《勇者になれなかった俺は異世界で》真の勇者

それから一時間程だろうか馬車擬きに乗せられリーン王國に辿り著いた。

何度か小休憩を挾みながら移していた為、結構時間が掛かってしまった様だ。

の狀態が萬全とは言えない為、休憩が仕方がない事だ。

門兵に止められるがその辺は全てラパズに任せている。

余程顔が利くのだろう、名前を言うだけですんなりと通されてしまった。

それも、門兵たち全員が出てきて頭を下げているのが中か見えた。

やはりどこかのお嬢様なのだろうか。

パレードの為にこっそりと抜け出して來たとも言っていたし、

普通のではないのはわかっている。

今回の事が大事になれば確実に俺たちも巻き込まれるだろう。

関係をもつことは悪くはないが、今はゆっくりと冒険してヤミ達を探すと言う

大きな目的がある以上、巻き込まれる前に姿を消した方が良いのだろう。

リーン王國にってから數十分が経つ頃、馬車擬きは足を止めた。

「これから私はお知り合いの家に向かうのですが、お二人はどうしますか?」

馬車擬きの中までわざわざやってきてそう訪ねてきた。

外をちらりと見てみるとどうやら此処は馬舎の様な場所だ。

どうやら快適な移は此処までのようだ。

ふむ、なら此処でお別れだな

「我たちは別の道を行くとしよう」

「そうですか……出來れば紹介したかったのですけどね、

またどこかで會う事があれば、その時は改めてお禮をしますね!」

「ばいばい~」

ささっと別れを告げてラパズから距離を取る。

「パレードまでは時間あるようだな」

「ん?ああ、本當だ」

石煉瓦造りの街中を歩いていると、小さな広場に掲示板があり

そこにはいくつもの紙がってあるが、それを覆い隠すように大きく

勇者パレードに付いての知らせと言う紙がられていた。

容はパレードの場所と日時が書かれているだけであり、

そこまでデカデカと掲示する必要はあるのだろうかと疑問を抱く。

「今日の夜か……じゃあ、それまで分証でも作りにいくか」

Advertisement

今は大夕方ぐらいの為、まだ時間に余裕がある。

冒険者ギルドに向かいギルドカードを発行してもらう。

それが手っ取り早く分証をつくる楽な方法だ。

「冒険者ギルド、楽しいのか?」

「まぁ、々な人がいてんな報が集まる場所だからつまらない事はないだろうな」

これから俺たちは冒険をしてヤミ達を探さなくてはいけない。

そうなると、冒険者ギルドは必須だ。

報を集めるのにあそこほど最適な場所はないだろう。

曖昧な記憶を頼りに冒険者ギルドに何とか辿り著くことが出來た。

あの懐かしき冒険者ギルドの様に可らしい手描きの文字は無いが、

外裝は大して変わりはない。

中にってみると、裝も大して変わりは無かった。

どうやら冒険者ギルドはどこも同じ造りをしているようだ。

足を踏みれると視線が一気にこちらに集まる。

酒場で飲んでいる者たちも手を止めて何ら隠す事も無くジロリと堂々と見ている。

その視線はポチではなく俺に向いている。

無理もない事だ。自分で言うのもなんだが【鬼】がこんな所に來るものではないからだ。

この視線は敵意とかではなく、単に子どもが何故こんな所に來たんだ?と言う疑問の表れだ。

此処はを張って堂々とカウンターに言って付嬢にイケボでギルドカードの作を頼む。

と言いたいところだが、生憎このでは真面に聞いてはくれないだろう。

だから――

「ひっ!」

わざとけない聲をあげてポチの後ろに隠れる。

そして、ポチの服を軽く摑み怯えている子供を演じてみせる。

『これは悪くないな』

そんな想は求めてない。早くギルドカード作するぞ。

これでポチが付嬢にギルドカード作を依頼し、

そのついでに俺のも作っちゃえば良いのだ。

ポチが歩き出しその後ろをぴったりと俺が歩く。

相変わらず視線が注がれているが無視だ。

「ギルドカードを作したい。我と弟の分もついでにだ」

「はい、わかりました。では此方の紙にサインをお願いします。

Advertisement

文字が書けない場合は代わりに私が書くので言ってくださいね」

「うむ」

付嬢と言うのは人しかなることができないのだろうか。

と思ってしまうほどこの世界の付場はしい人ばかりだ。

紙をけ取り名前と年齢と種族を書くのだが――カウンターに屆く様な長ではないのだ。

この世界のカウンターが高いだけで決して俺がチビと言う訳では無いぞ!

