《勇者になれなかった俺は異世界で》ポチの嫉妬

ソラが付嬢からみっちりお説教をけている間、大魔王エリルスはリーン王國に降り立った。

凄い速さで降りたのにも関わらず著地の際は衝撃は全く無い。

商店街に降り立った為、人々の視線を集めてしまう。

「ふむ」

空から人が降って來た。そんな異常な事を放っておくわけなく、直ぐに兵士たちがやって來た。

賑やかな商店街は一変し々しい雰囲気になった。

槍や剣を持った兵士たちがエリルスの事を囲む。

一瞬でこの場にいる全員の命を刈り取ることは可能だが、今日はそういった気分ではない。

なぜならこれから待ちに待ったしのソラに會いに行くのだから。

本當ならばし悪戯をするだけの予定だったのだが、

此処まで近くに來てしまうと求を抑えきれずに地上に降りてきたのだ。

そんなエリルスは周りの邪魔者を一瞬で無効化する。

今まで抑えてきた魔力を一気に放出する。範囲は狹いが効果は抜群だ。

周りにいた無関係の人々まで気を失い、辺りはより一層異様な景へと変貌した。

倒れている人の事など居ないかのように踏みつけながらソラが居る冒険者ギルドに歩き出す。

その景を天高くから観察している大魔王達は一エリルスは何をやらかすのかドキドキしていた。

「おい、誰か止めてこいよ」

「止めない方が良い。絶対に」

大魔王オヌブがエリルスの事を止めるのは反対だと言う。

はエリルスがこれから誰に會おうとしているのか知っているからだ。

エリルスだけが彼に會うのならばまだ良いが、ほかの大魔王が接すると

確実に爭いが起きてしまう。彼方に戦意が無かろうが、この大魔王達は必ず消そうとする。

そのことも十分に理解しているオヌブだからこそ、エリルスを止めるのは反対なのだ。

一番良いのは此処から大人しく観察している事だ。

「何故?」

「見てたら分かる。だから大人しく此処にいて」

「……」

誰も何も言う事は無いが、全員がこうともしなかった。

これまで彼が間違った事を言ったことが無いからだ。

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世界を観察している彼の言う事は必ず正しくこれまでにも一度も外れたことは無い。

だからこそ皆彼を信用しており、彼の言葉は重たくけ止めるのだ。

「ん、おい――なんか抱き合ってるぞ!?」

「なに!?」

「何をしているんですか!!」

気が付けばエリルスは見知らぬ誰かの事を熱く抱擁していたのだ。

大魔王達はその景を見て驚きを隠せないで慌てていた。

「まさか魅了でもされているんじゃないか?」

誰かがエリルスが魅了されている可能を指摘した。

そうでないとあの大魔王エリルスが誰かに好意を向けるなどあり得ない。

それも人同士の様な熱い抱擁など……

「違う、黙ってみてて」

だが、その可能すらもオヌブが否定した。

「確かに魅了はされてないみたいですね、見守ってみましょうか」

一応エリルスが何らかの狀態異常が掛かっていないか見てみるデーグ。

確認した所、エリルスには何の異常も見られなく正常だった。

つまり、今起こっている事は彼の意思が行っている事なのだ。

それから三十分ほど熱い抱擁をじっくりと観察した。

いつまで抱き合っているのだ、と不安の聲が上がるが、

皆何だかんだ言いながらエリルスの行に興味をひかれていた。

「あ、はなれたぞ!」

やっと長く熱い抱擁が終わり、エリルスがはなれ相手の姿があらわになる。

そこに立っていたのは年。それもかなり年だ。

「誰だあいつ!」

當然だが、ソラをみて誰もがそう思った。

だが、唯一知っているオヌブが説明をれる。

「恐らくあれがエリルスが言って居た私以外の大魔王達が知らない勇者。

の生きがいであるソラと言う年」

「あの年がですか!?でも死んだはずではないのですか?」

「それに関しては私も分からない。でもエリルスの様子からしてこれしか考えられない」

エリルス本人からソラと言う年は死んだと聞かされている。

それなのにも関わらず視線の先にはその年がいる。

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ベアデがあれがそうだと言っている為それは真実なのだろう。

「おい、なんか貰ったぞ!!毒か?」

「大丈夫です、普通の飴玉の様です」

エリルスがソラから飴玉を貰うだけで大騒ぎする大魔王達。

一方その頃、冒険者ギルドの中では大魔王エリルスの尋常ではない存在に押しつぶされ

酷い有様になっていた。屈強な冒険者たちは白目をむき失神し、

なんとか気を保っている者もいるがその場からけずにいた。

そんな中、なんとしてでも外に出ようと試みる一人の付嬢がいた。

(いけない、ソラ君を早く保護しないと――)

