《勇者になれなかった俺は異世界で》大魔王エリルスと魔王達

「じゃあ早速話そうか。」

ベッドの上で仲良く川の字になりながら

ヘリムは仰向けになり話を始めた。

そんなヘリムの事を橫目で見ながらこれから語られるであろう

理由に俺はしワクワクしていた。

「僕がソラ君の下に行けなかった理由を――」

下らない理由だったら説教してやる。

そんな事を考え、長い長い話は始まった。

・・・・

「プロローグは此処までだよ。

本當にお疲れ様。

此処からはニューゲームだ。

お互い協力し合って楽しもうよ!

じゃあ、また直ぐに會おう――」

――ジュウウッ

ソラとヘリムは、

突然現れた魔法陣の中に吸い込まれるように消えていった。

ソラはファルウエにそしてヘリムは――

・・・・

魔王城の長い通路の先にある巨大な扉。

その中には円卓に座る6人の悪魔――大魔王、魔王たちが座っていた。

特に重大な話がある訳でも無く、魔王達の表は自然だった。

「え~と、今日集まってもらったのはね~

ソラ達の事なんだけどね~新たな魔王にしようと思うんだよね~」

「は?」

大魔王エリルスが何時も通りの口調で軽く言った瞬間、

先ほどまでの自然な表が噓だったかの様に

魔王達の表は一気に固くなり目を見開いていた。

「……」

驚きの余り聲が出たが、

その後に続く音は出ず、

次にやってきたのは沈黙。

「あれ~皆どうしたの?」

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沈黙を破ったのは沈黙を起こさせた張本人。

魔王達の表は固いが、このエリルスの表はいつも通りだ。

自分が何を言ったのか理解していない訳ではなく、

エリルスにとっては大した事では無いだけなのだ。

「大魔王様……?

何を言っているんですか?」

やっとエリルス以外が聲を発した。

「ん~だからソラ達をね~

新しい魔王にしよう~って意味だよ~」

「いえ、意味は分かっています。

ですが、魔王にするなんてそんな事出來るのですか?」

「ん~簡単だよ~

魔王に認められればもうその時點で魔王になるんだよ~

我もそうだったしね~突然大魔王になれって言われてさ~

びっくりだよね~」

エリルスは自分の過去を思い出しながら、

楽しそうに語り一人で笑い出した。

そんな景を見て魔王達は気持ちが和らぎ、

も徐々にらかくなっていった。

「そ、そんな簡単な事なんですか……」

「うん!そうだよ~

君達は覚えていないかもしれないけどね~

魔王になる時は~我が魔王になれ~

って言ったんだよ~」

「はぁ、そうなんですか……」

思いの外簡単に魔王になれるという事を知り、

驚きの半面がっかりもする。

魔王と言う存在にたった一言でなれてしまうと言う事に。

「ちなみに、反対の者はいる~?」

魔王達は全員何の迷いも無く、

一斉に首を橫に振った。

それを見てエリルスは笑みを浮かべ、

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「うん、いいね~!

それじゃあソラ達が帰って來――っ!?」

「「「「「大魔王様!!」」」」」

突然、エリルスの顔が真っ青になり、

魔王達全員が立ち上がった。

「どうしました?!」

「……噓、ダメ……」

エリルスは椅子に座ったまま頭をガックリと落とし、

両肩に手をやり小刻みに震え、

誰にも聞こえない程小さな聲で呪文の様にブツブツと呟いている。

普段のエリルスを知っている魔王達からすれば、

今のエリルスの狀態は明らかに異様だ。

「大魔王様?

