《勇者になれなかった俺は異世界で》ヴェラとソラ

何事だ!?と思い俺は中央に向った。

そこには、さっきの衝撃で起きたであろう、

中央に土埃が舞い非常に視界が悪くなっていた。

良く目を凝らしてみると、土埃の中に何者かの影があった。

俺はその影が気になったが、

それよりもジン達の事が気になり探す事を優先した。

「っ!」

周りを見渡すと、ジンは衝撃波をけた為

壁に叩きつけられ苦しそうにしていた。

他にも中央にいた気絶したクロちゃん、

クロちゃんを回収しようとしていた奴、

ジンの対戦相手の副會長らしい人が壁に叩きつけられていた。

「大丈――っ!」

聲を掛けようとしたが、

それよりも優先すべき事が起きた。

土埃が消え、謎の影の正が見えてきた。

赤のグラデーションのボブカットで瞳のも赤で翼を生やした悪魔――

「ヴェラ?」

何でアイツがここに?

ヴェラは周りを見渡し、

俺と目が合うと口の端をつり上げてニヤリと笑った。

「そこにいたか、ソラ=バーゼルド。」

――キャアア。

生徒達は翼が生えた悪魔ヴェラの姿を見て、

悲鳴を上げながら會場から急いで出て行った。

一瞬で生徒達が會場から消え、

観客席には數人の生徒しか殘っていなかった。

殘った生徒達はヤミ達だった。

恐らく、エシア達は逃げようとしていたけど、

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ヤミが殘るとでも言ったのだろう。

「何の用だ?」

「あ?大魔王様から聞いてないのか?」

エリルスからだと?

……そういえば、夢の中で何か話した気がする

……あっ!

「そうだ!思い出したぞ。

確かこの左腕とかをちゃんと使いこなせているか見に來たんだろ?

……てっ、こうなったのって俺のせいじゃん。ごめん。」

「思い出したって忘れていたのか

……まぁ、良い。じゃあ、早速見させて――」

――ドゴンッ!

突然ヴェラが発した。

正確には魔法がヴェラのに當たりはじけた。

俺は魔法が飛んできた方向を見ると、

そこには理事長リディアと教員達がいた。

「何してるっ!速く逃げろ!!」

教員の誰かがそうんだ。

いや、無理だわ。

けるの俺と……一応ジンぐらいだし、

他の奴らは気絶しちゃってるし。

俺達より先生方が逃げた方が良い気がする――

「邪魔をするなよ下等種族共がっ」

「あっ、待て!」

止めようとしたが間に合わず、

ヴェラはそ教員達の方に右手を向け魔法を放った。

右手から放たれた魔法は赤く一直線を描き疾風の様な速さで教員達の所まで行き、

眩いを放ったかと思うとそのが一點に集まり発した。

凄まじい衝撃波が襲ってきて、

俺は耐えきれずジンの近くの壁に叩きつけられた。

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「――ッ!」

一瞬息が出來なくなり、

苦しかったが直ぐに落ち著かせ教員達の方を見た。

「なっ……」

俺は絶句した。

そこには、の彼方此方にが空きそこから大量にを出して倒れている教員達がいた。

唯一、理事長リディアはは空いていなかったが、

かなり力を削られた様に見える。

何だよあの魔法!

くそ、このままじゃ教員共が死ぬ。

まぁ、あいつ等が勝手に攻撃したのが悪いんだが。

いや、俺のせいか。

勝てる気がしないけどやるしかないな。

「おい、ジン。けるな?」

「あ……ああ、何、とか。」

「あいつの事は俺に任せろ。

その間気絶している奴らと教員共を安全な所に連れて行ってやれ。」

「は?お前死ぬぞ!?」

「大丈夫だ。」

俺はそういってヴェラに飛び込んだ。

強化リインフォースメント・ボディをにかけヴェラがいる所に一直線に向かった。

だが、魔王ヴェラ相手に何の策も無く突っ込むのはただの馬鹿がやる事だ。

俺はそう思いヴェラの近くで止まりんだ。

「こいつは俺に用がある!だからお前らは引っ込んでろ。

それと、理事長リディア!