先ほどまでソラと會話していたユリは外に出て行った彼のを護ろうと

一生懸命意識を保ち床に這い蹲りながらも扉に向かっていた――。

そうとも知らないソラは呑気に飴玉を渡しているのであった。

「ど、どうしたの?」

慌てて冒険者ギルドを飛び出して來たユリにそういう。

先ほどまで、此処が冒険者ギルドの前だったと言う事を忘れていたのは緒だ。

はまるで運でもした後かの様に酷い汗をかいている。

ギルドの中で何か問題でも起きたのだろうか。

「大丈夫ですか!?」

「んへ?大丈夫だけど、な、何が?」

まさか先ほどのけない泣き聲が全て聞こえていたのではないだろうかと

ドキっとしてしまい思わず変な聲を出してしまった。

「本當に大丈夫なんですね?」

何が起こっているのか、事を説明されることは無く

ユリは俺のをぺたぺたとり怪我などが無いか確認をしてくる。

やっぱり俺が泣いていたのが全部聞こえていたのか……

「良かった……」

何処も怪我をしていないと言う事を確認し、安心したのだろうか。

は一気に力が抜けた様でその場にふにゃ~と座り込んだ。

「私、本當に焦りましたよ。ソラ君が死んでしまうのではないかって。

何事も無かったようで本當に良かったです――ってなんですかこれ!?」

ようやく俺の後ろに広がる異様な商店街を目にした様で凄く驚いていた。

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死んでいる訳では無いが大勢が気を失っていると言う景。

寧ろ今までそれに気が付いていなかったユリさん中々ドジっこなのかもしれない。

「ソラ君は此処からかないでくださいね。直ぐに戻ってきますから」

「は、はい」

そう言って付嬢は冒険者ギルドの中へ戻っていった。

何故いてはいけないのか、そんな疑問を抱きながら待つこと數分。

「良い子にしてましたね。今、城の方に連絡をしたので、直ぐに助けが來ます。

ソラ君は見た所何ともないようですが、一応治癒をけますか?」

どうやら助けを呼んでいたらしい。ユリさんの心配は有り難いのだが、

流石にそろそろ帰らないとポチに何をされるか分からないので此処は斷っておく。

「ん~ポチが待ってると思うから早く帰りたいかな」

「そうですか、まだ危険かもしれないので一応私が同伴します。

これでも元冒険者なので腕には自信があるんですよ!」

「そうなんだ!頼もしいね!」

元冒険者で現付嬢。知識もあり技もある。

やはりこの付嬢には逆らわない方が良さそうだ。

危険との事で手を繋がれ宿へと向かう。商店街は気を失った人々で溢れかえっており、

足場が非常に狹い為、そこは避けてし遠回りな道を進んでいく。

ユリさんが完全に地図を頭にれているため、宿の名前を言うだけで場所が分かる様で、

遠回りの道もしっかりと案してくれている。流石だ。

途中でさりげなく何が起こっているのか聞いてみると、どうやら原因はエリルスの様だった。

の尋常ではない魔力や存在によって圧迫され次々と気を失って行ったそうだ。

「でもソラ君はどうして無事なのでしょうね」

「ん~わかんない。たまたまじゃないかな。誰とも會わなかったし」

流石に大魔王と會って熱い抱擁をわしてましたなんて

心臓を抉られても言えないので此処は隠しておく。

「何らかの耐スキルでもあるのかもしれませんね。冒険者たちがやられていたのにも関わらず

ソラ君が何ともないのはしおかしな話なので。それか、相手がソラ君の知り合いで、

意図的に君だけを除外したのかも知れませんね」

流石は元冒険者と言った所か。なかなかに良い勘をしている。

だが、正解ではない。確かに知り合いだがエリルスは俺だけに魔力を抑えたりはしていなかった。

寧ろ、近付くにつれて魔力放出度が高くなっていった。

スキルは無いが、エリルスの魔力に耐える力は持っている。

流石に俺の力については分からないだろうな。

「そうなのかな~でもそんな知り合い居ないから、耐スキルでも持ってるのかも!」

「ふふ、そうだと良いですね。今度調べてみましょうか」

「うん!」

と口では言っているが、そんな事してしまえば俺の能力値があらわになり、

また正座をさせられみっちりと話し合いをする必要が生まれて來そうなので絶対に調べない。

調べさせない。何かと用事を付けて斷ってやる。

そんなこんなで無事に何事もなくポチが待つ宿に著くことが出來た。

「ありがとね!」

「いえいえ、ソラ君が無事でよかったです。

最後にお説教と言う訳ではないのですが……良いですか、ソラ君。

人間の命はとても弱いモノなのです。どれだけ生きようと、どれだけを注ごうと、

どれだけ幸せだろうと、強かろうと――何年、年中も積み重ねた命はたった一瞬でなくなってしまいます。

だから、どうか、無理はしないで、危ないことは極力避けてください……では、冒険者ギルドでまたお會いしましょう」

「うん……ばいばい」

説教ではないと言いつつこの人なら説教してきそうだと構えていたが、

の目は真っ直ぐ此方を見つめ、冗談は通じない雰囲気でそう口にした。

言いたいことは理解できる。だが、今の俺にはもう関係のない事……そう割り切ることは簡単だが、

その言葉は決して忘れてはいけないとに刻む。

の小さくなっていく背中を見送ってから、気分を切り替えて部屋に向かって歩き出し扉を開けて部屋にる――

「おお、やっと帰ってきたか、隨分と……遅かったな」

「ん?ただいま」

何やらポチが不機嫌になった気がするが、まぁ、問題ないだろう。

取り敢えず魔石がった袋を置いてベットの上で橫になる。

「ポチ、夕飯はどうする?」

「いらん」

「あら、そう……なら俺もいいや」

何時もならもうし優しい言葉で返してくれるのだが、

何故だが今日は何時もより冷たいじだ。流石に遅すぎたのだろうか。後で謝らないとな。

「ポチさんやい、怒ってるのか?」

「さぁな……」

「……」

これは怒っていると捉えてもよろしいだろう。

別に好きで遅くなった訳では無いが、

理由が何であれポチを待たせたと言う事実は変わりないのだから

やはり此処は素直に謝っておいた方が良いだろう。

「その、ごめんな」

「何がだ?」

「帰るのが遅くなった事?」

「ふっ、そうか」

「……」

あれぇ~可笑しいなぁ何故かもっと不機嫌になった様な気がするぞ。

ポチは鼻で笑いふんとそっぽを向いてしまった。

どうやら帰りが遅くて怒っている訳ではなさそうだ。

なら、何が原因でポチは怒っているのだろうか……全く分からない。

服を買いに行くのは今日ではないし、ポチがお土産を期待していたとも考えにくい。

俺は怒りの原因が全く分からず頭を抱え込みながらベットの上でゴロゴロする。

その際にチラリと橫目でポチの事を見てみると、先ほどはそっぽを向いてしまったポチだが、

何故だか此方の事をジーとみていた。睨みつけているとかではなく寧ろ熱い視線をじる。

正直に言おう、滅茶苦茶怖い。

まだ睨まれたり獲を捕らえたような眼つきになっているのならば納得できるのだが、

何故、熱い視線を送ってきているのか。一何を企んでいるのか。

「と、といれ……」

取り敢えずその視線から逃れる為にトイレに逃げ込む。

する際も熱い視線をじていた。

トイレの中にり直ぐに鍵を閉める。

ポチ、どうしたんだろう……なんか変なでも食べたのかな?

