《転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~》第一話 プロローグ

「何でいに乗らなかったんだろ。失敗したよな~、せっかく沙織さおりがってくれたのにな」

和也かずやは自宅のベッドで橫になりゴロゴロとしていた。手に持った攜帯の畫面には、の子三人の浴姿の寫真が映し出されていた。

『浴姿かわいいでしょ?見られなくて殘念!』とメッセージ付きで。

寫真の中央に寫っているのは、高校のクラスメイトであり、小學生からの馴染みでもある眞鍋沙織まなべさおりだ。われた花火大會をの子三人と男一人では、何となく恥ずかしいからって斷ってしまった。

椎名和也しいなかずや(高校二年生 十六歳)は遠くから聞こえる花火の音を部屋で聞きながら、ベッドで転がっていた。

この家には和也一人しかいない。両親は小さいころに事故で亡くし、祖父に育てられた。そしてその祖父も去年亡くなってしまった。兄弟もおらず、両親と祖父の殘してくれた産で、働かなくても大學卒業まで問題なく生活できるほど余裕があったこともあり、アルバイトなどはせず學校と家の往復の毎日を送っていた。通っている高校でも中の上くらいの績で顔立ちも普通だ。

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網戸あみどになっている窓の外からは、花火大會の最後を知らせる盛大な音が連続して聞こえてきた。

「今年の花火はこれで終わりか。まぁ今更考えても仕方ないし、アイスでも食べるかな」

和也は部屋を出て階段を下りキッチンに向かう。

「今日はどのアイス食べようかな。気分的にはかき氷系でしょ」

冷凍庫を開けて中を見ると、アイスが一つもっていなかった。

「まじかよっ。アイスなんもないじゃん。仕方ない、アイス買いに行くついでに散歩でも行くかな」

階段を一気に駆け上がり部屋に戻り、財布と攜帯をもってコンビニに向かった。

空を見上げると、雲ひとつない綺麗きれいな夜空となっていた。花火大會側から流れてくる煙が唯一星達を遮っていた。

花火大會が終わったこともあり、浴姿の家族連れや、數人のグループが帰ってきていた。

一同に笑顔で、先ほどまでの花火について話し合いながら歩いている。

「何か新しいアイス発売されていたりするかな?」

和也はすれ違う浴姿の人達に目をくれず、コンビニでどのアイスを買おうか悩みながら歩いていた。

コンビニがもうそこまで見えるところになったところで、いきなりコンビニのり口から人がびながら出てくる。

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「逃げろぉぉぉぉぉ!!」

逃げう浴姿のカップルや、家族連れがいた。

その後には、包丁を持っている男が手を振り回しながらコンビニから出てきた。

「みんなしねぇぇぇぇぇぇ!!!!」

包丁を右手に持ち、目は走っており、逃げる人たちのことを、首を振りながら目で追っている。

びながら包丁を振り回す男は和也に向かってきた。

「うわっ。まじかよっ。逃げなきゃ」

振り返り逃げようとすると、浴姿の中學生くらいのの子二人組が腰を抜かして餅をついていた。

「そこの二人とも早く逃げろ!!」

和也は座り込んでいるの子たちに向かってぶが、こんな急事態に腰砕けになっているの子は、すぐに逃げることが出來る狀態ではなかった。

「――決めるか」

フゥーー、と一息ついた和也は包丁を持っている男に向き直った。

中段に腰を落とし、全に力をれ、タイミングを見計らった。

「いけぇぇぇぇ!!!」

思いっきり包丁を持っている男の腰にタックルを決めた。

二人とももつれて歩道を転がっていく。

和也は男の上に乗り、抑えつける。

「誰かこいつの刃を取り上げてくれ!!」

言った途端、お腹のあたりから熱いが全に渡っていった。

「てめぇぇぇぇぇぇ」

和也は男を毆りつける。

包丁を持っていた男は毆られた勢いで包丁を手放した。

誰も持つことのない包丁が勢い良く転がっていく。

近くにいた數人が包丁を手放したこともあり、集まってきて男を抑えつけた。

アドレナリンが出ていたおかげで腹部の熱さを気にしなかったが、ふと見ると包丁が刺さった傷からTシャツに赤いが流れ続けている。

力がらず立つことも出來ない狀態で和也は仰向あおむけに転がった。

そのまま夜空を眺める。

首を傾けると近くからは救急車を呼ぶために電話をしている人たちがいる。

通行人がコンビニから大量のタオルを持ち出してきて、和也の腹部からとめどなく出てくるを押さえつけてくれた。

そして先ほどまで餅をついていた浴姿の中學生の二人組のの子たちが近くに寄ってきた。

「か、和也兄さんですよね!?」

うっすら化粧をしたの子は見覚えがある顔だ。

「あ、沙織の妹のまなみちゃんか……久しぶり……」

「はいっ! そうです。です。助けてくれてありがとうございました。和也兄さんがかばってくれなかったらと思うと……」

は涙を流しながらお禮を言ってくれる。

押さえつけている腹部からのは全く止まっていなかった。

段々と意識が遠のいていき、全が凍ったような寒さをじてきた。

「――それにしても二人とも無事でよかった。なんか意識がもうろうとしてきたよ……」

「和也兄さん! 目を瞑ったら駄目ですよ!」

が和也の肩をゆすってくる。だが、すでに全に力がらない狀態だった。

「……ちょっと無理っぽい」

「和也にいさぁぁぁぁぁん!!」

その一言を最後にそのまま和也は意識を失った。

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