《勇者になれなかった俺は異世界で》的當てと新たな依頼

「ほれ、集め終わったぞ」

二回目となれば覚えが良いポチはすっかりと手慣れてしまい、

コアを破壊することなく短時間でスライムのコア10個を集め終わってしまった。

明らかに不満そうな表を浮かべてコアと魔石を手渡してくる。

「不満か?」

「當たり前だ。楽しみにしていたのに昨日と同じとはどういうことだ?

それともこれからソラが楽しませてくれたりするのか?」

「まぁ、まぁ、落ち著いてくれよポチさんやい」

々と想定外の出來事が起きたが今回昨日同様にとても簡単な依頼を選んだとは理由がある。

ポチがこの依頼を直ぐに達してくれるのは想定済みだ。

時間が余りにあまって仕方がなくなる事も想定だ。

「あっちで良いのかな」

適當に強い気配を探して指をさす。

「沢山いるな……もしかして、あれを殺してもよいのか!?」

「違う!」

ポチの表がパァっと明るくなり今日一の大聲を上げて興していた。

勿論、殺したりはしない。おそらくあそこには真の勇者がいるはずだ。

今回の本當の目的はたまたま通りかかって石ころを投げてやることだ。

ほんとは石ころにしたかったのだが、どうやらこの草原には石ころは落ちていない様だ。

全てスライムが食べてしまっているのだろう。働き者だ。

「ポチよ、勝負をしないか?此処からコアを投げて的に當てられるかどうか」

「ほう、勝負か、悪くない」

「それじゃ、もうしコアを集めてくれ」

「任せろ!」

石ころが手にらないのならばそこらへんに沢山あるコアを投げれば良いのではないか。

ポチを上手い事話に乗せて大して楽しそうではない勝負を仕掛けスライムのコアを集めさせる。

この世界に來て初めて攻撃を仕掛ける。相手はかなり強いらしい、正確な実力は知らないが相手にとって不足はない。

「さてさて、魔眼発!!」

ポチが一生懸命スライムをブチャブチャ潰している最中に

俺は久しぶりに片手を目にやりクワッとヘンテコなポーズを決めてそうんだ。

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――莫迦みたいなポーズですね

頭の中に直接そう罵倒してくる魔眼さん。

周りには聞こえていないため言い返せないため非常にたちが悪い。

「なにが居るのかな~」

魔眼の力を使い気配のする方向を目をクワっと開いて凝らして見る。

すると見る見るうちに目標の場所を視認することが出來た。

そこには何故か倒れている大勢の冒険者の姿ともちをついてい勇者の姿があった。

中には頭をつぶされたりしている者もいる。

気の毒だが俺に出來ることは此処からスライムのコアを投げることぐらいだ。

それよりも――犯人はあいつか

「って、うわ~、まさかの的は魔王さんですか……」

倒れている冒険者たちを楽しそうに痛み付けているのはリリという魔王らしい。

エリルスの記憶からは大した報は読み取れないが、魔王と言う事だけ分かった。

つまり、俺たちは今から魔王さん相手に石ころ改めスライムのコアを投げつけようとしているのだ。

飛んだ命知らずだ……まぁ、命なんてないんですけど。

「ほれ、これだけあれば十分だろ?」

「うん、十分!」

ポチが集めてきてくれたのは大30個ほどのコアだ。

プニプニとしており投げ難いが仕方がないだろう。

「ポチさんやい、あそこにいる楽しそうに踏み踏みしているが見えるか?」

「ふむ、見えるぞ」

「良かった。あいつが今回の的だ。順番に投げて何発當てれるか勝負だ」

「ほうほう、楽勝だな」

「ほっほぉ~じゃあ俺から投げるぞ!」

まずはコアに絶対防を掛け、自強化を掛ける。

そして強めに魔王に向かって投げつける。

本気で投げてしまっては魔王だけではなく周りの冒険者も巻き込みかねない。

一直線に飛んで行ってくれることを期待したのだが、し右にずれてしまい

