《勇者になれなかった俺は異世界で》リッチ、をする。
「あー……」
窟から戻って來たのだが、
俺は肝心な事を忘れていたのだ。
バラバラに砕け散った王座の欠片を避けながら
上を見上げると円狀のが空いており、
謁見の間の天井が薄っすらと見える。
そう言えば落ちて來たんだった……
此処で迎えを待つ予定だったんだっけ、
アルデラとの衝撃的な出會いをしてすっかり忘れていた。
「どうした?」
呆然と上を見上げながら迎えが來ないか待っていると、
アルデラが同じように上を見上げて來た。
「ふむ、貴様は此処から來たのか。
そう言えば貴様の名を聞いていなかったな。」
「ああ……俺の名前はソラだ。」
「ソラか、それでソラ。
一何を呆けてみているんだ?」
表所は骸骨なので分からないが、
首を傾げて不思議そうにそう尋ねて來た。
「このから見える謁見の間の天井を見てる……
ご飯を食べるには此処から上がらなくては行けない、
登るにも登れないしここで迎えを待つしかないけどな。」
「はて?こんなどうと言う事は無いだろう。」
「え?――あっ」
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一瞬何を言っているのか理解できなかったが、
アルデラは元大魔法使いで現リッチという事から
ピンッと來た。
「そうだな、元大魔法使いから見ればこんなたいした事ないよな。
……頼めるか?」
「ふふふ、俺の力に掛れば朝飯前だ――飛行フライ」
「うぉお!」
が軽くなりふわりとが地面から離れ、
俺は空気中をふわふわと浮遊した。
「これ楽しいなっ!」
「ふふ、鬼め。」
ふわふわして楽しいのだが、
慣れない覚の為気分が悪くなりそうなので
俺はとっとと上に上がる事にした。
ふわーと上がっていき、
あっと言う間に謁見の間に辿りつくことが出來た。
床の近くまで行くとアルデラが魔法を解除してくれた。
いきなり解除されて激突したりしなくて良かった。
「どうだ俺の魔法は。」
無いを張ってそんな事を言って來た。
骸骨の為表は分からないが、
恐らくどや顔をしているのだろう。
「凄いね、素直にそう思うよ。」
「おお、そうか。
なんだか久しぶりに褒められると照れるな。」
からんからんと音を立てて
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をもじもじとさせ、
乙の様な仕草をし出した。
まだ骸骨だから見て居られるものの、
これが男だったら俺は見て居られずに目を逸らすだろう。
「あっ、居た居た~」
「ん?ソラ。あれは敵か?」
「いや、アレは神様」
謁見の間に現れたヘリムは、
此方に向って手を振って駆け足で近付いて來る。
「あれ、何か増えてるね。
誰だいその子――ってその……まさかソラ君がやったのかい!」
アルデラとに気が付いたヘリムは
何やらにやけながら何処か楽しそうにそういった。
「俺がやったけど俺のせいじゃないぞ。
えっと、何から説明したら良いのか……」
「んふふー説明しなくても良いよ~
しだけだけど見ていたからね。」
ヘリムは誇らしげにを張って來た。
このポーズを見るのは何回目だろうか。
流行ってるのか?
つか見てたなら助けに來てくれよ。
「その子は元大魔王使いさんのアルデラ。
僕のソラ君を傷つけた糞野郎。」
ん?いまさらっと汚い言葉が混ざっていた気がするぞ……
「本當なら今すぐ殺したい所だけど、
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眠りを妨げたのはソラ君だから今回は許そう。
でも、次ソラ君に手出したら――」
ヘリムはニコニコと笑みを浮かべながら、
視線はアルデラを直視して、
「殺すから」
そう言った直後、隣からカタカタカタと
騒がしい音が聞こえ來た為俺は気になり
橫を向くと、そこには跪きカタカタと震えているアルデラの姿があった。
「ふふふ……この俺が震えているだと……
恐怖か、久しぶりだ。」
「ふーん、全然本気の殺気じゃないけど、
真面にけながら喋れるんだね、凄い凄い。」
どうやらヘリムがアルデラに向って
殺気を放っていたらしい。
本當に容赦無いよなヘリム。
優しいはずなんだけどな……。
「まぁ、ソラ君に手を出さなければ
僕はそれなりの態度で接するよ。
さて、料理が冷めないに食べようか!」
ヘリムはそう言って俺達に背を向け歩き出した。
一定の距離を離れるとアルデラはゆっくりと立ち上がり、
「惚れた。」
「は?」
殺気をけて無い脳みそが馬鹿になったのだろう。
アルデラは頭のおかしい事を言い出した。
「ソラ。あの方の名前は?」
「ヘリムだ。」
「そうか、ヘリム……ふふふ惚れたぞ!」
……一どこに惚れる要素があったのだろうか。
こいつはもしかして殺気を向けられて惚れてしまう程の変態さんなのか?
