《勇者になれなかった俺は異世界で》ヘリムとソラ

ソラの視界が完全に暗転し、

先程までソラがヘリムと話をしていた空間が消え、

その場には真っ暗な空間が広がっていた。

何もかもが消え真っ暗になった空間だが、

その空間にの大きさに見合わない大きさの鎌をもった

一人のがぽつりと立っていた。

「悲しいなー、一応同じ空間にいるけど僕の姿が認識されないって

……まぁ、住む世界が違うから仕方ない事なんだけどね。」

はそう呟き、悲しそうにニコリと笑った。

「でも、もうし、もうしだけ我慢すれば――楽しみだな。

じゃあ、そろそろ僕も準備をしようか。」

はそう言って大きな鎌を大きく振ると、

の頭上に沢山の記號が書いたりしてある魔法陣が現れた。

そして、が口元を緩めニヤリと笑うと魔法陣から眩いが放たれ、

の事を包み込み一瞬で跡形もなくその場から消えた。

に包まれたと思えば、そのは一瞬で消えの目の前には、

訳のわからない刻印が刻まれている大きな扉があり、

その前に豪華な椅子が幾つか置いて在りその椅子には

赤いフード付きローブで顔を隠している複數の人が座っていた。

「やっほー死神共。」

死神、生命の死を司る神様。

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死神は突然現れたに驚き、

皆橫を向き何やらボソボソと話し合っていた。

そして、真ん中の椅子に座っていた死神が目の前にいる

の事を真っすぐに見つめた。

「問、汝、何者」

機械音の様な聲でそう言った。

それを聞いたはニコニコとしながら

『ん~僕は別の世界の神だよ。』と答えた。

死神達は再び話し合いを始めだした――が、それを見ていた

が痺れを切らして死神達の會話を無理やり中斷させた。

「あーもう、さっきからコソコソウザいよ。

面倒くさいからさっさと僕の要件を言うね――これから此処に來る

一つの魂を僕にくれないかな?」

「「「「拒否」」」」

今度は死神達は相談する事無く、一斉に聲を揃えてそう言った。

だが、は一切怯むこと無く、

まるで斷られる事が分かっていたかの様に

「そっか。じゃあ、仕方ないね――」

はそう呟き無邪気な笑みを浮かべて、

大きな鎌を構え、死神達の方へ目にも留まらぬ速さで突っ込み、

真ん中の椅子に座っていた死神の頭を椅子ごと切り裂いた。

「!?」

突然の出來事に他の死神達は驚き、

直していたが直ぐに狀況を理解し行に移そうとした

――しかし、死神達よりも早くの大きな鎌が迫ってき、

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椅子ごと切り裂かれた。

一人、また一人と……決して死神達が弱いと言う訳ではない。

単にが強すぎるのだ。

死神の脳がに命令を送る時間があればはその間に

數人の死神を倒す事が出來る。

「な、汝、一……っ?」

最後の死神の首が飛ぶはずだった。

しかし、は最後の死神に鎌を振りかかったものの、

あと數ミリの所で寸止めした。

「おっと、危ない危ない。

全員殺したら大変なことになっちゃうね。」

死神が全員いなくなると、魂の行き場がなくなってしまう。

故には死神を殺さなかった。

「君は數日気絶しててもらうね。」

フード越しに死神の頭に指を當てると、

死神は全から力が抜け、その場に倒れこんだ。

「さて――」

は鎌についたを薙ぎ払うと、

の池とかしている地面を楽しそうにスキップをしながら進み、

真ん中の椅子の前で立ち止まり、

頭が無い死神の死をまるでゴミを捨てるかのように軽くポイッと投げた。

そして、は空いた椅子に腰を掛け――

「僕の準備は終わったよ。

後は君がプロローグを終了させれば――楽しみだなぁ。」

・・・・

「……くそ、あの野郎覚えとけよ。」

目を覚ました俺はそんな愚癡を小聲で言いながら周りを見渡した。

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夜か。

部屋の中はまだ薄暗く、

窓から差し込むが無ければ真っ暗で何も見えなかっただろう。

ベッドの上には結達、皆が気持ち良さそうに寢ている。

あんな時間に寢たら流石に変な時間に目が覚めてしまうよな

……暇だ。

寢ようにもすっかり眠気がさめているし……

そんな事を思いつつ俺は何と無く、

皆を起こさないようにこっそりとベッドから出た。

別にやりたい事があるとかでは無い

何の目的も無い、本當に何と無くだ。