コアは魔王の右腕にあたり綺麗に肩から下を吹き飛ばしてくれた。

「まぁ、當たったから良しとしようか。ほら、ポチの番だぞ」

「ふふふふ、喰らえ――っ!」

加減を知らないポチは本気でコアを投げてしまい

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魔王に屆く前にコアの方が消滅してしまった。

ポカーンと口を開けその真実をれたくない様で何度も瞬きをしている。

「な、なななな……」

案の定、何の考えもなしに全力投球するだけの様だ。

このままでは勝負にならない為、絶対防を掛けたコアを渡す。

「これを投げてみろ、壊れないから」

「む、本當か!では、行くぞ!!」

再び全力投球。

一直線に飛んでいき周りも巻き込みつつ魔王の顔面にぶち當たる。

激しい衝撃が起こっているのだろう。倒れている冒険者たちが吹き飛んでいく。

そして肝心の的は首から上をなくし鮮の噴水を出し直立していた。

「どうだ?」

「周りにも被害加えたから半分だな。じゃあ次行くぞ――」

「なんだ、そんなルールがあったなら先に言ってくれ」

例え的の命が無くなろうとも的が無くなったわけではないのだからこの勝負は続く。

當てる所が無くなるのが先かコアが無くなるのが先か――

30発28中。俺が一発外し、ポチも一発外している為今回の勝負は引き分けと言う事になる。

28ものコアをぶち込まれた魔王リリのは既に原型を留めていなく、

右足のみが地面と垂直に立っており、辺りに々なモノを撒き散らかしていた。

冒険者たちも主にポチの所為で吹き飛ばされているが、命に別狀はなさそうだ。

「ふむ、引き分けか」

「くそー!悔しい!!一回だけ力れ過ぎたああああああ!!」

ポチは引き分けでも気にしていない様子だが、俺は凄く悔しがっている。

加減が分からないポチなら何度も外してくれるだろうと甘い考えでいたのだが、

凄い集中で最初以外は外すこと無く見事に的に當ててみせていた。

それを見て焦った俺は思わずコアに絶対防を掛けようと握ったのだが、

焦りからか力をれ過ぎてしまいコアが潰れてしまったのだ。

「何をそんなに悔やんでいるんだ」

「ポチに勝ってどや顔を決める予定だったんだよ!!」

「ふっ、下らないな……まぁ、今回はなかなか面白い経験が出來て良かったぞ。

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ほら、何時までもグズグズしてないで帰るぞ」

「……はい」

何だか最近ポチが凄く大人に見えてしまう。

実際は大人など優に通り越しているのだが、姿がお姉さんだからなのか、

ポチが段々この世界の常識に慣れて來ているからなのか

……何時かポチに逆らえなくなりそうだ。

何事も無く門を潛り余り活気のない商店街を進んで冒険者ギルドに向かう。

殆どの冒険者が外でまだ倒れているだろうから、當然中はガラッとしており靜かだ。

そんな中を俺とポチは特に気にする様子も見せずに堂々とカウンターに向かう。

此方に気が付いた何時もの付嬢が一瞬だけ目をまんまると開いていたが、

直ぐに今までに見せない様な鋭い眼つきに変わった。

「あっちいこうか」

「む、そうか」

明らかに怒られるじだったので俺はポチに言って

隣の隣にいる付嬢の下へ依頼完了の報告をしようとしたのだが――

「ちょっと!!二人ともこっちに來なさい!!」

當然、獲を捕らえた獣の如く鋭い眼は俺たちを見逃すことは無かった。

無視する事も出來るのだろうが、これからの事を考えると

こんなことで関係を悪化させるのは痛手になるだろうと仕方なく

お怒りの付嬢の下へ向かった。

「はい、まずは依頼完了ですね。お疲れさまでしたっ!」

おっ?怒らないぞ??さっきの鋭い眼はなんだったのだろう。

「スライムのコア10個。初日は仕方がないとして、

何故二回目なのにこんなに時間が掛かったのですか?

