《勇者になれなかった俺は異世界で》戦闘
「さて、これから作戦會議を始めるのじゃ」
「わーい」
數人のエルフの戦士を引き連れ會議は唐突に始まった。
突然の事でエルフの戦士達は戸っていた。
無理もない、突然集められて唐突に始まった會議だ。
だが、エルフ達も戦士であり素人では無いので
直ぐに落ち著きを取り戻し真剣な眼差しでエキサラの事を見つめた。
流石にこの作戦を聞き逃して攻撃に巻き込まれたら
たまったものではないので、
俺は渋々ポチの腕枕から離れその場に立ち上がった。
立ち上がったと言っても長が小さい為、
背後にはポチのというモフモフの壁があり
それに背中を預けながらこっそりとモフモフを堪能していた。
「妾は前衛で敵を倒しまくるのじゃ、
エルフ達は後衛で妾が倒し損ねた敵を倒すのじゃ。
以上、解散じゃ」
「は?」
これは作戦會議と言えるのだろうか。
エキサラが一方的に話して誰も話し合いなどしていない、
果たしてこれを會議とよんでも良いのだろうか。
「何じゃ?」
「今ので終わりなのか?」
「うむ、不満かのう?」
「せめてもうし的に説明してくれないか?」
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「ふむ、仕方が無いのう……」
その説明だと俺が攻撃に巻き込まれて死んじゃう可能がある。
それは何としてでも避けねばいけない。
「妾が前衛、この村の前で敵を待ちかまえ、
現れた瞬間に問答無用で大きな魔法を放つのじゃ。
恐らくその攻撃で大半が壊滅するじゃろうが、
全滅まではいかないじゃろう。
再び魔法を放っても良いのじゃが、
それじゃと捕虜を捕まえる事が出來なくなるのじゃ」
「おお」
エキサラが捕虜を捕まえるという事を考えていた事に
俺はし聲をらした。
てっきり殺して終わりだと思っていたのだが、
エキサラにも敵を捕らえ尋問するという考えがあったのだ。
そしてそれは、今回の俺の目的の一つである
ロケットペンダントの件だ。
捕虜を捕まえ尋問し全て聞き出す。
場合によっては殺すことも躊躇わないだろう。
「魔法を撃ち終わったら妾は一度撤退するのじゃ、
そこで後衛のエルフ達の出番じゃ。
大半が壊滅したのじゃ、相手は戦意喪失するじゃろう。
そこを狙い捕虜として捕まえるのじゃ。
場合によっては殺してくれても構わないのじゃ」
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「俺達の數はたったの六人だぞ?
こんな人數で出來るとでも?」
今まで黙って聞いていたエルフの一人が
聲を上げた。
「大丈夫じゃ、そこの獣とソラも一緒じゃ
ちなみにのう、その獣はかなり強いのじゃ」
「本當に行けるのだろうか……」
エルフ達の視線が俺とポチに向けれた。
完全に信用されていない眼差しだが、
それも仕方が無い事だ。
ポチはまだしも俺なんて只の鬼にしか見えないだろうからな
そういえばエキサラは何で俺と同じぐらいく見えるのに
そう言った眼差しを向けられないんだろう……
そんな疑問を抱いたが、
今はそんな事気にしている場合ではなかったので
直ぐに忘れた。
「捕虜は出來るだけ多い方が良いのじゃが、
出來るだけ妖族を多めに捕まえてほしいのじゃ」
「分かった」
人獣を捕まえるよりは妖族を捕まえて尋問した方が、
誰があのエルフにスライムを寄生させたのかが
人獣に聞くよりもスムーズに分かるだろう。
「作戦は以上じゃ」
「あ、ちょっと良い?」
作戦が終わると同時に俺は皆に
伝えたい事があった為、手を挙げた。
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「どうしたのじゃ?」
「さっきポチ――この獣が言ってた事なんだが、
獣の臭いが近づいて來てるらしい、
恐らく、今晩が明日の明けには確実にこの村に來る。
それを伝えたかっただけだ」
『我を獣と一緒にするな』
ポチが不満の聲を上げていたが、
軽く無視する。
「そんなに早く來るのか……分かった、報謝する
俺達は準備を済ませ軽く仮眠を取ることにする」
先ほどまでは信用されていないと思っていたが、
エルフは俺の言葉をあっさりとけれてくれた。
「それじゃ、取り敢えずは解散じゃ」
エルフ達は何処かへと散らばって行った。
既に他のエルフ達は城へと避難した為、
凄く寂しい村になっている。
「それじゃあ、僕は城に行くねー
何かあったら直ぐに呼ぶんだよ?