特にやる事も無いしし気分転換に外に出てみるか。

そう決めた俺は早速軽く支度を済ませて、

外に出る準備をした。

よし、行くか。

部屋の扉をこっそりと開け部屋から出て、

真夜中にも関わらず全ての燈りが付き凄く明るい

通路を外を目指して歩いた。

時間的に當たり前の事だが魔王やエリルスに出會す事は無く、

スムーズに魔王城の外に出る事が出來た。

涼しくも暑くも無くて丁度いい気溫だな。

毎日がこんなじの気溫だったら良いのにな、

この気溫の中だと凄く寢やすそう……それにしても――

俺は空を見上げた。

綺麗だな……

ここら辺には魔王城以外何も建っていない為、

無駄な明かりが無く空からの自然ながハッキリと地上を照らしている。

そんな綺麗な空をぼんやりと眺めながら魔王城の周辺を散歩していると、

何処からかブゥン、ヒュン――と風を切る音が聞こえてきた。

別に興味があった訳ではないが、

大してやる事も無かった為暇つぶしがてらに

風切り音が聞こえてくる方に行ってみることにした。

――ブゥンッ

おっ、こっちで合ってるようだな。

風切り音はどうやら魔王城の裏側から聞こえてくる事が分かり、

俺は出來るだけ気付かれない様にこっそりと近付いた。

普段はし暗い赤の髪だが、

今は空からので何時もよりし明るいような

の髪で片目を隠していて、真っ黒な角と翼を生やした

――アイが長剣を持って一生懸命に素振りをしていた。

熱心だな……って、あれっ?!

「アイ!?」

俺が驚いて思わず聲を上げると、

アイは此方に気が付いて素振りを中斷させ

「おお、ソラか。どうした、そんな化けを見たかの様な顔をして

……し傷つくぞ?」

「何で……悪魔の全部隊は――」

俺は途中まで言いかけて、

ふと、ある事を思い出して言葉を飲み込んだ。

あー、そうだった……アイはヴェラに呼ばれて魔王城にいたんだったな

……良かった。

「いや、何でもない。忘れてくれ。

それにしても隨分と熱心に素振りをしてたな。それは――」

俺はアイに近付きながらそう言って、

素振りを中斷させて時に地面に突き刺した剣に視線をやった。

「ヴェラの部屋に在った剣と同じ様な気がするけど、貰ったの?」

地面に突き刺さっている剣は、

俺がこの前ヴェラの部屋に行ったときに見せてくれた

沢山の剣の中で一番、派手な模様がった長剣と同じようなじがする。

「良く気付いたな!この剣はヴェラさんが俺にめとしてくれたんだ。」

め?」

「ああ、何やら俺と同じ種族の皆が全滅したそうでな、

それでヴェラさんが『お前は生き殘れよ。』って言ってくれたんだ!

本當にヴェラさんはカッコいい。」

俺は一瞬聞かない方が良かったなと思ったが、

アイは仲間が全滅したのにも関わらず、平然と寧ろ、

どこか楽し気なじでそう話してきた。

あれ?アイは余り気にしていないのか?

「……その、隨分と楽しそうに話しているが気にしてないのか?」

「ん?全滅した事?だって、幾ら同じ種族と言っても

俺と仲が良い奴なんて誰も居なかったし

……俺は學園通ってて皆から変な目に見られてたし……」

あっ、しまった。こっちの方が聞いたらまずかったやつだ。

聞きたくも無いアイの悲しい事が……このままだとまずい

……何か別の話題にしなくては――っ!!

「なぁ!そう言えばあいつ等どうしてるか知ってるか?」

苦し紛れに出てきたのは學園で同じクラスメイトだったシルロ達の事だった。

どうしてあいつ等の事を言ったのか自分でも分からない。

アイがシルロ達の事を知らなかったらこの話題すぐ終わりじゃん

……完全に間違ったな。

「あいつ等?」

「あー、知らないかもしれないが、

俺が學園に居た時同じクラスメイトだった奴等の事。」

「ああ、知ってるぞ。

ソラが居なくなってからあいつ等は學園の人気者になったぞ。

いい意味でな。」

「は?」

人気者だと?しかも良い意味で?

どういう事だ。一何があったんだ……

「俺は詳しい事は知らないが、

ソラと同じルームメイトのジンだっけ?

あいつが何やら上手い事やったらしいぞ。

まずはソラの事を滅茶苦茶悪く言って、

シルロ達だっけ?あいつ等はソラに騙されてたって言う設定を作り出して、

後は理事長と協力してシルロ達の実力を皆に知らしめて、

落ちこぼれでは無いという事を伝え、

理事長の力でクラス替えもして、

シルロ達は他のクラスにり、

々な事があり今では人気者に

……あれだ、シルロ達は見た目とか結構良くて、

今まで落ちこぼれとか言われてて関わったらダメな雰囲気があっただろ?