別に怒ったりしないのでおしえてください」

「む、コアは直ぐに集め終わったぞ。ちょっとソラと勝負していただけだ」

「ちょ!?」

ここにきてポチさんが気の利かない正直者になってしまった。

これは口止めをしなかった俺が悪いのかもしれないな……

次からは騎乗を発しておくとするか。

「そうですか……」

ポチの言葉を疑いもせず飲み込んだ様で付嬢の眼をより一層鋭くなり、

その目線の先にはい姿の俺がいる。

「さぁ、ソラ君?君はなにをしたのかしらね。決して怒らないから

お姉さんに詳しく教えてみなさい」

「え、えっと……えへへ」

何とか誤魔化せないかと笑顔を浮かべてみるが、

付嬢も笑顔を浮かべだしそれがまた恐ろしい程笑っていないのだ。

これはもう正直に言うしかないなと覚悟を決める。

「その、倒しすぎちゃってスライムのコアが余ったから……

的當て勝負しちゃった……」

「コ、コアで遊んでたんですか!?勿な――」

『無事魔王の消滅を確認しました。我々リーン王國の勝利です!

怪我人が多數出ている模様、治癒が使える者は至急正門まで』

の言葉を遮るように外でそんなアナウンスが口中に響いていた。

「――っ!魔王を倒したんですか……やった、やりました!!

