっと言う間に二人分の夕食が出來上がった。
夕食を食べ終え、片づけを済ますとジンは宿題を始めた。
俺はこの世界にも宿題が存在するのか。
と殘念に思いつつベッドに橫になりそのまま眠ってしまった。
「お……ソラ……起きろソラ!」
「ん?……誰」
「えええ!ルームメイトのジンだよ!
それより、遅刻すんぞ!」
ああ、そっか。ここは寮だったな。
別に俺は一時間授業をけるだけで良いから遅刻とか関係ないんだよな
……でも、せっかく起こしてくれた事だし行くか。
俺は朝が苦手だったのでしふらつきながらも急いで準備をした。
準備といっても、昨日は制服のまま寢てしまったので、
顔を洗ったりするだけだが。
準備をしている間ジンは何やら楽しそうな顔をしていた。
し気になったので顔を拭きながら聞いてみた。
「何でそんな楽しそうな顔してるんだ?」
「いやー、何だかソラを見ていると弟を思い出してな。」
「最近その弟さんとはあってないのか?」
俺はジンに弟がいた事にし驚きつつ、そう聞いた。
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「あいつは昔に死んじまってな……」
「あっ、そう。」
「えぇえ!?そこは
『悪いことを聞いた……』とか言うんじゃないの?」
確かに普通の人ならそう言うかもしれないが、
今の俺は寢起きという事もあり頭が回らずそんな事を言う余裕が無かった。
「まぁ、いいや。
準備は終わったようだし行くか。」
寮を出て、學園に行き途中ジンと別れ教室に向った。
教室にはすでに全員揃っていて俺が一番最後だった。
まぁ、遅刻ギリギリだからな。
退屈な授業が終わり、俺はヤミにスラを預けてさっさと教室を出た。
教室を出て、俺は理事長室に服を置きっぱなしだという事を思い出したが、
取りに行くのが面倒くさかったので制服のままで奴隷を見に行くことにした。
學園を出て、街の方に向った。
街は々な店が並んでおり、
まだ晝にもなっていないのにも関わらず大勢の人々で賑わっていた。
俺は賑わっている所とは反対に人気ひとけの無い薄暗い路地にった。
路地は建に太のが遮られジメジメとしていた。
昨日、ジンに聞いた報だとこの先で奴隷が売られてるらしい。
路地を進むと、目の前にでドアが外れていて灰の布を下げてある不気味な口が現れた。
口の橫を見ると奴隷と書かれていた。
ここが奴隷を売っている所だろう。
俺はるのにし躊躇したが、思い切ってってみた。
中は外見ほどボロボロではないが、綺麗とも言えない。
し長い通路を進み、再び布を潛るとし寒い空間に出た。
周りを見ると檻に々な種族の子供や大人がっていた。
ガリガリの者や死んだ目をしている者や怯えて震えている者
……見ていて良いものではないな。
そんな事を思っていると突然聲を掛けられた。
「學生さんが奴隷を買いに來るとは珍しいねえ。
お金はあるのかい?」
白髪で長は低いが凄いごっついの爺さんがそう聞いてきた。
長的に小人ドワーフだろう。
「お金はあるが、
今回は見に來ただけだ。」
「ほぉ、そうかい。
まぁ、ごゆっくり。」
こんな所でゆっくりしたら気が狂いそうだ。
俺はそんな事を思いながら檻にっている奴隷達が見た。
皆ボロボロの鼠の服を著ていて所々にが開いているので大事な部分が見えそうだ……おっといかん。
俺は出來る限りを見ないで顔を見た。
奴隷を一通り見終わる頃、
俺は一つだけ他の所に置かれている檻に気が付いた。
気になったので小人ドワーフの爺さんに聞いてみた。
「あの檻は?」
「ああ、あれかい。
あれはやめた方が良い。」
「なぜだ?」
「あそこにっているのは兇暴な竜人ドラゴニュートだからさ。」
「!?」
竜人ドラゴニュート。
見た目は人獣ビーストに竜の尾や耳を生やしたじだ。
そして、何もかもが桁外れの伝説の種族。
そんな伝説の種族が何故奴隷になったんだ?
