《転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~》第二十三話 引越し
屋敷の整備も終わり、引越しする日になった。
引越しが決まった理由は、執事にメイドたちがすでに決まって派遣されているからだ。
すでに今日行くことをシルビアに伝えてもらうために、あちらの屋敷で待っていてもらっている。
カインは荷を整理する。全てアイテムボックスにしまっているため手ぶらだ。
外に出てきたら、ガルムが待っていた。
「私からのお祝いだ、け取るが良い」
セバスが後ろから二頭の馬に引かれた馬車を出してきた。派手さはないが、しっかりとした作りでできていた。
「父上、ありがとうございます。大切に使わせていただきます」
頭を下げて謝をする。
「カインはそういうところには気がつかないしな、この前も王城から歩いて帰ってきたみたいだし」
普通の貴族は、王城から歩いて帰るようなことはしないよな。
だって、散歩したかったんだもん。
馬車の中を覗くと中で六人ほどが対面を向いて座れるようになっていた。父上の馬車は十人乗れる大型だが、今はこれくらいの大きさで丁度いい。まだ新しい馬車に乗り込む。
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馬車二臺でカインの屋敷へ向かう。
ガルムの屋敷からカインの屋敷までは馬車で二十分ほどでつく。
門を潛り、正面口の前に馬車をつける。
口の前には、執事をはじめ數人のメイドが並んで待っていた。メイド長はシルビアだ。
シルビアはまだ十八歳だが、カインが産まれたばかりの時から五年間世話をしてもらっている。
新しくきたメイドはシルビアよりもし若い子が多かった。
ちなみに執事も若かった。まだ二十歳過ぎくらいだろう。
代表して執事が挨拶してくる。
「ガルム辺境伯様、カイン男爵様、お待ちしておりました新しくカイン様の執事となりました、コランと申します。セバスの甥になります。カイン様の執事の公募が出たと聞き応募させていただきました。セバスよりカイン様の鬼才ぶりは聞いております。これからもよろしくお願いします」
そう言って、頭を下げる。
セバスさんの顔を見ると、にこやかにウインクしてきた。
セバスさんは知ってたみたいだな。セバスさんの親戚なら逆に安心できる。シルビアもいることだしね。
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カインの屋敷で雇うことになったのは、執事のコラン、メイド長のシルビア、他にメイドが三人、料理長が一人、料理補助が一人、馬丁兼庭師が一人だ。
いきなり七名も雇っても平気なのかと心配すると、七名全員の人件費を足しても月に金貨一枚あれば足りるそうだ。陛下からもらった白金貨もまだあるし、當分は大丈夫だろう。そのうちリバーシの売上もってくると思うしね。
皆が屋敷にってくる。
「外壁もそうだったけど、新築と同じくらい綺麗ねっ。こんな新しい屋敷もらってよかったの?」
サラが聞いてくる。
「たしか、子爵邸のときに私も來たことがあるが、ここまで綺麗ではなかったぞ」
ガルムも続いた。
「私たちも、最初掃除をしようと思っていたのですが、來た時にはホコリ一つない狀態でした」
シルビアも答える。
「あ、それ僕が掃除しておいたの。この間來た時に魔法でね!ついでに魔法で補修したらこんなに綺麗になった」
ガルムもサラも呆れてる。
「カインが規格外だということを忘れていたな」
家族を家の中の案する。どこを見ても新築狀態だ。文句の言い様がない。
「まだカインは五歳だから、裝飾品はわからんな。まぁいいか」
たしかに、この家には裝飾品がまったくない。
「裝飾品ってなにがいいんですかね?絵も壺もあまりわからないので」
「うむ。冒険者なら、大型の魔の剝製とか飾る場合もあるな」
「魔でもいいんですねっ!なら正面に飾ってみます。剝製ならすぐに魔法でできると思いますから」
そう言って、カインは一人で席を外す。ホールの中央にきてどの魔がいいか死蔵しているアイテムボックスの中を見ていく。
なにがいいかなーって思って探していくと、いいものがあった。玄関ホールは二階吹き抜けとなっているのである程度天井が高い。
これなら出してもインパクトあるし、かっこいいだろ。
そして出したのは、首が切り離された赤いドラゴンだった。地竜や飛竜ではない。
首をばすと本は高さ八メートルくらいあった魔だ。
魔の森の奧地にいたので、つい戦ってみたのだ。
ドラゴンの死を中央に置き、イメージを固めながら魔力を練っていく。
『創造制作クリエイティブメイク』
がドラゴンを包んでいく。
がなくなると、まるで生きているような赤いドラゴンが構えている。もちろん生きていないし剝製だ。
