《勇者になれなかった俺は異世界で》迷宮の依頼
「なんか依頼けるか」
「うむ」
相変わらず、よそ者に向けられる視線は何処の冒険者ギルドでもビシビシ伝わってくる。
もう慣れているので大して気にせずに掲示板の前に行き、依頼の紙を見る。
やはり、と言うべきか、噴水の掃除の依頼がちらほらと見える。
流石にあれほどの噴水の數では依頼を出さないと厳しい様だ。
「ソラよ、楽しそうな依頼があるぞ」
「どれどれ、って一番上は見えないぞ。持ち上げてくれ」
ポチが指さすのは一番上にられてある依頼で背びをしたところで見えない位置だ。
持ち上げてもらいその依頼の容を見てみる。
「何々……迷宮の行方不明者捜索。報酬全て。ランクは問わない、見つけてくれるなら。
なるほど、非常に興味深い……」
報酬全てとかランクを問わない當たり々と怪しい気もするが、
此処には迷宮があるのか。それは非常に興味がある。
「今日は依頼けるの止めてその迷宮とやらに行ってみないか?」
「む、それは良いな」
迷宮と言えば思い浮かぶ奴がいるのだが、それとは恐らく無関係だろう。
迷宮、ダンジョン。これほど冒険心を擽る言葉はあるだろうか。
「あ、お兄さん」
「おう?おお!ちびっ子じゃねえか」
誰かに迷宮の場所を聞こうと辺りを見渡すとそこには
先ほど宿を教えてくれた外見の割には凄く優しいお兄さんがいた。
「迷宮ってどこにあるか知ってる?」
「おう、知ってるぞ。門の場所は分かるな。
門から出て右の川の中だ」
「え?かわのなか?」
一このお兄さんは何を行って居るのだろうか。
川の中。確かにそう言った……川の中、川の中かぁ……
「ああ、そうだぞ。川の中って言ってもちゃんとした道があるから安心しろ
濡れるなんて事は一切ないからな」
「なんだ、良かった」
てっきり潛って迷宮にっていくのかと思った。
ちゃんとした道があると言うのならば安心だ。
「ありがと!行ってくるね!!」
「おう、気を付けるんだぞ!」
「はーい」
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このお兄さんやはり滅茶苦茶優しい。絶対良いパパになるぞ。
お兄さんに言われた通り門から出て右の川の方に向かう。
良く見ると、川の中に階段が設置されており、深く続いている。
「これはどうやってれば良いのだ?」
「ん~どうだろ。お兄さんは濡れないって言ってたから実はこの水自偽だったり」
「なる程、ってみるか」
「そうだね」
どのみち濡れたとしても加護があるため何の問題もない。
勢いよく川にぴょん!とジャンプすると、水にれる事なく、
スルリとすり抜けて階段に足が付いた。
「おお、なんかすごいな」
新鮮な験をしてテンションが上がり、そのまま階段を下りて行く。
どうやら周りの水は本の様で、魚が泳いでいる姿を確認できる。
結構深く階段は続いており、地下にりやっと迷宮が見えてきた。
迷宮、と言ってもただの窟の口が見えただけだが。
その周りは広場になっており、武裝した人々や出店がある。
「おお、楽しそうだね」
「ふむ、早くってみるぞ」
「だな」
ワクワクしながら迷宮にろうとしたのが、武裝した兵士に聲を掛けられてしまった。
「見た所初めての人達だね」
「ああ」
「この迷宮は基本的には弱い魔しか出てこないけど、一つだけ危険な場所があるんだ。
口から直ぐに右の所に看板が設置してある口があるのだけど、
そこだけは絶対にらない方が良いよ」
「わかった」
警告してくれた兵士に頭を下げてポチの後を追う。
「絶対にらない方が良いってさ」
「るぞ」
「だよな」
絶対にるなよ。って言われると絶対にりたくなってしまうのだ。
それはポチも共通らしい。
口の階段をしおり、例の右のり口を発見した。
「えーとなになに」
看板には、行方不明者多數。危険。と書かれていた。
どうやら此処があの依頼にも出ていた迷宮の場所らしい。
「よし、行くぞ」
「お、おう」
ポチにぐいぐいと引っ張られ心の準備も出來ないまま危険地帯にってしまった。
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「ん~暗い。ポチさんやい明かり頼む」
ポチがの球を中に放り投げると辺り一帯が照らされる。
そこには沢山のリュックや裝備品が散らばっていた。
「散らかってるなぁ」
