《勇者になれなかった俺は異世界で》模擬戦闘大會とソラ

「んん……」

目を覚ますと、まず目の前に映ったのはライラの寢顔だった。

「うわっ!こいつまだ寢てんのかよ。

……寢すぎだろ。」

寢るときはライラに拘束されていたが、

今はその拘束が解かれていたので俺はこっそりと抜け出しベッドから出て、

大きく背びをした。

「んん~~~」

何だか今日は何時もよりぐっすり寢てた気がするな、

それに何か大事な夢を見た気がするけど思い出せないな……おっ?

俺は部屋の中央にある丸いテーブルの上に何やら紙が置いてある事に気が付いた。

何の紙なのか気になりその紙を手に取って見てみた。

そこには――

いちゃいちゃを邪魔するのは悪いと思ったから起こさなかったからな!

何て俺は優しいんだ!ハハハハ

と、書かれていた。

ん~、々と言いたい事はあるが、

起こさないでくれた事は謝してやろうじゃないか。

よく寢たし。

それにしても、こいつは何時まで寢てるんだろうか。

未だにベッドで気持ちよさそうに寢て居るライラの事を見てそう思った。

起きたらうるせえしな

……いっそ、このまま永眠してくれないかな……。

――コンコン

そんな事を思っていると突然部屋のドアがノックされたので、

俺は誰だ?と思いつつドアを開けた。

ドアを開けるとそこには、

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若干偉そうにしている理事長リディアが俺が宿に置いてきた荷を持って立っていた。

「ほれ、ソラ君の荷だ。」

「ああ、どうも……てか、良く寮に居るって分かったな。」

「そりゃな、理事長だからな。」

理由になってないだろ。

何だ?常に監視でもされてんのか?

「……そう、じゃこれで。」

け取り、特に話すことも無かったのでドアを閉めようとしたが

理事長リディアがドアの隙間に足をれてきて閉める事が出來なかった。

「何のマネだ。

悪質な訪問販売なら力づくで追い返すぞ。」

「何だそれは……

奴隷ちゃんは元気?」

「ああ、元気すぎて困るぐらいだ。

今は寢てるが。

あと、奴隷じゃなくてライラと呼べ。」

奴隷って言う言葉が気にらない。

「わかった。

ところで、ソラ君はまだ學園に行ってないな?」

「ああ、そうだ。

安心しろ、しっかり一時間はける。」

「そうか。ライラちゃんも連れていくのか?」

「それはあいつに決めさせる。」

「そうか。でも、気を付けるんだぞ。

々と大変だからな」

理事長リディアはそう言ってドアの隙間から足を抜き、去っていった。

々と大変か、そりゃあそうだろうな。

もし、ライラに変な事言ってくる奴が居たら毆ってやる。

そんな事を考えながら俺は荷を丸いテーブルの上に置き、

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々と整理していると、

後ろから『んんぁ~~~』と気が抜ける様な聲がした。

「んん……主人、おはよう。」

「何だ、起きてしまったのか。

殘念だ。」

「まったく、主人は照れ屋さんだな。」

何いってんだこいつ。寢すぎて頭がおかしくなったか。

「なあ、俺はこれから學園に行くがお前はどう――」

「行く。」

「はぁ、即答かよ。準備が出來次第行くぞ。」

・・・・

準備が終わり、俺はライラを連れて教室に向った。

今は授業中なので誰ともすれ違う事は無い。

ライラはキョロキョロして落ち著きが無く、

しウザかったから「靜かにしないと連れて行かないぞ」と言うと文句一つ言わずに黙ってついてくるようになった。

教室の前に著くと、ちょうど授業が終わり教室の中から先生が出てきた。

俺は軽く先生に頭を下げ、れ替わるように教室の中にっていった。

「ますた!」

教室にるとヤミが誰よりも早く俺に気付き、走ってきた。

「おかえり」

「ああ。」

俺はヤミの頭をポフポフしてやった。

「おかえりですの~」「おかえりなさい!」「お、おかえり。」

皆がそう言ってきた。スラもを跳ねさせ、『おかえり』と言っている様にみえる。

「ますた、その子だれ?」

「ああ、こいつは――」

「私は主人の忠実な奴隷のライラ=ドラゴニカだ。」

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俺が説明しようとしたが、ライラが無理やり自分で言いやがった。