俺はそう疑問に思っていると爺さんが説明を始めた。
「竜人ドラゴニュートは人獣ビーストとは違い、
耳と尾を自分の意志で隠したり出來るんだ。
それでな、とある奴隷商が、人間と勘違いしてあそこの竜人ドラゴニュートを奴隷にしたんだ。
詳しくは知らないが、高く売れると思った奴隷商は、
無理やり睡眠薬を飲ませたらしい。
途中で竜人ドラゴニュートと分かり、
その奴隷商は怖くなってわしの所に持ってきて今に至るんだ。」
つまり、奴隷商がお金のために奴隷にしたが、
実は竜人ドラゴニュートで自分じゃ扱えないと判斷しこの爺さんに譲ったのか。
金のためか……
「しいと言う奴らは現れないのか?」
竜人ドラゴニュートは伝説の種族なんだ、
多兇暴でもしいと思うのが普通だろう。
「ああ、沢山いたさ。でも、皆、諦めていった。
ある者は、ろうとして腕をへし折られ、
またある者は腕を引き千切られたり……。」
「そんなに兇暴なのか
……ちなみに、売れなかったらどうなるんだ?」
「そりゃあ、処分するに決まっているだろう。」
処分……殺すって事か。くそっ!聞かなければ良かった。
俺の予想ではこの先、あそこの竜人ドラゴニュートが売れる事は無く、
殺される。幾ら何でも酷過ぎるだろ。
勝手に奴隷にされた挙句、
売れないと処分だと?
ふざけるな。
勝手すぎるだろ。
「ちなみに、いつ処分されるんだ?」
「あの竜人ドラゴニュートは、
ここに來て今日で一年だから、そろそろ――」
「いくらだ?」
奴隷を買うつもりは無かったが、
黙って見捨てる事は出來ない。
ここで見捨てたら俺もこいつらと同じになる気がするから。
「本気かい?さっきの話を――」
「黙れよ。こっちは客だぞ。
さっさと値段を言えよ。」
「……本當は60金貨にしたいが、
サービスで30金貨だ。」
「買った。」
俺は30金貨を取り出し、
爺さんに渡した。
「何が起きても自己責任だからな?」
「ああ。」
俺はそう返事をし、竜人ドラゴニュートがいる檻に向った。
檻の中には、ベージュで長い髪をし、緑の目で此方を睨みつけていた。
座っているからあまりわからないが、
恐らく長は俺と同じ178cm位だろう。
「私に近づくなっ!」
っ!ビックリしたなあ。
この言葉は竜人ドラゴニュート獨自の言語か。
だったら、俺もその言語で話しかけるか。
幸い、この言語もエリルスの記憶にあるし。
「今日から俺はお前の主人だ。
だが、俺はお前を縛るつもりは無い。
別に逃げてくれても構わない。」
「!?、言葉が分かるのか?」
「まあな。」
「!!!お前も竜人ドラゴニュートなのか?」
「いや、俺はただの人間だ。」
「そうか……。それで、先ほど言っていた事は本當か?
本當ならお前は何で私を買ったんだ?」
「ああ、本當だ。お前を買った理由は、
今お前を見捨てると俺もあいつ等と同じになる気がしたからだ。」
「同じになるか。
クゥハハハ、面白い奴だ。
お前になら“飼われて”もいいかもな。」
それから竜人ドラゴニュートを檻から出し、爺さんの所に向った。
爺さんは信じられないものを見ているかのような表をしながら、
手続きと説明を始めた。
手続きは簡単で、主人と奴隷の指紋を紙に押せば完了だ。
紙をけ取り、早速指に墨を付け紙に押した。
手続きと説明が完了し、奴隷売り場から出て、
俺は取り敢えず竜人ドラゴニュートにこれからどうするのかを聞いてみることにした。
「お前はもう自由だが、どうするんだ?」
「どうするも何も、私は主人に奉仕するだけだが?」
「いや、いいから。
つまり、お前は俺についてくるって事か。」
「うむ。」
はぁ……面倒だ。
そのまま逃げてくれれば良かったのにな。
奴隷か、取り敢えずこいつの服裝をどうにかしないと、
目のやりどころに困る。それと、首もとってやらないとな。
確か首は、奴隷自が外す事は出來ないが、
主人は外す事が出來る。
……そんな事言ってたような気がする。
俺は首を外そうと手をばすと、竜人ドラゴニュートに手を優しく摑まれた。
「ん?」
「首は私が主人に飼われている大切な証拠だから、とらないでほしい。」
「ええ……」
この竜人ドラゴニュート、思っていた以上に面倒くさいぞ。
「まぁ、いいや。取り敢えず服を買いに行くぞ。
その服だと々とまずいからな。」
「この服は主人と出會った時の大切な服だから……」
ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛
面倒くさいな!こうなったら仕方ない……。
「なぁ、俺はお前の事を縛らないと言ったが、
しで良いから俺の言う事を聞いてくれ。」
「うむ、命令なら仕方ないな!
私も正直、こんなボロボロの服は嫌だったからな!」
なんだこいつ。本當に伝説の種族なのか?