何か良いが落ちてないか一応探ってみる。
まだまだ食べれそうな食料が沢山ある。
「ソラよ。なんか刺さっているぞ」
「ん~本當だ」
ポチが指さす先には、手紙が短剣に突き刺されそのまま壁に固定されているものだ
行方不明者が何かを伝えようとしたのだろうか。でも何故口の近くに……
そんな事を思いながらポチに短剣を抜いてもらい、手紙をけ取り読んでみる。
容としてはすごく長く汚い字で書かれており、
簡単にまとめると、Sランク冒険者のオウーヌさんが迷宮に閉じ込められて、
そこではスキルが使えなくてとんでもない化けがいてその対処法やら……という容だ。
そして最後の方にはレディアという人に向けられた言葉が書かれていた。
【ああ、怖い。ここまで良く頑張った。さあ、最後だ。俺は行くぞ。
ごめんなレディア。お前の長を見守る事が出來なかった。
けない父を許してくれ。俺が何処まで奴らを排除できるか分からないが、
此処から先は手紙を読んだお前に掛かっている。
では、死の世界で會おう可哀そうな勇敢な戦士よ】
「ん~、なんか凄いことを託されてしまったような気がするぞ」
軽い気持ちでこの行方不明者多數地帯に足を踏みれ、手紙を読み、
正直に言って後悔している。こんなに重たい容ならば読まなければよかった。
「気に食わないな」
「ん、何がだ?」
「我とソラの事を可哀そうな奴と言っている事だ」
「なるほど」
確かに手紙にはそう書いてあったが、別に俺たちを限定していっているわけではなく、
ここにって來るであろう者たちに送った言葉なのだから、
そこは気にするところではない。と思うのだが、まぁ、ポチだからね。
ここは全力でそれに乗ることにしよう。その方が絶対に楽しいに決まってる。
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「確かに言われてみればムカつくな」
「ああ、どうせこの手紙を書いたやつも悪魔とやらのペットになっているのだろう。
悪魔よりそいつの事を一発毆りに行くのはどうだ?」
ポチから凄く愉快な提案が飛び出した。
凄く楽しそうだ。今すぐにでも最奧に行ってみたいところだが――
「その前にいったん戻って依頼をけてくるとしよう。
俺たちの怒りも解消できて依頼も達できる。一石二鳥ではないか?」
「そうだな――でもどうやって戻るつもりなんだ?
扉は開かなくてスキルは使えないのだろう?」
手紙に書いてあったように、確かめてみると本當に扉は開かなかった。
開かなかったというよりはり口が消滅していたのだ。そこは暗闇と化し、なにもない。
それにスキルも本當に使えないようだ。
だが、俺たちにはそんなこと全く関係ないのだ。
何故って?そりゃ、俺の橫にはスキルなんて一切使えない最強さんがいるのだから。
「スキル以外なら使えるだろう。試してみてくれ」
「ああ、そういうことか。やってみよう」
そう言い終えた瞬間、ポチの姿は一瞬にして消え去った。
おそらく魔法か加護を使って転移したのだろう。
「功だな」
直ぐに此方からは開けられないり口からポチが現れた。
「ああ、でももう一度出てみてくれないか?次はこれをもっていってほしい」
俺は頑丈なロープをイメージし魔力を流し込み現化させる――
そして現れた結構長めのロープをポチに渡した。
説明は必要ない。ポチはロープをけ取るとなるほどなと呟き再び姿を消した。
そしてその數秒後に真っ黒で何も見えないり口から一本のロープがびてきた。
「功かな?」
そのロープをしっかりと摑んで、よいしょ、よいしょと暗闇の中を進んでいく――
すると予想通りに暗闇からすんなりと抜ける出すことができた。
「々と抜けているなその悪魔とやら」
「だな。これをやると凄くつまらなくなるが、
ここから大量の水を流し込んでしまえば奴らは何もできずに溺死するだろうな」
「おい、それはやめろ。我の楽し――違う、この怒りをどこにぶつければ良いのだ」
「分かってるって」
何やら楽という言葉が聞こえた気がするが、気にしないでおこう。
実際に俺も楽しみなのだから。ポチが楽しみであっても不思議ではない。
それから俺たちは再び階段を上って冒険者ギルドに向かった。
「なぁ、ポチ。この手紙どうしたら良いと思う?」
道中、持ってきてしまった手紙を片手にそんなことを尋ねた。
「さあな、そいつの家族にでも渡せば良いんじゃないか?」
