《勇者になれなかった俺は異世界で》ヤミたち
鋭く尖った巨大な巖々に囲まれている渓谷の集落。
巖にめり込む形で家々が建っており吊り橋が繋がっている家もあれば
足場など一切ない家もあり様々だ。
その集落にる様なり口など存在しておらず、
唯一の侵口は天に聳え立つ二つの巖々の隙間のみだ。
その隙間からは空が広がっている。その上を自由に飛んでいるのは鳥――
ではなく、全が鋼の様にい鱗に覆われている生きだ。
例えそこに小さな蟲や生きでも接近するモノならば、彼らによって一瞬にして喰われる。
唯一のり口が彼らによって何人たりとも近づけさせない鉄壁の護りになっている。
その為、この集落の存在は誰も知らない――そこに住む種族を除いて。
そんな集落に建つとある家の中で
長長でベージュの長い髪をし、緑の目の彼はベッドから腰を上げた。
そして寢ている間に収してしまった筋を思いっきりばす。
寢起きの為、彼は服をに付けておらず唯一首のみが彼を裝飾している。
男よりも立派な腹筋があるが、しっかりとらしく出るところは出ている。
「ほら、起きろ」
十分にび終えた彼は同じベッドで未だに橫になっている同居人を揺さぶる。
筋質な彼とは違い細のが激しく揺らされ、
気持ちの良い睡眠から強制的に叩き起こされ不快に思いつつも彼は目を開ける。
「こら、睨むな睨むな」
「……今日何か予定あった?」
眠たそうに片目をこすりながらそう問いかける。
「今日は狩りに行くと行っただろう」
本來ならばドラゴニカである彼は竜王の娘の為、
食事など自らの手で用意しなくとも手にるのだが、
彼と同居人はこの集落でかなり浮いた存在となっているのだ。
同族以外侵を許さないこの集落に竜人族ではないモノが暮らしている時點で
幾ら竜王の娘とはいえ不満を抱くものは多い。
それに加え、奴隷の証である首を付け、その上、
同族である竜人を殺したことも集落全に知れ渡っている為、
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彼たちの存在を拒む聲が多いのである。
多いというだけであり、気にしない者もまた居るのだ。
特にライラの親族たちは全くと言って良いほど気にしてないのだが、
それでも彼たちは自分たちの食事は自分で用意し、
家も昔から放置され、他の家からはし離れた位置に暮らしている。
「……忘れてた。今準備する」
そうって朝の支度を始める。
傷一つ付いてない白いと沢のあるしい黒髪。
全的に細であり、ライラと並ぶと格の差が一目瞭然だ。
長も160cmと180cm近いライラとは結構離れている。
だが、それでも力量は小柄な彼の方が上だ。
「そういえば、ノイの迷宮、消えた。何か知ってるライラ?」
互いに著替えながらヤミがライラに問いかける。
ノイがソラの為に創った迷宮が消滅したことは當然、この二人もじ取っていた。
「いや、何も知らないな。まさか、あの迷宮が攻略されたとは考え難いな」
「うん……じゃあノイが勝手に閉じた?」
「その可能が高いだろう。と言っても理由もなしに閉じるとは思えない。
近いうちにノイに直接會いに行くとするか」
「……場所分かるの?」
「いや、わからんぞ。まぁ、迷宮があった近くを探せば見つかるだろう」
「……無計畫」
ライラよりも先に著替え終わったヤミが余りにも無計畫過ぎる彼に対して、悪戯をする。
服を著ようと裾から頭をれ、両手と視界が奪われた瞬間を狙い脇腹を擽る。
「っ!!くぅ!ハハハハハッ――や、くゅ、やめ!くぅははははははあは――ッ!!