お前は負傷した奴らを安全な所に連れていけ!」

何か言ってくると思ったが、

そんな事は無く、俺の言葉を聞き理事長リディアは

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速やかにジンと協力して教員達を擔いで會場から出て行こうとしていた。

ヴェラはそんな下等種族共を見て、

鼻で笑い俺の事を見てきた。

「下等種族ごときを助けるとはな。」

「あー、俺も一応あいつらと同じ下等種族だぞ?」

ヴェラの言っている下等種族とは、教員達。

つまり人間、森霊エルフ、闇森霊ダークエルフ、小人ドワーフ、獣人ビーストの事を指しているのだろう。

ちなみに、俺の種族は人間という事は俺も下等種族だ。

「お前の様な人間がいてたまるか。」

「うわぁ、ひどい。」

ジン達が完全に會場から消えると

ヴェラは口の端をつり上げて不気味な笑みを浮かべ、

まるで獲を狩る猛獣の様な眼つきになり、

片手で何かを握るような形を作るとそこに黒い何かが集まり、

真っ黒な大剣が現れた。

俺の左を作り出した時と同じやつか。

たとえ強化リインフォースメント・ボディを掛けていても

あんなのくらったらやばそうだ。

俺はそう思い、

腰にあるハズの武を取り出そうとした――が

「あっ。」

そういえば、武部屋に忘れてんだった。

ヤバイ、どうしよう。

「あ?どうした。

ああ、そういえば武が無いな。

ちょっと待て。」

焦っている俺を見てヴェラはそう聲を掛けてくれてた。

この時のヴェラの表は普通になっていた。

何て気が利くんだ。

ヴェラ様超天使!!

悪魔だけど。

「ほら、出來たぞ。」

ヴェラは真っ黒な短剣2本を此方に投げてきた。

短剣は俺の目の前で落ち、

地面にサクッと刺さり俺はそれを抜き、

何時もの様に構えた。

そしてヴェラは、再びあの表になった。

「さぁ、邪魔はいなくなった。

見せてもらうぞソラ=バーゼルドっ!」

疾風――いや、そんな程度では表現出來ないような速さで迫ってきた。

俺が気付いた頃にはすでにヴェラは大剣を振り上げていて、

俺は咄嗟にそれを右に避けた。

「うぉ……」

本當は防ごうかと思ったが、

直前に俺の勘が危険だと知らせてくれた様な気がしたから俺は避ける事にした。

だが、そのおかげで俺は助かった。

ヴェラが大剣を振り下ろした所はそこまで深くないが、

まるで渓谷の様に一直線に地面が割れてていた。

俺はそれを見て、エリルスは俺と戦った時凄く手加減していたんだな。

と思い知らされた。

ヴェラでこの強さだ。

それなら大魔王のエリルスはもっと……ゴクリンコ

「良い判斷だ。

だが、避けてばかりではダメだ。」

ヴェラの目的はこの左腕とかをちゃんと使いこなせているかを確認することだ。

つまり、避けてばかりでは無く、

け流したり此方から攻撃をする必要があるって事だ。

「ああ、努力するよ。」

「次は貴様から攻撃してこい。

強化は使っていいがそれ以外は使わずにかかってこい。」

そうだよな、

他のスキルとかを使って攻撃したらあいつの目的は果たせないからな。

だけど、強化は良いとか優しいな。

「行くぞっ。」

地面を蹴り上げ、ヴェラ一直線に飛んだ。

強化のおかげで人間離れした速さで。

そしてヴェラの顔を目がけて両手にある短剣を振り下ろした。

――キンッ

金屬音と共に衝撃波が放たれた。

俺の攻撃は完全に大剣によって防がれた。

だが、短剣はヴェラの大剣にし食い込んでいた。

行ける!

「うおおおおお――っ!」

俺はそう思い更に力をれたが、

ヴェラによって俺は簡単に薙ぎ払われてしまった。

勢い良く飛んでいき、壁にぶつかる瞬間に何とか態勢を立て直した。

「貴様にその腕を授けた時、

私は何と言った?」

「え、確か……」

確か……

『お前の気持ちが強ければ強いほどそのアイテムはお前に力を與える。』

的な事を言っていた気がする。

……俺の気持ちが強ければ強いほど力を

……良く分からんが、やってみるか。

「思い出した様だな。」

「ああ、もう一回行くぞ。」

俺は再び地面を蹴り上げ、ヴェラの目の前まで行き短剣を振り上げた。

だが、今回は先程とは違う。

俺はヴェラを倒す。

いや、せめて大剣を壊す!