原因が分からない以上どうする事も出來ないし、此処は時間が解決してくれるのを待とう。

何時も以上にゆっくりとトイレを済ませてから恐る恐る出て行くと、

やはりポチの視線がジーと付きまとって來る。

非常に恐ろしいのだが、手を出してくる様子は無いので今のところは問題ないだろう。

だが、萬が一の為に何時でも強化を発できる心構えだけはしておく。

……構えていたのだが、數時間たっても何の進展も無かった。

このポチの視線は単なる嫌がらせの一種なのかと疑い始める。

「なぁ、ポチさんやい」

「なんだ」

「なんか言いたい事あったら言っておくれよ」

流石に數時間もこの狀態が続いては非常に居心地が悪い。

まさか明日もこんな狀況が続くのではないかと考えただけで震えてしまうので

取り敢えず言いたいことがあったら言ってもらいたいと思いそう聲を掛けてみた。

「そうだな、ではさっさと風呂にってくるが良い」

「ん?風呂……ああ、もうそんな時間なんだ」

いきなり風呂にれと言われてしまい、一瞬、そんなに臭いのかと思ったのだが、

時間を見てみると結構良い時間になっていた。

何時の間にこんなにも時間が経っていしまっていたのだろうか。

説教の所為だろうか、それともエリルスとの出會いの所為だろうか。

どちらにせよ、かなりの長い間ポチの事を放置していたことに変わりはない。

何時もなら風呂にっている時間なのでそれをわざわざ知らせてくれたポチ。

やはり怒ってはいないのだろう。そう思いながら著替えとバスタオルを持って風呂場に向かう。

ささっと服をぎ捨てお風呂にる。

既にポチさんが準備してくれていた様で溫かいお湯がはられている。

「ふぃ~」

久しぶりのお風呂に凄く喜んでいる様にじ、

ゆっくりと浸かり、洗うところは全て洗ってから風呂場から出る。

「あら?」

タオルは置いてあるのだが、何故か著替えの執事服が無くなっていた。

あれ?確かに此処に置いたはずなんだけどな……気のせいだったのかな。

そんな事を思いながらを拭いて髪のの水を拭きながら著替えを探しに行く。

當然、その先にはポチがいるのだが何度も互いにを見合っている為別に恥ずかしくは無い。

「んん?」

堂々と向かったのは良いのだが、何故だか二つのベットが一つになっていた。

正確には二つのベットをくっつけて一つにしているのだ。

目の前に広がるのは巨大なベットだが、そこにはポチの姿は無かった。

周りを見渡してみてもポチの姿は見えない。

「ポチさん?」

まさか、嫌気が指して逃げてしまったのだろうか。と言う不安が一瞬過ったのだが、

直ぐに背後からポチの気配をじ、その不安は消え去った。

「驚かせるなよポ――っ!?」

ポチの手によって口が塞がれ言葉が遮られてしまった。

もう片方でを包みこまれ、軽く拘束されている狀態だ。

それもかなりの力で抑えられている為抜け出すにも抜け出せない。

「んんん!?(ポチ何してるの!?)」

當然言葉を発することなど不可能であり、

俺はそのままベットのある方向へと押されて行きやがて押し倒されてしまった。

「おい、ポチ何をす――っ!!」

拘束が解かれポチに言葉を投げかけるがそれは無意味であり

次はをグルリと回されてしまい仰向けの狀態になってしまった。

そしてポチの勢いは留まることなくそのまま俺の両手をベットに押し付け両手首が拘束された。

「ポチ?」

「なぁ、ソラよ。確か狀態異常系の魔法は効かないのだろう?」

「え、ああ、そうだけど、それが?」

「そうか、ならばこれならどうだ?」

「ん――うわっ!?」

ポチがそう言い俺の事を放してくれたと思ったら次の瞬間、俺のは軽く浮いていた。

そしてゆっくりと高度を上げて不思議な力によって両手両足が開かれてしまい、

そのまま降下していき、ベットのど真ん中に拘束されてしまった。

「ポチ、何をした!」

「なに、これも加護の一種だ」

そう言ってポチは自らのフードもぎ捨て小さな俺のの上に乗って來た。

「ポチ?何をして――っ……」

ポチの顔が目にった瞬間、思わず言葉を失ってしまった。

何時もの凜々しいポチは存在しておらず、そこには頬を赤くしトロリと目をけさせ

息を荒げている靡なポチの姿があった。

「なぁ、ソラよ……」

はぁはぁ、と息を切らしながらそう聲を掛けてきた。

「な、なんだよ」

「我との、契約は、覚えているか?」

ポチとの契約、それは、ポチにを上げるという事だ。

そしてそのとは俺の事を指している。

確かにこういう契約をしたのだが、最近ポチが俺の事を喰らう事はなくなっていた。

「ポチが俺の事を喰うってこと?」

「ああ、そうだ……だが、我は最近、ソラの事を、喰っていないだろ?」

「ああ、良い子過ぎて不気味な位だったな」

このままではポチの放つ靡なムードに呑まれそうなので俺は何時もの様に強気で會話を進める。

確かに最近のポチは一切俺の事を喰らう素振りを見せなかった。

きっと新鮮な事ばかりで忘れているのだろうと思っていたのだが、

どうやらそれは意識的な事だったようだ。

「砂漠でも、ほかの人間は、喰わなかった」

息を荒げながら途切れ途切れ言葉を発している。

「確かにそうだったな」

「なぜか、わかるか?」

ポチが俺を含めを喰らっていない訳とは。

正直に言って見當もつかない。お腹がいっぱいと言う阿保の様な答えは此処では命取りになる。

だから、此処は素直に答えて行く。

「すまないな、全くわからない」

「そうか、それはだな、我は思ったんだ、親友を喰らうのは、好き勝手何でも、喰らうのは、良くない、と……」

どうやらポチは親友と俺の事を認めてくれており、

餌の様に喰らうのは流石にどうかと考え直したらしい。

「我慢していた、我は我慢、していた、

それなのにソラよ、どうしてだ、どうして――っ!」

何かを思い出してが高ぶって來たのだろう、聲を荒げだした。

それに連なってし掛かる重みも徐々に増えてゆく。

「どうして!!ソラは、我を、挑発するのだ!!」

「挑発……」

そんな事全くにに覚えがない。俺が何時ポチの事を挑発したと言うのだろうか。

「ああ、そうだ、あんなに、他のの匂いを、付けて來やがって!!