確りしてください!」

ローズが心配そうにエリルスに近付くと、

それに続いて他の魔王達も急いでエリルスの周囲に集まった。

そして、エリルスの変わり様に誰もが驚いた。

「大魔王様……」

「ローズ、何か異常はないか?」

ベラが慌てて治癒の魔王にきいた。

ローズは何も答えず、代わりに頭を橫に振った。

「何のスキルの影響もけていない……

これは恐らく大魔王様自の問題かと。」

「くそっ!一何がっ!」

「大魔王様、確りしてください!」

「大魔王様!」

皆がエリルスの事を必死にさすったり

呼んだりしているが、エリルスは全く反応しない。

「……」

突然呟きが止まった。

魔王達もそれに気付き、

ここぞとばかりに一生懸命名前を呼んだ。

だが、それは無意味だった。

エリルスは突然、勢い良く立ち上がった。

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「大魔――っ!」

今までは下を向いていた為、

顔が良く見えなかったが今立ち上がり顔がハッキリと見え、

魔王達は絶句した。

エリルスの瞳からはが消え、

瞬きも一切しない。

口は半開きになり首は若干向いている。

異常だ。

「大魔王様……」

「……噓だ。」

突然エキサラがポツリと呟いた。

「何、がですか?」

「噓だ噓だ噓噓!」

「大魔王様!落ち著いてください!!」

「噓噓噓だ噓だ噓噓噓だ噓噓だ噓だ噓噓噓だ

噓噓だ噓だ噓噓噓噓噓噓だ噓だ噓噓噓噓だ噓噓だ噓だ噓噓

噓噓噓だ噓だ噓噓噓噓噓だ噓だ噓噓だ噓

噓噓だ噓だ噓噓噓噓だ噓だ噓噓噓噓だ噓だ噓噓だ噓」

エリルスがまるで狂ったのかの様に

自分の髪をくしゃくしゃに掻きし、

「噓だ」とび始めた。

「くそっ、ローズ!」

「はい!大魔王様ごめんなさい!!」

ローズが手のひらからが飛び出し、

一瞬にしてエリルスのを包み込んだ。

包み込まれた瞬間にびは止まり、

大人しくなった。

「取り敢えずはこれで大丈夫。」

「大魔王様、大丈夫ですか?」

やがてが消え、

元通りになったエリルスが現れた。

右手を前額に當てて、頭を振った。

「あ、ああ……すまない。」

「一どうしたんですか……?」

口調だけが何時も通りになっていたかったが、

落ち著きを取り戻したエリルスに

グウィンが尋ねる。

「あ、ああ、それは――っ!!」

「?」

不安、悲しみ、怒り、

そして何よりも憎しみがエリルスの中を蝕んでいく。

「あ、あああああ!!

ソラが――ソラが!!

よくもよくも……殺す!殺してやる――っ!」

エリルスの中から禍々しい殺気が

大量に溢れだし、魔王達を飲み込んでいく。

「ソラ?ソラに何かあったのか?!」

ヴェラがソラに反応したが、

そんなのお構いなしに殺気が襲ってくる。

「っ!これはヤバイぞ。ローズ!」

「っ!」

ウィルライアが慌ててローズに命令したが、

ローズは既に殺気に飲まれてしまいその場で餅を著いていた。

「このままじゃ俺達全員死ぬぞ!」

「分かってるっ!」

殺気に飲み込まれ、

今、ける者はウィルライアとヴェラだけだ。

唯一転移を使えるローズは殺気に飲まれ、何もすることが出來ない。

ヴェラとウィルライアはどうにか此処から逃げ出す方法を必死に考える。

「戦うか!?」

「バカかお前!額の傷増やしたいのか!ハゲ!」

ヴェラがサラッと悪口を言ったが、

そんな事を気にしている場合ではない。

「じゃどうするんだよ!」

「殺す殺す――っ!」

もう終わりだ。

唯一の出手段の転移も使えない、

かといって戦う訳にもいかない、

助け何て來るはずもない。

もう終わりだ。

魔王達はそう思った――が、

「――はい、そこまでだよ。」

――パチン

と、手と手を合わせた音が殺気に満ち溢れた部屋に転がり込み、

円卓の上にふわりと影が舞い降りた。

頭、、手、足を型どった影はゆらゆらとしていて形が

突然グニャりと変形したりして非常に不安定だ。

不安定過ぎてその場で形を維持するだけでも

困難そうで風が吹けば今にも消えてしまいそうな影。

「――っ!」

こんな時に敵か!