良い?ソラ君」
「ああ、ってなんで城に行くんだ?」
「流石にエルフ達だけ城に置いておくのは
心配だからね、一応僕たちの家なんだから
何か悪さをしないか見張ってないと」
「ああ、なるほど、流石ヘリムだな」
「えへへー、もし何か悪さしてたら皆殺しするけどね」
「ははは……」
ヘリムは楽しそうに鼻歌を歌いながら
城の方向へと向かっていった。
「さて、妾は散歩でもするかのう……どうじゃソラ?」
「いや、俺はし寢るよ」
「うむ、そうかのう、おやすみじゃ」
「ああ、おやすみ」
流石に寢ておかないと戦闘中に眠気に襲われるかもしれない。
俺はまたポチの腕枕を使い目を瞑った。
『ソラよ、我を獣と一緒にするな』
「あー、ごめんごめん」
まだ言ってるのかよ……可い奴め
そんな事を思いながら俺は淺い眠りについた。
・・・・
ドゴォオン!という凄い音と共に俺は目を覚ました。
何事かと思い周りを見渡すとそこには
張しているのか強張った表のエルフの戦士達の姿があった。
その中にエキサラの姿は無く、森の方では凄い煙があがっており、
俺は寢起きでまだ寢ぼけている脳をフル回転させ
今の狀況を把握しようとした。
『やっと起きたのか、もう戦いなら始まっているぞ』
狀況を把握できる前にポチが教えてくれた。
どうやらもう既に人獣たちが攻めてきているらしい。
そしてエキサラの姿が見えないのは前衛に行って
敵を倒しているのだろう。
先ほどの音と森から出てる煙が証拠だ。
「つか、どうして誰も起こしてくれなかったんだよ!」
『ソラがあまりにも気持ちよさそうに
寢ているから悪いんだぞ、反省しろ』
「何て理不盡な……」
どうやら俺の寢顔が原因らしい、
ポチのモフモフをじながら寢て
気持ちよくならないなんて無理な話どころか拷問に近い。
それにしても、エルフの誰かが起こしてくれても良いだろ……
一瞬だけそう思ったが巨大な獣に守られる様に
寢ている俺を起こすには相當な勇気がいるだろう。
赤の他人のエルフ達には無理な話しだった。
「よいしょっと」
俺はその場に立ち上がりをばす。
何処かの骨がポキポキとなったがそれが心地よかった。
「寢起きだけどそろそろか……」
エキサラが魔法を放ったのならば、
そろそろ俺達後衛の出番だ。
『ほれ、乗るがよい』
「おっ、ありがとな」
音も無く起き上がっていたポチが
わざわざ俺の前まで來てくれ乗りやすい様に
姿勢を低くしてくれた。
「うん、やっぱり気持ちいな」
ポチの背中に乗りじるのは
やはり圧倒的なモフモフ。
俺はこの幸福に包まれながら移するらしい。
果たして正気を保っていられるのだろうか。
「それじゃ、俺達の出番だ。
俺はポチと一緒に先に行く」
エルフより先に行く理由は
俺とポチが先に行くことによって
萬が一戦闘になった時、即座にポチに処理してもらい、
エルフ達にケガさせる事なくこの戦いを終わらせるためだ。
と言えば聞こえはいいかも知れないが、
実際の所はエルフ達に任しては居られないだけだ。
速度も強さも上回っているポチの方がうまくやってくれる。
ポチの事を詳しく知っているわけではないが、
エルフ達の事よりは詳しく知っている。
もし、エルフ達が戦闘でやられれば、
この村の連中にどんな顔をして會えば良いのだろうか。
戦って死んだのだから仕方が無いと言えば仕方が無いが、
無傷の俺の事を見たら明らかに疑われてしまうだろう。
「行くぞポチ」
『ああ』
エルフ達の返事も聞かずに俺はポチに乗り、
森の中に突っ走った。
開拓されていない道を進んでいる為
枝などが顔に當たりそうになったが、
ポチが何かしてくれている様で全て當たる前にはじけていた。
煙の臭いが徐々に濃くなっていき、
あっと言う間に俺とポチは前線まで來た。
そこには、クレーターの様な大きなが開き、
まだ熱を持っているのであろう、
地中に埋まっていた巖などが赤くなっており、
周りの木々は焼け落ち煙を出していた。
クレーターの中には原型をとどめていない無殘な死が幾つもあり、
の周りには腰を抜かしている人獣の姿があった。
鎧にを包み見た目は人間の兵士と変わりは無かったが、
しっぽが出ている為人獣だと判斷できる。
よく見ると人獣に紛れ、綺麗な羽をはやした兵士もいた。
長は小さい奴もいれば人獣と同じぐらいの奴もいる。
恐らくあれが妖族だろう。
何て分かりやすいのだろうか、
そんな想を抱きながら俺は行に移す。
「聞け!お前達の勝敗は既に決している。
降參すれば命は助けてやる。
武を捨てその場に伏せろ!」
こういう時になんと言えば効果が良いのか分からなかった為、
何となくありきたりな言葉を発してみた。