『ほれ』

「うわぁ!」

ポチが振り向き俺のを軽々と抱きかかえ持ち上げてくれた。

これで難なく紙にサインを書けるのだが、し恥ずかしい。

子供の姿はこういう時に便利だが、なんだか複雑な気分だ。

『我はこの世界の文字は知らぬぞ。代わりに書いてくれ』

ああ、そう言えばそうだな――ってじゃあ何でさっきの掲示板は読めたんだ?

『數字ぐらい読めるぞ。莫迦にするな』

なるほど……

あまり意識はしたことなかったのだが、どうやら向こうの世界と數字は一緒らしい。

持ち上げられながらも汚い字ですらすらと書いていく。

まずは自分の名前だ。ソラ、年齢――適當に六歳ぐらいでいいや。

種族――人間でありたいから人間でいいや。

次はポチの方だ。

名前はポチ――良い名前だ。年齢――ポチ何歳だ?

『忘れた』

なら、十八歳にしておこう。種族は――まぁ、今は人間だから、人間で。

……よし、出來た!

付嬢に渡すと裏に行きギルドカードを発行してくれた。

冒険者についての説明を聞くかと言われ、知ってるから斷ろうとしたのだが、苦い記憶が脳裏をよぎる。

あの説教と変わりない地獄の時間を味わうことになるとはもう二度と免だ。

此処で斷ったら々と悪目立ちしそうなので仕方なく聞くことにした。

すると、付嬢は嬉しそうに笑顔を浮かべ説明を始めた。

ひょっとするとこの世界の付嬢は説明が大好きなのかもしれない。

説明をけている間、俺は聞いている様なふりをして

天井を見てシミの數を數えたり棚を見て埃たまってるなぁ……

Advertisement

など全く関係のない事を考えて早く説明が終わらないかと時間をつぶしていた。

付嬢の方には申し訳ないという気持ちがあるが、許してしい、もう聞いたことのある容なのだ。

俺がそんな最低な事をしている間ポチは真剣に説明を聞いている様だ。

どうやら、俺の記憶だけでは不安らしく自分で聞かないと不安なのだとか。

意外にもポチさん、冒険者になる事にノリノリの様だ。

かなりの長い間生きているポチだが、冒険者になる経験などしたことがない為、ウキウキしているみたいだ。

非常にその気持ちは分かるし、実際に俺もポチと冒険者になる事は楽しみだ。

何事も始める時が一番ワクワクし、段々とその気持ちが薄れて行くものだ。

「――以上です。弟くんには退屈な話でしたね」

「そ、そんなことないよー。お姉さんの話わかり易かった!」

適當に聞いているふりをしていたのだが、流石はベテランだ。

俺が話を聞いていないと見切ってしまった。

此処は子供らしさを出しつつさらっとお姉さんの事を褒めるのがベストだ。

伊達に數年間子供をやってきていない……。

「あら、そうですか。それは嬉しいですね」

ニッコリと可い笑みを作って見せる付嬢。

會話もスラスラと出來てしっかりと笑顔もつくることが出來る。

普通の事なのかもしれないが俺は凄いことだと思う。

「これがお二人のギルドカードになります」

したプレートをけ取り、

一応間違いなどがないかを確認する為に目を通してみる。

=========

ソラ

6

人間

G

=========

=========

ポチ

18

人間

G

=========

相変わらずシンプルなギルドカードだ。わかり易くて良いんだけど。

それにしても改めてプレートに書かれると何だかペットの名前みたいだな。

ポチは初めての経験に目を輝かしてプレートを見つめていた。可い。

「ちなみにもうすぐパレードが開かれるので、行ってみると良いですよ

掲示板などに大きく宣伝されているので、もう知っているかも知れませんが、

なんでも、勇者のお披目會があるみたいですよ!