が、ライラは竜人獨自の言語しか喋れない為、

皆ライラが言った事を理解出來ていないようで首を傾げていた。

「こいつは、あれだ。

一応……奴隷だが、俺はこいつを一人のとして扱っている。」

「ど、奴隷ですの!?」

「ますた……」

うわ……ヤミ達が変な目で見てくるよ。

これは詳しく話す必要があるな。

・・・・

それから俺は詳しく説明すると、

しは納得してくれた様だ。

「そうだったのですか、良い人ですね。」

「そうか?」

「ぼ、僕もソラさんは良い人だと思います。」

「ますたのえっち。」

「はぁ?何でそうなるんだよ……」

どうやらヤミは気に食わないらしく、

ぷんぷんしている。

「はぁ、ヤミ。

今度遊んでやるから機嫌直してくれ。」

「いいよ!」

純粋な子だ。

「良かった……ところで、あれは何だ?」

俺はふと壁を見ると、そこには大きな紙がって在り、

よくみると、その紙には『模擬戦闘大會』と大きく書かれていた。

「一人一人が自分の力を出し切って戦う模擬戦闘大會があるらしいですの。」

模擬戦闘か、し興味があるな。

どうせ暇だし參加してみようかな。

「ちなみに、それは何時だ?」

「明日ですの。」

明日か、隨分と急だな。

……明日……何か忘れている様な気がするな、

まぁ、いいか。

「ちなみに參加は強制か?」

「そうですの。」

「そうか。」

強制參加なら申し込みとかしなくて良いから楽でいいな。

この學園にはどんな奴らがいるのか、

し楽しみだ。

俺は退屈な授業をけ、スラのこと突っ突きながら明日の模擬戦闘大會の対戦相手はどんな奴だろう。

と思い、授業が終わると早速シルロに聞いてみた。

「なあ、対戦相手っていつ発表されるんだ?」

「対戦相手なら朝の時にもう発表されましたよ。

えっと、ソラさんの対戦相手は3年生のクロリ先輩です。」

3年生だと?

模擬戦闘大會の対戦相手は學年関係なしでランダムで決められているのか。

「そのクロちゃんはどんな奴かわかるか?」

「クロちゃんって……本人の前で言ったら殺されますよ。

クロリ先輩は生徒會長でこの學園でも一二を爭うぐらいの強さらしいです。」

生徒會長か、この世界にもしっかり生徒會があるんだな。

そのにしてもこの學園で一二を爭う強さか。

……いきなりそんな奴と當たるのか、運が良いのか悪いのか……

「ちなみに、シルロの対戦相手は?」

俺がそう聞くと今まで笑顔で話していたシルロの顔が曇りだした。

あれ?俺変な事いったか?

それとも、よほど嫌な対戦相手だったのか?

「……ソラさんは、私たちが何で“落ちこぼれ”と呼ばれているか知っていますか?」

「え?」

別にこいつ等だけが落ちこぼれってわけじゃないだろう。

落ちこぼれはこの學園にいる全生徒の事じゃないか。

まぁ、いいや。

こいつ等はしっかり魔法は使えるしな……だったらアレしかないな。

「馬鹿だからだろ。」

「ふぎぅ。ソラさん真顔でそんな事言わないで下さいよ。

凄く傷つきました。」

ふぎぅって何だよ。

「違うのか、じゃあ何でだ?」

「……ソラさんは理事長様の推薦でこの學園に來たので知らないと思いますが、本來、

この學園にるためには々と試験が必要なんです。

その試験の中に試験に攻撃を當てるという簡単なものがあるんですが

……私たち三人は攻撃をするどころか、けませんでした。」

「どうして」

「……怖かったんです。そこら辺のモンスターなら容赦なく攻撃出來ますが、

やっぱり相手が人型になると、ケガさせちゃったらどうしよう、

萬が一、殺しちゃったらと思うとどうしても……。」

……そうだよな。こいつらはまだ15~6歳、普通ならそれが當たり前だ。

俺はエリルスと出會ってからあまりそういうは出てこないが、

本來の俺だったらきっとモンスターが相手でもその場でけなくなってチビっているだろう。

「それで、その試験は0點で3人ともこのクラスになったと。」

「……はい。」

「なるほど。

じゃあ、明日の模擬戦闘大會は出ないのか?」

模擬戦闘大會の対戦相手は必ずこの學園の生徒だ。

つまり相手は人型。

シルロ達には無理な相手だ。

「はい……見學してます。」

「そうか。」

皆の前で恥を曬すよりは良い判斷だ。

だが、こいつ等は本當にそれで良いのか?