「おお、流石ポチ」
てっきり捨てろとでも言われるかと思っていたが、家族に渡すという処分の仕方もあったか。
確か手紙に娘の名前が書いてあったからあとは冒険者ギルドの力を借りて
この手紙を娘さんに屆けて上げよう。ああ、なんて優しいのだろうか。
冒険者ギルドに著くと早速カウンターに向かう。
「冒険者ギルドにようこそ」
褐で耳が尖ってナイスバディな闇霊人ダークエルフさんが元気よくそう発した。
なんだか懐かしいじだ。
「えっと、この手紙を渡したい人がいるんだけど……」
「手紙ですか?」
「うん、容を見てくれれば分かると思うから読んでくれない?」
「は、はぁ、わかりました」
いきなり子供に手紙を渡されて読めと言われれば悪戯か何かだと思われても仕方がない。
若干怪しみつつも付嬢さんは手紙を読みは始めた。
容がアレなので結構読むのには時間が掛かるだろう。
手紙を読んでいくうちに付嬢の顔はみるみるうちにかわっていく。
俺たちは手紙を書いた主の事を全く知らなかったのだが、
王國の騎士らしいので知ってる人からしてみればこの手紙は凄い重要なものなのだろう。
見ているこっちが引いてしまうほどの形相で手紙に食いついている。
「こ、この手紙は何処で……」
「んとね、迷宮の行方不明者多數って看板が立ってる所。し進んだらあったよ」
あの迷宮の正確な名稱が分からないため、あやふやな言葉で説明するしかない。
それにこの方が子供らしくて良いのではないだろうか。
「め、迷宮ですね。ちょっとここで待っていてください!」
そういって大急ぎでカウンターの奧に姿を消した。
その行を見た周りから更に視線が集まるが気にしない気にしない。
「まだか?」
「ん、ここで待ってろって言われたからもうし待っておくれ」
「そうか、退屈だ」
恐らくだが、ギルド長に手紙の事を話してたりしているのだろう。
この後、詳しく話を聞かれそうな気もするが、しぐらいなら協力してあげよう。
と言ってもポチが機嫌を損ねない程度だ。
そんなことを考えていると先ほどの付嬢が息を切らしながら戻ってきた。
「え、っと。今、人を呼んだので、もう、し待っていてください」
「わかったー」
今回はポチも聞こえていたらしく、し不満気な顔をしていた。
そんなポチに近付いて手を握ってみる。
「む、どうしたんだ?」
「ん~これから人が來るらしいから、説明とかは任せたよ。
俺はあくまで弟って設定でね」
「面倒だな……まぁ任せておけ」
正直に言うと先ほどまで姉弟設定を忘れていたのだ……
付嬢に手紙を渡すのもポチがやった方がよかったかもしれない。
本當に子どもの姿というのは不便だ……良い時もかなり多いけど……
掲示板を眺めたり酒場で飲んでいる冒険者を眺めたりとしているに
ドタドタと騒がしく一人の騎士が冒険者ギルドに走り込んできた。
「レディアさん、此方です」
その聲にレディアと呼ばれたは凄い形相でカウンターに向かい、
その勢いのままドンと手を叩きつけた。
「さっきの話、本當なの?!」
「は、はい、本當です。これが手紙です」
その勢いに付嬢さんも揺してしまっている。
手紙を暴に取り目を走らせて文字を追っていく。
正直に言って魔より怖いかもしれない。
手紙を読んでいるとなると、俺たちは彼の事を待っていたのだろう。
「……これを持ってきた人は?」
「あちらの子供です」
二人の事を離れた位置で見ていたら急に指をさされてしまった。
まったく、人に指をさしちゃいけません。と習わなかったのか。
「は?あの小っちゃい子が?冗談でしょう?」
「いえ、確かにあの子が手紙を持って私に渡してきました」
「はぁ……もしかしてあの隣にいるお姉さ――ってめっちゃ綺麗ね」
「ああ、多分ですけど、あのお姉さんがあの子どもに任せたんですね」
かなり大きめの聲でそう言っているため、すべて聞こえている。
さらりとポチの事を褒めたり、俺の事を小っちゃいと言ったり……忙しい人だな。
そんな忙しい人が此方に寄ってきた。
「これ、貴が持ってきてくれたんですって?」
「ああ、そうだ」
ここはすべてポチに任せて俺は知らないふりをしよう。
をポチの後ろに隠して怯えていますよとアピールをしてみたり。
「そうですか、では、どうやってあそこから出てきたんですか?」
「普通にだ」
「……普通に出られるような場所じゃないでしょ!