ヤミよ、やめ――くぅはははははっはははは――っ!!」
擽りが止み、大笑いさせられた視界を奪われた狀態のままバタリと床に倒れ込む。
ハァ、ハァと笑っている最中に出來ていなかった呼吸を必死にしている。
そんな彼を見下ろしながらヤミが満足そうな表を浮かべている。
「もうし計畫してから行すること」
「うぅ……ヤミがいじめる……」
著替えを済ませた二人は家を飛び出し、ライラがヤミを背負い、
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翼を使い集落を抜け出し近くの森へと降り立つ。
近くと言っても30kmは離れている森だ。
「何を狙うの?」
「ふむ、最近は野菜と魚ばかりだったからな今回は只管を狩るぞ」
「ね。じゃあ消し炭にするのはやめる」
「では、一時間後、此処で合流だ」
「わかった」
そういうとヤミのが漆黒の炎に包まれ、一瞬にして姿を消した。
一人取り殘されたライラはゆっくりと歩き出す。
既に獲の位置は気配で確認しており、そこに向かって歩くだけだ。
弱い魔はライラの気配をじただけで逃げていく。
強さに自信がある魔は興味本位で近付いてきたりもするが、
軽い殺気にれるだけで尾を巻いて逃げて行く。
「さて、あくまで食料確保だ。綺麗に殺さないとな」
そう呟く彼の前には巨大な豬が別の魔を喰らっている景が広がっていた。
此処まで接近しても豬が逃げないのは魔ではなくだからだ。
彼から滲み出る魔力を知することが出來ないのだ。
殺気に気が付き振り返った時には既に遅い――
――ドンッ!
一瞬にして距離を詰められ、殺気に気が付いた剎那、彼の手が豬に突き刺さり、
心臓を貫きみどろの手先が反対側から飛び出す。
一瞬にして急所を突かれた豬は何が起こったのかも分からず、手を抜かれ、
自らのからしぶきがあがりそれを見つめつつ絶命した。
飛び散る鮮を浴びても平然の顔をし、抜きを行う。
豬の全長は180近い彼の事を優に超え2mはある。
それほどの獲を仕留め、彼の狩りは終わりを告げる。
「思ったよりも大きかったな。二人ならばこいつだけで十分だな」
自分よりも大きく重たい巨軽々と持ち上げ、先ほどヤミと別れた場所に向かう。
「獣臭いな……帰ったら風呂だ」
・・・・
「ん、いない……」
ライラと別れて森の中を歩くこと數十分、
魔たちは尾を巻いて逃げて行き、たちはヤミが常時放っている
強大な殺気によってすぐさま逃げ出す。
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彼の行く先に獲は無し。
彼は徐に腕を突き出し掌を虛空に向けた。
すると掌から漆黒が溢れ出しあらゆる獣の形を創って行く。
四足から翼の生えた――様々だ。
「、獲を狩ってきて」
たったその一言だけで生み出された漆黒の獣たちは森の中を走り回る。
再び一人になった彼は漆黒の炎で王座を造りそこに腰を下ろす。
すると直ぐに放った子犬サイズの獣が戻ってきた。
獣の口にはゴブリンが咥えられていた。口からはだらしなく舌が垂れ、既に絶命している。
「ん」
ゴブリンを地面に落とすと再び獣は森の中へ消えて行く。
それと代わるように次は漆黒の熊様な獣が姿を現した。
まるで人間の様に二足歩行をし、そんな獣が背負っているのは大きな豬だった。
顔がグチャグチャに歪んでおり辛うじて豬と判斷できるレベルだ。
それからもれ替わりに様々な獣が獲を捕らえヤミの前に差し出す。
死累々あっと言う間に彼の前には沢山の獲が転がる。
「これぐらいあれば十分。それもって付いてきて」
そう言って彼は來た道を引き返す。その後ろを漆黒の獣たちが獲を運び続く。
その姿はまるで死をるネクロマンサーの様だ。
