《勇者になれなかった俺は異世界で》捕虜らしく

「どうしたのじゃ?」

「……魔の大群が向かってきてるらしい」

の接近を聞き焦っている俺とは裏腹にエキサラは

「ほぅ」と聲をらすだけだった。

普通の魔なら俺も焦りはしなかっただろう。

だがこの世界の魔は普通ではないのだ。

本で読み一度戦った経験しかないが、

明らかにこの世界の魔は異常な強さだった。

そんな異端な存在達の大群が此方に向かってきている。

それはこの場にいる皆の死を意味していた。

「あ、あんた達の所為よ!」

「は?」

これからどういう行をすべきかと考えていると

捕虜の中から初めて聲が上がった。

今まではずっと黙って大人しくしていたが

の接近を聞き黙っていられなくなったのだろう。

発せられた聲は怒りで震えている様にもじた。

「あんた達がリーダーを殺したから

私達まで死ぬはめになったじゃないのよ!」

捕虜の中を見渡し聲を上げている者の姿を確認した。

明の綺麗な羽を生やしている妖族のの様だ。

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「どういう――」

「何じゃ?お主等はエルフ共を殺しに來ていたのじゃろ?

だったら死ぬ覚悟位できておるはずじゃのう?」

「くっ……」

族のの言葉に疑問を抱き詳しく聞こうとしたのだが、

エキサラに言葉を遮られてしまった。

殺しに來てるんだ殺されても良い覚悟は出來ているのだろう。

と當たり前の事を言われて妖族のは黙り込んでしまった。

「ふっ、本當にお主等はつまらぬ生きじゃ

で、ソラよ何か言わなかったかのう?」

エキサラが一瞬だけだが妖族達の事を睨みつけてた様に見えた。

何か思うところがあったのだろうか。

「ああ、えっと、さっき妖族のが言っていた事なんだけど」

「なんじゃ、そんな事かのう。方、妖族のリーダーが

の指揮権を持っていたのじゃろうな。

そのリーダーを妾が殺してしまったからのう、

指揮を失った魔達が暴走でもしているのじゃろうな」

「な、なるほど、ご主人様は詳しいな」

「あくまで予想じゃ、実際はどうなんじゃ?」

あまりにもペラペラと喋るものだから

族について詳しく知っているのではないかと思ったが、

たんに予想だったらしい。

エキサラはその予想が真実なのかどうかを知るために

先ほどのに話を振った。

「そうよ、その通りよ、

私達は基本的に全員魔る事が出來るけど、

統率力を高めるためリーダーを決めて指揮権を全て託すのよ……」

「これは隨分と詳しく……」

「なんじゃ、敵の妾達にそんなに詳しく教えても良かったのかのう」

何故だか凄く詳しく教えてくれた彼だったが、

先ほどの威勢は無くなっており虛ろな目をしていた。

「どうせ死ぬんだからどうでも良いのよ、そんな事……」

「ふむ」

どうやらあり得もしない自分たちの死を確信しているらしい。

だけではなく人獣も他の妖族も死んだ様な顔をしていた。

小さい妖族は見た目だけでも無く中いのか泣いている妖族もいた。

そんな捕虜達を見て俺は大きな溜息を吐いた。

「全く、どいつもこいつも勝手だ」

「そうじゃのう」

俺の言葉にうんうんと頷くエキサラ。

「お前等さ、自分の立場わかってんのか?」

「「……」」

「捕虜でしょ、それがどうしらのよ……」

答えが返ってきたが、

その答えを言ったのはやはり先ほどの

他の捕虜達は聞いているのかも分からないじだ。

「そうだ、お前等は捕虜なんだよ。

それがどういう意味か分かるか?」

「私達を良いだけ弄んだり利用したりするんでしょ?」

「そうだ!……いや、弄んだりはしないが、

お前等の事は思う存分利用するつもりだ」

「……」

勢いでそうだ!とか言ってしまったが、

微塵も弄んだりしようなんて考えてもいない。

……本當にね。

「なのにお前等は何故、そんな死んだような顔をしているんだ?」

「は?何を言っているの?

どうせ私たちはみんな魔に殺されるのよ……」

「お前こそ何を言っているんだ?

折角手にれた捕虜だぞ?簡単に死なせる訳ないだろ?」

「うむ、そうじゃのう」

捕虜達は完全に魔に殺される未來しか見えていない様だ。

全く、本當に勝手な奴らだ。

確かに魔凄く強い。

だけどそれ以上に俺達の方が強いに決まってる。

「え、だって、魔が――」

「そんなもん俺達がどうにかしてやるよ」

正確にはエキサラとポチがどうにかしてくれるんだけど、

恐らく不死の力があっても俺は魔ぐらいで一杯だろう。

今回、ポチは暴れるならという理由で一緒に來てくれている。

だが、未だにそれは葉っていない、だったら、今がそれを葉える時だ。

それに魔法を一発しか放っていないエキサラもまだまだいけるはずだ。

「そんなの無理に決まってる――」

「うるせえ、黙って捕虜らしくしとけ

絶対に死なせたりしねえからな」

このロケットペンダントの為にもこいつらを絶対に守り抜く。

俺はポケットの上からペンダントを握り誓った。

「協力してくれるか?」

「無論じゃ」

『やっと暴れられるのか』

これからが本當の戦爭だ。

相手は魔の大群、此方はたった三人。

多勢に無勢――違う、多勢に最強だ。

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