《勇者になれなかった俺は異世界で》破壊の神

何か喋る訳でも無く、

心地の良い風の音と二人の鼓の音だけが周囲に広がる。

沈黙が続いたが不思議と嫌な沈黙では無い。

寧ろ心地良いじの沈黙の時間だ。

だが、ずっとこのままの狀態でいる訳にはいかない。

そう思い聲をかけることにした。

「もう大丈夫か?」

「……」

ヘリムは答える事は無かったが、

無言でコクリと頷き離れた。

そして、ニッコリと眩しい笑みを浮かべながら

「ありがとう」

と言って。

何で禮を言われたのかは分からないが、

問いはせず、俺からも禮を言うことにした。

「こっちこそありがとな。」

ヘリムからすれば何故禮をする?

と疑問に思われるかもしれないが、

気にしていなかったが、今まで心のどこかで不安だったのが、

ヘリムの姿を見た瞬間その不安は消え、清々しい気分になれた。

だから俺は禮を言う。

もしかしたらヘリムも同じ事を思っているのかも知れないな。

「うん、ソラ君に沢山話したい事あるけど、

その前にご主人様に話して置かないとね。」

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「ああ、そうだな。」

ご主人様――エキサラに々と話さなければいけない。

俺の命の恩人だし、世話になってるし。

ヘリムの事を話したら俺の正も話す必要があるかも知れないな。

まぁ、その時は正直に話してやろうじゃないか。

きっとエキサラなら大丈夫だろう。

そんな事を思っていると、気が付けばヘリムは既に玄関の前に立ち

俺の事を呼んでいた。

「どうしたんだい?」

駆け足で玄関まで向かうと、

ヘリムがし心配そうに顔をみてきた。

背が合わないせいでヘリムが俺の長に合わせようと

膝を曲げて顔を見てくる。

ヘリムの気遣いは嬉しいんだが、

なんか複雑な気分だ。

「いや、俺の正も話した方が良いのかなって。」

「ん~どうだろうね。

そこら辺はご主人様次第かな?

僕からは話すつもりは無いけど、

ご主人様から聞いてきたら答えて上げても良いかもね。」

「わかった。」

そう言って

俺が玄関の扉を開けようとすると、

ヘリムが「あっ!」と言ってきた。

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「どうしたんだ?」

気になり振り返ってみると、

ヘリムが何やら焼野原を見て難しい顔をしていた。

「この焼野原元に戻した方が良いかな?」

「戻せるなら是非戻してくれ。」

せっかく自然かで良い所だったのだから、

戻せるなら戻してほしい。

それに、エキサラも自分の家から出たら焼野原って嫌だろ。

「わかったよ。」

俺は一どんな魔法を使うのだろうかとワクワクしていると、

ヘリムは大きく右肩をグルリと回し、

顔の前で右手を止めて――親指と中指を使って指パッチンをした。

すると、焼野原だったのが一瞬で緑を取り戻し、

元の狀態に戻った。

「ええぇ……」

なんだよそれ、てっきりもっと凄い魔法でも使うかと思った。

いや、一瞬で元に戻す魔法自は凄いんだけどさ、

なんと言うか凄く殘念。

だって、指パッチンだぜ?

クラスに一人はいる、話していると時に指パッチンする奴。

それも、ムカつく事に無駄に音が良いんだよな。

ヘリムの指パッチンも無駄に音良かったし……

「どうしたんだい?元に戻したつもりだけど

……もしかして、何か間違っていたかな?」

すこし落ち込みながらそう言うヘリム。

俺はそんなヘリムの姿を見て急いでカバーする。

「大丈夫だ、なんも間違ってないぞ!!

あまりにも凄い魔法だったから心してただけだぞ!」

「でも、さっきええぇ……って

殘念そうな聲出してたよね?」

うっかり心の聲を表に出してしまっていたのか。

しまった……

「い、いやそれは……」

「それは?」

「あの、その……あれだ!

あれはな、驚きのええぇ!だったんだよ。」

「なら良いんだけどね。」

ふぅ……何とか誤魔化せたな。

危ない危ない次からは心の聲を出さないように

気を付けていかないとな。

トラブルになりかねない。

「じゃ、行くか。」

「うん。」

次こそ俺は玄関の扉を開け、中に足を踏みれた。

家の中にると凄く味しい匂いが

俺とヘリムの事を出迎えてくれた。

「凄く良い匂いがするけど……何の匂いかな」

「ん~」

この食を刺激する匂いの出どころは

絶対にエキサラの料理だ。

また大量に作ってそうだな……

ヘリムの事を客人として認識して

もてなすつもりなのか、気が利くな。

……さっき食べたばかりだけどな。

真剣な雰囲気で話し合うより、

皆で食事をしながら楽しい雰囲気で話し合った方が

スムーズに進む。

「ご主人様のもてなしだ。」

「おもてなし!!」

ヘリムはそう言いながら目をキラキラと輝かして

見てる側からでも分かるほどワクワクとしていた。

「そんなにワクワクする事か?」

「うん!僕、誰かにもてなしてもらった事何て無くて

今回が初めてなんだよ。

ん~~!!楽しみだな!」

神様のくせに誰かにもてなしてもらった事無いって……

ヘリム、お前ボッチだろ。

と思ったが、口に出してそんな事を言う程

愚か者では無いので心の奧底に封じ込んだ。

「ご主人様の料理は本當に凄いからな、

覚悟しておけよ。」

「流石僕たちのご主人様だね、楽しみ!」

「ああ。行くぞ。」

リビングの扉に近付けば近づく程、

匂いが強くなり、食を刺激してくる。

さっきお腹一杯食べたはずだが、

匂いに反応して腹の蟲がグーグーとなり始めた。

ヘリムも鳴っていたが、

一瞬たりとも恥じる事は無かった。

リビングの扉を開けると、

案の定、豪華な料理が沢山テーブルの上に並んでいた。

エキサラは此方に気が付いていないようで、

大量の料理をえちっらおっちらとテーブルに運んでいた。

「うわぁあ!凄いね!