「あっ、そうだ。お前名前は?」
「私の名前はライラ=ドラゴニカ。」
「ライラか。俺の名前はソラだ。」
「主人の名はそれだけ?」
「あー、正確にはソラ=バーゼルドかな。」
「うっへ!主人は大魔王だったのですか!」
うっへってお前、そんなキャラなのかよ。
ダメだ……キャラがわからん。
「いや、違うから。それと主人はやめてくれ。」
「それは出來ないな。」
俺は何故?と聞こうと思ったがライラの顔を見ると凄く真面目な表だったから、何かあるのか。
と思い聞かない事にした。
「大した理由はないが。」
「ないのかよ!」
俺は制服のブレザーをぎ、
ライラに著させ服を買いに街に出た。
服を買いに店にり、ライラに自由に服を選べ。
と言うと店は大して広くないのに1時間近く掛かった。
1時間近く掛けて選んだ服は赤と白のワンピースだった。
1時間も待たされしイライラしたが意外と似合い、
可いから許す。
グウゥ……
店から出て、次はどうしようかと迷っていると
腹の蟲がなってしまった。
うわ、お腹鳴っちゃったよ。
もうそんな時間だったか。
はぁ、失敗したな、絶対こいつ何か言ってくるよ。
何かニヤニヤしてるし。
「おおっ!?主人はお腹が空いているのか!」
「……そうだ。」
「クゥハハ!だったら、私を食べると良い!」
こいつは俺を何だと思っているんだ。
それとも竜人の中ではそれが當たり前なのか?
……いや、そんな事はエリルスの記憶には無いし、
ただこいつが馬鹿なだけか。
「食いに行くぞ。」
「?」
ライラは不思議そうな顔をしながらついてきた。
すると、『食いに行くって誰を?』と聞いてきた。
こいつは本當に馬鹿なのか?
俺は説明するのが面倒だったので無視して進んだ。
5分位歩くと、石煉瓦作りで屋が緑に塗裝されていて、
看板に『食堂』と書かれた店を発見した。
店にると、テーブルと椅子が沢山置いてあり、
そこに座り食事をしたり會話を楽しんでいた者達がこちらを見て何やらコソコソと話し出した。
恐らくライラの首を見て『奴隷だあ~』とか言ってるんだろう。
ライラは店の中を目を輝かして見ていて気付いていない様だ。
俺は周りの目を気にせずに開いてる所に座った。
「主人、ここはなんだ?何やらいい匂いがするぞ。」
ああ、こいつは本當の馬鹿だ。
いや、ただ知らないだけか。
面倒だが説明してやるか。
「ここはな――」
俺が説明していると、ライラは目を輝かし時々うなずいたりしていた。
何か小みたいで可いな。こいつは竜人だが。
説明が終わると、
エプロンをしたスキンヘッドで頬に傷があるごっついおっさんが來た。
「ご注文は」
「ゴブリンの串焼きとラビットスープで。
後こいつにも同じものを。」
「おいおい、兄ちゃん流石に奴隷には勿なくないか?」
こいつもか。
「はぁ、お前は奴隷は客じゃないとでも言いたいのか?」
「いや、別にそういうわけじゃ……」
「だったら俺と同じものを持ってこい。」
「……ああ。」
はぁ、この世界の奴らは本當に奴隷をとしか思ってないのか。
まぁ、それがこの世界の風なんだろうな。
料理が來ると、ライラはよだれを垂らしながらひたすら匂いを嗅いでいた。
「いや、匂い嗅いでないで食えよ。」
「おお、食べていいのか!」
「當たり前だ。」
ライラは勢い良く料理にかぶりついた。
凄く幸せそうな顔をして食べているライラを見ると何故か凄く料理がおいしそうに見えてきた。
まあ、実際に味しいんだけど。
あまりに味しそうに食べているライラを見て俺の分のスープをし分けてやった。
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8 122永遠の抱擁が始まる
発掘された數千年前の男女の遺骨は抱き合った狀態だった。 互いが互いを求めるかのような態勢の二人はどうしてそのような狀態で亡くなっていたのだろうか。 動ける片方が冷たくなった相手に寄り添ったのか、別々のところで事切れた二人を誰かが一緒になれるよう埋葬したのか、それとも二人は同時に目を閉じたのか──。 遺骨は世界各地でもう3組も見つかっている。 遺骨のニュースをテーマにしつつ、レストランではあるカップルが食事を楽しんでいる。 彼女は夢見心地で食前酒を口にする。 「すっごい素敵だよね」 しかし彼はどこか冷めた様子だ。 「彼らは、愛し合ったわけではないかも知れない」 ぽつりぽつりと語りだす彼の空想話は妙にリアルで生々しい。 遺骨が発見されて間もないのに、どうして彼はそこまで詳細に太古の男女の話ができるのか。 三組の抱き合う亡骸はそれぞれに繋がりがあった。 これは短編集のような長編ストーリーである。
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