何が何でも必ず、必ず破壊する!

気持ちが強ければ強いほど――

「うぉおおおりゃあっ!」

俺は雄びを上げ、力一杯短剣を振り下ろした。

――ギンッ!

再び大剣によって防がれてしまった。

くそっ!こんなんじゃ破壊できない。

もっとだ。もっと!

「っ!?」

突然左肩から左手までが熱くなり、

力が湧き出てきた。そして――

「ほう。」

――バキンッ!

金屬が砕けた様な音がなり、

衝撃波と共に大剣の剣先が宙を舞った。

そう、俺は大剣を破壊した。

そして、その勢いで俺の短剣はヴェラのを斬り付けそうになり、

俺は咄嗟に転移を使った。

俺は転移した先で壁に激突した。

強化を掛けていた為そこまで痛くはなかったが、

衝撃が強く、危うく気絶する所だった。

立ち上がろうとすると、

突然ヴェラが手をばしてきた。

「見事だ。まさか破壊されるとはな。

それにしても何故私を殺さなかった?

あの勢いだと普通に私の事を殺せていただろう。」

噓だな。

あの程度で殺せるはずがないだろ。

「ふっ、ヴェラの目的は俺を殺す事では無いだろ?

あくまで使いこなせているかを確認しにきたんだろ?

だったらお前の大剣が破壊された時點で目的は果たせたって事だろ。」

「なっ、貴様は面白いな。

……一つ聞いてもいいか?」

「ああ。」

「貴様は何のために強くなる?」

「そうだな……」

俺の目的はあの時から変わっていない。

そう――

「――とある王と神に復讐するためかな。」

俺がそう言うとヴェラは一瞬目を丸くして固まっていたが、

直ぐに普通の顔に戻った。

そして、今まで見た事も無い笑顔を浮かべた。

「面白いな!気にったぞ!」

「そりゃ、どうもっ」

俺はヴェラの手を摑んだ。

そして――

「ヴェラは笑っていた方が可いぞ。」

「ふっ、そんな事を言うのは“ソラ”ぐらいだ。」

こうして俺とヴェラの戦いは幕を下ろした。

ヴェラとの戦闘を終え、

俺はアイがヴェラの事を紹介してくれと言っていた事を思い出し、

ヴェラに伝えた。

てっきり、ヴェラの格だと斷ると思っていたのだが、

何と『私から會いに行こう。勿論変裝してな。』

と言ってカッコよく姿を消した。

ヴェラが消えると同時にヤミが此方に向ってきた。

その後をエシア達が追っていた。

そして、ヤミは俺の抱き著いてきた。

それも今までに無いほどの力で。

「お、おい。ヤミ?」

何なんだ?

力が強い……これじゃ抱き著かれているというより締め付けられているじだ、

明らかにヤミの様子が違うぞ……

「ますた、どうしてわたしをよばなかったの。

まってたのに。

はんせいして!。」

どうしてって言われてもな、

あいつの目的は俺がこの左を使いこなせているか確認する事だったし、

ヤミが戦っても意味ないし。

そんな事を思っているとヤミは更に力をれてきた。

「っ!……はい。ごめんなさい。」

「つぎはないよ」

ヤミはそう言って力を緩めてくれた。

「ソラさん……貴方は一何者なんですか。」

ヤミを追ってきたシルロが若干息を切らしてそう言ってきた。

何者か……。

確かにさっきの戦闘を見られていたら人間では無いと認識するだろう。

だが、それでも俺は――

「俺は人間だ。」

「……そうですか。私たちはソラさんの言葉を信じます。

ですが、他の生徒達はソラさんの事を軽蔑したりするでしょう。」

「軽蔑か。」

それもそうだよな。ヴェラに名前呼ばれちゃったし、

それを聞いていた生徒は多いはずだ。

俺は別に軽蔑されようが気にしないが、

あまりこいつ等エシア達は巻き込みたくないな。

……短い間だったがお別れか。

「大丈夫だ。

お前達には迷かけねえよ。」

だが、本當に良いのか?