ソラは我の獲なんだ、我のものなんだ!エキサラやヘリムは別に良い。

だが、それ以外のと、何をしているんだ!?我を置いて行って何をしていたんだ!」

「別に何も――」

「あれだけ!濃厚な匂いを、付けていたのにか?」

ポチが言うには俺にエキサラやヘリム以外の匂いが濃厚についていたらしい。

ポチの機嫌が悪くなったのもこの理由なのだろう。

俺の頭にはエリルスとユリの顔が浮かんでいた。

それ以外、此方に濃厚なにおいを付けられる存在は居なかったはずだ。

「それは、仲間に再開したからだよ」

「仲間……それならば良い、だが、何故あの付嬢の、匂いがあんなについていたんだ!」

てっきりエリルスの事も怒られてしまうのかと思ったのだが、仲間は例外の様だ。

エリルス達の事は伝えてある為、そこは分かってくれているのだろう。

それにしてもユリの匂いがそんなについているのか……どのタイミングで付いたのか。

「ちょっと今日は々あったからな……仕方ない事だ」

「ほう……反省は、しないのだな」

ポチから莫大な魔力があふれると同時に彼の一部が獣の狀態へと変化していく。

今まで見たことのないオーラの様な半明で薄いが彼を包み込む。

そして同時に、俺のからそれと同じ半明な何かが吸収されていくのが確認できた。

抵抗しようにも力が抜け思考もまともに定まらなくなっている。

「んあ、なにこれ」

「お前の、言ってしまえば魂を喰らっている。本來なら廃人になるが、

ソラならば問題ない。非常に空腹だ。殺す気で搾り取ってやる」

「ぁ……」

何かがから抜けて行く覚と同時に漲って來る覚に襲われ、

訳が分からない狀況だが、聲を出そうにもうまくいかず、

こうにも全くと言って良いほど力が抜けてしまい、抵抗が出來ない。

ギュインと中から力が吸われていくような覚と共に意識が薄くなっていく。

「覚悟しろよ?」

そんなポチの聲と共に長い夜が始まった。

散々な目にあわされやっと寢付けたのは既に日が上るり始めた頃だった。

疲労に押しつぶされて一瞬で意識が闇に呑まれていき、気が付いたのは

既に綺麗な夕日が上っている時間帯だった。

久々にこの時間帯に起きるのだが、そんな懐かしい験に浸っている余裕はない。

それよりも大変な験をしてしまっているからだ。

「やっと起きたか」

背後から聞こえるその聲に思わずをビクリを震わせてしまう。

昨夜の事を思い出すとどうしてもビクビクとしてしまうのだ。

暴な験で一生忘れられない記憶になるだろう。

「……おはよう」

現在、俺はポチに抱き枕の様に扱われており、逃げようにもに足が巻き付いている為

きが一切取れない狀況にある。ポチに背を向ける形で寢ている為、表を確認することは出來ないが、

昨日、あれだけ俺の事をいじめたのだ、機嫌がなおってないと困る。

からして何時も通りのポチだったので取り敢えずは一安心。

「すまなかったな、々と制できなくて……我の事嫌いになったか?」

昨日のポチからは想像もできない程、弱々しい聲を出してそう呟いた。

昨日の衝撃が強すぎて思わず驚いてしまう。

嫌いになったかどうかで言われれば、別にポチに対する好度はいてはいない。

良くなる訳でもなく悪くなるわけでもない。

ただ、しだけポチが恐ろしくじただけだ。

「大丈夫、あれは俺が悪かったよ」

昨日は々と學ぶ一日だった。大きく學んだのはユイさんとポチさんを

怒らしてはいけない事だ。本當に、この世界で生き殘りたいならあの二人には逆らわない事だ。

ポチが怒った原因もし理不盡な気がするが、俺の不注意が招いた結果だ。

これからはユリさんや他の異と関わる時は気を付けよう。

「そうか、なら良かった。我は後悔はしていないからな、逃がさないぞ」

「ひぇ……」

元からポチと離れる気など無かったのだが、確かにあんなことをされてしまえば

もう離れる事はできないだろう。離れたとしたら何を言い振らされるか分からない。

出來ればこのことはヘリムにしか伝えたくないので他の皆には緒だ。

そのためにもこれからはポチから目を離すわけにはいかない。

「さて、ソラよ今日はどうする気だ?」

俺も大して恥ずかしがっては居ないのだが、昨日あんな事をしたのにも関わらず

普通に話せるポチさんは凄いや。いや、別にこれが普通の反応なのか?