邪魔な木々は獣たちによって灰と化される。
「お、來た……ってし狩り過ぎじゃないかヤミ?」
合流場所にやってきたヤミを見てライラは苦笑いをする。
ライラは巨大な豬だけに対し、ヤミは大小様々な獲を連れてきている。
數か月は持つの量だ。
「私の炎に狩られる方が悪い」
「これで當分狩りに行かなくて良くなったな。
取り敢えず一つにまとめてくれ」
「ん」
漆黒の獣たちが一瞬にして姿を歪ませ、大きな風呂敷となり全ての獲を包み込んだ。
「あ、この豬も頼めるか?」
「……言うのが遅い」
ジトーとライラの事を見つめそう呟きつつも風呂敷の中に巨大豬もれる。
それをライラが軽々と背負い、大きく丸く膨らんだ漆黒の風呂敷の上にヤミが乗る。
ライラのから翼が生え集落へ飛び立つ――
「流石に重たいな」
「……私が太ってるとでも言いたい?」
「……獲の量が多くて重たい」
誤解されない言い方に言い直す。
そんな下らないやり取りをしながら集落を降り立つ。
「おかえり、姉さん」
集落に戻ってきた二人を待ちけていたのは
ライラと同じ緑の眼をした短髪の年だった。
「キニラ、どうした?」
「ちょっと姉さんに警告を――っ!」
キニラと呼ばれた年はライラの後ろから放たれる途轍もない殺気をけ、
思わず言葉を詰まらせる。それに気が付き、ライラがヤミの頭に優しく叩く。
「こら、あれは一応、弟だ。別に殺気も敵意も向けても良いが、
何か話があるようだから今は大人しく」
「……先に戻ってる」
明らかに敵意丸出しの狀態のままヤミは漆黒の風呂敷を解除してから家の中にっていく。
「な、なんであの子あんなに敵意丸出しなの?何かしたかな?」
「気にするな、彼はそう簡単に心を許さない。
それで、警告って何?」
「不思議な子だね。姉さんが気にる訳だ……それで警告の話なんだけど、
父さんと母さんなんだけど、姉さんの……それとさっきの子を消すつもりらしいよ
姉さんの存在が一族の恥だ~とか下らないことを言ってたよ。
多分、味方は僕や兄さん、妹ぐらいかな。あとは殆ど姉さんを消すことに賛。
流石に竜王が乗り気じゃあね……僕たちは全力を盡くすけど、多分負ける。
三日後、出來ればそれまでに逃げてくれないかな」
「そうか」
大して驚くことはなかった。
今まで殆どの竜人族がライラ達の存在を邪魔だと思っていたのだ。
そして今回、二人が留守の間に竜王が発言したことにより、
殘りない者たちが邪魔派にまわってしまったのだ。
「警告は素直にけ取って置く。だけど、キニラたちが味方だとは思わないで置く」
「えぇ……酷いなぁ。まぁ、僕たちは本気だからね。
姉さんが逃げないで戦うって言うのなら僕たちは本気で親に牙を向く
三日間もあるんだ。じっくり考えてね」
そう言い殘し彼はライラの下から離れて行った。
一人殘されたライラは特に考えることもせずにとってきた獲たちの処理を始めた。
竜人族、伝説の種族と呼ばれており個數はなく、滅多に見かけることのない種族。
他種族とはかけ離れた圧倒的な力を有し最も神に近い存在だ。
壽命と言う概念は存在しておらず、衰えることを知らない。
中には自ら容姿を老いた者へと変貌させる者もいるが、多くは20代から10代の容姿だ。
また、竜人族の中でも始祖からをけ継いでいるのが竜王と呼ばれ、
代を重ねるごとにその力は強大なモノへとなっていく。
もし、竜王とライラの兄妹全員が戦えば例え技量に差があったとしても、
力で優勢になることは可能だろう。だが、問題は竜王だけではなく、
竜王の妻が敵対するという事が最も厄介な存在なのだ。
狀態異常系のスキルを得意としており、竜人族で葉うモノはいないと言われる。
無限に近い魔力を保有しておる彼が繰り出す狀態異常は留まることを知らない。