ソラ君、お説教はまた明日です!私は正門に向かいます!!」

「は、はい」

魔王消滅のアナウンスが余程嬉しかったのだろう。

先ほどまで獣の様な眼をしていた彼はいつもの優しいじに戻り

俺にお説教宣言をしてルンルンと一度カウンターの奧に戻り、

準備をして來て正門へと向かって行った。

「……怒らないって言ったのに説教するんだ。ポチの所為だぞ」

「ふっ、我も共にけてやるから安心するが良いぞ」

結局今日も報収集は出來なさそうだ。

そんな事を思いながら冒険者ギルドを後にした。

・・・・

正門に集まったのは40名ほどの治癒が使える者達だった。

冒険者以外にもこれだけ治癒が使えるのはなかなか凄い事だ。

城からも幾人かの治癒を使える者達が集まり全員で70名程集まり、

門兵たちと共にけない冒険者たちの下へ向かう。

「ひっ……」

目的地に著くと誰かがそう小さな悲鳴を上げた。無理もないだろう。

目の前に広がるのは幾つもの死くことが出來なく倒れたままの冒険者たち。

地面には殆どが魔王リリのモノだが臓があちこちに飛び散っている。

なんの訓練も制もない人にとってはなかなか刺激の強い景だ。

「何らかの拘束をけている模様ですので、狀態異常を解除出來る者は私に続いてください。

その他の方々は負傷している冒険者たちを――」

その聲を聞いて、おどおどしていた者たちもき出す。

城から派遣された者たちは冒険者には目もくれず勇者達の下へ真っすぐに向かう。

大して負傷はしていない三人だが、國にとっては冒険者よりも

何十倍もこの勇者三人の価値の方があり、失う訳には行かないのだ。

けますか?」

「は、はい。ありがとうございます……」

拘束を解除された三人だったが皆顔が非常に悪く

殺されてもおかしくない狀況から助かったと言うのに元気がない。

この世界になれていない三人にとって目の前で起こった出來事は余りにも刺激的過ぎたのだ。

此処はそういった世界だと自分たちに言い聞かせて震えるを抑え込む。

「まずは安全な場所に移しましょう。歩けますか?」

三人は頷きゆっくりと起き上がり出來るだけ周りを見ない様にしながら足を進めた。

付き添いに三人の治癒士が付いている。

無事勇者を助け終えた城から派遣されたもの達はやっと冒険者たちの下へ向かう。

治癒に必死な者、助かったとで下ろす者。

そんな中、散らばっている魔王リリの欠片達が小刻みに震え徐々に一か所に

集まろうとしている事に誰も気が付きはしていなかった。

魔王リリ、彼も魔王と言う名を持っているのだ。

が魔王と呼ばれる理由はあの格だけではない。

リリは生まれながら死ぬことが出來ない質なのだ。

魔王と人間の間に生まれた子が彼。だが、人間が魔王の子を授かるのは不可能なのだ。

魔力の差があり過ぎて子を宿したとしても産む前にが壊れて行く。

リリの両親は當然そんな事ぐらい知っていた。だが、産むと言う道を選択したのだ。

の母親はどの道ある神からけた呪いがありもう長くない事は分かっていた。

魔王の力をもってしてもどうすることも出來ない理不盡な呪い。

そんな母の最期の願いが子供を産むことだったのだ。

魔王――神を殺し大魔王となった元魔王デーグはその約束を果たすため

母親のが壊れて行く前にお腹の中にいるリリに不死の呪いを掛けたのだ――

そしてすくすくと育ち々と格には難があるが魔王にまで長したのだ。

は一時的にの自由はきかなくなるのだが、それは時期に回復する。

腕程度の損失ならば數秒で回復するが全となれば結構な時間を費やす。

がばらばらになろうとも彼の意識はしっかりと存在しており、

今も尚自分のに何が起こったのかを確認していた。

そして彼の目にってきたのは――スライムのコアだった。

地面を抉るようにして埋まっているコア。

(わ、私が、こんなものでやられた?)

余りにも屈辱的な真実に揺し、怒りがわきでてくるのだが

それは一瞬にして収まり彼の心は快然たるものにかわっていた。

(たかがスライムのコアで私を倒すだなんて……あぁ、早く會ってみたいわ!

敵としてだとし分が悪いから、出來れば中立として々と話してみたいわ!!)

不死の呪いの影響で彼は負けと言うものを験した事が無かった。

今回も命はある為正確には負けていないのだが、

は初めて自分が敗北したのだと悟った。

例え正面からやり合ったとしても自分では勝てない、

狂人染みた格の彼がそこまで思うほど今回の攻撃は圧倒的だった。

(取り敢えずこのことはお父さんたちに報告しないとけないわぁ、

目的は一応達できた事だし、人間たちは放っておいて帰ろうか~)