「ん~もっと早く起きる予定だったんだけどなぁ……

今から服買に行ってもゆっくりできなさそうだからそれはまた明日にしよう。

今日はこのままゆっくりするか?」

流石に夕方から服選びをしてしまうと真夜中になってしまうので、

あまりゆっくりと選べないため今日はやめておこう。

「うむ、それが良いだろうな。今日は朝から騒がしいからな」

「ん、そうなの?」

窓から外の様子を見ようとするのだが、

ポチにガッチリホールドされている為それは葉わなかった。

「ポチ、そろそろはなしてくれ。あと俺の服を返してくれ」

「む、分かったぞ」

そう言ってやっと解放された俺は思いっきり背をばす。

その間にポチは昨日勝手に持って行った俺の執事服を持って來てくれた。

しかも數著持って來ている。

「全部新しくしておいた。もう汚すなよ」

「……はい、わかりました」

態々また新しい執事服をつくってくれた様だ。

たかが匂いが付いているだけで、と思うかもしれないが、

ポチにとってそれはたまらなく嫌だと言う事はに染みて伝わっている。

この子ヤンデレよりも恐ろしいかもしれない。

ささっと著替えて窓から外の様子を見てみると賑わっては居るのだが、

よく見てみると兵士の數がいつも以上に増えており客たちに話しかけたりしている。

更に見てみると、そこには顔見知りの真の勇者さんの姿もあった。

「何か騒になってきたなぁ」

兵士は何時もの軽裝備ではなくガッチリとした鎧を裝備しており、

も槍だけではなく幾つか裝備されている。

恐らく昨日の騒ぎの影響だろう。

俺にとってはとても良い事だったのだが、國からしてみればアレは大參事だったのだろう。

「ん~どうしようかな」

最近まともに食事をしていないため、何か買いに行こうかと思っていたのだが、

話しかけられたりするのは面倒だ。

「どうしたんだ?」

「なんか食べたいな、って思ったんだけど何か面倒そうだな~って」

「そうか、なら行くぞ。何があっても我が護ってやる」

あら、頼もしい。

服が無いポチは適當に昨日作ってあげたコートを著て外に行く準備を始めた。

本當に昨日の出來事はなにも無かったかのように何時も通りだ。

支度を済ませて部屋から出る前にがっしりと手を繋がれたまま外に向かう。

何時もはぐれない様に手を繋いでくれていたのだが、今回のはそれとは違い、

ものすごく力強く絶対に離さないと言った意思が伝わってくる。

外に出てし商店街を歩いただけで早速兵士たちに聲を掛けられてしまった。

別に此方が怪しいとかそういった訳では無く、この兵士たちは目にった人に

片っ端から話を聞いている様だ。此処最近リーン王國や付近では大災害になりかねない

出來事ばかり起こっているので兵士たちが必死になるのも仕方がない事だ。

勇者を召喚する以上はそういった事が起きることぐらい予想しておけば良いのに、

と思うのだが、流石に魔王や大魔王が直接やってくるとは想像すらできないか。

「そこの二人、し良いか?」

「我らは旅の者だ。貴様らが求めている報は何も持っていない」

そう言ってキッパリと兵士たちを突き放して再び歩きだすのだが、

流石にそう簡単には見逃してくれない。兵士はポチの肩を摑み足を止めさせる。

だが、そんな事されて黙っているポチではない。

「――っ!!」

肩にれた兵士が聲にならないび聲を上げて膝から崩れ落ちてしまった。

に気安くれるな」

そう言ってその場を立ち去ろうとするのだが、

當然周りの兵士たちに取り囲まれる事態に発展する。

……ポチさんやい、ついに別が決まったのか。

だったはずのポチがになってしまった。大きな原因は昨日の大事件の所為だろう。

「貴様、何をした!――取り囲め!!」

面倒事に巻き込まれたくないから今日はゆっくりしてようと思ったのに……結局こうなってしまった。

6人の兵士が素早く集まり俺たちを取り囲む。

全員の表は真剣で既に武を抜きこちらに剣先を向けている。

「今すぐ武を捨て、手を頭の後ろで組め!」

此処は大人しくしたがって早い所解放されようと大人しく兵士の言葉に従うつもりだったのだが、

ポチに手を繋がれているため手を組むことが出來ずにいた。

そもそも武など持っていない為、捨てるものなど存在しないのだが。

俺の手が握られている狀態と言う事は當然ポチは従うつもりなど一切なく、

面倒臭そうな表で兵士の顔を見ていた。

「何をしている!早くしろ――っ!!」

一向に従う素振りを見せない此方に苛立った兵士が聲を荒げる。

このままでは本當に斬りかかられてしまうのではないかと思うほど兵士は興気味だ。

仕事が忙しいのは分かるけどそうカッカしないでしい。

「何してるの?」

これからポチはどうやってこの狀況から抜け出すのだろうか

そう思っていると天使の様な助けの聲が転がり込んできた。

兵士たちの視線が一瞬聲の主の方に向き、それにつられて俺もそちらを向く。

するとそこには、見知った顔の真の勇者が立っていたのだ。

「シズカ様!怪しい者達を捕らえようと――」

「……その人達は私の知り合いだから怪しくない。此処はもう良いから他の所行って」

「はっ、そうだったのですか――撤収するぞ!」

流石は真の勇者だ。たった一言で兵士たちが全員退いて行った。

「助かった」

折角助けて貰ったと言うのにポチはその一言だけ言い殘してその場を去ろうとしていたが、

は急いで俺たちの前に立って行く手を塞いできた。

「何だ?」

し話しをしたい。そこの裏路地に來てくれない?」

「黙れ。ソラはお腹が空いているのだ。邪魔をするなら――」

「後でたっぷりご馳走する」

「なら、良いだろう」

あっさりと意見を変えてしまったポチさん。そこには俺の意思など関係ない様だ。

連れていかれるがままに裏路地にり適當な場所に腰を下ろす。

「話しとは何だ?」

「実は明日、神?と面會があるらしい……面倒だし何だか嫌な予がする」

「!」

神との面會、俺はその言葉に反応し素早く魔眼を発させて

のステータスを覗いた。

=================================

ミズノ シズカ

Lv10

力:15,000

魔力:20,000

攻撃力:400

力:1,500

素早さ:550

運:70

言語理解Lv1

しの言語なら理解でき、読み書き出來る。

Lv5

剣を振り回せる。

眠りを妨げる者は――スリープヒンダァマッサークルLvMAX

邪魔する者は――。

眠たいネムタイLvMAX

常に眠たい代わりに魔力が常時回復していく。

真の勇者LvMAX

勇者の中の勇者。強いですよ。

すごい育ってますね~流石真の勇者です。

そのうち抜かされちゃったりしちゃったり???

==================================

魔眼さんが何やら言って居るが、今はそんな事を気にしている暇はない。

俺はステータスを端から端までじっくりと確認してで下ろす。

どうやらまだ大丈夫の様だ。

「何が不安なのだ?」

「わからない、だけど嫌な予がする」

「そうか、なら気を付けるが良い」

の嫌な予と言うのは恐らく當たるだろう。

たち真の勇者の真の意思があるのは今日で最後。

勇者が神との面會をする――それが意味する事は嫌でも分かっている。

「シズカさん」

「ん?」

「もし、どうしようもなくなって自分たちじゃどうにもできなくなって

本當に辛くなったら『魔王を倒すのは私だ!』って聲にだして言い聞かせてね」

「どうして?」

同じ故郷の好だ。これぐらいしてやっても良いだろう。

俺が伝えたのは簡単に言うと暗號の様なものだ。

周りからも怪しまれずに勇者として當然の発言。

大勢の前でそう言っても別に不思議ではないだろう。

「その言葉には魔法が込められているんだ!諦めずに何度もそう言えば

必ず助けが來るよ!だから他の二人にも伝えてあげて!」

もう一度ぐらい助けてやっても良いだろう。

それにもしあの糞神が関わっているのならば――全力で邪魔をしてやりたい。

「うん、わかったよ」

「それと、嫌な予は大當たるからね。

狀態異常耐系のスキル覚えて置いた方が良いよ!