突然現れた影を見て魔王達全員がそう思った。

魔王城の円卓まで攻めて來たと言う事はかなりの強敵である、

誰もがそう解釈し、更に絶する。

逃げ場の無い部屋で死を覚悟する。

前には死、後ろに下がっても死。

どうせ殺されるなら我らの王に命を捧げよう。

ウィルライアは強くそう決意し、

自ら重い足取りで殺気の発生源エリルスの近くに歩み出した。

「おい――っ!」

悩んで悩んで出た答えは生では無く死だった。

ウィルライアと同じくヴェラが出した答えも同じだった。

だが、ヴェラは例え選択肢が死しかなくても――

「それを選ぶのは最期だ。」

ヴェラは力を振り絞ってウィルライアに近付き、

肩を思いっきり摑み強制的に振り向かせた。

「ヴェラお前さん――っ!!!」

「――っ!」

ウィルライアの目が走るほど見開かれた。

目には映って居たのはヴェラでは無くその後ろにいる影。

そしてその影から出るエリルスと匹敵する程の殺気に思わず聲を詰まらせる。

だが、その殺気は魔王達に向けられているものでは無かった。

「ねぇ、そこまでって言ったよね?

あまり僕を怒らせないでくれよ、

この狀態を維持するだけで疲れるんだよ。」

既に人型の原型は無く、影は不規則なきをしながら

足を構しゆっくりと円卓の上から降り、

地面を踏みしめ真っすぐ進む。

「――ぁ……」

ヴェラは背後から歩み寄って來る死に、

思わず聲をらしてしまった。

殺気自はヴェラに向けられている訳ではない。

それでもエリルスと匹敵する程の殺気をじる。

それが意味する事は――

「――」

影がヴェラをの橫を通り過ぎた瞬間確信した。

こいつは大魔王すら凌駕する化けだ。と、

此処で止めなくては大魔王様が危ない。

ヴェラの脳が急信號を出し、

を強制的にかそうとするがが震えて言う事を聞かない。

立っている事すらままにならず、ヴェラはその場に餅を著いた。

ウィルライアも同様に、餅は付かなかったが

膝が笑い、全から汗が噴き出ていた。

ムリだ。

ヴェラとウィルライアは戦う選択肢を捨てた。

例え魔王が束になって掛かっても勝つことは出來ない。

長年戦ってきたヴェラとウィルライアにはそれが嫌でも分かってしまう。

絶対的な力それは余りにも理不盡で無慈悲なだ。

強者が束になっても勝てない。

その力は絶対的なのだから。

魔王達を無視して影が辿りついた先は、

今も禍々しい殺気を出している大魔王エリルスの前。

影の殺気と大魔王の殺気。

二つの殺気がぶつかり合い、付近にある全てのが歪んで見える。

「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス

コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス

コロスコロスコロスコロスコロスコロス……」

未だにブツブツと呪文の様に呟いているエリルスは

目の前にいる影の存在に気が付いてすらいない。

殺気を向けられても意識は既に殺意へと変わり、

エリルスと言う殻を被った殺意と化していた。

「ねぇ」

「コロスコロス……」

「ねぇ……」

一切手は出さずにエリルスに聲だけ掛ける影。

だが、そんな聲は今のエリルスには屆くはずもなく

無視され続け影は「はぁ」とため息を吐いた。

「良い事を教えてあげるよ。

本當はもっと勿ぶりたかったけど、仕方ないね。

――ソラ君は生きて居るよ。」

「コロ――ッ!!」

エリルスの殻に魂が宿る。

殺気はまだ出ているが反応は在った。

影は追い打ちをかける様に話しかける。

「僕はソラ君の居場所を知っている。

教えても良いけど條件があるんだよ。

どうだい?」

「――!」

「早く答えてくれないと、

僕もそろそろ限界が近いよ、

早く答えてくれないかい?」

「――証拠――証拠は?」

エリルスの意識が完全に戻った瞬間、

殺気が収まり、それをじ取った影も殺気を収めた。

「証拠か……それは難しいね。

今のソラ君の事を教える事はできるんだけどね。

出來れば信じて――あっ、そうだ。

キミの魔眼を使って僕を乗っ取ってみなよ。」