貴の様なひょろひょろのが普通に出られるぐらいなら!
私のお父さんだって――っ……すいません、取りしました……」
ああ、この人手紙に書いてあった娘さんか。
確かにポチからしてみれば普通に魔法を使って出たのだが、
この世界でその普通は通用しない。
急に聲を荒げたのだが、彼に悪気があるわけではない。
王國の騎士である父親、それにたくさんの人々があそこから戻ることはなかったのだ。
それなのに見た目は普通のであるポチが普通にと言ってしまい、
し的になってしまったのだろう。
「あそこは一度ったら絶対に出られない場所なんですよ……
私の友人も父と一緒にったきり帰ってこなかったです」
「ふむ、正確には外側からの協力が必要だったな」
お?ポチが珍しく気を利かせているぞ。
「え?」
「我は外側から部にロープを投げれてソラを救出した」
「ろ、ロープですか?そんな簡単な方法で……」
そういえば、なんでこんなに簡単な方法を試していないのだろうか。
俺の様な馬鹿野郎でも思いついた方法なのだが……
「報は與えた。我とソラはこれから用事があるんだ。
此処までにしてもらおうか」
「え、ちょ、ちょっと待ちなさい!」
ポチは彼を無視して掲示板の前に行き、目的の依頼の紙を手に取った。
そして、ワーワー喚いている彼の橫を素通りしてカウンターに向かい、
先ほどと同じ付嬢に依頼の紙を差し出した。
勿論、俺はそのあとをテクテクと歩いていくだけだ。
「こ、これは……本気ですか?」
「そうだ」
きっとポチの心の中では、本気で毆らないと気が済まない。とでも思っているのだろう。
手紙一つ、それも俺たち宛てに書いたわけでもないのに、大変なことになってますよ。
王國騎士さん。天國で會おうとか書いてあったけど、これから貴方のは地獄行きです。
「そうですか……何があっても自己責任ですからね」
「ああ」
「は!?貴正気なの!?貴の様な顔だけ良いが私の依頼を達出來る訳ないじゃない!
それに貴にはその小っちゃい子どもが――」
後ろからわきゃーわきゃーと言って來ていたのだが、急にポチが殺気を彼に向けた。
その凄まじい殺気に思わず周りの人々も唾を飲み込む。
「次、我のソラを小さいと言ったら殺す」
そう一言だけ言い、靜まり返った冒険者ギルドを後にした。
「ポチさんやい、なんかありがとな」
「何がだ」
凄く強引に冒険者ギルドから出て迷宮に向かう中、ポチにそんなことを言ってみた。
小さいと言われただけで殺気を出すほど怒るのは過剰すぎる気もするが、なんだか嬉しいのだ。
容は小さなことだが、誰がか自分のために怒ってくれるというのは、
改めて考えるととても幸せなことだとじた。
「々と」
「そうか、まぁ、謝するが良いぞ」
本日二度目の迷宮に辿り著いた俺たちは早速中にり込み
看板など無視してガツガツと進んでいく。
手紙があった場所には相変わらず散らかっているが、
すべて悪魔らしき魔にやられたであろう人々のなのでそう簡単にかす勇気が出ないため
踏まないように慎重に進んでいく。ちなみにポチは堂々と踏みつけているぞ。
「ん~」
し進んだだけでかなり雰囲気が変わった。煉瓦造りなのは変わっていないのだが、
凄く嫌なじがする。特にイラついているわけではないのにイライラとする。
これも最奧にいる魔の影響なのだろう。
と言っても支障が出たりするほどのものではないので無視安定だ。
ここではスキルが使用不可のため、強化等は使えないが、
エキサラやポチ、ヘリム相手に訓練していたのだがら生でもなんとか行けそうな気がする。
武は勿論、現化する。
何時もの短剣をイメージして魔力を流し込み現化させる。
「よし、何時でも出てくるが良い」
準備萬端。いつでも出てくるが良い。と意気込んだは良いものの、
あの手紙を書いた人――お父さんと呼ぼう。
お父さんが一どこまで敵を倒しきれたのかが重要なのだ。
流石にこんな序盤でやられたりはしていないだろう。