戦うとすれば真っ先に狙うべきは竜王ではなく、その妻の方だ。
だが、當然、そう簡単には狙わせてはくれないだろう。
たった數秒遅れるだけでも彼は狀態異常スキルを発する。
竜王を瞬殺し妻を速攻狙いでもしない限りライラ達に勝利はない。
「どうする?」
ライラから事を聴いたヤミがそう尋ねる。
家の中に運ばれた処理済みのを小分けにする作業をしながら二人は會話をする。
「どうするもなにも戦う気などない。別に集落を追い出された所で困りはしない」
「そう」
「まぁ、強いて言うならソラを連れてきて挨拶をさせるつもりだったんだが、
し面倒なことになりそうだ」
「……私がそんな勝手なことさせるとでも?」
ヤミが手に持っていたが一瞬にして灰と化す。
殺気が家に充満する。窓ガラスがギシギシと悲鳴を上げ、
家全てから鳴ってはいけない音が鳴り響く。
そんな途轍もない殺気をけてもライラ特に驚いたりはせず平然と肩を竦める。
「そう怒るな。別にひとり占めしようという訳ではない」
「マスターの一番は私」
「まぁ、それは認めざる得ないからな。二番で良いさ」
事実、彼はこの五年間共に過ごし、如何にヤミがスラの事を想っているのかが
痛いほどに伝わっている。
「やけに素直」
「実際にそれを決めるのはソラ自だがな。
まぁ、もっともこの完璧なプロポーションでイチコロだろうな!」
気持ちで負けたとしてもでは負けてないとセクシーポーズをとりヤミを挑発する。
「私だって長した。ライラになんて負ける訳ない」
ライラに向かい仁王立ちし、グイっとを張り長したとアピールをする。
互いに家の中で可笑しなポーズを取り合っている異様な景だ。
「……それで、これからどうするの」
互いのがぶつかりあう距離まで近付き、ヤミが溜息を吐き、これからの予定について切り出す。
ライラが戦う気が微塵もないことは理解できたが、そうとなればこの集落を去る必要がある。
當たり前の事だが、何処に行くのかと言うのが一番重要だ。
「良くも悪くも目立つからな、取り敢えずは予定通りノイの迷宮があった場所に行く。
その周囲でノイを見つけることが出來なかったらその時は……魔王城にでも行くか」
この五年間でこの二人の戦力は大幅に長している。
だが、同時に彼たちから自然と溢れ出す殺気や魔力により、通常の場所での生活は困難なのだ。
普通の人間ならば近くにいるだけで吐き気を催し長時間その場にいれば狂人と化す。
「魔王城……久々、うん、それなら良いかもね。珍しく計畫して偉い」
行き先を決めただけで褒められるライラ。そのことから普段の無計畫さが見する。
そんなことで褒められ、非常に嬉しそうにしているのもなんとも言えない姿である。
行き先が決まった後の彼たちのきは素早い。小分けした食料を詰め込み、
著替え等も全て持ち姿を消した。警告があったその日にはライラ達の家はもぬけの殻にへと。
「やっぱり何もない」
「そうだな、ノイの奴、一どこに行ったのか……」
集落を飛び出した二人が真っ先に降り立ったのはヘルノリア王國付近の森だ。
本來ならノイが造った迷宮があるのだが、そこはまるで最初から何もなかったかの様に
綺麗さっぱりに自然な狀態へと変わっていた。
「周辺にもノイの気配じない……もう近くにはいないよ」
「あの霊王、気配が獨特だから絶対に分かると思ったんだがな、
此処の近くにいないとなると探すのは大変だ。魔王城に行けば何かしらの報が手にれば良いが……」
ライラとヤミの気配察知能力はかなり広範囲にも及ぶものだ。
ヘルノリア王國付近の草原を抜けた先にあるこの森のからでも余裕で王國全の気配を察知できる。
王國にもこの周辺にもいないとなれば、霊王ノイはかなり遠くにいるという事になる。
國々を虱潰しに探せば見つかるかも知れないが、デメリットが大きい。