俺はそんな変態さんを置いてヘリムの後を追いかけた。
ヘリムの後を追い、
俺と変態リッチは料理が沢山並ぶ部屋に著いた。
円卓會議でもするかのような大きくて円狀の機に
皺一つも無い純白のシーツが敷かれ、
その上に豪華なに盛り付けられて幾つもの料理が並んでいた。
何時もながらだが、
一こんなに沢山の食材をどうやって調達しているのか。
不思議に思うが、エキサラだから。
まったく理由になってない理由で納得してしまう自分がいる。
椅子はごく普通の木製の椅子だった。
だが、俺が分からないだけで実は相當良い木材を使って
つくられた椅子とかだったり……
椅子にはエキサラが座っていた。
こんなにも沢山の料理が並んでいるが
座っているのはエキサラだけだった。
一爺はどこにいったのだろうか。
「何じゃソラ、早速友達でもつくったのかのう?」
座りながらアルデラの事に気が付いた
エキサラは首を傾げて訪ねて來た。
思ったよりも普通の反応で正直驚いた。
てっきりもっと敵意丸出しで來ると思っていたのだが……
「くっ……」
やはり俺の最初の勘は當たっていたらしく、
橫にいるアルデラの事を見ると、
再び跪き小刻みに震えていた。
「ご主人様よ、此奴は敵じゃないよ~
まぁ、仲間でもないけどね。」
俺が説明しようと口を開いたが、
ヘリムが俺よりも先に説明してくれた為、
説明せずに済んだ。
「うむ、なるほどのう。
々と気になるのじゃが、まぁ良いのじゃ。
ほれ、貴様も座って食べるがよい。」
「はいぃいい!ありがとうございます――っ!」
「えぇ?……お前誰だよ。」
殺気を解かれ、立ち上がった時にはもう既に
俺の知っているアルデラは居なくなってしまった様だ。
今の此奴は変態アルデラだ。
どうしてこう俺の周りには変なのしか集まらないんだ……
つか今思ったらヘリム以外全員アンデットじゃん。
……まさか俺も一度死んで転生してるからアンデットになってて、
それにひかれて同族達が……何て事無いよね?
軽蔑の眼差しで椅子に向っていく変態の事を見送り、
俺も椅子に座る事にした。
俺は適當に空いてる席に座ると、
ヘリムがわざわざ橫に來て座った。
「む?二人して妾を仲間外れにする気かのう?」
「ふふふ~席は自由なんだよ、つまり早い勝ちさ。」
「なるほどのう、では妾も。」
そういってわざわざ座っている既に席から立ち上がり、
俺の橫に座った。
別に悪い気はしないが、しは変態にも気を遣ってやれ――
と思ったが、そんな必要は無く、
変態はガブガブと料理に喰らいついていた。
一どういう仕組みになっているのだろうか、
口の中に放り込まれた料理は骨と骨の隙間を
通り抜ける事無く何処かへ消えて行ってしまっているのだ。
骸骨が食事をしている何とも言えない不思議な景だ。
「なんじゃ、ソラよ。
そんなにアレが不思議かのう?」
一切料理に手を付けずに
変態の事を不思議そうに見ていると、
隣に座っているエキサラにそう尋ねられた。
「ああ、一どういう仕組みなんだ?」
同じアンデットのエキサラなら仕組みを知っているかも知れない、
俺はそう思い、思っている事を聞いてみた。
「アレはのう、料理を食べていると言う訳じゃないのじゃ。
一見食べている様にも見得るのじゃが、
実際は料理に含まれる微弱な魔力を喰らっているだけなのじゃ。
素材は元々は魔じゃからのう、どうしても微弱な魔力が殘ってしまうのじゃ。」
「なるほど、魔力か……でも、料理が消えていくのはどういう仕組みなんだ?」
エキサラの説明では魔力を喰らっていると言う事が
分かったが、肝心の料理の行方が分からない。
「うむ、アレはのう口の中に居れた瞬間、
リッチなどが持つ固有魔法、変換コンバージョンと吸収ドレインで、
料理を魔力に変えているのじゃ、
見ようと思えば魔力をみれるのじゃが、どうじゃ?」
「そういう事……見るのは遠慮しておくよ」
なるほど、微弱な魔力に加えて料理を魔力に変えて吸収か。
つまり料理を食べれば魔力がゼロになる事は無いと言う事か。
意外と凄いんだなリッチって。
「謎も分かった事だし、俺も食べるとするか。
いただきます。」
相変わらずエキサラの料理はおいしい。
今日の料理は何時もよりもおいしくじる。
「ソラ君、如何だい?味しい?」
「ああ、味しい。流石ご主人様。」
「ふふふ、実はね今ソラ君が食べている料理はね、
僕がつくったんだよ!」
「えぇ!?」
何時もより味しくじるのはヘリムがつくったからなのか。
決してエキサラの料理が不味いと言う訳では無いが、
これはヘリムの方がじゃっかん腕が良いのではないか?
「むぅ、妾が手伝ったと言うのが抜けておるのじゃ。」
「えへへ~」
ああ、なるほど、二人で作ったと言う事か。
それなら納得。
食事が終えお腹一杯になった俺は片付けを手伝いながら
変態アルデラにこれからどうするのかを聞いてみた。
「これからどうするんだ?」
「取り敢えずまた暫く地下に引き籠ろうと考えている。」
「そりゃまた退屈そうな事で、でもどうしてだ?」
折角地上に來たのだからあんなジメジメした所なんかに戻らないで
何かやれば良いのに俺としては元大魔法使いさんにびっちりと
魔法を教えてもらいたいところなんだが。
地下に何かあるのだろうか、
それともずっと眠っている間に何時の間にかに
あの窟に著でも沸いたのか?
「久しぶりに食事をしたからか、凄く眠たい。
今度の眠りはそこまで長く無いと思うが、
流石に數日間もこの城で寢て居ては邪魔というものだろう。」
あれだけ食事して魔力を吸収したからだろうが、
何日間も眠るのか……リッチって燃費悪いんだな。
「なるほどな、こんなに無駄に広い城なら邪魔にはならないと思うけどな。」
この城は本當に無駄に広く無駄に部屋が多い。
部屋一つぐらい占領されたとしても全然気にならないだろう。
「んー、ソラは何も知らない様だな。
リッチと言うのは眠ると同時に周りの魔力を奪い取る能力を持っているんだよ。
つまり俺がこの城で眠ってしまったら皆の魔力を奪い取ってしまう。
その點あの地下なら誰にも迷を掛けない。」
うわ、リッチっ結構厄介な奴なんだな。
寢てるだけで周りの魔力奪い取るって……
食事でも睡眠でも魔力を吸収出來るってなんかズルいな。
「そっか、なら地下に帰ってくれ。」
「そう直球に言われるとし不愉快にじるな。
まぁ、良いが、また近いうちに合うだろうが禮を言っといてくれ。」
「分かった。」
禮と言うのは料理を作ってくれたヘリムとエキサラに謝と言う事だろう。
俺はそう勝手に解釈し適當に返事をした。
「では、そろそろ眠りに付く。
數日で覚めると思うがくれぐれも俺の眠りを妨げるなよ。」
「ああ、分かってる。」
アルデラはまるで溶ける様に
全の骨が一瞬だけドロリとなり、
そのまま床に染み込んで消えて行った。
「うわぁ、あれも魔法……だよな。」
なんだかスライムに見えて嫌な事思い出したな……
ヴェイン……お義父さんどうしてるかな。ゴウル……っ!
俺は一度スライムと戦ってボロボロにされた事があった。
その時治療や看病してくれたのは人狼達。
俺は俺の事を育ててくれた人狼達の事を思い出した。
決して忘れていたと言う訳では無い。
ただ、自分が無力故に失われた命から目を背け
知らぬうちに忘れようと自分の中に閉じ込めていただけだった。
それがいまスライムをトリガーに思い出してしまった。
「ああ、くそっ。」
何時かは向き合わないと行けない事は分かっていた。
あの時、今位の力が在ればしは変わっていたかもしれない。
終わってしまった事を悔やんでも仕方がない、そんな事は分かっていた。
だが、悔やまずには居られなかった。
だから――
別に誰もんでいないかもしれない、
だけど、けじめを付けなければ俺の気が済まない。
誰の為でも無い、自分の為に俺は、
「復讐してやるよ。」
「ソラ君?」
「うわ、ヘリム居たのか。」
思わず聲に出してしまいヘリムに聞かれた。
ヘリムは俺の言葉を如何とらえたのだろうか。
「……片付けが終わったら、ちょっと話がしたいな。」
ヘリムは珍しく真剣な眼差しで此方を見つめ、
そう言って來た。
「分かった。」
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