現に魔はいないようだし、一応警戒は怠らないが。
「ポチ、気配はじる?」
「ああ、と言っても正確な位置までは分からない。
この壁全から気配が発せられているからな」
「なるほど……」
手紙にも書いてあったように魔は壁から生まれる。
壁も魔の一部と考えてよいだろう。
警告された通り壁には近付かないようにしておくに進んでいくと、
ポチが何かをじ取ったようで足を止めるように言ってきた。
「來るぞ」
「お?」
前方からをゆらゆらと揺らしながら全が真っ赤での彼方此方から
目玉が覗いているなぞの魔が現れた。見た目からしてかなり來るものがある。
それに移速度はかなり遅いのだが、くたびにネチョネチョと不快な音を立てている。
「うへぇ……こいつと戦うのかぁ」
ここで出てきたということはお父さんは此処で力盡きてしまったということだろう。
最奧までどのくらい距離があるのかわからないため、中間かどうかもわからないが、
取り敢えずお疲れさまでした。
「確か四肢と頭と心臓を一瞬にして切り離す……」
よく考えると凄い無茶を言っていないか?
強化が使えていたのならば人外のきで可能だったかもしれないが、
今の俺の狀態でそんなに素早くけるのだろうか。
「取り敢えずやってみるか」
やってみなければわからない。
取り敢えず何の策も練らずに突っ込み、勢いに任せて頭を刎ねた
見た目はグロテスクでもこの最高の切れ味を持つ短剣の前では関係ない。
急いで四肢を狙おうとするのだが――
「は!?」
刎ねられた頭が不気味にき出しもう一の化けと化し、
頭を刎ねられた個は直ぐに復活していた。
「はやすぎる……」
急いで距離を取る。
「これ、ちょっと厳しいかもしれないな……」
そんな弱音を吐くとポチが肩にポンと優しく手を置いた。
「?」
「諦めるな。増えたやつは我が処理する。ソラなら出來るぞ
まだ時間はたっぷりあるからな」
「……頑張る」
流石ポチだ。諦めることを許してくれない。
正直に言ってこのままだと何回やっても不可能だろう。
このままだと。一応スキルを使わなくとも人外並みの力を得ることが出來る方法はある。
「ふぅ……」
久しぶりにやる為、功するかどうかはわからないが、
後処理はすべてポチがやってくれるので安心だ。
発條件は……興することだっけ……本當にあの婆さん適當だよなぁ
とりあえず気分が高まるまで何度でも突っ込んでみるか――。
ちなみに、ポチは四肢や頭、心臓関係なしに化けの全を一瞬にして消し去っていた。
流石ポチさんだ。
何回も何回も至近距離まで近づいて失敗し、離れて……の繰り返しをしているに、
々と分かってきたことがある。まず、この化けは基本的にきは遅いが、
攻撃する際にだけ覚醒し、素早いきをする。攻撃力は大したことないのだが、
當たってしまうと恐らくかなりの狀態異常をけるのだろう。
ポチの加護、ヘリムの力によって何発か喰らっているがなんともないのだが、
ポチ曰く、當たると面倒らしい。
確かに、そうでもないとこんな攻撃力の低い相手に王國の騎士兼Sランク冒険者の
お父さんやその仲間たちがやられるはずがない。
そのほかに、こいつは見た目以上にいということだ。
切れ味の良い短剣のため、特にじることはなかったが
一度距離を話すために化けの事を壁代わりに蹴ってみると、驚くほど丈夫だったのだ。
蹴った此方の方が怪我をしそうだった。
人ではないが、見た目で判斷するのは相手が何であれダメなんだと再び學習した。
徐々にも溫まってきた頃だ。あとは俺が如何にこの場を楽しみ興するかどうか。
そもそも功するかどうか分からない……わからないが功させなければ進めないし
諦めることはポチが許してくれない為どうにかして功させなければなれないのだ。
必死になって何度も何度も突っ込み、意識を集中させる。
今大事なのはこの魔を如何に素早く処理するかだ。
徐々にきが洗練されていき、今までよりも素早くく。
こいつから四肢、頭、心臓を切り離す。それだけだ。