このままだと、いつか本當に困る時が來るだろうな。

・・・・

それから俺は1時間授業をけたので寮に戻ろうと、

スラを肩に乗っけて、授業が退屈すぎて一番後ろの席で寢て、

今も尚、睡しているライラの事を叩き起こした。

が、『んんぅ~』と言ってまったく起きない。

はぁ、こいつは一日何時間寢ればいいんだよ。

仕方ない、おんぶしていくか。

「よっ。」

ライラをおんぶした事によってスラの居場所が無くなり、

スラは肩から頭に移した。

教室を出る前にヤミに一聲掛けると、

何やら若干不機嫌だったが気にしない事にした。

部屋に著き、早速のベッドにライラの事を投げれた。

それでもライラは起きたりしない。

「さて、俺ももう一回寢るか。」

晝寢は大事だ。

ライラをベッドの壁側に追いやって

寢れるスペースを作り、俺はスラと一緒に眠りについた。

・・・・

「ん……」

「おっ、おはよ。」

目が覚めると、部屋の中にはジンの姿があった。

何やらニヤニヤして此方を見て來ていた。

「おーはよ。」

俺はジンに置手紙について々と言いたかったが面倒くさいのでやめることにした。

「ところで今日授業けた?」

「ああ、一時間だけな。」

「そうか、じゃあ模擬戦闘の事も聞いた?」

「ああ、聞いたぞ。

ジンの対戦相手は誰だった?」

「おっ、良く聞いてくれたな!

何と、俺の対戦相手は3年の副會長様だ!」

「へぇ~。副會長か。

奇遇だな、俺の対戦相手も生徒會のメンバーだ。」

「おおぅ!で、誰なんだ?」

「クロちゃん。」

「クロ?……クロリ先輩か、お前それ本人の前で言うなよ?

つか、よりによってあの生徒會長か。

運が悪かったな。」

ジンまでそれを言うのか。

やっぱりクロちゃんって言うのはやめといた方が良いかな。

「やっぱそんなに強いのか。」

「ああ、桁外れだ。」

桁外れの強さか……。

「ちなみに、理事長リディアより強いのか?」

理事長リディアは俺と同じSランクだ。

クロちゃんがSランクよりも強いと言うならしは楽しめそうだ。

「リディア?ああ、理事長様の事か。

いくら強いと言っても理事長様には勝てないな。」

ジンの言葉を聞いて俺は凄くがっかりした。

「何だ。つまらないな。」

「?どういうことだ?」

理事長リディアより強いならしは楽しめたかもしれないけど

それ以下なら退屈な試合になりそうだ……

「……気にするな。」

・・・・

翌日、俺はジンに叩き起こされ、朝から模擬戦闘大會の會場に來ていた。

ちなみにライラはまだ睡してたので部屋に置いてきた。

勿論、変な行をしないように拘束しといた。

それと一応スラを見張りとして置いてきた。

俺は學園に會場があると思っていたが、

実際は學園には無く街の中央にある。

前ジョンと戦った試験場とつくりが全く同じ建だ。

俺はジンに連れられ3階に來た。

ジンと俺の出番は後半の方なので出番が來るまで一番上の階で模擬戦闘を見ようということだ。

元気の良いアナウンスが聞こえて來て、しばらくして大きな鐘がなり、

模擬戦闘大會は始まった。

剣と剣で戦い合う者。

魔法を避け華麗に剣で攻撃している者。

々な戦い方がある。

その中でも圧倒的な魔法で相手を瞬殺している者達が數人いた。

ジンに聞くとそいつらは生徒會のメンバーらしい。

しばらく、ボケーと眺めていると、

俺の目にヤミが映った。

おお、ヤミの番か。

「ヤミ、頑張れよ!」

ヤミに聞こえる位大きな聲でそうぶと、

ヤミは此方に向ってグチョブをしてくれた。

対戦相手はドリナス?

変な名前だ。強いのか?

「なぁ、ジン、

ドリナスって強いのか?」

「ああ、そいつも生徒會のメンバーだからな。」

「生徒會って強い奴らしかいないんだな。

まぁ、ヤミはそれ以上強いけどな。」

「はぁ?何言って――」

――ドガァァンッ

何やら凄い音がし、

驚いて音のした方をみると――

「おいおい、噓だろ。」

「だから言っただろ。

ヤミは強いって。」

中央には漆黒の炎に包まれたヤミと、

地面に出來たクレーターの底に倒れているドリナスの姿があった。

ヤミの奴、前よりも強くなってるな。

――ウオオオオオオオッ!