冒険者を目指す者なら、勇者と呼ばれる彼らの風貌を見て置いて損はないと思います!」

「うむ、そのつもりだ」

そういうとポチはテクテクとカウンターから離れて行った。

俺は付嬢にペコリと頭を下げてから急いでポチの後を追う。

どうやら付嬢さんは勇者のお披目に興味津々の様だ。

だけではなく、基本的にはこの國中の皆が興味津々なのだろう。

なんて言ったって勇者だ。魔王を倒し世界を救う存在だ。

救世主にも見えるのだろう。興味が無い方がおかしい。

最初は痛い程視線が降り注いでいたが、今ではちらほらといる程度だ。

冒険者ギルドを出て勇者パレードが行われる予定の広場に行くと、

既に人だかりができており、チビには非常に厳しい環境になっていた。

わぁーと歓聲が上がりだしたのだが、前が全く見えないため何が起こっているか分からないが、

恐らく勇者パレードが始まり勇者様が現れたのだろう。

今日ほどこの長を憎いと思った日は無いかもしれないかもしれない。

ピョンピョンとジャンプをしてみるが、當然見える訳がなく――

「わ!」

急に視線が高くなり視界が開けた。

ステージが設置されており、その上に三人の勇者らしい人

複數の兵士と偉そうな人が一人、そして異質な存在を放っているのが

縛られて兵士に連れられている謎の人

「これで満足か?」

悲しい気持ちになっている俺の事を軽々と持ち上げ肩車をしてくれた

神の様な存在のポチ様がそう聞いてきた。

「うん、大満足!」

『それにしてもあんなのが勇者なのか、頼りなさそうな奴ばかりだ』

「まぁ、そういうなって」

今日、この世界に呼ばれたばかりなら當然だろう。

そんな事を思いつつ魔眼を発し勇者のステータスを見てみる。

まずは左端にいる長が高く、顔が平たく、

おでこに二つの黒子があるのが特徴の年からだ。

=================================

キムラ マコト

Lv1

力:10,000

魔力:5,000

攻撃力:1,000

力:2,000

素早さ:500

運:50

言語理解Lv1

しの言語なら理解でき、読み書き出來る。

苦痛は快へペインプレジャーLvMAX

痛みや苦しみが快になり、防力がかなり上がる。

壁マゾヒストウォールLvMAX

一部が活化する代わりに盾を発し、防力がかなり上がる。

真の勇者LvMAX

勇者の中の勇者。強いですよ。

この人はあれです。M男と言われる奴ですね。

非常に気持ち悪いと思うのですが、敵に回すと結構厄介だと思います。

何が彼をこんなM男に変えてしまったのか興味がありますね

==================================

魔眼よ、確かにそれが気になるが、ステータスは何時からお前の想欄になったんだよ!

========================

良いじゃないですか、ほら次行きますよ

========================

次は、M男の隣にいる見ているのが眩しい程のイケメンフェイスの年だ。

明らかに勇者になるべくして生まれてきましたと言ったじだ。

=================================

ケンドウ タツノスケ

Lv1

力:5,000

魔力:5,000

攻撃力:2,000

力:3,000

素早さ:1,000

運:77

言語理解Lv1

しの言語なら理解でき、読み書き出來る。

道叩きノ介ジュウドウタタキノスケLvMAX

どんな攻撃をけても必ずを取りながら倒れる。

時に防力がかなり上昇。

完璧運男パーフェクトスポーツマンLvMAX

どんな運でも完璧にこなしてしまう(剣道以外)

常時発

真の勇者LvMAX

勇者の中の勇者。強いですよ。

ケンドウ タツノスケ マル

ケンドウ ハ デキマセン マル

ナマエ サギ デスネ マル

==================================

最後は唯一の

名前詐欺イケメンの後に続いてこれもまた

眠たそうな眼つきに可らしいツインテール。

シミ一つなく真っ白な、まるで人形の様なだ。

=================================

ミズノ シズカ

Lv1

力:3,000

魔力:10,000

攻撃力:100

力:1,000

素早さ:300

運:70

言語理解Lv1

しの言語なら理解でき、読み書き出來る。

眠りを妨げる者は――スリープヒンダァマッサークルLvMAX

邪魔する者は――。

眠たいネムタイLvMAX

常に眠たい代わりに魔力が常時回復していく。

真の勇者LvMAX

勇者の中の勇者。強いですよ。

そうやって眠たい眠たいと怠けてばかりいたら

近い將來に絶対ブクブクと太っていきますよ。

はっはっは。

==================================

以上が真の勇者と言われるものたちのステータスだ。

的に癖の強い奴らだが確かに真の勇者と呼ばれる程強い。

俺の初期ステータスなんて……くそ、思い出したら腹立ってきた!