ヤミはこの學園を気にっている。

それなのに――

「だいじょうぶだよ。

ますたといっしょにいられるならわたしはまんぞく」

ヤミは俺が考えている事をわかっていたらしく、

俺にしか聞こえないように小聲でそう呟いた。

「悪いな。」

・・・・

それから俺達は會場から出た。

そして俺達を待ち構えていたのは大勢の生徒達の軽蔑する目だった。

そして生徒の誰かが聲を上げた。

「あいつだ!あいつが悪魔を呼んだんだ!」

その聲を聞いた周りの生徒達が便乗しだし罵聲などを飛ばしてきた。

「裏切者め!」「あいつの後ろにいる奴らもどうせ悪魔だ!」

後ろにいる奴ら。

つまりエシア達の事だ。

その後もエシア達の事を々と言ってきた。

中には「やめろ、アイツは悪魔が目の前に居ても逃げなかったんだぞ」

「決めつけは良くない」

など、マシな事を言ってくれてる生徒もいた。

だが、やはり罵倒の方が多い。

俺は気になりチラリと後ろを見てみるとそこには

下を向いて今にも泣きそうなシルロがいた。

そんなシルロをめようとしているエシア達。

そんな景をみて俺は決意した。

悪を演じようと。

俺はとある小説の悪役を思い出し、

それを演じた。

「ふふふふふっははははははは!」

俺が突然笑い出すと、

今まで暴言などを吐いていた生徒達が靜まった。

「そうだ。俺は裏切者だ!本來ならお前等を皆殺しにしたかった所だが。

あまりにも弱すぎて殺すだけ時間の無駄だと判斷した。

楽しかったぜ。

俺を仲間だと思い込んでいるこいつ等が裏切者と知った時、

どんな顔をするのかを想像するのがな!」

「なっ!お前は本當に屑の様だな。

お前など生きている価値はない!

死ね!!」

そう言って生徒の一人が剣を持ち此方に走ってきた。

だが、俺はその生徒が走ると同時に後ろにいたエシアを盾にした。

エシアは突然の事に驚いていた。

「ごめんな。」

俺は驚いているエシアの耳元でそう呟いた。

エシアは俺の言葉を聞き小さな聲で『ありがとうですの』と言った。

恐らく、エシアは俺がやっている事を理解しているのだろう。

「お前!きたねえぞ!

どこまで屑なんだ!」

エシアを盾にされ、生徒は止まりそうんだ。

「ふっ!どうした?來ないのか。たかが人質を取られた如きで。

まぁ、良い。

俺はここら辺で去るとしよう。」

「なっ待て!」

――転移テレポート

俺はヤミと一緒に寮の部屋に転移した。

やライラ達を取りに來たのだ。

「ふぅ、ちょっとくさすぎな演技だったかな。」

「ますた、わるいかおしてた。」

「そうか?――って」

部屋の中には何故かジンの姿があった。

「おっ、來たか。理事長様の言う通りだな。」

「どういうことだ?」

「ソラはこの學園を去るだろう。

それもペテン師となってな。

と言われたんだ。」

あいつは未來予知でも出來るのか?

「そうか。まぁ、大その通りだ。

短い間だったが世話になったなジン。」

「……そうか、本當に行くんだな。

じゃあ、これをけ取れ!」

ジンはそう言って俺の方に青白く輝いている石を投げてきた。

「これは?」

エリルスの記憶には無い石だ。

「友の証だ。なくすなよ?

なくされたら泣くぜ?」

「ふっ、そうか。大事にするよ。

……じゃあな。」

「ああ、次會う時は俺の彼を紹介してやるよ。」

「彼なんていたのか!?」

「いるさ!――次會う時には。」

「何だよ。驚かせやがって。」

「はははは!じゃ!

またな……あっ、そうだ。」

「何だ?」

「クラスメイト達の事は俺に任せろ。

それに理事長様からも頼まれたからな。」

エシア達の事か。

それにしてもあいつはこうなることも全てわかっていたのか。

理事長って凄いな。

「ああ、任せた。」

俺はそう言ってスラの頭に乗せ、未だに寢ているライラの拘束を解き、

おんぶし荷を持って転移した。

俺って何のために學園に來たんだろうな……

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