ノイ一人を探す為に態々目立ち、問題になる様な事は極力避けて行く。
魔王城ならば魔王に加え、大魔王までがいるのだから何かしらの報は持っているだろう。
そういう考えでライラは魔王城へと向かう事に決めた。
「エリルスなら何か知ってる?」
「知らなくても大魔王ならばどうにかしてくれるだろう」
「そう」
「多分だけどな」
ヤミが再びライラの背中に乗り魔王城に向かい飛び立つ。
周囲が森だろうがお構いなしだ。バキバキと小枝事巻き込み空に飛び出す。
・・・・・
二人の目的にである魔王城では現在、魔王ヴェラによる部下たちの訓練が行われていた。
訓練場では7人の悪魔たちが武裝をしている。ビシっと整列をし、前に立つヴェラの言葉を待つ。
現在行われているのは鋭兵の訓練だ。幾萬もの悪魔の中から選び抜かれた者たちだ。
赤のグラデーションのボブカット、燃え盛る灼熱の炎の如く赤な瞳。
この五年間で容姿こそ変わってはいないが、格が更に厳しくなり強さは數倍にも膨れ上がっている。
見た目は変わっていないが中が鬼になっている。
「今回の訓練、私に一撃をれることだ。それが出來た者から3分休憩にれ。
その次は魔王城の周囲を走れ、一周に付き3分休憩、全員が終わるまで続けろ。
貴様ら全員で掛かって來い。開始!」
厳しい訓練容だが、彼らにとってこれは日常的なモノだ。
唯一違う點と言えばヴェラに一撃を與えるという最大難度の容が加わっているという事だ。
幾ら鋭とは言え、魔王との力の差は天と地と言っても過言ではない。
只の悪魔である彼らが攻撃を與えるというのはかなり厳しい容だ。
「どうした?來ないのならば私から行くぞ?その場合貴様らの命の保証はないがな」
恐れから誰一人もき出せない狀況の中、ヴェラが更に追い打ちを掛ける。
最初にき出したのは鋭の方からだった。一人が踏み込みヴェラとの距離を詰め正面から仕掛ける。
全に魔力を纏わせ強化を行いつつ、魔力を込めた拳を振りかざす。
「俊敏と力で勝てるとでも思ったか?」
「――っ!!!!」
魔力が籠っているのにも関わらずヴェラは素手で止め、容赦なく摑んだ拳を握り潰す。
飛沫と共に悲鳴を殺す聲が鳴る。それだけでは終わらず怯んだ部下に蹴りをれる。
防をに纏っているにも関わらずヴェラの蹴りはそれすらも砕き、に減り込む。
鍛えられた強靭なを持つ鋭でも玩の様に宙を舞う。
そんな仲間に目もくれずにヴェラの背後から忍び寄る鋭兵。
姿勢を低くし、先に腳を刈り取ろうとするが――
「背後に立つのはやめろ。加減が難しい」
――ドゴォーンッ!
ヴェラに生えている尾がき出す。
鞭のように撓り、先はハンマーの様に重くなり、背後の悪魔に勢いよく振り下ろされる。
一応加減はしたのだろう。その跡にはだらけの悪魔が蟲の息になっていた。
もし本気でやっていたのならば跡形も殘ってはいない。
「鍛え方が甘かったか、弱すぎる」
一瞬にして襲い掛かって來た二人を無力化し殘念そうにつぶやく。
「どうした、貴様らも掛かって――ん?」
突如凄い勢いで遠方から近付いてくる二つの気配に気が付き、視線をかす。
今まで一歩もかなかった魔王ヴェラが戦闘態勢にるほどの気配。
鋭兵たちがその気配に気が付いた時には既に遅く――
――ドーンッ!
上空から二人が降り立つ。
間近でじるその二人の只ならぬ気配に鋭たちは怯み後退りをしてしまう。
「貴様らは……」
「ヴェラ、エリルスどこ?」
降り立ったライラの背中からひょこっと飛び出たヤミが戦闘態勢をとっているヴェラに問いかける。
「ヤミとライラか、エリルス様なら自室で休んでいる。
二人からきだすとはかなり珍しいな何の用だ?」
「ノイの迷宮、消えた。報が必要」
「は?迷宮が消えただと?それは本當なのか!?