どれも味しそうだよ。

これ全部ご主人様が作ったのかい?」

「うっ!」

ヘリムの聲でやっと此方の存在に気が付いたエキサラは、

ビクリッとを震わせ驚いた様子だ。

「お、驚かせる背は無いぞ。

ビックリして心臓止まったのじゃ。」

サラッと行ったが、

ははは……止まったのか、心臓。

まぁ、エキサラなら止まっても大丈夫か……

「ごめんねー」

「うむ、次からは気を付けるのじゃ。」

「分かったよー。

で、で、この料理は全部ご主人様が?」

「うむ、そうなのじゃ!」

を張って誇らしげにどや顔をしながら

そう言うエキサラ。

毆りたい。

「凄いね!ご主人様!

ねぇ、ねぇ、これ食べて良いの?」

「うむ、勿論良いのじゃ。」

「わーい!」

エキサラから許可を貰ったヘリムは

凄い勢いで椅子に座り料理を口一杯に詰め込んだ。

うおっ、掃除機みたいだな……

あんなに沢山あった料理がみるみるうちに減っていくぞ。

ヘリム恐ろしい。

「ほれ、ソラも食べるのじゃ。」

料理を運び終わったエキサラは

椅子に座り俺にも食べる様に進めてきた。

「おう。」

椅子に座り、俺も口一杯に料理を詰め込んだ。

自分で言うのもなんだが、

俺の胃袋ってどうなっているんだろうな。

そんな事を思ってしまう程、

スルスルと料理がっていく。

味しいなぁ!流石ご主人様。」

「これこれ、飲み込んでから話すのじゃ。」

「えへへ、ごめんごめん。」

一通り料理を食べ終わり、

落ち著いたヘリムがゴホンと咳払いをした。

「さて、ご主人様。

僕に聞きたい事はあるかな?」

「うむ、勿論あるのじゃ。」

「うん、じゃあ何なりと聞いてくれよ。」

うお……何だか張するな。

「じゃあ、お主は何者なのかのう。」

さっき自己紹介してなかったか?

まぁ、いきなり現れて神様なんて言われても

信じる事は出來ないよな。

「ん~さっきも言ったと思うけど、

僕はヘリム、神様だよ。」

「神様かのう……神様がどうしてソラと知り合いなのじゃ?」

まぁ、當たり前の質問だな。

神様が俺みたいな弱い奴隷と知り合い何て

おかしいからな。

「そうだね、僕とソラ君は簡単に言えば

ご主人様と似たような関係かな?

話せば凄ーく長くなっちゃうけど――」

「長いのは嫌いなのじゃ。」

ヘリムの話を遮りそう言い放った。

確かに長い話は俺も勘弁してほしい。

「うーん、じゃあ、簡単に。

神様の僕はたまたまソラ君を見つけて、

何としても僕のにしたくて々と仕組み、

やっと手にり今に至る。」

「うわぁ、凄くてきとうだな。」

「なるほどなのじゃ。

要するにソラに一目ぼれしたのじゃな。」

ヘリムの説明で理解出來なかった俺とは真逆に、

理解出來たエキサラは何やらとんでもない事を言い始めた。

「ご主人様よ、なーにを言っているんだ?」

「おっお!凄いね、その通りだよ!流石ご主人様。」

おい、こら。

お前まで乗るなよ。

「くはははは、神様を一目ぼれさせるなど、

ソラもなかなかやりおるのう……」

「……」

もう、何も言いたくない。

さっきまで張してた俺がバカみたいじゃないか。

「ははは、それでご主人様、

他に聞きたい事はある?」

「うむ、最後の質問じゃ。

お主はあの破壊の神、ヘリム=ゾルデペルギかのう?」

破壊の神、破壊神って事か?

ヘリムがか?こんなあほの子みたいなやつが破壊神の訳ないだろ、

せめてボッチ神とかだったら……

「そうだよ。

良く知ってるね。

どうだい?僕を軽蔑するかい?」

「いや、別にそのような事はしないのじゃ。

寧ろ尊敬するのじゃ。」

「尊敬?」

「うむ、お主はあの戦の中、

誰にも縛られずに自由に生きて居たじゃろ?

気に喰わないものがあれば即破壊し、

しいものは全力で手にれる。

妾はそんなお主に救われたのじゃ。」

「そうなのかい。」

やばい、全然話に付いていけないぞ。

ヘリムが破壊神でその破壊神にエキサラは救われただと?

どういう事だよ。

「でも、僕、救った記憶なんてないけどな……」

「それもそうなのじゃ。

お主はただ気に喰わない國を破壊しただけに過ぎぬのだからのう。

たまたま妾がその國に捕らわれてて、

永久的に封印されるとこにお主が現れて全てを破壊していったのじゃ。」

ほうほう、なるほど。

エキサラが永久封印される寸前にヘリムがどっかーんと。

ヘリム、ヒーロじゃんかっこいい。

「國なら沢山破壊したから覚えてないや、

でも、そう言う事もあったんだね。

何だか嬉しいな、破壊しか脳の無かったあの時の僕に謝してくれて。」

「うむ、助かったのじゃ。

本當に謝なのじゃ。」

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