沢山の歓聲が上がったが、

ヤミは無表で戻っていった。

「凄いなお前の妹。」

「ふっ、當たり前だ。

次、俺の番だから行ってくる。」

「おう、行ってこい!頑張れよ!」

俺はジンに背を向け軽く手をあげ、中央に向った。

相手はすでに來ていたらしく、生徒達に手を振っていた。

あれがクロちゃんか。

黒髪ツインテール、獣耳。

目はクリッっとしている。

「おお、來たね。君がソラ君だね?

僕は生徒會長のクロリだよ。」

僕ッ子か。

「よろしく、クロちゃん。

あっ、」

俺がうっかりそう言った瞬間、先ほどまで騒いでいた生徒達が一斉に靜まり返り、

所々から「何言ってんだよバカ!」「謝れ、殺されるぞ!」と聞こえてくる。

一方、クロちゃんは笑顔でこちらを見ていた。

「ふっふふ、良い度だね……」

一見笑顔に見えるが、よくよく見てみるとその笑顔には

青い管が浮き出ていてピクピクと小刻みにいていた。

「もしかしなくても、怒ってる?」

明らかに怒っていると分かる事だったが、

一応聞いてみた。

すると、クロリは笑顔のまま、

「僕がそんな短気に見えるのかい?」

と言ってきた。

見えるんだよな……良い笑顔だけど、

管が出てるからな……その管が浮き出て居なかったら完璧だ。

――ゴーン

戦闘開始の鐘と同時にクロリは凄い速さで襲ってきた。

右手から鋭い爪を出し、その爪で俺の事を裂こうとしてきたが、

俺はそれをヒラリとかわした。

遅い……

「くうううう!」

一撃をかわされ、

ムキになったクロちゃんは先ほどよりも素早く攻撃をしてきたが、

俺はそれをよける。

遅い……。強化リインフォースメント・ボディすら使ってないのにかわせる。

何だコイツは、本當にこの學園で一二を爭う強さなのか?

しかも、さっきから同じ攻撃しかしてこないし

「なんでよけるの!!」

攻撃を止めたと思ったら次は訳分からない事を言ってきた。

「何でって當たったら痛いからにきまってるだろ!」

「痛い?それだけの理由で僕の攻撃をよけているのかい!?」

それ以外の理由があるのかよ。

攻撃を自分から當たりに行くなんて相當なMだぞ。

「當たり前だろ。」

「何でだい?」

何でだいって此奴……

つか、急に何だ?

先程までムキになっていたクロリとはまるで別人の様に

変わった事に違和を覚える。

何を企んでいるんだ?

までに時間が掛る攻撃でもしてくるのか?

だとしたらし警戒しておかないとな。

「何でってさっきも言っただろ……」

「うん、そうだね。

痛いからだよね……」

「?」

何が言いたいんだ?

「――じゃあ、痛みをじる隙すら與えない攻撃をしてあげるよ!」

突然足元の地面が割れだした。

「っ!?」

やはり何か企んでいたのか。

だが、これ位簡単に避けれ――っ!

巻き込まれない様に橫に飛んだが、

その飛んだ先には、

「ははは、引っかかったね。」

どこから出したのか、巨大な大剣を持ったクロリが

俺目がけて剣を振り下ろしていた。

やばい。

「我が拳に宿れ、闇魔法ダークネス・ソーサリー」

拳に漆黒の炎を宿し、あり得ない反応速度で大剣を拳で毆った。

大剣は音を立てずに漆黒の炎に包まれ、一瞬で塵と化した。

大剣を失ったクロリの攻撃は當然ながら當たらず、

スカりバランスを崩したクロリと、

すれ違いざまに俺は勢い良く腹に漆黒の拳を打ち込んだ。

「グッ…………。」

の子のお腹を毆るのは気が引けたが、

そんな事気にしたら戦い様が無かった為、心を鬼にした。

クロちゃんはドバっとを吐き出し、

そのまま

――バタン。

と、地面に倒れた。

――……ウオオオオオオオオオオオオ!

おお、凄い歓聲だな。

し照れくさいな。

それにしても、正直言って驚いた。

何も使わずに行けると思ったが舐めすぎだったようだな。

沢山の歓聲が聞こえ、俺は若干照れながら戻った。

途中でジンと出會いハイタッチをした。

「ジンも頑張れよ。」

「おう!俺もサクっと勝ってくる!」

そういってジンが中央に出た瞬間――

――ドゴオオオオオン!

途轍もない音と衝撃波が襲ってきた。

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