影はソラの事を監視していた時の記憶をフル活用して、

エリルスにそう言った。

エリルスの持つ魔眼の一つ

相手を乗っ取る事が出來る魔眼。

それを使って影を乗っ取ったら

影の記憶そのものを直接知る事が出來る。

「分かった。」

エリルスは何の迷いも疑いもせずに

そう答えた。

「ほら、やるなら早くしてくれないかい、

さっきも言ったけど僕の限界は近いんだよ。」

影の狀態を維持するだけでもかなりの魔力を消費する。

どれだけ強大な魔力を持っていようが世界を超えて影をる事は

容易いではない。

時間が経つにつれ魔力は勿論、

力や神もゴリゴリと削られていく。

しでも気を抜いたら一瞬で意識が持っていかれる

そんな狀態を維持し続けるのは中々なものだ。

「やるぞ」

「うん、はやくしてね。」

エリルスは何の警戒もせずに

影の事を睨むように見つめ魔眼を発させた。

影の視線グラリと視線がふらつき、

「これは思った以上に辛いね……」

頭が割れそうな程の苦痛を強いられ

視界のピントが全く合わない程のめまいや

腹の底から全てを吐き出せと吐き気が影を容赦なく襲う。

此処で踏ん張らなかったら意識が飛び、

今までの努力が全て無駄になってしまう。

影は死に狂いで何とか意識を保とうとする。

「――ッ、ヤバ」

これまでに無いほどのめまいが襲って來、

影の意識が持っていかれそうになった。

「……終わった。」

後數秒も持たない狀態だったが、

何とかエリルスが魔眼を使い終えてくれた。

エリルスの表は魔眼を使う前とは比べにならない程

落ち著きを取り戻し目も生き生きとしている。

「その表からして確りと伝わったのかな」

「ああ、々と言いたい事はあるが、

禮を言わせてくれ。ありがとう。」

口調はまだ何時も通りではないが、

確かに影の記憶から真実を知る事が出來、

エリルスは文句を押し殺して禮を言った。

「ヘリムと言ったか、君が居なかったら我はソラと出會う事、

亜空間から出る事すら出來なかっただろう。

君が々と仕組んだ結果が我とソラを導いてくれたのだな。

強引で気に喰わない點も沢山あるが、我は謝する。」

「うん、理解してくれて良かったよ。

僕はこれからソラ君と一緒に旅をするけど、

必ずこの世界に戻すから待っていてくれよ。

本當は今すぐ――」

影が言おうとしたことは

全て記憶を覗いたエリルスも知っている。

言葉を遮り続ける。

「分かっている、記憶を全て覗いたのだからな。

この世界に戻すには莫大な魔力が必要なのだろう?

それだけの魔力を得るには時間が必要。」

記憶から得た報を活用して

影――ヘリムの本當の目的を暴する。

「魔力が貯まるまでソラに世界を救ってくれだなんて、

君は本當はファルウエなんてどうでも良いと思ってる癖に、

只ソラがしいだけなんだ。ソラが可哀そうだ。

あの子なら必死になって救おうとする。」

「ははは、本當に全部知られちゃったなー。

そうだよ、本當はあんな世界どうでもいいんだ。

僕は只ソラ君がしかっただけ、

僕はソラ君と一緒に居られればそれで良い。」

本當の目的はソラを手にれてずっと手の屆く所に置いておきたかった。

だが、ヘリムはソラの事を監視していく

ソラがどれ程仲間の事を思っているかを知ってしまった。

だから、必要な魔力を大量に使い此処までしている。

「だけどそれじゃダメなんだよ。

ソラ君は君達の事を凄く大切にしている。

僕が良くてもソラ君は納得してくれない。

だから、今こうして此処に來ている。

ソラ君が戻ってきても絶しないようにね。」

「……意外とソラの事を考えているのだな。」

エリルスは記憶には無かった

ヘリムの思いを知り驚いた。

「まぁね――っと、そろそろ限界かな……」

影がゆらゆらと激しく揺れ始めた。

「分かった。ソラの事をよろしく頼む。」

「うん、そっちもよろしくね。」

「ああ、分かっているこっちの世界の事は我に任せろ。

ヤミ達にも確りと伝えて置く。」

「うん、ありがと。」

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