片が一か所に集まり魔王リリが復活する。

周りの誰もがその絶的な景を目を見開き口をパクパクとさせていたが、

はそんな間抜け顔に興味すら抱かず背中に翼を生やして大魔王たちの下へと戻っていった。

大魔王達の下に戻ったリリから話を聞き誰もが信じられないと言う顔をしたが、

デーグの娘は昔から自分に正直であり噓など一度も付いたことの無い為、

大魔王達からの信用度は高く、その報は疑われることは無く、一度會議を開くことにした。

エリルスは欠席だが、それでも問題ないと判斷され會議は開かれた。

議題は勿論リーン王國にいる謎の存在の事だ。

それが真の勇者だとしたら納得がいくのだが、リリの話を聞く限りでは

真の勇者全員の事を人質として捕らえていたのにも関わらず彼はやられたのだ。

前回召喚された勇者の仕業ではと言う聲も上がったのだが、

大魔王達が知る限り魔王を投擲のみで倒せる程の実力者は居ない。

今回に限って何時も世界中を観察しているオヌブは何故か観察を中止してずっと寢ていたと言う。

毎日世界を観察している彼は眠る事は滅多になく

エリルスを除く大魔王達は彼が眠った姿を見た事が無い。

そんな彼が今回會議が開かれるまで円卓の上で寢ていた姿を見た時は全員が目を見開く程驚いた。

オヌブは議題を聞いた瞬間にソラ達の事だと即座に分かったのだが、

観察していなかった為確信を持てなく心の奧にしまっておくことにした。

唯一の手掛かりも失い大魔王達は皆頭を頭を悩ます。

そして悩み悩んだ末出てきたのが――

「全員で正を突き止めに行くぞ」

大魔王達からしてみれば散歩程度の覚だがリーン王國からして見れば非常に迷な話だ。

彼らはの目的は観察であって被害を與えるつもりはないのだが、

そんな事知る由もない王國側からしてみれば気が気ではない。

そもそも大魔王と言う存在はまだ明るみには出ていない為、

大魔王が來たぞ!となる事は無いだろうが、

それでも圧倒的なまでの力は隠しても隠し切れないため、

が分からなくても禍々しい力をじれば大騒ぎになるだろう。

そんな大変な事が起きるとは知る由もないソラとポチは今日も今日とて冒険者ギルドへ向かう。

・・・・

「そういえば今日お説教されるんだっけ?」

「ああ、そう言っていたな。我も共にけてやるから安心しろ」

今日は付嬢からお説教をけるのだ。

怒らないと言っていた為、軽い注意程度で済むのだろうと軽い気持ちでギルドへ向かう。

商店街の活気はいつも以上に増している。恐らく魔王に勝った為皆気分が上昇しているのだろう。

冒険者ギルドにると何時も程では無いが昨日よりかは確実ににぎわっていた。

まだ治療中の冒険者たちもいるのだろう。

中にり酒場にいる冒険者を眺め、橫目でちらりとカウンターにいる付嬢を見てみると

営業スマイルとは言えない程ニッコリと不気味な笑みを浮かべて糸目でこちらをみていた。

「はい、こんにちは」

「こんにちは……」

取り敢えずカウンターに近寄ってみると挨拶されたのでマナーとして返しておく。

「……」

これからお説教が始まるのだろう。そう思っていたのだが、

一向にお説教が始まらない。それどころか言葉すら発してくれない。

カウンターの前で付嬢と見つめ合っている狀態なので非常に気まずい。

俺はポチに騎乗を使い魔力を繋げた。

これどうしたら良いと思う?