まぁ、その雰囲気が無くなり、

皆手のひらを返したかのように話しかけ

直ぐに人気者になったらしい。」

ふむ、良く分からん。

だが、ジンが々と頑張ってくれたらしいな。

確かに頼むとは言ったけどそこまでやってくれるとはな、流石だ。

それにしても、シルロ達の実力を知らしめる何て事良くやろうと思ったな……

確かにあいつ等は強いけど、

そんな力知らしめたら次は嫉妬とかされて

面倒くさい事になりそうだけどな……まぁ、そこら辺は理事長

……名前何だっけ……まぁ、良いや、

で、その理事長が々とやってくれたのかな?

何はともあれ良かった。

「そうだったのか、ありがとな。」

「ああ。所で――暇だよな?」

うわぁ、何か獲を見つけたかのような眼で見て來てるな

……嫌な予がする。

「遊ぼうか!俺鬼な、ほら!逃げないと死んじゃうかもよ!!」

「ふざけんなああああ!」

俺は再び悪魔の様な鬼ごっごを強制的にさせられた――

・・

「あ――っ!!疲れたっ!」

あれから數時間位経っただろうか、

何せ必死で逃げて居たもので時間の覚が無くなっていた。

スキルを使わないで、主に魔王城を中心にグルグルと回っていただけだが、

アイが翼を使って空を飛び先回りしてきたり、

知らぬ間に地面にを掘って罠を其処等じゅうに仕掛けたり

……滅茶苦茶な鬼ごっこだった。

「あー、楽しかったな!!」

アイは地面に大の字で仰向けの狀態で寢転がり楽しそうにそう言ってきた。

「俺は恐怖でしかなかったけどな。」

楽しそうに年を追いかける

こう言えば聞こえは良いかもしれない、

だが、実際は、楽しそうに年の事を兇を振り回して追いかける

俺からしてみれば恐怖でしかない。

しかも、剣先を此方に向けて空から凄い勢いで突っ込んでくるんだぜ?

「もう二度とやりたくないぞ。」

「えー、また遊ぼうよ。

ソラと遊ぶ時は遠慮しなくて良いから本當に楽しんだよ。」

「いや、遠慮してくれよ。本當に死んじゃうから。」

「じゃあ、今度はスキル使っていいから、遊ぼうよ。」

確かにスキルを使ったら間違っても死ぬ事は無いだろうけど

……スキルを使ったらそれはそれで、

々と問題が起こりそうだ。例えば――

「俺がスキルを使ったらきっと見失うぞ?」

「全く、俺を甘く見てると死ぬぞ?」

「うわぁ、怖い怖い。」

「おい、信じてないだろ?」

「そんな事無い。」

「絶対信じてないな。よし、今からスキルを使って遊ぶぞ。」

おいおい、噓だろ?しからかっただけなのに

……一そのの何処からそんな元気が出てきているのやら……

「また今度な。今日はもう疲れた。それに――」

俺は空に視線をやった。

「もう夜が明けてきた。

俺はそろそろ部屋に戻る。」

「もうそんな時間か。

楽しい時間と言うはあっという間に過ぎていくな。」

わかる。アイの言っている事は良く分かる。

だけど、今回、俺は何にも楽しくなかったぞ。

恐怖でしかなかったんだよ。

「本當は散歩に來ただけのハズだったんだが凄く疲れた

……部屋に戻ったらもう一回寢るか――と言う訳でじゃ――」

俺はじゃあな。と言おうとしたが、

とある事を思い出し、途中で言葉を飲み込みこんだ。

別にあの野郎ヘリムの言葉を信じた訳ではないが、

萬が一、萬が一あの言葉が本當だった時の保険としてだ。

俺はそう自分に言い聞かせ、

未だに地面に寢転んでいるアイの方を向いて口を開いた。

「信じようが信じなかろうが何方でも良いが、一応聞いてくれ。」

「何だ?」

「――明日神共が攻めて來るかも知れない。」

俺の言葉を聞いたアイは顔一つ変えずに無言で立ち上がり、

徐に背びをしながら

「そうか、ならヴェラさん達にも伝えておかないとな。」

と何の疑いもせずにそう言った。

「え?信じるのか?」

「信じようが信じなかろうが、

萬が一に備えるのは別に悪い事じゃないだろ?」

「ん……まぁ、そうか。」

「ああ、じゃあ、俺はヴェラさん達に伝えて來る。じゃ、またな。」

アイはそう言って長剣を持って魔王城の中にっていった。

俺はそんな後ろ姿をぼんやりの眺めながら、

あ、そうだ、ライラにスキルを伝承しとかないとな。

と心の中で呟いてアイの後を追うように魔王城の中にった。

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