あいつの墓場だったんじゃないのか?一何が――」
迷宮が消えたことを知らなかったヴェラはその衝撃のあまり思わず
訓練中だという事を忘れ、ライラ達ににじり寄る。
「落ち著いてくれ。こちらも何も知らないんだ。
だからこそ、大魔王エリルスに話を聞こうと此処に來たまでだ」
「大魔王様が何か知っていると良いが……っと、訓練中だったな。
悪い、本當は案してやりたいが二人で向かってくれ。今は部下の育中でな」
「ふ~ん」
ヤミが周りを見渡し倒れている二人と怯んでいる五人を確認し、狀況を把握する。
またライラも同じく、なんとなくだが把握した。
「手伝うか?」
「ほう、それは嬉しいが……手伝いと言ってもな……
そうだ、こいつ等に本當の戦いというモノを見せてやるか」
一度、魔王レベルの戦い方を見せた方が良いのではないだろうか。
幾ら訓練をしたとしてもいざと言う時にけなければ意味がない。
その時の為、高レベルの戦いを見せうるという考えだ。
「楽しそうだ、ヤミはどうする?」
「面倒、離れて見てる」
「そうか、二人がかりでも構わないのだがな」
別に挑発をしたつもりはないのだが、ライラにとってそれは十分な挑発と取れる発言だった。
最初は全く戦う気がなかったのだが、一瞬にして戦闘態勢にる。
溢れ出す殺気に兵士たちは負傷した者たちを運び巻き込まれないように距離を取る。
「魔王ヴェラよ、甘く見るなよ?」
「ほう、撤回しよう。一人相手でもこれは厳しそうだな」
「行くぞ?魔王ヴェラよ」
ライラは一気に己の力を解放する。
魔王の様な翼が生え、その翼には鱗がビッシリと張り巡らされており、
一つ一つの鱗が鋭く鋭利なモノだ。立派な竜の証である巨大な尾。
全ての爪が鋭利にび、獣よりも立派な牙が生え出す。
そして竜王のによる力が引き出される。
全から半明な赤のオーラがライラのを纏わりつく。
エメラルドの様なしい緑の眼が薄っすらとを燈す。
「なっ!?」
音もなくライラの姿が消える。
咄嗟に目で追うことをやめ、気配で位置を探し出す。
「そこか!」
気配を強くじた場所に向かい拳を放つ。
予想通りにその拳の先にはしっかりとライラの姿があった。
だが――
「何をしている?」
「っ!?」
背後からの聲に考えるよりも先にが回避行を取る。
その判斷が彼の命を救う。
先ほどまで居た場所が抉れ熱を帯び真っ赤に染まり煙が立つ。
「良いきだ。もし當たっていたら――っ!?」
もし當たっていたらただでは済まない。そう言おうとしたのだが、
それは間違いだ。當たっていたらではなく、実際はほんの數ミリだが掠っていたのだ。
ヴェラが創り出した最強と言っても過言ではない防にひびがり崩れ落ちる。
「當たっていたら?なんだって?」
「まさか掠った程度でこの威力とは……」
思わず魔王であるヴェラが唾を飲み後退ってしまう。
それを見逃さなかったライラは勝利を確信する。
「たった一撃。それだけで怯んだな?もう勝機はないぞ」
「ふっ、何を言うかと思えば、まだ此方の攻撃が――」
「怯んだ時點で終わりなんだよ」
「くっ!」
目で追う事の出來ないライラの速度に加え、強烈な一撃が繰り出される。
防がない以上、防に全力を注がなければ終わりだ。
ガードポーズをとり、ライラの拳を防ぐ。
一発一発が重たく、防の全力を注いでいたとしてもかなりのダメージをける。
徐々に皮がり切れ、出をする。
「殘念だが、お前は一度私に恐怖を抱いた。
どれだけ強がろうとお前は心の何処かで常に恐怖を抱いている。
それがお前の足枷となり私に追いつくことは無い」
「――っ!!私は大魔王エリルス様に仕える魔王ヴェラだっ!
このまま負ける訳には行かない――っ!!!!」
全く手も足も出ない狀況だが、意地でもこの狀況を打破しようと気合をれる。
自分が何者なのかと言うのを言い聞かせ、魂を震え立たす。
何度も打たれているにライラのきにも慣れて來たヴェラはカウンターを狙う。
突き出された拳をけ流しバランスが崩れたライラの橫腹に一撃を喰らわせる。
流石のライラでも魔王の一撃を喰らえば軽々と吹き飛ばされてしまう。
だが、その勢いを空中で殺し綺麗に著地を決める。
「ふっ、やっと本気になったのか。だが、もう遅い」
「ふざけるな、これからが――」
「上を見ろ」
「なぁっ!?」
ヴェラの事を嘲笑いライラが空中を指さす。
その先には彼のオーラの同じの魔力塊が存在していた。
今もなおそれは増大しており、ヴェラに狙いを定め何時でも止めを刺すことが可能だ。
「恐れを抱いた瞬間からお前の視野には私しかっていなかっただろう?