Lv1程度なら數時間もかからないで覚えられるからね」

「そうなんだ、隨分と詳しいね。早速やってみるとするよ」

狀態異常耐Lv1でも無いよりはあった方がマシだ。

しでも救える可能を上げたい。

「そろそろ良いか?ソラが可哀想だ。さぁ、飯をご馳走しろ」

なにもしてないポチだが発言はしっかりと覚えている様だ。

てっきり先の魔王にボコボコにされてこの世界の事が嫌になっているかと思ったが、

そんなことは無く、寧ろしっかりと勇者をしていた事にだ。

大した話はしなかったのだが、シズカはそれでも約束通りに一杯ご馳走してくれた。

が紹介してくれる食べは全て味しく、冒険よりも食家の方が向いているのではないか

そうとまで思ってしまうほど食べたものは間違いなかった。

勇者である彼と共に行しているお蔭で他の兵士から聲を掛けられる事はなく

割と快適に食事を済ませる事が出來た。

はまだ聞き込みの仕事が殘っていると言って再び商店街の人混みの中に消えて行った。

その背中を見ながらこの世界に慣れてきたのだな~と思いながらポチに手を引かれ宿に帰っていく。

「ふぃ~お腹いっぱい。結構味しかった」

「そうだな、悪くはなかった」

ポチさんもお気にりの様だ。これで明日のご飯は決まりだ。

予定としてはし早起きしていくつかの店を回って服を買い、

お腹が空けば今日紹介された店でモグモグと。

簡単な予定だが服選びにはかなりの時間を費やすことになるだろう。

その日の夜は昨日の様な事は一切なく、普通に同じベットでぐっすりと仲良く眠った。

翌朝、目を覚ましささっと朝の支度を済ませる。今日でこの宿とはお別れなので

出來るだけ綺麗な狀態にしてから出て行く。別にそんな事する必要はないのだが、

々とお世話になってしまったのでそれぐらいはしていく。

「さて、何処から行くのだ?」

外に出て早速ポチがそう尋ねてきた。

何処の店に行く――など的な予定は一切立てていない。

何と言っても今日一日を服選びに使う予定なのだ。そんな予定立てていなくても問題ない。

「時間はたっぷりあるんだ。気になる店があれば寄れば良いさ」

「ふむ……それは、楽しそうだな」

楽しみにしてもらえて何よりだ。

朝は人がない為非常に歩きやすいのだが、ここでも手をがっしりと握られたままだ。

テクテクと歩いていき、ポチが何やら気になる店があった様で足を止めた。

「その店に行っても良いか?」

「ん、ああ問題ないぞ」

わざわざ一言いわなくても良いのに……その店の中にるとそこは

見るからの服しか置いていない店だ。

男である俺からしてみれば々と目のやり所に困るのだが、

子供なのでそんな事は気にしない様にしよう。

「ソラよ、これなんかはどうだ?」

「ん、おお」

ポチが持ってきたのは黒いワンピースに薔薇が裝飾されたものだった。

スタイルの良いポチが著れば間違いなく似合うだろう。

そもそもポチならばどんなスタイルにだって慣れるのだから似合って當然じゃないか。

なんだかずるいな。

「良いと思うぞ、なんだか大人っぽく見えるじだ」

「ふむ、そうか。ならこれを買うか」

意外とあっさりと服を決めるポチ。

この勢いで行くとそんなに時間は掛からないのではないのだろうか。

今ある手持ちは全てポチの服代にするつもりなのでまだまだ買える。

次の店を探しに商店街を歩き數分後、気になる店があった様で再び足を止めた。

し怪しいが行っても良いか?」

「ああ、全然構わないぞ!俺とポチなら何があっても平気だ」

「ふっ、そうだな」

どんなに怪しい店にろうが、今なら何にでも勝てる。

そんな自信から堂々と店の中にっていくのだが――

「うわぁ……」

思わずそんな聲を出してしまった。

は見るからに怪しいばかりで埋め盡くされていた。

「いきなりってきてそれは失禮だな」

「うわっ!」

店員の顔も怪し――凄くやせ細っており骸骨の様だ。

店員も商品も怪しい店……明らかに服など買うところではない様だ。

「此処は何だ?」

ナイス質問だ。ポチ!