言葉では簡単だが、行に移すとなると凄く難しい。
お父さんはよくここまで進めたな。素直にすごいと思う。
その人はスキルを使わずに今の俺よりも強いということだ。
向こうの世界でかなり頑張ったと思ったのだが、まだまだ足りなかったようだ。
これからもっともっと強くなれなれば。
ヤミたちを二度と悲しませない為に、もっと強くならないといけない。
ならなければまだ會う資格はないのかもしれない。
また悲しませてしまうかもしれないから。
強くなるには強者と戦う必要がある。強者――それは今、目の前にいるこいつだ。
こいつを倒せばもっと強い奴が待っている。
早く――早く倒してそいつと戦ってみたい。
もしかしたら俺では倒せない相手なのかもしれない。
圧倒的な力でねじ伏せられ何度も何度も殺されるかもしれない。
だが、その相手を倒せた時、それは非常に心地よい、達があるのだろう。
それは、楽しみだ。ああ、本當に楽しい世界だ。
もっと、戦って戦って戦って――強くなる。
「まずはお前だ」
此奴を倒さなければ何も始まらない。
だから早く殺されてくれ。溫まっていたが冷たくなり、無気力な狀態だ。
頭の中は此奴を殺すことで埋め盡くされている。
「ほう……」
ポチがそんな聲をらしていたが気にする余裕はない。
が勝手にきだし――まるで強化を使っているかのような覚に陥る。
が軽い。距離を詰めてまるで流れ作業の様に頭、四肢、心臓を切り離す。
一瞬だ。相手に何もじさせない。
化けのはとなり、壁に染み込んでいった。
「もっとだ」
「そうか、なら進むが良い。沢山いるぞ」
それからはもう、自分でも何が何なのか理解できなかった。
目の前に化けが現れたと思えば、次の瞬間にはと化していた。
それが何回も続き、気が付けば俺は巨大な扉の前まで來ていた。
「ん、あれ」
「む、戻ったか」
「あ、ああ、多分……狀況説明頼む」
「突然、ソラの額に髑髏が現れたと思えば急に雰囲気が変わり、
次々と敵を倒して行き、ここまで來たんだ。正直、我でも追いつくのが一杯だったぞ」
恐らくリミッター解除は功していたのだろう。
だが、途中で意識を手放してしまったようで記憶があいまいになっていた。
ポチ曰く、俺が頑張ったらしい。
「どうせならこの先も行ってほしかったなぁ……俺」
「ふっ、それでは目的が果たせなかったかも知れないだろ」
「ああ、そういえばそっか」
本來の目的、それは手紙を書いたお父さんに文句を言ったり一発毆ったりすることだった。
リミッター解除狀態だったら一発毆っただけでお父さんが豆腐の様に崩れてしまうかもしれない。
危ない危ない。ナイス解除だ俺!
「じゃあ行くぞ?準備は良いか?」
「ああ、良い……が、ここから先は我も戦いに參戦するからな」
「うん、分かった」
流石に俺の後処理だけでは暇すぎて仕方がないのだろう。
この扉の先には一どれほどの強者がいるのだろうか。
それにポチの目的であるお父さんはまだそこに存在しているのだろうか。
いろいろとワクワクしながら扉をゆっくりを開けた――
扉を開けてまず目に飛び込んできたのは部屋の中央にある異質なである。
そのは人間の手足で構されており、まるで心臓の様に鼓を打っている。
その異様なからは管の様なモノがび、その先には四肢を切斷され首を付けられて
地面に転がされている人間たちに繋がっている。
そしてそれを観察するかのように部屋をの左右に二人の――人間が存在していた。
本當は魔なのかもしれないが、見た目は人間と大差ない。
白をに纏った科學者の様な中年の男二人だ。
この場で平然としているのだから只の人間ではない事は明らかだ。
それか頭のいかれれた糞野郎しかない。
今回はポチも戦うと言うことなので魔法を発し、ポチと魔力を繋げて
意思疎通を可能にしておく。
『さて、どいつが手紙を書いた糞野郎だ?』
ん~どれだろうね。まぁ、取り敢えずあの二人を片付けた後に
一人一人確かめて行けば良いんじゃない?