『説教する気が無いんじゃないか?』

ポチの言う通り確かにお説教する気が無いのかもしれない。

ならばいつも通りに依頼をけてさっさとおさらばしようじゃないか。

そう思い掲示板の前に行き今日の依頼を選ぶ。

昨日は余りポチの要に応える事が出來なかったので、今回こそ応えてやりたい。

「アレが良いと思う!」

選んだのはケルベロス討伐。

「ほう、楽しそうだな」

一瞬ランク制限とかあった様ななかった様な気がするが、

まぁ、もし駄目だと言われたら依頼はけずにこっそりと倒しにいけば良い。

魔石さえ取れればお金にかえることが出來る。

「これをけたいのだが」

ポチが堂々とケルベロス討伐の紙を付嬢に渡し、容を見て

一瞬だけピクリと表いた気がする。

「ポチさん、ソラさん?私を揶揄っているのですか?」

「む?そんなことは無いぞ」

「そうですか、私が昨日お説教をすると言ったからですか、そうですか……」

何やら勝手に深読みをし過ぎて勘違いしている様だ。

説教をすることは忘れてはいなかったらしい。

「別に良いですよ。ほら、行ってきなさい。

帰ってきたら今回の件と共にお説教するので早く帰ってきてくださいね」

いつの間にかに付嬢の表はいつも通りに戻っていて

凄く適當に依頼が理されてしまった。

この付嬢、俺たちが揶揄うためにこの依頼を持ってきたと思っているらしい。

昨日はあれだけ外に行くことを心配してくれていたのに

ケルベロス討伐の際は全く心配してくれない……絶対に信じてないな。

こうして俺たちの依頼は無事理されて

ケルベロスの居る場所へと向かうのであった。

「ケルベロスは何処にいるのだ?」

「かなり遠いぞ、急げば今日中で著くけど、どうする?」

リーン王國からまず草原を超えて森を超えて砂漠を超えた先の火山地帯に奴はいるらしい。

俺とポチが本気を出せば一日も掛からずとも行けるのだが、そこまで急ぐ理由も無い。

ポチが良いのならばゆっくりと通常通り時間を掛けて行くつもりだ。

「別にゆっくりでも構わんぞ」

「よし、じゃあだらだらしていくか~」

リーン王國を出て草原に足を踏みれる。

途中まではしっかりとした道が出來ている為迷う事無く真っすぐ進める。

途中で冒険者とすれ違ったり、昨日の魔王が現れた場所を調査している兵士と出會ったりしながら

まったりと歩いていくと、前方に薄っすらと森が見えてきた。

「ポチ、あそこの森からし魔強くなるぞ」

「ほう、それは楽しみだな」

表面にはあまり出しては居ないが、ポチの心はもうウッキウッキとしており、

今すぐにでも戦いたいと言う気持ちが痛い程伝わってくる。

「そういえば最近ポチの事をモフモフしてないな」

「ん、するか?この方が何かと便利だからしているんだが、

我はいつもの姿に戻っても問題ないぞ」

「じゃあ帰ったらお願い」

ふと思い出した事を口にしてみたのだが、まだ斷癥狀的なものが現れないので大丈夫だ。

今まで忘れていたのだが、口に出してしまった所為か今すぐにでも、モフモフしたい気持ちになる。

我慢だ、我慢。

森の中へ足を踏みれると流石に草原の様に道が整備されているはずも無く、

非常に足場が悪い為、何度も足を取られる。

「ポチ~おぶってくれよ」

そんな事をすればポチがさらに足を取られてしまうのではないかと思うだろう。

だがそんな心配はする必要ないのだ。

ポチの足元を見てみるとまるで青い貍の様に地面からし浮いているのだ。

普段は地面に足を付いているポチだが、

今回は場所こういった場所なので霊の加護の力で浮いているらしい。

本當に霊なんでもあり過ぎて一匹ぐらいしいぐらいだ。

霊を喰らえばソラもこうなれるぞ」

そう言いながら膝を折って姿勢を低くしておんぶの準備をしてくれた。

俺は霊を喰らうと言う未知の験を想像しながらポチの背中にくっつく。

そもそもポチの言う霊とは俺の思っている小っちゃい妖の様なものではなく、

丁度今の俺位の長で見た目は人間の子供と変わらず羽が生えているだけだ。

つまりなんら人間とは変わりがないのである。

そんな存在をもしゃもしゃと食べるなど、俺はご主人様ではないのだから

それは不可能だ、可能でも絶対やりたくない。

「ちなみに、どんな味するんだ?」

「そうだな……霊の種類にもよるが、基本的には甘い」

「甘いのか……」

それが當たり前なのかポチの味覚が異常なのか分からないため何も言う事が出來ない。

そんな野蠻な話をしつつ森の中を進んでいくと本日初めての魔と遭遇した。

懐かしの豚顔の巨人さんオークだ。

「あれはオークと言うのか。中々面白い顔つきだな」

「おいおい、ポチさんやいそれは失禮じゃないかな」

例え相手が人ではなくても初対面の相手に面白い顔だな。とはかなり失禮な事だ。

俺がそんな事言われた傷付いて一生外に出られなくなってしまうかもしれない。

「それは困るな、償いとしてアイツを倒してやろう」

勝手に失禮な事を言って勝手に償おうとして……理不盡な理由を付けられ

殺されるオークさんのにもなってほしいものだ。

徐々に近付いていき、此方の存在に気が付いた魔び聲をあげ

考えなしに巨大な棒を振り回しながら突進してきた。

「先ほどから木々が倒れていたのはこいつの仕業か」

「そうみたいだな」

考えなしに棒をぶんぶん振り回していたら何時かこの森無くなってしまうのではないか。

そんな可能生じてくるのだ、早急にオークを倒さなくてはいけない。

「いけーポチ!」

おんぶされながら腕を天に掲げポチに合図を出す。

両手は俺の足を支えてくれている為、ポチは魔法を繰り出してオークを瞬殺する。

ポチにしては珍しい地味な魔法で周辺の草が針の様に鋭くび、

オークの全を串刺しにすると言うものだ。

刺されても尚、數秒間はこちらに向かって突進してくるのだが、

やがて力盡き、それと同時に鋭くびた草ももとに戻る。

「流石ポチ、魔石回収忘れないでね」

「ああ、わかっている」

魔石を回収して更に奧に進んでいき幾度とオークやゴブリンなどの魔が現れたが

指一本れる事はなく全員無殘な死を迎えていた。

そんなじに森の半分まで足を踏みれ辺りは真っ暗になってしまった為、

今夜はここで野宿をすることにした。

の襲撃などは勿論沢山あるだろうが、そんなものポチに掛かれば結界の一つや二つ

簡単にる事が出來るので安心して眠る事が出來るのだ。

開けた場所を探して、モフモフの絨毯をイメージして現化させ地面に敷き、

テーブルとも出しておく。

「結界り終わったぞ」

「ん、おつかれ。じゃあ休もうか」

ポチの並みを再現した絨毯があればベットなど必要ない。

俺とポチはゴロンと寢転がり食事をする事も忘れて眼を瞑った。

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