「ポーズもこれでいいな、首も綺麗につながったし、下手な裝飾品より格好いいだろ」
この時カインは気付かなかった。ドラゴンに対するの基準が前世のままだと思ったこと。ドラゴンは格好いいと思ってたこと。この世界の価値観とは違っていた。
この世界ではドラゴンは恐怖の象徴だ。
街に現れれば炎を撒き散らし、小さな村なら一日で消滅する、天災級の魔だ。この飾っている魔も冒険者ギルドではSSランクに區分される。
もちろん冒険者ギルドに登録もしてないカインにとっては、そんなことは知る由もない。
ガルムたちのところに戻る。
「魔の剝製を中央ホールに飾ってみました。裝飾品がないけど大丈夫かな」
「うむ、そうか。あとで見てみよう」
そのまま二階の執務室などを案していると、悲鳴があがった。
「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」
ガルムと、カインは聲を聞いて構える。
「ロビーのほうから聞こえます。私が先行します。」
そう言って、アイテムボックスから剣を取り出す。
階段から下を覗くと、中央ホールで腰を抜かしたメイドたちがいた。
メイドたちの視線の先には、先ほど制作したドラゴンの剝製だ。
「あ、説明するの忘れてた」
冷や汗をかくカインだった。
「カイン、どの魔の剝製を置いたんだ?」
ガルムが冷たい視線で問いかけてくる。
「……ドラゴンです……」
申し訳なさそうな顔をして答える。
ガルムはなにも言えずにため息をついた。
「とりあえず、みんな集めよう。説明しないとまた同じことになる」
ガルムが提案したので、それを了承する。
今ホールには、ガルムたち家族、執事から従者一同が集まっている。
「すいません、何も言わずにこれを置いてしまって」
そうやって指を向けた先には、ホール中央に構えるドラゴンの剝製だ。
「カイン、このドラゴンをどうしたんだ?」
冷たい聲が飛んでくる。
「一人でこっそり魔の森で倒してきました……」
「「「「「「…………」」」」」」
家族、従者共々絶句である。
ドラゴンを倒したことも信じられないのに、五歳の子が一人で倒すなど誰が想像できるのか。
「あとで、じっくりと話をしような」
「……はい」
ガルムの一言に力なく返事をしただけだった。
「それにしてもレッドドラゴンとはな。このクラスだとSSランク級はあるな。この剝製を売るだけで白金貨百枚は確実だぞ。下手な裝飾をおくよりもこっちのほうがいい。カインも十歳になったら冒険者登録もするんだろ?」
白金貨百枚って……十億円か!すげぇ!
「白金貨百枚ですか……。そこまで価値があるものだとは。十歳になったら學園に學する前に冒険者登録はするつもりです」
死蔵している魔を売りたいからとはとても言えない。
「そうか、無理しないようにな」
話していると、また奧から悲鳴が。
この聲は母のサラだ。
「今度はどうした??」
ガルムと聲が出た先に向かう。
向かった先はトイレだった。
そこへ、すっきりしたサラが出てきた。
カインの顔を見つけ喜んでる。
「カインくん!!!なにあのトイレ!!すごいの。水で洗浄してくれて乾燥まで。あれうちにもつけて!!」
あ、そっちか。前世の知識を使いトイレをつくった。
もちろんシャワー洗浄付きトイレだ。 ※ウォ○ュレットは某メーカーの製品名です。
こっちの世界では一応水洗だが、イマイチだったのでつくった。
座った右側に作部をセットして、そこをると部の魔石から水が出る仕組みだ。
魔力についても、便座に座ると自で使用者から吸収するようになっている。
「わかりました、今度そちらの屋敷にも付けますよ。父上よろしいですか?」
「うむ。構わん。私も試してみる」
ガルムもトイレにっていた。
トイレの中からは「うほほお」と聲が聞こえてきた。
し時間を置いて、恥ずかしそうにガルムが出てきた。
「これはすぐに付けてもらいたい。王都の別宅だけでなくグラシア領にもだ。これも売りに出すのか?」
「そのうち売り出すつもりです。でも家族に売るつもりもないので、付けに行きますよ」
「うむ。それは助かる」
「それにしてもカインくんはほんと常識外のことをしてくれるねぇ~」
サラだ。基本的にサラは自分の子供なので、何事にも寛容でいてくれる。
本當に助かってると思う。
見學はこれくらいかな。家族の皆は帰るけど、今日からカインはここに住むことになっている。
帰り際に何気なくガルムが言った。
「新しく王都に屋敷を構えた貴族は、お披目パーティーを開く必要があるからな、早めに開くようにしろよ」
「なんですかそれっ!!!!」
絶句したカインだった。
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