全て私の思い通りの展開だ。その時點で私の勝利は確定した」
「く……」
負けず嫌いな彼でもこの狀況ではどうすることもできない。
全く手も足も出ずに決著がついてしまった。魔王になってから久々に味わう屈辱。
だが、不思議と負のと言うモノは沸いていなかった。
確かに悔しいが、清々しいほど気分が良い。
「くはっははははは!いやぁ、負けたぞ。完全敗北だ。
久々だ。私が此処まで手も足も出ずに追い詰められるの!
流石に此処までやられると清々しいな。
想像以上に貴様は強かった。だが、次は負けない。生憎、負けず嫌いなのでな。
今度は貴様にこの気持ちを味わさせてやろう」
聲高々に笑い飛ばす彼を見て戦闘態勢を解き、何時ものライラの姿に戻る。
やれやれと言ったじに肩をすくめる。
「それはどうかな。私はこれからも強くなり続ける。
二度と後悔しない為に、大切な者を守り抜く為に、私は強くなり続ける」
この五年間で彼は二度と大切な者を失わないように
どんな理不盡な力が襲い掛かろうとも守り抜くことが出來る力を。
ヤミと共に強くなるために地獄の様な鍛錬を積んできた。
そしてこれからも彼たちはそれを続けていくつもりだ。
決してヴェラの努力が足りないと言う訳ではないが、ライラ達はヴェラよりも努力をした。
それだけの話だ。この五年間の努力がこの力の差として表れているのだ。
「そもそもなぜ最初から本気を出さない?」
離れた位置で戦闘を見守っていたヤミが近付き、ヴェラに対してそう言った。
彼の言う通りである。ヴェラは最初から本気を出しては居なかった。
ライラの気によって多本気を出さなくてはいけないとは理解したモノの、
彼の力量を測り誤ってしまっていたのだ。
「もしライラが敵なら殺されてた。本気でやるなら最初からやれ
そうじゃないと絶対に後悔する。気付いた時には遅い」
軽い気持ちで実戦形式の試合を開始してしまったが、
二人に責められ、言い返すことが出來ないヴェラは珍しく反省をする。
圧倒的な力に敗れ、指導をける。負けず嫌いなヴェラだが、
二人の言う通りだと納得し、確かに最初から本気を出さなかったのは落ち度だと反省する。
「そうだな、確かにその通りだ。貴様らの事を甘く見過ぎていたのは事実だ。
長はじ取れたが、本気を出すまでも無いと思ってしまった。
だが、実際は本気を出したとしても勝てない程の力を付けていたのだな。
すまない。次からは、いや、今から何が相手でも本気で相手をすることにする」
「それが良い。何事も失ってから気付くのは遅いから」
「ああ、そうだな……それで、大魔王様に會いたいんだったよな。
お前らはもう帰って良いぞ。明日までに攻撃を與えられるように予習しておけ」
未だに狀況が摑めずに呆けている鋭たちにそう聲を掛ける。
流石に言われて直ぐにはくことは出來なかったが、しっかりと返事をし
多の時間のラグが生じたが各々解散していった。
「こっちだ。ついてこい」
切り替えが早いのは良い事だ。先ほどまで反省していたとは思えない程平常運転だ。
ヴェラに案されるがままにエリルスの寢室へとやって來た。
しっかりとヴェラがノックをし返事を待ってから室したのにも関わらず、
ベッドの中でもぞもぞとしているパジャマ姿のエリルスの姿が目に映った。
「ん~どうしたの~」
「エリルス、ノイの迷宮消えた。何か知らない?」
単刀直にヤミがそう訊ねた。
目をりながら何も考えていなさそうな間抜けの顔をしながらも彼は口を開く
「ん~知らないよ~消えたことは知ってるけど~何もしらないかな~」
「そう……」
ヤミがし殘念そうに肩を落とす。
そんな彼を見てエリルスは謝罪の言葉を口にする。
だが、大魔王エリルスの発言は噓である。
本當は何故迷宮が消えたのかも今ノイがどこにいるのかも全て知っている。
同時に、ソラが自らの力でヤミ達と合流したいと考えていることも知っている。
何も考えていなさそうで実は々と考えた結果の答えだったのだ。
「ノイの居場所も知らない?」
「知らないね~ごめんよ~最近忙しくて~今度暇になったら調べてあげるね~」
と、今まさに暇そうにゴロゴロしているのだが、
それでこそエリルスと言うところがあるので誰もツッコミはしない。
「……殘念」
「まぁ~でも~ノイ自らの意思で消したことは間違いないと思うから~
そんなに心配しなくても良いよ~我も何かわかったら直ぐ知らせるね~」
「うん、よろしく」
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8 107白雪姫の継母に転生してしまいましたが、これって悪役令嬢ものですか?
