《勇者になれなかった俺は異世界で》化け二人組

「……ん」

目を覚ますとそこは見知らぬ場所だった。

まだぼんやりとする意識の中周囲を見回して狀況を確認する。

そして分かったことは俺は醫務室的な場所にいるという事だ。

記憶を遡って何故この様な狀況になっているかを思い出す。

確か……ポチに時間を止められてムフフな事をされそうになって

砂時計の砂が全て落ち切って――気を失った。

「んんん、なんだったんだアレ――おっ」

隣のベッドで寢ているポチが目を覚めた様で

もぞもぞと眠たそうにベッドの上で蟲の様にいていた。

いきなり気を失ったというのに呑気な奴だなぁ。

まぁ、気を失った原因を作った張本人で

俺みたいに訳も分からないということではないのだから呑気でいられるのだろう。

「おーい、起きろポチ」

しっかりと周りに俺たち以外の存在がいないことを確認して

チポではなくポチという名前を呼ぶ。

試合中散々本名を呼び合っていた気がするが、

他から見ればありえない速さで繰り広げられていた訳だし、問題ない。

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「んん……ソラよ、おはよう」

「ああ、おはよう」

起きたかと思えば布団をもう一度被り、

に包ませて顔だけをひょこっと出してこちらを見てきた。

人間の姿になっているポチだが、

その行が小の様でものすごくかわいい。

「試合ってどうなったか知ってるか?」

「ん~我とソラの引き分けってことになってるだろうな。

まぁ、我がその様になるのを仕掛けたからな」

やはり、というか知っていた事だが、

互いが気絶し引き分けになったのはポチが原因の様だ。

間違いなくあの謎の砂時計だ。

「ちなみに、どういう仕掛けだったか聞いても良いか?」

「うむ、ソラも分かっていると思うが、

我とソラが気絶したのはあのでっかい砂時計の所為だ。

我とソラだからこそ気絶という形で決著が著いたが、

本來のアレの力は指定の相手と使用者を意識を飛ばし命を刈り取るというものだ」

「うわぁ……」

てっきり強制的に気絶させる程度だと思っていたが、

その続きがあったようで気絶してから命がとられるという

何とも外道というべきか恐ろしい技だった。

確かにエキサラの不死の力をけ継いでいなかったら

本當に互いが死んでいただろう。

もしあのステージ上では死なない力が働いていたとしても

ポチのことだから本當に死んでいたに違いない。

「あれを使うのは初めてだったが、

エキサラのお蔭で我とソラは死なない事を思い出してな、

今まで喰らった霊と我の全力を使ったんだ。

本當はあれが発する前に決著をつけようとしたのだが、

まさか時を止めてもソラのことを止めることは出來なかったとは、思いもしなかったぞ」

「自らの命を引き換えに強制死と時間を止める力。

ポチって本當に凄いよなぁ」

その力があればやろうと思えば國を亡ぼすことだって可能だ。

まぁ、當の本人にその気はないのが幸いなのだろうが、

この力は神のと戦闘に非常に役に立つかもしれない。

今回、この闘技大會に出て損は無かったと実できる。

「我と霊が本気を出しても倒すことが出來ない

ソラの方が何倍も凄いだろうな」

「そ、そうか?嬉しいな」

なんだか時を止めるポチ様に言われてしまったら

非常に照れてしまい本當に自分が凄いと思ってしまう。

「よいしょっと、ポチ、はもう平気か?」

「ああ、問題ない。むしろ久しぶりに本気を出して

凄く軽くじるぞ」

「そうか、なら良かった。もう遅いかもしれないけど、

ヘリムとご主人様の試合を観に行こうぜ」

「ああ、そうだな」

意外とふわふわなベッドから出て二人で醫務室を去った。

二人の試合はまだ続いているのだろうか。

そんな事を思ったりもしたのだが、よくよく考えてみれば

あの二人のことだ試合が終わっているのならば

俺たちの見舞いに來ている事だろう。

だが、今回二人の姿は見ていない。

という事は試合がまだ続いているという可能が高いのだ。

――ドォンッ!

と凄まじい音と振が伝わってくる。それも一度ではなく何度もだ。

この振の原因はあの二人だと思えば、別に不思議な事ではない。

「激しいな」

「そうだな、暴れてるんだろうなぁ」

なんとなく會場がどうなっているかなど予想できてしまう。

これほどの音と振が伝わってくるのだ。

會場は荒れまくっているだろう。

「うわぁ」

そして案の定、會場に行くとそこは地獄と化していた。

ステージは破壊されており、その一部が観客席に突き刺さっており、

観客達はパニックに陥っていた。

『ストーーーップ!!やめてください!!ちょっと!聞いてますか!?』

何時もは喧しい司會者も大変焦っている様だ。

そんな悲痛のびは當然二人には屆いておらず、

未だに化け同士で戦い合っていた。

それを見て逃げう観客や呑気に座りながら楽しそうに見ている者もいる。

「いやー凄いね、君のご主人様」

「ん?ああ、イケメン奴隷か」

突然聲を掛けてきたのは例の鬼族奴隷だった。

彼は楽しそうに椅子に座り他の観客達とは違い、

逃げると言う素振りを微塵も見せていない。

実力がある為の行だろう。

「勿論、君たちも凄かったよ!

あの時出場しないでしいって言ったけど、

どうやらそれは間違いの様だったね」

「いや、間違ってはないかもしれないぞ。

こんなに會場を滅茶苦茶にしちゃって、

もう場外とか関係なしに戦ってるんだぜ?」

當の本人たちからしてみれば楽しいのかもしれないが、

運営側や観客達からしたらこの大會が滅茶苦茶にされてしまい

たまったもんじゃない。

「はははは、確かにそうかもしれないね。

君たちに勝てる人はこの會場には居ないし、

決勝戦も優勝も全部君と君のご主人様たちのだね

先に言っておくよ、おめでとう!」

「お、おう、ありがとう」

なんだこいつ滅茶苦茶良い奴じゃないか!

イケメンの癖に!

「戦わないのか?」

「はははは、冗談言わないでくれよ。

勝てるわけないじゃないか、恐ろしい事を言わないでくれ」

「ははは……ごめん」

俺とポチはそれからイケメン奴隷の橫に腰を下ろし、

楽しそうに戦っている化け二人組を見ることにした。

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