《転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~》第十八話 ルガールの跡4
跡の一階に転移したカインは、石畳をのんびりと歩き出口を目指した。
當初、そのまま屋敷に戻ることも可能だったが、ダンジョンの口で付をして名前を書いたことを思い出し、一度一階に戻ることにしたのだ。
數分で出口にたどり著き、カインは數時間ぶりに太を見た。
「んーーいい天気だな」
カインはを空に向かってばしてから付へと向かった。
付にはるときに散々心配された付が待っていた。カインの顔を見ると頬を緩ませ安心したような表をする。
「カインくん、無事だったのね。本當によかった……。さっき戻ってきたパーティーが子供一人でダンジョンの十一階まで潛ったと聞いて驚いたのよ」
あの場所で出會った銀狼の牙のメンバー達も無事に帰ってきたことを聞いたカインは安心する。そしてダンジョンを退出した事を記載して建を出た。
外に出ると、街へと魔の素材を荷馬車に積み込んでいる銀狼の牙のメンバーがいた。
そのメンバーであるアイリは、カインの事を見つけると満面の笑顔をして手を振った。アイリのその姿に視線を追ったメンバー達は、その先にカインがいることを知ると頬を緩ませる。
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「カインくん! 無事だったのね。私たちもさっき戻ったところよ。これからドリントルの街に戻るの。一緒に戻ろう!」
駆け寄ってきたアイリにいきなり抱きしめられた。
「アイリ! 迷だろ? あの階まで進んだんだ。俺たちよりも強いはずだろ……な?」
そして後ろから近寄ってきたデストラがアイリのことを呼び止めた。
「たしかに!」
デストラの言葉に頷いたアイリがカインを離した。
「カイン、あの時は助かった。今からドリントルに戻るんだ。一緒に行かないか?」
「えーっと……」
転移で一瞬にして街へ戻れるカインにとっては荷馬車になど乗る必要はなかったが、アイリの強い勧で早々に諦め同行することにした。
石畳で整備されていることで、商會によって駅馬車が定期的に運行されており、支払いをデストラが済ませてくれたのでカインも乗り込んだ。十人程度が乗れる帆付きの馬車に乗り込み、その後を冒険者達が集めてきた素材を乗せた荷馬車が街へと進む。
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「噂を聞いてこの街へと拠點を移したけど、正解だったな。今回もうまい酒が飲めそうだぜ」
メンバーの一人が、街での宴會を楽しみにしながら聲をあげる。
「そうだな、まだ街に來て一ヶ月だけど、違う街にいたときと稼ぎは雲泥の差だな」
デストラもその言葉に頷く。
「うんうん、街の治安はいいしね! 冒険者のサポートも十分されているから最高!」
アイリも同じように頷く。
カインはその言葉を聞き満足したように頷く。街の運営事態はアレク兄様にほとんど丸投げしている況だったが、上手く回っているのだと頬を緩ませる。
「それにしてもカインくん、その年で魔法も上級でしょ? うちのメンバーにならない?」
アイリがカインをメンバーにおうとするが、その言葉にカインは首を橫に振った。
「たしかに冒険者ですけど、今日はたまたまドリントルに來ていましたが、普段は王都にいるんです。申し訳ないですが――」
カインの言葉にメンバーが殘念そうな顔をするが、デストラがアイリを制した。
「アイリ、カインはうちのメンバーの誰よりも強い。組むとしたら俺たちが力不足だ」
デストラの言葉にアイリはし表を暗くした。
「カイン、その腕ならすでに冒険者ランクも上級だろ? そうじゃないとその年でダンジョンにる許可なんて出るはずはない。しかも一人でなんて……」
デストラの言葉にカインは無言で頷いた。さすがに金のカードAランクを見せるつもりまではなかったが。
話している間に駅馬車はドリントルに西門へと到著した。
門で付をしている若い衛兵は、次々とギルドカードで元を確認しながら捌いている。
「っていいぞ、次!」
銀狼の牙が各自銀Cランクのギルドカードを見せながら、門を潛っていく。カインはその後に続いた。
カインも仕方なく金に輝くAランクの冒険者カードを取り出して衛兵に見せた。
「はい次! ちょっと待ってくれ、そのカードは君の――」
Aランクの冒険者は、冒険者全で見ても1%にも満たない。冒険者の街ドリントルでもそれは珍しいものだったのだ。ましてや、子供が金Aランクのカードを出すとは思えない。
疑いにかかった若い衛兵は、カインの事を止めた。その瞬間に、後ろで全を監視していた衛兵隊長が走ってくる。
「その子はそのまま通せ」
「で、でも――」
「いいから通すのだ」
「――わかりました」
若い衛兵は納得していなかったが、カインの事を通した。カインは衛兵隊長の気遣いに謝し、軽く頭を下げる。し恐しながらも衛兵隊長も頭を軽く下げた。
衛兵隊長はカインの事を知っており、また、代アレクから冒険者をしている時のカインは他と同じに扱うように命じられていた。ここで領主だということを明かす事になったら、それこそ騒ぎになると思い若い衛兵を止めたのだ。
もちろん後で衛兵隊長から説明をけた若い衛兵は、子供の正が領主だと知り絶を上げたのであった。
「カインくん、一緒にギルドに素材換金しにいこう」
何故かアイリに手を繋がれたカインは、拒否権をなさそうだと諦め頷く。
銀狼の牙のメンバーも今回、格上のBランクにあたるミノタウロスを倒したことで、換金についても期待しているようだった。