===================

やーい、雑魚~やーい――そんな事よりも

あの異質な存在を放っているのを確認しましょう

===================

くっ、この魔眼!最近調子に乗ってないか?

後で絶対叱ってやると思いつつも異質な存在を放っている

捕虜らしい人のステータスを見る。

=================================

――

Lv――

――LvMAX

大魔王達によって作られた人形。

死をトリガーに大発を起こしますね。

その規模はなんとこの國が軽く吹き飛ぶぐらいですかね~

わぁ、大変!どうしましょうか。

==================================

「……」

目の前に存在している人の形をした途轍もない脅威の塊を見て思わず苦笑いを浮かべる。

どうやら俺がいない間に、この世界の大魔王はとんでもない事をやらかそうと考えていたらしい。

あの理不盡過ぎる人形の効果に気が付いている者は今のところいなさそうだな。

もし居るのならば人形に刺激を與えないようにしたり、何かしらのアクションを起こしているはずだ。

それどころか、兵士たちは縄をぐいぐいと暴に扱い人形を縛る縄が徐々に食い込んで行く。

おいおいおい!!!やめろ!!!

効果を知ってしまった俺はその行で國が無くなる事を知っているので

聲には出さないが心の中で兵士を止める。

何のためにそこに存在しているのかと思ったが、どうやら扱いからして捕虜の役割をしている様だ。

人形とは言え見た目は完璧な人型だ。魔力によっていており、呼吸もしている。

あれが人形と見破れる存在は數ないだろう。

「此処に一の悪魔がいる!この悪魔をこの場で殺し、我々は魔王軍に宣戦布告をする――!!」

先ほどから勇者たちの紹介をしたりパレードに集まってくれた國民に

謝の言葉を述べたりしていた偉そうな人がとんでもない事を言い出した。

魔王軍に宣戦布告をするのは別に止めはしない!

だが、その悪魔を殺すのはやめろ!!宣戦布告する前に國が無くなるぞ!!

『うるさいぞ、ソラ』

え、ごめん……

折角辿り著いた國を滅ぼされてしまうと思うと、つい熱くなってしまった。

此処は冷靜になってどうすれば破を回避できるか考えなければ。

強化を使って目にも止まらぬ速さで悪あの人形を奪取するか?

いや、その衝撃で死んで破する可能がある……

そうなってしまえば俺が國を破したも同然……くそう!!

『いや、國が無くなるのならば我とソラしか生き殘らんだろ、

ソラを責める奴は皆死ぬんだぞ』

あ、そっか……いや、そっかじゃない。

別にこの國に何の思いれも無いが、態々あのお嬢さんも利用して

この國にったんだからもうしゆっくりさせてほしいんだ。

「では、勇者よ、この悪魔を――」

あああああぁああっぁああああ!!