「此処は呪いの品を扱ってる場所さ」

「呪い……」

完全に目的地ではない様だがポチは興味津々の様でジックリと怪しい品を見ていた。

俺も恐る恐る見てみるのだが、どれも趣味が悪く到底手を出すことなど出來なかった。

「値段が書いていない様だが?」

「ああ、うちは金は取らない。その品をふさわしい奴にあげるんだ」

「ほう、そうなのか。ではこれを譲ってほしい」

ポチがそう言って手に持ったのは真っ赤な骸骨が付いた指だった。

そんな不気味なのどこが良いのだろうかと疑問に思ったのだが、

よくよく考えれば此処は呪いの品を扱っている場所なのだから

表面ではなく部に何かめているのだろう。

「駄目だ。あんたみたいなには渡せねぇ」

「何故だ?だから無理だと言うのか?」

だからって訳じゃねえが、あんたはそいつを護ってやらなければいけないんだ。

そんな奴にそれは似合わねえ――それに俺は相手のステータスを覗けるんだ。

あんたは全く強くねぇ、呪いを発したら逆にやられるぞ」

この怪しいお兄さん怪しいようで意外と真剣に考えてくれている様だ。

々と言われているが當然、ポチはそんな事関係なしにグイグイと攻め込んでいく。

「我が弱い?確かにそうかもしれないが、この呪い如きに負けるはずが無い」

「はぁ、困ったな……ばっちゃん!!ちょっと來てくれ」

中々諦めないポチにため息を吐いてばあちゃんを呼んだ。

カウンターの奧からしわしわの優しそうな婆ちゃんが現れた。

この怪しい男とは全く違う。

「なんだい」

「このがなかなか引き下がってくれねぇんだよ。

こういう時はどうすれば良いんだ?ばっちゃん」

「……あんた、どうしてこのに譲れないんだい?」

「どうしてって、そりゃあ、が強くないし子どもだっているんだぞ?」

「はぁ……何もわかってないよ」

どうやらこの婆ちゃんはポチの本當の実力を見抜けている様だ。

先ほどから警戒心がビシビリと伝わってくる。

「あんた、それ持っていきなさい」

「ええ!!なんでだよばっちゃん!ボケたのか??」

「ステータスで判斷するなと言っただろうに……気配をじてみ、そうすればあんたにも分かる」

「気配って――ああ、こりゃ凄い……」

ステータスからは実力が読み取れなくても気配をじ取れば分かるようだ。

流石はポチ。気配だけで商品を貰ってしまった。

「すまなかった。それはあんたに相応しい……だけど使い方は絶対に間違うなよ!」

「ああ、分かっている」

この怪しいお兄さん絶対に良い人だ。

恰好をまともにして仕事場を変えれば功するであろう。

そんな事を思いながら店を出た。

「ポチさんやい、それってどんな呪いがあるの?」

怪しい店の中は結構良い見た目が怪しいお兄さんから譲りけた指を見ながらそう尋ねてみた。

呪いと言うからには良からぬだと言う事は分かっているのだが、

どんな呪いがその指められているのか興味がある。

「ふむ、れた相手を呪う事が出來るらしいぞ。詳しくは分からん」

騒なモノ手にれたなぁ」

どういった呪いなのかはハッキリしないのだが、

れた相手を呪う事が出來ると言うのは使い方によってはかなり兇悪なモノになるだろう。

回數などが限られているのかも知れないが、れただけで呪う事が出來ると言うのは

相手からしてみれば本當に理不盡だろう。

例えば憎い相手が居るとする。その人が人混みにったとして、

その際にさり気無くれてしまえば――呪いは完了すると言う訳だ。

ひぃい、恐ろしい。

「何でそんな選んだんだ?まさか呪いたい奴がいるのか?」

別にそんなもの無くても全く困らない。

の見た目もそこまで良くない為、何故ポチがそんなモノを貰ったのか理解できない。

無料だから、そこまで問い詰めるつもりはないけど……

「ふっ」

「ん?」

何故か鼻で笑われてしまった。何かおかしなことを言っただろうか?

「次、ソラに手を出そうとする輩が現れたらな――」

「……出來れば現れない事を祈って置くよ」

過保護すぎる気がするが、どうやらポチさんは俺のを何が何でも護ってくれるらしい。

出來れば此方を狙う存在が一生現れない事を祈る。

相手にその気が無くても恐らくポチは何の躊躇いも無く呪いを掛けるだろう。