主人公のソシエは森で気を失っているたところを若き王に助けられる。王はソシエを見初めて結婚を申し込むが、ソシエには記憶がなかった。 一方、ミラーと名乗る魔法使いがソシエに耳打ちする。「あなたは私の魔術の師匠です。すべては王に取り入るための策略だったのに、覚えていないのですか? まあいい、これでこの國は私たちのものです」 王がソシエを気に入ったのも、魔法の効果らしいが……。 王には前妻の殘した一人娘がいた。その名はスノーホワイト。どうもここは白雪姫の世界らしい。
8 103努力次第で異世界最強 ~喰えば喰うほど強くなる~
ある日突然異世界召喚されてしまった黒木レン。 そこは剣と魔法が存在するアイン・ヴァッハと呼ばれる世界だった。 クラスメイトはスキルもステータスもチートレベルなのに対して、レンのステータスは一般人よりも弱かった。 魔法が使えるわけでも剣で戦えるわけでもないただの一般人よりも弱かったのだ。 しかし、彼には謎のユニークスキルがあった。 効果も分からないしどうすれば発動するのかも分からない謎のユニークスキルを持っていたのだ。 そう【|喰種(グール)】というユニークスキルが。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 星雲は大の廚二好きです! 現実で出せない分ここで好きなだけ廚二病を発揮したいと思います!! たくさんの人に見ていただけると幸いです!
8 133創造の力で異世界無雙~言霊使いの異世界冒険譚
目を開けてみるとそこには見知らぬ場所が。そこで創造神やら何やらに世界を調整して欲しいと言われた。そして何かを戴けるそうなので俺は━━━━━━━━ 神様達からの加護で『創造』やら何やらの力(チート)を貰った俺は異世界を堪能しながら調整とやらを行っていった。現実世界でも最強の幸は異世界でも最強のようです。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━処女作です。可愛がってください。 誤字脫字等あったら教えてください。逐次更新していきます。 週に1、2回にします。ちょっとキツくなりましたので。 もし、面白いと思ってくれたなら、高評価お願いします!
8 88異世界落ちたら古龍と邪龍の戦いに巻き込まれまして・・・
この物語は、勇者召喚に巻き込まれ そのあげく古龍と邪龍の戦っている真っ只中に落ちてしまった一人の異世界人の物語である おそらく主人公最強もの、そしてスーパースキル「ご都合主義」が 所々に発生するものと思われます
8 163《完結》勇者パーティーから追放されたオレは、最低パーティーで成り上がる。いまさら戻って來いと言われても、もう遅い……と言いたい。
おのれ、勇者め! 世界最強の強化術師(自稱)である、このオレさまをパーティ追放するとは、見る目のないヤツだ。 「パーティに戻ってきてください」と、後から泣きついても遅いんだからな! 「今さら戻って來いとか言われても、もう遅い!」 いつか、そのセリフを吐きつけてやる。 そのセリフを言うためだけに、オレの冒険ははじまった。
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