あれも違うこれも違うと悩んでいると偉そうな人が滅亡宣言をはじめ、

その命令に怯えた表の三人の勇者が人形向かって歩み始めた。

三人の手には鋭利な刃が握られており、そんなもので傷付けられたら

人形は何の前兆も起きることなく、発してしまうだろう。

そして恐る恐る刃が振り上げられ――

歓聲が上がる中俺だけが終わりだ……と思っていると――

『そうだ、試したい事があったんだった』

ポチがそう呟き――

観客は盛り上がりを見せながらもピッタリと停止している。

盛り上がりすぎて汚い唾が吐き出されている瞬間すらも停止し、認識できる。

時が止まった。あと數センチと言う所で刃が止まっているのを確認し、一安心だ。

「よし、功だ。ソラよ、いてみろ」

「え?」

時間を止められた中、俺に出來る事と言えば必死に

ポチに命乞いをすることぐらいだけのはずだが……

「え!?けるぞ!?」

言われたとおりに肩車されたままポチの頭をわしゃわしゃすることが出來た。

周りが止まっている中でけると言う優越に浸る事が出來る。

「ソラを範囲外にして発してみたのだが、無事功した様で良かった」

時間停止と言う神でも抗う事の出來ない技に

さらりとアレンジを加えて見せるポチ。本當に流石と言う言葉しか出てこない。

「ほれ、これでやりたい放題だ。どうするんだ?」

「う~ん、そうだなぁ……取り敢えず近付いてみてくれ」

「ああ」

肩車されたまま止まった時の中をいていく。

人混みが噓の様にスムーズに足が進みあっと言う間にステージの上までたどり著いた。

ちらりと観客達の事を見ると、ひとりひとり違った表で固まっており、

し面白くじる。

「よし、試してみるか」

ポチも試しでアレンジを功させたんだ、ならば次はこちらの番だ。

そう意気込み俺は今までやったことの無いような行をとる。

「絶対防プロテクト」

絶対防を人形囲むようにったのだ。

今まで自分にしか使用してこなかったスキルだが、ポチが行ったように

俺も他人に使用してみたのだ。

絶対防は一度なら何でも防いでくれる優れたスキルだ。

それは例え部からの発でも――そうだよな?魔眼さん

――ええ、そうですね。珍しく頭が働いている様で嬉しいです

魔眼さんもこういっているんだ、間違いない。

絶対防部からの破も防ぐことが可能だ。

後はどうやってこいつを殺すか――

『そんなもの簡単だ。一回絶対防とやらを解いてくれ』

「はい」

「そして、こうするんだ」

「!」

ポチはそう言って人形の頭を鋭くなった手で貫いて見せた。

當然人形の為、を流したりはしなかったが

命が無くなった以上発してしまう――

「あ、そっか。時間止まってるんだもんね。発する訳ないか」

『ああ、その通りだ』

「流石ポチだぜ、これで俺が絶対防プロテクトを掛ければ――完璧っと」

俺たちはやり遂げた顔をして先ほどの場所まで戻り、

何事も無かったかのように再びステージを見る――そして、時はき出す。

勇者の刃が振り下ろされた瞬間、不可解な小規模な発が起こった。

正確には破した後に勇者の刃が振り下ろされた――だ。

真の勇者登場と悪魔の処刑に興しきっている観客達は

その不可解な現象を誰も疑問には思っていない様だ。

「さ、今日の宿さがそうか」

「そうだな……所でお金はあるのか?」

「へ?」

今思えば、お金なんて持っていなかったのである。

「やはり持っていないのか……また時を止めて奪ってくるか?」

「ん~それはちょっとなぁ……」

その方が何の危険もおかさずにお金が手にるかもしれない為、非常に良い案なのだが、

それをしてしまえば本當に人間として生きられなくなってしまう。

悪いことをせずに手っ取り早くお金を稼ぐ方法……

何か良い方法は無いかとし頭を捻ると、それはいとも簡単に導き出された。

「行くぞポチ!進め!!」

「なかなかひどい事を考えるものだ」

ポチに肩車をされたまま目的地へと向かう。

俺が考えているのは裏路地へと向かいそこでわざと悪い人に絡まれるのだ。

そして、ぽんぽんと軽く敗してお金を巻き上げてしまおう。

正直な所これも確実にお金が手にると言う訳では無いのだが、

一応は世話になる國の為、しだけ清掃を兼ねてだ。

「さてさて」

裏路地にり込みとぼとぼと歩いてみる。

相変わらず日のがあまりらずじめじめとしている。

し薄暗いじ俺は嫌いではない。

「我も嫌いじゃない」

「そうか」

暫く歩いてみるが全く悪い人が現れる事は無い。

人の姿すら見えなく何だか不気味なじなのだが。

よくよく考えると勇者パレードとか言う珍しいイベントが開かれているのだから

いくら悪い奴だと言っても気になり裏路地から出て行くだろう。

「まぁ、そんな上手く行くわけないと思ってたけど、無駄足だったかもね」

「ふむ、戻るとするか」

ガックシとし肩を落としながら來た道を戻っていく。

帰りに悪者が出現していないだろうか、としだけ期待しつつ戻っていくと