そんな理不盡すぎる結末は避けたい。

「ソラよ、あそこの店にるぞ」

「ん、分かった」

それからはしっかりと目的に沿った店にしか寄る事は無く、

先ほどの様な怪しい店などには一切見向きもしなかった。

彼是數十件の店を回り一件一件、一著ずつ服を購した。

それからご飯を食べたのだが、まだ時間は晝過ぎなのでこれからどうしようかと考える。

「そうだ!」

余りにも衝撃的な出來事の所為で頭から抜けていたが、

ユリさんがポチと話し合いをしたいと言っていたんだった!

「ポチ、付嬢が話したいって言ってたから寄ってかない?」

「別に話すことなど無いのだが……まぁ、良い」

「ちなみに、変な事したら怒るからな。絶対に何もするなよ!」

「わかってる」

ポチが怒った原因の一つは付嬢が関係しているので、

手を出さない様に釘を刺しておく。

まだこの國には居るつもりなので問題を起こす訳には行かないのだ。

ケルベロス討伐完了の報告もしたかったので丁度良い。

冒険者ギルドの中にると何時も通り、活気に溢れていた。

魔王リリからけた傷が大半を占めているのだろう。包帯を巻いている人々の姿が目立つ。

そんな中、此方の姿を発見した付嬢ユリさんが手を振ってくる。

手を振り返したい気持ちで山々なのだが、ポチにあれだけ言われているのだから

迂闊にそういった行は出來ない。

「話しがあると聞いたのだが……それとケルベロス討伐は完了した」

付嬢の前に行くと早速話を切り出していくポチ。

ついでにケルベロスの魔石を出して依頼完了の報告もしている。

「待ってましたよ。々とお話があるので奧の部屋に來てください」

「うむ」

別にここでも良いじゃないかと思うのだが、

ポチが々と喋ってしまい変に目立ちたくも無いので素直についていく。

と言っても手を繋がれている為、半強制的に連れていかれる。

部屋にり椅子に座っても尚、手は繋がれたままだ。

いい加減に手汗もかいてきたので解放してほしい……

そこから一時間ほどユリさんのお話しは続いた。

まずは軽めの説教をけてそこからポチの実力の話になった。

ケルベロスを倒した時點である程度の強さは確定しているので、

もう隠す必要はないとポチに正直に話させた。

と言っても、正直にいった所で付嬢が――いや、誰もが信じるわけもないので、

冗談として軽く流されてしまった。

神位ならば殺せる――常人には理解できないことだ。

最後にランクの話になり、ポチと俺のランクを上げてくれると言うことになった。

特別な試験などは無しだが、これからランクを上げるには二人で依頼をこなすのではなく

個人でこなさなければ難しいと俺に言ってきた。

詳しく聞いてみると、ポチの実力だけで上位のランクに行くのは危険だと言う事だ。

俺の実力は知らせていないため、當然の事だ。

実力に見合わないランクになって良い事など一つもない。

話を終え、ケルベロスの魔石と依頼完了報酬で大金を貰い、後は帰るだけなのだが、

しやりたい事がある為、冒険者ギルドに殘っている。

「依頼を出したいんだけど、どうすれば良いの?」

「依頼ですか、紙に依頼主と容と報酬を書いてくれれば後は此方に任せてください

はい、これ紙。何を依頼するのかな?」

「ちょっと人探し」

付嬢にジロジロとみられながら書くのは困難なので場所を移して酒場のテーブルを利用して書く。

「誰を探すつもりだ?」

を知らないポチがそう尋ねてきた。

「んとね、狀態異常を解除できる人。それもかなり高位のね」

「ほう、それなら我でも良いではないか」

確かにポチでも問題はないのだが、別に頼みたいことがあるのだ。

「ポチには別の事を頼みたいからね」

「ふむ、そうか……」

會話をしている間に書き終わった紙を見直す。

依頼主ソラ

依頼

高位の狀態異常を解くことが出來る者を募集

報酬

働きに応じて

最低でも金貨は保証

ものすごく簡単にだが、これで十分だろう。

    人が読んでいる<勇者になれなかった俺は異世界で>
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