『そうだな。じゃあ我は左を』
じゃあ俺は右決定だな。
『勝てそうか?』
わからないけど、勝たないと目的達できないからな……
またリミッター解除できるかどうかも不安だ。
化けの生みの親ならばあいつらよりも強いのだろう。
リミッター解除をすれば恐らく倒せるだろうが、普通の狀態では難しい。
『ソラの力は十分見せてもらった。もう一人で頑張る必要はないのだぞ?』
我を頼れ!とは言ってこないのだが心の中では凄く主張してきている。
ポチがそういうなら一人で頑張らなくても良いのかな……さっきまで必死に頑張ってた俺、さようなら。
まぁ、よく考えれば一人で強くなろうとしてたのが莫迦なんだけどね。
「ということで、骸骨さんアシストお願いね」
『おい!ソラよ!此処に最も頼りになる我がいるだろ!!』
先ほどから心の中でうるさいほど主張してきた為、なんだか意地悪したくなったのだ。
許せポチよ。後でなんか買ってあげる。
そんなやり取りをしつつ俺とポチは左右に別れて進む。
『ふん』
不機嫌になった様にじるが、心の中ではルンルンしているのだ。かわいいやつめ。
先ほどからずっと無言で此方を見つめている敵さんなのだが、
近寄っても変わらないままだ。一何を考えているのだろうか……
「どうも」
とりあえず聲を掛けてみることにした。
「何者だ貴様」
「あっ、喋れるんですね」
てっきり何も返ってこないとばかり思っていたため、反応がありし驚いた。
見た目同様の聲でなんだか安心した。
「どうやって此処まで來たんだ?貴様の中は何だ?人間――違うな、魔でもない。
面白い存在だ。存在するだけで脅威となるか。ふふっ、本當に興味深い。
今すぐにでも我々のペットにして調べつくしてみたい。さぁ、大人しく――」
喋りだしたと思ったら一人で盛り上がってしまった。正直に言って気持ち悪い。
そんなことを思いながら話を聞いていると、どうやらポチの方も同じようなことになっており、
痺れを切らしたポチが、ついやってしまった様だ。ぐちゃりと。
「そうか、思い出した。貴様等が大魔王様が言っていた――そうか、そうか、
良いモノを見れた。ふふふふふ、ふふふふふふふ――」
不気味すぎる笑い聲を出しながらが徐々に明になっていき
消えていくかと思ったのだが、此処で骸骨さんたちの登場だ。
三人掛かりでを押さえつけきを封じ地面に倒し捕らえた。
「ご苦労」
何も指示していないのだが、本當に骸骨さんが働き者だ。
もしかしたらポチよりも有能――次の瞬間、目の前で信じられない景が起きた。
三人の骸骨さんが木っ端みじんに砕け――取り押さえられていた中年の科學者も
地面と上から襲ってくる圧につぶされ、真っ赤な絨毯と化した。
「それは無い」
その絨毯の上に立っているのは、この悲慘な現狀を作り出した張本人のポチさんだ。
骸骨さんの方が有能との発言が気にくわなかったのだろう。
これから話を聞き出そうとしていたのに……
「……はい、その通りです」
「さぁ、手紙を書いた愚か者を探すぞ」
「はい」
結局二人ともポチによって瞬殺されてしまった。
大魔王と発言していたため、本當に悪魔だったのだろう。
一何が目的でこんなことをしていたのか非常に気になる。
「ポチさんやい」
「知らん、ソラが悪いのだぞ」
そういわれると何も言い返せなくなってしまう。
骸骨さんたちにも非常に悪いことをしたと思ったのだが、
砕け散った破片を見てみると、見る見るうちに再生していき、三人の骸骨さんが復活した。
ペコリと頭を下げて姿を消していった。
「まぁ、いいや」
何を企んでいようと、この世界にポチさんがいる限りどうにかなるだろう。
そんなことを思いながら目的である手紙を書いた主を探そうとしたのだが――
「気を付けろ」
「え?」
中央に置いてあった不気味なが膨らみ始めていたのだ。
そして、次の瞬間――巨大な手足の塊は意思が宿ったかのようにき始めた。
何本もの足で一歩進むたびに、繋がれている人間たちが宙を舞う。
『まさか、我々がやられるとはな。舐めていたぞ化けども』
何人もの聲が重なった様な音が聞こえる。
どっちが化けなのかは一目瞭然だ。