何故かアイリに手を引かれながら街中を歩き、冒険者ギルドへとやってきた。
アイリは気にせずに扉を開けギルドのホールを歩いていく。
カインはアイリに手を引かれていることで、周りから嫉妬の視線が集まった。
なからずアイリは人でもあったのだ。
メンバーの、デストラとアイリが付に向かい、他のメンバーはギルドに併設されている酒場に向かっていった。
カインはもちろんアイリと手を繋いでいることで、一緒に付に向かう。
「素材の換金を頼みたい。ダンジョン十階のミノタウロスだ」
デストラが意気揚々と付嬢に告げる。周りからも階級の中ボスとも言われているミノタウロスを倒したと聞き歓聲があがった。
カインも同じくミノタウロスを倒したことを告げ、素材置き場での引換券を貰った。
ギルドの裏手にある素材置き場では、冒険者が倒してきた魔を買い取り、解をして流通させる役目を持っている。
銀狼の牙と一緒にいるカインは魔置き場に同行し、ギルド職員から指定の場所に魔の素材を置くように伝えられた。
銀狼の牙のメンバーは荷馬車から指定された場所に慣れた様子で置いていく。
やはりアイテムボックスや魔法袋マジックバッグは持っておらず、一番換金率の良い素材を置いていく。
ただし、ミノタウロスの素材はどこも高額になることから、部分的に切斷しながら持ってきたようだった。置かれたミノタウロスは赤茶のをした一般的なものだった。
「あれ……。違う……」
置かれていくその素材を眺めながらカインは呟いた。
アイリは自分たちの素材を置き終わり、カインの元に戻ってきた。
「あれ? カインくん、素材はー?」
「えっと……。その……」
どうしようか悩んだが、仕方なしにミノタウロスの素材を出すことにした。
魔法袋マジックバッグ風にしたバッグから取り出したように見せて魔の素材をおいた。
そこには銀狼の牙が置いたミノタウロスとはのも大きさもまったく違うミノタウロスが出てきた。
「「「「「…………」」」」」
「これって、ミノタウロスですよね……?」
恐る恐る尋ねるカインに解を擔當しているギルド職員も冒険者たちも、出てきた首のないミノタウロスを見て絶句である。
最後に切斷された首を寢かせたミノタウロスのの奧に置く。
「こ、これは……ミノタウロスの上位種のミノタウロスオーグだ! Sランクの素材だぞ! ギルドマスターをすぐに呼べ!!」
他で作業していた職員も一度作業を中斷して、めったに見ることの出來ない素材に目を輝かせて覗きに來る。若い職員は急いでギルドマスターを呼ぶために走っていった。
「え、Sランク……!?」
「まじかよ……」
次第にミノタウロスオーグの素材の周りには職員や冒険者たちの人だかりができた。
カインは逃げようかと思ったが、アイリがしっかりと腕を捕まえていた。
すぐにギルドマスターが素材置き場へと駆け寄ってきた。
「Sランクの素材だと……? 本當なのか!?」
ギルドマスターのリキセツも実際に素材を見て銘の聲を上げた。
まったく傷がついておらず、首を一閃で切られただけの素材だ。これだけの素材となれば高額となるのだ。そしてリキセツは倒したカインと視線が合った。
「あ、領主さ――」
「ギルドマスター!! 他に素材もあるので打ち合わせを!」
リキセツの聲を遮ったカインは領主だとバレないために、リキセツに近づいていき耳打ちする。
「ここでは領主と言わないでください。冒険者のカインですから」
「――わかった、領主殿。そのように対処しよう」
二人はこっそりと話し、頷きあった。
「それにしても見事なミノタウロスオーグだな。ここまで綺麗な狀態見たことないぞ。――これはりょう……いや、カイン殿が……」
リキセツは素材を眺めながら呟く。
そしてカインが小聲でリキセツに話し始めた。
「実は十五階での魔の素材がまだ多くあるのですが……。さすがにここに出すわけには……」
職員と冒険者が多數いる中で、百を超える地竜アースドラゴンや二十メートルを超える巖竜ロックドラゴンを出すつもりはなかった。
「――そうか、それなら個別に聞きましょう」
リキセツは向き直って、職員と冒険者たちを見渡し、散るように伝えた。
「これだけの素材だ、し時間がかかるけどいいか?」
リキセツの言葉にカインは頷く。元々こっそりと出そうとしていた素材だったが、アイリ達に捕まったおかげで止む無く素材を出したのだ。さすがにこれ以上は出すつもりはなかった。
「カインくん、これS級の素材よ? あのダンジョンで出たの!? 私たちの時にこれが出てきたら……」
まだ近くにいる銀狼の牙のメンバーであるアイリは、ミノタウロスと戦った時の狀況を思い出し震いした。
「そうですね……あそこのボス部屋で出てきました」
その言葉にメンバーは顔を青くさせた。下手をすれば自分たちの時に出てきたのなら確実に全滅であったからだろう。
「僕はこれからギルドマスターと話したいことがあるのでこれで……」
一度離れてリキセツに話すつもりだったが、そこへ一人の付嬢が走ってきた。
「ギルドマスター、お客様が來ています。って……あ、領主様!! 失禮しました」
付嬢のネスの言葉で全員のきが止まる。
「「「「「りょ、領主様!?」」」」
リキセツと二人で黙っていたことをネスが思い切りぶちまけた。
「領主様も代のアレク男爵がお見えになっていますけど、お會いいたしますか?」
そしてさらに追い打ちをかけた。
その言葉にカインとリキセツの二人は大きなため息をついたのであった。
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