《勇者になれなかった俺は異世界で》勇者召喚の対策

のその発言から數秒後、円卓部屋の扉が勢いよく開かれた。

オヌブは、ほら、きた。と言わんばかりの表を浮かべて扉の方を見る。

他の9名の大魔王たちの視線が一斉に扉に向く。

「いや~、久しぶりだから迷っちゃった~」

場に見合わない気の抜けた口調で彼は現れた。

オヌブを除く大魔王たちの誰もが驚いきを隠せないでいた。

なぜなら、そこに立っているのは、遙か昔に封印され、

封印が解けてもなお姿を消したままと言われていた

大魔王エリルスが立っているのだから。

「エリルス……」

誰かが全員の言葉を代表してそう呟いた。

エリルスはそんな聲に上辺だけの笑顔を浮かべた。

この場にいる大魔王たちは昔からの知り合いだが、

にとってはどうでも良い存在の部類なため、

彼らに対するが湧いてこないのだ。

それでも上辺だけの関係は一応築いておく、

何か良い報が手にる可能がるからだ。

特にオヌブとの関係は築いておきたい。

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それが大魔王エリルスの考えだ。

「みんな、久しぶりだね~。全然変わってないみたいだね~」

空いている席に腰を下ろす。

全員の視線を集めているが當の本人は全く気にしていない。

「聞くところによると何か大切な者を失って

心を閉ざしたと聞いていたのだが、隨分と元気そうだな」

が真っ黒の大男、大魔王クロンがそう言った。

彼の容姿は別に何かを被っている訳でも塗っている訳でも無く、

から何まで本當に真っ黒なのだ。

遙か昔、まだ力を付ける前にけた呪いのせいらしいのだが、

大魔王になった今もその呪いを解くすべは見つかっていない。

そんな彼がエリルスに指摘したのはソラの事だ。

確かにエリルスはソラが死んでしまってから心を閉ざし、

口調も格も兇変していた。

それらの報は全部オヌブ経由で伝わっている。

プライバシーの欠片もない大魔王だ。

「うん~元気だよ~。もう解決したから問題ないよ~」

「解決?」

「ふふふ~」

流石のオヌブでもエリルスの加護の件は知ることが出來ていないようで、

どのように解決したのか不明で首を傾げた。

「そのうちわかる事だから~気にしないで良いよ~」

「どういう事……教え――」

「はいはい、取り合えずその話は置いておいて、

全員揃ったことなので早速始めたいと思います」

デーグ自もエリルスに聞きたい事が山ほどあるが、

今回は急で大魔王たちに集まってもらっているため、

オヌブが盛り上がっている所悪いが、無理にでも止めて

強制的に本題に移ることにした。

「むむむ……」

流石のオヌブも場を理解して抑え込む。

「はい、では、

今回皆さんに集まってもらった理由は知っていると思いますが、

近々人間たちが再び異世界から

勇者を呼ぶ出そうとしている事についてです」

これもオヌブからの報だ

「なんでこんな短期間に二回も……って思いますよね?」

ほとんどの大魔王が思っている事をデーグが代表で発言した。

別にその臺詞はデーグじゃなくて良いのではないかと

一部の大魔王たちがこころのなかでそう突っ込んだ。

大魔王デーグは顔面偏差値が非常に高い上に

コミュニケーション能力も高く、おしゃべりさんなのだ。

「そんなもの決まっているでしょう?」

漆黒の羽を纏った長髪の

大魔王フモアが呆れた様子でそう呟いた。

この場にいる誰もが先日の一方的な殺戮が起こったことをしっている。

たった三千の兵に大して過剰すぎと言っても過言ではない

過剰防衛が起こり三千の兵どころか、

その土地全てが滅び、植や生の気配は全て消えてしまったのだ。

それに加え、スキルの影響でその土地には毒霧が発生している。

「お前のことだぞエリルス」

真っ黒な大魔王クロンが誰の事か分かっていない

莫迦者に向かって強く言い放った。

「え~、我そんな事したかな?覚えてないや~」

「エリルス、貴が変わったのもその時、

明らかに不機嫌だったはずなのに急にニコニコしだして

たった三千の人間如きにあんなスキルを放つだなんて信じられない」

「ん~!!あの時ね~くふふふふ~」

どうやら思い出した様だが、兵隊を倒したことよりも

あの時の喜びが圧倒的に高く、思い出しただけで

変な笑い聲が出てしまう様だ。

「駄目だこいつ、昔よりもいかれてやがる」

「と、兎に角!あの事件を切っ掛けに人間達が焦りだし、

勇者召喚を早めに行う事になった模様です」

話が進まないのでデーグが聲を張って話を戻した。

「それで、その対策を皆さんに考えて頂きたく――」

「そんなもん気にしなくて良いだろ?

前回の勇者召喚だって大した奴一人も居なかったよな」

デーグの言葉を遮ったのは円卓に足を乗っけて腕を組み偉そうにしている

白い髭を生やしたお爺ちゃん大魔王ポワだ。

確かにと思う大魔王達だったが、一人だけ不満を覚えた者がいる。

「確かにそうですが――」

「それは聞き捨てならないな~」

再びデーグの発言を遮りエリルスが不満気に呟いた。

「何がだ?」

「オヌブは知ってると思うけどね~、

君たちが知っている勇者の中にはね~

君たちの知らない勇者がいたんだよ~」

「俺達が知らないか、どういう事だ?」

「正確には~勇者の中にいた勇者になれなった年かな~」

勇者召喚され唯一勇者となれなかった年ソラ。

彼は勇者であって勇者になれなかった年だ。

痛み付けられ死に際まで追い詰められ大魔王と出會った年。

そして――もうこの世にはいない年。

「なんだそれ……」

「まぁ~兎に角~その年が居た事を忘れないでね~

君たちよりも遙かに強くなるはずだったから~」

「さっきから過去形ですが?」

「うん~もう死んじゃったよ~」

以前のエリルスなら誰からソラの事を死んだなど口にしたら

殺してしまう程の句だったのだが、今では自分の口から

軽く言ってしまえるほど回復している。

なぜなら、ソラは死んでいないと知っているからだ。

「そうですか……私達を越えるとは信じがたい事ですが、

その年が居たという事をしっかりと覚えておきましょう。

なので、今回の召喚もエリルスが言うような存在が現れるかも知れません、

念のため皆さんで対策を練りましょう」

「面倒くせぇ……」

こうして勇者召喚の対策について大魔王達の間で

様々な案が練られたのである。

この案が本當に実行されると間違いなく勇者召喚は

中止になる――いや、その國が滅亡する程の案だ。

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