ポチが何やら気配をじ取ったらしく足を止めた。

膝車されている俺も自的に止まる。

『此処を曲がった角に三人。この反応からして先ほどの勇者たちだろうな』

ほう、悪者じゃないけどそれはそれでラッキーだな。

流石にお金を巻き上げると言う事は出來ないが、

勇者パレードの真っ最中にこんな場所にいると言う事は、

抜け出して來た可能が高い。今さっきまであの広間にいたのだ。

何か理由があって三人だけでそこにいるに違いない。

それを上手い事利用して宿代ぐらい分けてもらおうではないか。

真の勇者、それもパレードが開かれる程ならばかなり期待されていると言うことだ。

つまりお金も良い額貰っているはずだ。

よし、ポチさんやい。頼んだぞ

『任せろ』

肩車はやめずに勇者がいると思われる方へ進んでいき角を曲がってみると

ポチの予想通りに真の勇者三人がいた。

此方の姿を目視するなり、一斉に構える三人。

それも仕方がないだろう。こっそり抜け出して來たところに、と肩車された子供が現れたのだ。

警戒心丸出しにするのは當然だ。むしろおかしいのは俺たちの方だ。

そんな狀況の中、勇者の一人――眠たそうなが口を開き、その警戒心は解ける。

「君、確かパレードに居た子だよね?」

その言葉は確実に俺に掛けられた様で、ポチではなく視線を上げ肩車されている此方の目を見ている。

眠たそうにしている割には良く周りの事を見ているのだなと心する。

此処でも子供っぽく振る舞い相手を欺く。

「うん!そうだよ。勇者さんたちはここでなにしてるの?」

なんの違和も無く子供らしい無邪気な質問をぶつけて

勇者たちの事を探ってみる。

本當はポチにやってもらう予定だったが、流れがこちらに向いてしまった以上仕方がない。

「やっぱり、執事服可いね……私たちはちょっと疲れたから此処で休んでいたんだよ」

やはり子供の姿は便利だ。まだ警戒はされてはいるが、會話はり立つ。

「そうなんだ、戻らなくて良いの?」

「ん~戻った方が良いんだろうけどね……」

はそう言いながら隣に居る勇者ケンドウ タツノスケにも視線を送った。

「僕は頭の整理が出來るまで休んでいたいな……」

「いきなりこんな世界に連れてこられて……人殺しもさせられて……

俺たちが何をしたって言うんだ」

そう言うキムラ マコト君だったが、何故か頬がし赤くなっていた。

頬を赤くする理由は良く分からないが、その気持ちは良く分かるような気がする。

人殺し……と言うのは多分あの人形の事だろう。

見た目は完全に人間だが中は人形だ。気が付かなくて當然だ。

まぁ、実際の所、殺してはないのだが。

いきなり勇者召喚されて、パレードに出され……確かに災難だ。

だが、そう思っているのならばまだ救いようがあると言う事だ。

アイツらの様におかしくなってしまってはいない様だ。

「お前たちは休むところがしいのだな?」

「え?はい、そうです」

ポチが良いタイミングで言葉を発してくれた。

流石ポチさん。

「ちなみにお金は持っているか?」

「良く分からないけど、こんなの貰った」

そう言って彼はポケットから三枚の金貨を出した。

三金貨だ。真の勇者はかなり期待されている様だな。

……実はアイツらもこれぐらい貰っていた……なんて事は無いよね?

先ほどから脳裏にチラつくクラスメイト達の姿を頭をブンブンと振り掻き消す。

「それだけあれば足りるな。しで良いから分けてくれるのならば

休める場所に案してやっても良いぞ」

「本當ですか?でも僕たちはまだ貴方を信用できない――」

「別に信用できないのならば斷われば良い。

此処で掛けるか、パレードに戻るか選ぶが良い」

ちょっとポチさん!?折角のチャンスなのにそんな言い方は――

「これ、上げる」

「そうか、立だな」

あれぇ……この子思ったよりも思い切りが良いタイプなのか。

他の二人の意見は聞かずにミズノ シズカが三金貨をポチに渡した。

自分勝手の様な行だが、こういった場面で思い切った行

事をスムーズに進める際に非常に良い。

「ちょ――」

ポチが立と言った瞬間本日三度目の時間止めが発した。今回も俺はける様だ。

「ソラよ宿まで案してくれ」

「時間を止めてこいつらも運ぶのか……良いなそれ」

突然時間を止められるのは正直に言ってびっくりするので止めてしいのだが、

人目を付かずに宿に連れて行くにはこれが一番安全と言えばそうだ……こんなポンポンと使うものではないだろう……

時間停止中は運ぶこっちからすれば面倒だが、相手からすると転移と同じような覚になるだろう。

エリルスの微妙な記憶を頼りに宿に向かう。ポチはまたまた加護を使い三人の事を浮かして軽々と運んでいた。

本當にポチさん流石です……。

    人が読んでいる<勇者になれなかった俺は異世界で>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください