《勇者になれなかった俺は異世界で》お互い様

翌日、頭痛も収まり完璧なコンディションになり

俺は朝食を済ませて早速森に向かった。

昨日ポチには今日から絶対に再開すると言ってあったので

俺が何時もの場所に著く前からポチは既に著いており、

暇そうに伏せながら待っていた。

「お待たせい」

『遅い』

「病み上がりなんだから許せ」

『病み上がりか……ふっ』

鼻で笑われてしまった。

確かに只のリミッター解除からの疲労だから

病み上がりとは言えないな。

『では、始めるとするか』

「おう――とっと、その前にちょっと良いか?」

『むへぇ、何だ?』

何時でも飛び掛かれる姿勢を取っていた

ポチを止め俺はし気になっている事を

確かめようとした。

「今から殺気出してみるからさ、

どんなじなのか簡単にで良いから教えてくれないか?」

昨日ヘリムが言っていた、

ソラ=バーゼルドの殺気というのが気になり、

一応確認してみたくなったのだ。

『そんなもの戦闘中でもよかろう』

「戦闘中だと殺気を出す隙すら

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與えてくれない鬼畜ポチは何処のポチだ」

『誰だそのポチは、何て鬼畜なんだ。

仕方ない、我はそんな鬼畜じゃないから待ってやる

鬼畜じゃないな、ああ』

鬼畜と呼ばれるのが相當嫌なのだろう。

「ありがとな、それじゃ行くぞ」

『ああ』

何だかポチに殺気を向けるのは気が引けるが、

仕方がない、俺はそう言い聞かせて

ポチの事を睨みにけて殺気を発させた。

昨日し思い出してしまった

ショタ神の事を頭に思い浮かべると

恐ろしい程の憎悪と殺意が湧き出てきた。

そしてそれをポチに思いっきりぶつける――

「あぁあああ――っ!!」

『っ!!』

突然頭が破裂しそうな程の頭痛が襲ってきた。

俺は悲鳴を上げながら両手で頭を抱え崩れ落ちた。

どうしようもない部からの痛みに俺はもがく。

『すまん』

涙でぼやける視界には

を逆立たせたポチが爪を振り下ろそうと

している瞬間が映った。

「っ!」

一瞬だけ闇に落とされ意識が飛び、

復活したに意識が再び舞い戻って來た。

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思考が一瞬止まっていたが直ぐに覚醒し、

気付いた時には激痛は止まっていた。

「あ、ああ……ありがとなポチ」

『大丈夫なのか?

途轍もない殺気に曬されて思わず殺してしまったが……』

ポチのが逆立っていたのは

殺気のせいだったのか。

「いや、助かった。

あのままだったらどうにかなっていたかもしれない」

『そうか、一さっきのは何だったんだ?』

「……分からない」

ポチが途轍もない殺気と言っていたから

俺の殺気ではなく恐らくヘリムの言っていた

ソラ=バーゼルドの殺気だったのだろうな。

それにあの頭痛、

包帯男の時と同じような痛みだった。

あいつが関係してるのは間違いなさそうだな

『今日は中止にしないか?』

「え?」

『正直に言ってあの殺気を浴びさせられた後だと

戦える気がしないんだよ』

「どういう……」

『我のを見てみろ』

言われるがままにポチのを見てみると、

そのは小刻みにブルブルと震えていた。

「それは――」

『あんな殺気浴びたことなかったからな、

怯えてるんだよ、さっきは殺される前に殺さないと行けない

そう思ったからけたが……今日は休ませてくれ』

「分かった……その――」

『謝るな、我がまだ未だっただけだ』

何だか申し訳ないことをしてしまった

そう思いポチに謝ろうししたが止められてしまい、

ポチはそのまま森の中へと姿を消した。

「一何が起きてるって言うんだ……」

自分のに起きている確かな異常。

これが良いなのか悪いなのか分からないが、

激痛が走るからには悪いなのだろう。

フェンリルであるポチでさえ怯えてしまう程の殺気。

その殺気が頭痛無しで使えるなら

凄く助かるのだがそう上手くは行かない。

殺気を発してしまうと激痛が襲ってきて

殺気を解除する処か痛みによってさらに膨れ上がってしまう。

たった一回だけだがそれだけは分かった。

この現象が起き始めた原因は間違いなく

あの包帯野郎との出會いだ。

あいつが原因だとしたら

何故俺にこんな事をした?

『俺はお前だが、お前は俺では無い。』

包帯野郎の言葉が頭の中に殘っている。

その言葉の意味をそのまま捉えるなら

包帯野郎は俺自だけど俺は包帯野郎では無い

意味がわなから無い。

仮に奴が俺だとしても

何故夢の中に自分が出てくるんだ?

しかもその自分に思いっきり打たれたし、

『無意識が生み出した結果』

確かそんなことも言っていた。

包帯野郎の言葉は何と言うか難しい。

無意識が生み出した結果があの頭痛だと言うのならば

俺は無意識に何をんだのか、

當然そういう疑問が浮かんでくる。

だが、疑問が當然浮かんでくるかのように

答えも直ぐに浮かんで來る。

「前の力があれば」

前の力があればこんな世界簡単に救えるのに、

前の力があればこんな事しなくても済むのに、

前の力があれば――

『最弱から始めるのも悪くない』

そう思っていたはずだ。

そのはずだったが、

強くなるために訓練をしていく中、

とは別に心の何処かでは楽したかったのだろう。

人間誰しもが思っている事だ。

強くはなって來ている、

だが、全然足りない、このままじゃ不味い。

俺はそう思い無意識に心だけ楽な方へと逃げ、

新たな力を付けよりも前の力を求めていたのだろう。

「おっと、もう著いたか」

珍しく真剣に考えていたため

気が付けば城の前まで來ていた。

「あれれ~ソラ君今日は隨分と早いね」

「ああ、ちょっとな」

城の中にるとヘリムと出くわした。

「んん?何か考え事かい?」

どうやら顔に出ていたらしく

ヘリムは相談してみなさいと言わんばかりに

を張って変な顔をしている。

「えっとな――」

俺は階段に座り込み先ほど

考えていた容を全てヘリムに伝えた。

ヘリムは既に殺気の件は知っているし、

前の俺の事も詳しいので話す相手なら一番適任だと判斷した。

「なるほどね~大変だねソラ君」

ヘリムの表は落ち著いており、

咳払いをして話し始めた。

「でもね、それは凄いことだよ。

ソラ君が夢で見たのは間違いなく自分自だよ。

正確にはソラ=バーゼルドの時のソラ君自

ソラ君が無意識に昔の力を求めていたから

魂が昔の記憶を元に作り出したんだよ。

そしてその化は無理矢理ソラ君の力を引き出そうと

何らかの事をソラ君にしたってじかな」

「俺は自分で自分を苦しめているだけなのか……」

「でもこれは凄い事。

神様である僕が出來ない事を

ソラ君はやろうとしている、

いやもうしだけだけどやり遂げた。

神様を越えたねソラ君!おめでとう!」

「は?え?」

「ソラ君は僕に出來ない事をやっているんだよ、

それが無意識だとしてもそれは凄い事。

苦しいだろうけどきっとそれを乗り越えれば

ソラ君は神にでも何でもなれるだろうね」

「……なんだそれ」

ヘリムの言っていることが

あまりにも馬鹿げているので俺は思わず笑ってしまった。

神にでも何にでもなれる。そんな訳ないだろ。

「こらこら、信じてないでしょ!」

「當たり前だ」

「はぁ、でもねこれだけは信じてほしいな、

その苦痛はソラ君を強くする、だから諦めないで」

「……ああ」

ヘリムに話して良かったと思う。

言っていた事は良く分からないが、

気分がかなり楽になった。

諦めるなんて気は微塵もないけど、

諦めないぞ!

・・・・

「よぉ」

再び此処に來れるという確信は無かったが、

『次會った時に詳しく説明してやるよ』

そんな臺詞が頭の中で再生され

何となくだが寢れば會えるそんな気がして眠った。

そして、それは正しかったようで、

俺は今、鎖が何重にも巻かさっている巨大な扉の前で

胡坐をかいて座っている包帯野郎に聲を掛けた。

「ほぉ、前回とは違い良い顔つきになったな」

「前回はいきなりこんな場所に居るし

お前に毆られるしで訳分からなかったからな」

「ふっ、それで俺の力は使えたのか?」

包帯野郎はゆっくりと胡坐の態勢から

立ち上がった。

「お前は俺なんだろ?

だったら分かるんじゃないか?」

「はぁ、生憎俺は過去のお前なんだ。

過去の俺が未來のお前の事なんて知るわけないだろう」

未來《俺》は過去と言う歴史を積み重ねているが今此処にいるが

包帯野郎《ソラ=バーゼルド》は過去の存在であり、

その過去はあるが未來は無い。

それ以上進むとソラ=バーゼルドではなくなるから

「そっか……力は使えた。

けど、使いこなせてはいない」

俺はやれやれと言う気持ちをわざわざ

手で表している包帯野郎にそういった。

「ほぉ、力は使えたのか……流石俺だ」

「使えたと言っても激痛が酷くてな」

「まぁ、仕方がない事だ。

過去の力の報を無理矢理頭に送ってるんだ。

魂は大丈夫でもその貧弱なじゃが持たないだろうな」

過去の力の報を無理矢理送っている……

その報のせいで頭が発しそうな程の痛みが襲ってくるのか。

俺のじゃが持たないか……元は俺の力なんだけどな、

何だか複雑な気分だ。

「まぁ、先に強化でもしてみたら

しは耐えられるかもしれないけどな」

「え、本當か?」

殺気しか使っていなかったが、

どうやら俺は強化も使えるらしい。

過去の俺が自分自に噓をつくとも思えないし

本當に使えるのだろう。

「まぁ、やってみなければ分からないがな、

が貧弱なら強化すればいいだけの話だからな、

まぁ、そんな簡単に出來るかどうかは分からないけどな」

「っ!」

そうか、その手があったか!

下が貧弱でも強化をすればしはマシになる!

……自分で貧弱って言うのって悲しいな。

「ありがとな、何だかいけそうな気がしてきた」

自分自謝する日がやってくるなんて

思ってもみなかったな。

「自分自に禮を言われても、

あまり嬉しくないな」

そうは言いつつも包帯野郎の聲は

若干機嫌が良いじだった。

「そう言うなって、俺だって自分自

謝するなんて凄い恥ずかしいんだからな」

「ふっ、そうか。

そういえば、次會った時に詳しく説明してやる

って言ったな。」

「ああーその事はもう良いよ。

何となく分かった事だし、

それに説明が下手糞なのはお互いさまだろ?」

俺は説明するのが苦手だ。

それは過去であっても未來《今》であっても。

「ふははは、そうだな、そうだよな。

俺達はそうだったな。

じゃあ、最後の一つだけ言わせてくれ」

「ああ」

「もう誰も悲しまない様に強くなれ」

今まで以上に真剣な聲でそう言い放たれ、

俺の頭の中にはヤミ達の姿が浮かんだ。

そんな事言われなくても分かってるさ。

包帯野郎の言葉に俺は無言で頷いた。

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