だが、子供の聲の為迫力がなく誰一人武を捨てようとはしなかった。
『ガアアァアアッ!』
狼とも犬とも呼べない程のポチの咆哮を聞き、
ひっ、と悲鳴をらしながら武を捨て伏せ始めた。
「何か複雑な気持ちだけど、ありがとなポチ」
『ふっ』
何故か鼻で笑われた。
すこし気になるが、
俺はその後ポチに頼み森に逃げた兵士は居ないか
確認してもらったが、気配をじないらしく
どうやら此処に伏せているので全員の様だった。
數にして100人近くだろう。
一どれほどの人數がエキサラの魔法によって
葬られたのだろうか、考えただけで震いする。
それから暫くしてエルフの戦士が到著し、
クレーターを見て一瞬固まったが、
直ぐに捕虜を確保し始めた。
エルフの戦士達は手際よく伏せている人獣や妖族を
ツタの様な縄でぐるぐると締め上げている。
手伝おうとしたのだが余りにも手際が良すぎるため、
素人がれば迷になりそうなので止めることにした。
何の指示を出さなくてもエルフ達は縛り上げた捕虜を
一か所に集めだし始めてくれた。
「お~もう終わりそうじゃのう」
「うっ……ご主事様か、びっくりさせないでくれ」
いきなり背後から聲を掛けられ
思わずビクリッとを飛び上がらせてしまった。
ポチが何も言わなかい時點で敵ではない事は確実だが、
たとえ味方でも背後から聲を掛けるのは心臓に良くない。
「うむ、すまぬ。それにしても隨分と呆気ないのう……」
「んー、それはご主人様が強すぎるからだと思うぞ」
序列15位の人獣が弱いという訳ではない。
単にエキサラが頭のおかしいぐらい強いのだ。
恐らくかなりの數が此処に攻めて來ていたはずだが、
それを一撃で100人近くまで減らしてしまった。
あたまがおかしい。
「そうかのう、手加減したつもりなのじゃがのう」
「これで手加減したのか……凄いな」
「もっと褒めても良いのじゃぞ?」
「ああ、ご主人様は凄いな」
「むへへへ~」
むへへへって……本當に面白いやつだ。
し褒めただけで凄く嬉しそうな顔をされ、
何だか気持ちの籠っていない褒め方をして悪い気がする。
次からは気持ちを込めて褒めよう。
「そろそろ、縛り終わりそうだな」
エキサラと話しているに仕事の早い
エルフ達が黙々と縛り上げてくれていた為、
あと一人で終わるところだ。
伏せている最後の人獣の上半だけ立たせ
腕ごとをぐるぐると縄で巻ききつく縛る。
そして、一か所に集める。
「終わったようじゃのう」
「だな。ポチ、あそこまで行ってほしい」
『わかった』
捕虜が集められている位置にポチに乗りながら行き、
その後ろからエキサラが続く。
「皆ありがとな」
「お疲れなのじゃ、あとは妾達にまかせるのじゃ
一応生き殘りがいるかも知れぬ、警戒しつつ戻るのじゃ」
「わ、わかりました」
何だかエキサラの事を怯えた様な目で見ている。
まぁ、無理も無いだろう、
自分よりも小さくしかもがたった一撃で敵をほぼ壊滅させたのだ。
エキサラの正を知らないエルフ達なら
自分たちよりも遙か上の種族だと考えているだろう。
そんな得のしれない相手を先ほどと同様な目で見るのは無理な話だ。
「うむ、気を付けるのじゃぞ」
エルフ達はエキサラに一禮して村の
方向へと消えて行った。
「うーむ、妾嫌われたようじゃ」
「嫌われたというより、怖がられているんじゃないか?」
「……」
まずい事を言ってしまったかもしれない。
エキサラがあからさまに落ち込んでしまい、
表が一気に暗くなり下を向いてしまった。
謝った方が良いなと思い謝罪しようと口を開いたが、
「……ソラは妾の事が怖いかのう?」
俺の事を喰らってくるの子なんて怖いに決まってる。
だが、恐怖っていうほどではない。
何と言ったらいいのやら、
飼い犬が顔に向かってダイブしてくるじの怖さだ。
「全然怖くないぞ、寧ろご主人様は可い方だと思う、
俺の知っている奴なんて自分がしいと思ったら
殺してでも、何が何でも手にれようとするからな、
それに比べたらご主人様はちょっと兇暴な犬みたいなものだ」
どっかの僕っ子の神様よ。
「妾が可い犬かのう……」
未だに下を向いたままだ。
犬と言ったのが不味かったのかもしれない。
と、思ったのだが、エキサラから小さな笑い聲がれ始めた。
その笑い聲は徐々に大きくなっていき、
「くははは、そうかそうかのう!
妾可いのかのう!くはははは!」
「あ、ああ、そうだ、ご主人様は可いぞ」
どうやら失敗ではなかったようだ。
一安心。
だが、そんな安心も長くは続かなかった。
『ソラよ、魔の大群が近づいてきてるぞ』
「っ!」
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