「ソラよ、こいつはソラがやると良い」
「あ、わかった」
てっきりまた瞬殺するのかと思ったが、どうやら俺に譲ってくれるようだ。
正直に言って相手にしたくないほど気味が悪いのだが、仕方がない。
譲られた以上はやってるさ。
ニジノタビビト ―虹をつくる記憶喪失の旅人と翡翠の渦に巻き込まれた青年―
第七五六系、恒星シタールタを中心に公転している《惑星メカニカ》。 この星で生まれ育った青年キラはあるとき、《翡翠の渦》という発生原因不明の事故に巻き込まれて知らない星に飛ばされてしまう。 キラは飛ばされてしまった星で、虹をつくりながらある目的のために宇宙を巡る旅しているという記憶喪失のニジノタビビトに出會う。 ニジノタビビトは人が住む星々を巡って、えも言われぬ感情を抱える人々や、大きな思いを抱く人たちの協力のもと感情の具現化を行い、七つのカケラを生成して虹をつくっていた。 しかし、感情の具現化という技術は過去の出來事から禁術のような扱いを受けているものだった。 ニジノタビビトは自分が誰であるのかを知らない。 ニジノタビビトは自分がどうしてカケラを集めて虹をつくっているのかを知らない。 ニジノタビビトは虹をつくる方法と、虹をつくることでしか自分を知れないことだけを知っている。 記憶喪失であるニジノタビビトは名前すら思い出せずに「虹つくること」に関するだけを覚えている。ニジノタビビトはつくった虹を見るたびに何かが分かりそうで、何かの景色が見えそうで、それでも思い出せないもどかしさを抱えたままずっと旅を続けている。 これは一人ぼっちのニジノタビビトが、キラという青年と出會い、共に旅をするお話。 ※カクヨム様でも投稿しております。
8 177ラブホから始まるラブストーリー
ラブホテルに、デリヘリで呼んだ女の子に、戀に落ちた。 僕の前に現れた美少女は、天使か悪魔か? そこから、始まったラブストーリー 僕は、彼女に、振り回される。 待ち受けるは、天國か地獄か? 彼女は、本當に借金に悩まされているのか? 僕から、吸い上げたお金は、戻るのか? 僕に対して、本當に愛はあるのか? 彼女の真実は、どこに!?
8 123勇者と魔王が學園生活を送っている件について
魔王との闘いに勝ちボロボロになった、勇者。 村の人たちに助けられ、同じ年くらいのセイラと出會う。そして、興味本意で學園生活を送ることになり、魔王?と出會うことで色々な感情が生まれてくる。學園に迫る謎の敵を勇者だとバレずに倒し、やり過ごす事が出來るのか? ─ここから、スティフや友達の青春が動き出す。
8 82超迷宮奇譚伝 『このアイテムは裝備できません!』
これは、剣と魔法―――― そして『ダンジョン』のある世界の話 初めてのダンジョン探索の日。予想にもしていなかったアクシデントで、僕――――トーア・サクラはダンジョンの縦穴へ落下してしまう。 そこで手に入れた武器は、人類史上、誰も手に入れた事のない最強の武器。 しかし――――當然ながら―――― そんな武器を僕が裝備する事はできなかった!
8 127空間魔法で魔獣とスローライフ
立花 光(タチバナ コウ)は自分がアルビノだと思っていた。特殊な體質もあったためずっと病院で検査の毎日だった。癒しはたまに來るアニマルセラピーの犬達ぐらいだ。 しかしある日異世界の神様から『君は元々儂の世界で産まれるはずだった。』と 地球に戻るか異世界で暮らすか選んでいいと言う。 それなら地球に未練も無いし、異世界でもふもふスローライフでも目指そうかな!! ※小説家になろう様、アルファポリス様にマルチ投稿しております。
8 159朝、流れ星を見たんだ
天涯孤獨の少年竜也と、病に身體を蝕まれている少年大翔。 大翔の最期を看取ってやりたい竜也だが、大翔の命の期限が迫った時、竜也は一ヶ月間イギリスに行くことになってしまう。 その一ヶ月間、大翔は病に耐え続けられるのか、それとも竜也のいない間にその目を永遠に閉じてしまうのか――――未來は誰にもわからない。
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